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昭和四十八年九月三日提出
質問第一五号

 石油パイプラインの安全対策に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和四十八年九月三日

提出者  土井たか子

          衆議院議長 前尾繁三郎 殿




石油パイプラインの安全対策に関する質問主意書


 石油パイプライン事業法の施行以来、すでに八カ月が経過しているが、石油パイプラインの安全対策のかなめともいうべき技術基準が、関係省庁の告示という形にゆだねられたまま、いまだ告示されるに至つていない。この間にも、新東京国際空港公団による航空機燃料輸送パイプラインの建設が、幾多の問題を含みながら、現実に強行されている。一方では関東パイプライン及び国鉄パイプラインの計画が、地方工作を含めて進行している。
 かかる展開の中で、パイプライン沿線住民や心ある学者、専門家の中から、パイプラインの安全性に対する数々の不安や疑義が表明され、加えて関係する法令等の不明、不備な点も指摘されるなど、続発するパイプライン反対運動に正当な根拠を与えるような状況になつている。
 住民生活の安全を守る、基本的人権を守るということは為政者の憲法上の責務である。田中内閣も、その成立以来一貫して、福祉優先を主張してきていることでもある。そこで石油パイプラインの安全対策について、国民の生活と生命に直接関係する公害対策及び環境保全という立場から、次に若干の質問を提起する。

一 石油パイプラインの安全性を規制する法令に対する疑義
 石油パイプライン事業法制定の目的は、災害の発生防止により、公共の安全を守ることである。田中通産相(当時)も法案審議の際に、石油パイプラインはこの法律の成立を経ずとも建設できるが、法制を整備して国民の生活を守るのは、政府の責任であると言明している。建設される石油パイプラインの沿線住民の生命と生活を、その事故から、災害から守るということなのであろう。
 しかるに、石油パイプライン事業法の適用をうけるのは、一般の需要を満たす全長十五キロメートル以上の石油パイプラインに限られている。事業法の適用を受けない石油パイプラインの安全性は、消防法により規制される。消防法の危険物の規制に関する政令が、告示される技術基準に照らして改正されるといわれている。
 (1) 消防法の規制で石油パイプラインの安全性は、完全に保持されると考えているか。その根拠は何か。
 (2) なぜ、全石油パイプラインの安全性を消防法で規制しないのか。
 (3) 一般需要を満たす石油パイプラインのうち、全長十五キロメートル以下のものを事業法の適用除外とした理由は何か。十五キロメートル以下のものについて保安面に対してなされた考慮の内容は何か。
 (4) 消防法と事業法とでは安全保持において差があるか。
 (5) 石油パイプライン事業法では、住民(地方自治体)の発言権を認めるなど、住民の法的権利を定めている。事業法の適用を受けないパイプライン沿線住民に差別をもたらしはしないか。差別なしとされるならその理由を明示されたい。
 (6) 政省令のレベルではなく、消防法自体を改正しようとしなかつた根拠は何か。
二 技術基準が告示されない理由
  既に、通産省や運輸省(国鉄)等には、独自の技術基準があるが、事業法による技術基準が今もつて告示されない理由は何か。もとより住民の生命と生活に重大な影響をもつ技術基準が、安全技術上の問題を不問にしたり、不完全な解明のまま拙速安易に決定されるべきでないことは言をまたない。
 (1) 技術基準検討専門委員会が、技術基準決定に内包される技術上の問題の処理にとどまつているのであれば、いかなる点が問題であつたか明らかにされたい。
 (2) 技術基準検討専門委員会の決定以降の事務手続き上の遅延によるのであれば、その処置経過と責任の所在を明らかにされたい。
  以上について、告示が近々になされるにせよ、現在の段階で具体的に答えられたい。
三 事業法にいう保安距離について
  以下の質問に対して、それぞれ理由を付して回答されたい。
 (1) 技術上の基準を定める省令の第二条によれば、利水上の水源である湖沼、貯水池等には、石油パイプラインは設置できないことになつているが、その理由は何か。
 (2) 地下水源の場合は、どのように扱われるのか、その理由をそえて答えられたい。
 (3) 今年の三月二十三日に行われた千葉市でのパイプラインの漏油による火災実験の結果では、人家との保安距離を一・五メートルとすることには無理があるとの指摘がある。保安距離を一・五メートルと選んだ根拠を示されたい。
 (4) パイプラインに付加的な処置をほどこして安全性が保たれるとし、あくまでも、この一・五メートルに固執するとすれば、その理由を述べられたい。
 (5) 仮にかかる安全処置により、パイプライン自体の事故が発生しにくくなるにせよ、事故発生後の事態(住民生活への影響)は、保安距離を主たる因子の一つとして考えることは誤りか。
 (6) 田中通産相(当時)も、パイプラインに絶対の安全性はないと述べたはずであり、パイプライン沿線住民にとつての安全性は、まさに保安距離が重要な決定要因となると考えるのは誤りか。
 (7) 道路境界との保安距離は、省令の技術上の基準で一メートルとされているが、道路に接する土地の権利者は、パイプライン敷設後人家との保安距離との関係から、道路に面した家を建築できないことになる。土地利用権が不当に制限されることにならないか。道路の隣接地の土地の利用形態は、道路の使用状況とともに変化するとは考えないのか。その理由は何か。
四 耐震設計について
  通常行われている耐震設計の内容は、地震時に発生する外力が、弾性的な変形をもたらすことに対し耐えせしめ、破壊をまぬがれることである。ところが地震時に、地盤に塑性変形、例えば地割れ、段差をもたらす外力により、パイプラインが破壊されることが多いとされている。
 (1) 地盤に弾性変形をもたらす外力に対する耐震設計式を選定する実用的な根拠を示されたい。
 (2) 地盤に塑性変形をもたらす外力に対する耐震設計式を具体的にした技術基準を定めるつもりはないのか。その理由は何か。

 右質問する。





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