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昭和四十九年三月十二日提出
質問第一四号

 成田空港と航空の安全に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和四十九年三月十二日

提出者  木原 実

          衆議院議長 前尾繁三郎 殿




成田空港と航空の安全に関する質問主意書


 昭和四十八年九月に行政管理庁により行われた「航空行政監察(第三次)結果に基づく勧告」によれば、我が国の民間航空交通量は、国内線、国際線とも増加の一途をたどつているが、航空安全に関する諸施策は必ずしもこれに即応しておらず、航空保安上憂慮される状況となつているとし、航空交通管制等のいくつかの事項に関して、それぞれ改善措置を講じる必要があり、また、安全第一主義の立場に立つて、航空機の航行の安全を確保することに努める必要があると運輸省に勧告している。
 かかる勧告は、現行の方式及び現用の諸施設にかかわるものに対してなされたものである。しかるに、建設途上にあるとされる成田空港の航空の安全に関しても既に種々の問題が指摘されてきている。現実に存在する航空事故の発生の可能性を放置したまま、「航空の危険」を内包している成田空港の建設が現在強行されているわけである。ましてや、かかる空港を国際空港として開港しようとする策動(本年三月七日に行われた今井榮文空港公団総裁の記者会見)が出るに至つては、安全第一がその根幹であると標榜する運輸行政、とりわけ、航空行政に対し、重大な疑義を持たざるを得ない。
 そこで、以下成田空港にかかわる航空の安全の問題を中心とし、更にこの面からの新東京国際空港としての成田空港の適否について、政府の見解を伺いたい。
 なお、どんなプロジェクトでも、時と場合によつては、途中でもあえて引き返すということ、その勇気が大切であり、同じ引き返すのなら早い方が良いということを付記しておく。

一 航空交通の安全に関する基本的な要件である空域に関して、成田空港開港時の空域は、現在どのように設定(構想)されているかについて質問する。
 (1) 成田空港の管制塔にある飛行場管制席及びターミナル・レーダ室(IFR室)の進入管制席にあるディスプレイ(レーダスコープ)上の成田空域を中心とした空域図を、二百万分の一程度の縮尺度をもつ地図(又は航空図)にて図示されたい。
 (2) (1)の百里・成田・羽田及び横田等の各空域を規定する空域図は、運輸省の現在的な構想(例えば最終案)であるのか、それとも決定されたものか。
 (3) 防衛庁陸上自衛隊の所管になる霞ケ浦飛行場の進入管制は、成田空域の一部として行われるのか、又はそのような予定なのか。
 (4) 成田空域と羽田空域との境界は、どのようになつているのか。例えば、霞ヶ浦飛行場の標点及び御宿VORDMEをそれぞれ中心とする半径九キロメートルの二つの円の内接線のうち、霞ケ浦飛行場を東側に御宿VORDMEを西側とする線分に、ほぼ一致すると考えてよいのか。
 (5) (4)の成田空域と羽田空域の境界により、航空の安全が確保されるという航空管制上の根拠、理由は何か。
 (6) 成田空域の太平洋上での限界は、成田VORDMEを中心とする半径百十キロメートルの内弧であるとしてよいか。また、これは航空管制上のどのような根拠、理由により定められるのか。
 (7) 成田空域と百里空域の境界はどのようになつているか。例えば、太平洋上の米空軍空域R一二一の南縁を西へ延長し、本土(茨城県)の海岸に達した点より、霞ケ浦飛行場の標点に向かう線分よりなると考えてよいのか。
 (8) 成田空域と百里空域の境界は、航空の安全を確保すべく航空管制上のどのような根拠、理由により定められるのか。
 (9) 阿見VORDME上空周辺及び御宿VORDME上空周辺は、航空交通の安全上要注意地域との指摘があるが、どのようにして航空交通の安全を確保するのか。
二 成田空港開港時の成田空港及び羽田空港の離着陸の飛行コースについて、以下の問いに答えられたい。
 (1) 羽田空港の離着陸の飛行コースを二百万分の一程度の縮尺度の地図(又は航空図)上に図示されたい。
 (2) 羽田空港への進入着陸機の待機位置はどこか。北からの南下便は太子及び阿見の各VORDMEの上空、南からの北上便は大島VORTAC及び御宿VORDME上空としてよいのか。
 (3) 成田空港の離着陸の飛行コースを二百万分の一程度の縮尺度をもつ地図(又は航空図)上に図示されたい。少なくとも決定されているといわれる洋上の部分のみは明らかにされたい。
 (4) (3)で飛行場周辺の飛行コースが未決定の場合について、飛行場周辺自治体の了解を得るべく策定されているであろういくつかの案のうち特徴的な飛行コース二ないし三を百万分の一程度の縮尺度をもつ地図(又は航空図)にて図示されたい。
 (5) 成田空港の離着陸の飛行コースはいつまでに決定する予定か。
 (6) (5)の決定は開港予定日時のどの位以前か。
 (7) 成田空港への進入着陸機の待機位置はどこか。平・太子及び三宅島の各VORDMEの上空、銚子及び大島の各VORTACの上空並びに銚子沖及び九十九里沖の各洋上のポイントの上空としてよいか。かかる洋上のポイント名及び位置を明らかにされたい。
 (8) 成田空港の離着陸は直進上昇、直進降下の航行方式により行われるとあるが、直進上昇は高度何メートルに達するまで継続して行われるのか、また、直進降下は高度何メートル以下で開始されるのか。
 (9) 成田空港のC滑走路を南へ向け離陸した航空機は何キロメートル直進上昇すると成田空域と羽田空域の境界に達するか。
 (10) 成田空港を離陸し三宅島VORDMEへ向かう航空機は、現行の米海軍空域R一一六に防害されることにならないのか。この空域を通過しなければならないとすれば、この空域の縮小又は移転、撤去を米海軍へ求めるのか。その可能性はどうか。
三 防衛庁航空自衛隊の百里空域の現在の使用状況に関して、以下の問いに答えられたい。
 (1) 南北二つのTACAN進入着陸の経路を二百万分の一程度の縮尺度をもつ地図(又は航空図)上に図示されたい。
 (2) 南北二つのADF進入着陸経路を二百万分の一程度の縮尺度をもつ地図(又は航空図)上に図示されたい。
 (3) 百里空域の広さは、いかなる根拠に基づいて定められているか。
 (4) 百里基地に現在配備されている航空機の機種及び機数を明らかにされたい。
 (5) 百里基地に今後配備される予定の機種及び機数を明らかにされたい。
 (6) (4)及び(5)で与えられた機種、機数の航空機が日常的に運航するときに必要となる最低限の空域の広さ及びその算定根拠を明らかにされたい。
 (7) 百里基地から離陸した航空機(例えば百里基地に配備されている主力機種)が操縦士による一連の離陸操作を完了するために要する時間は、離陸開始後何分か。そのときの高度は何メートルか。これは直進上昇か。
 (8) 百里基地に配備されている航空機のための訓練空域は現在どこが用いられているか。
 (9) 関東エリヤに百里基地の専用訓練空域を設定する構想はあるか。それはどこに予定しているか。
 (10) 百里基地で行われるスクランブル発進はどのような経路を経て、高々度に達するのか。南向け及び北向き発進の場合について、それぞれ明らかにされたい。
 (11) 成田空港と百里空域が競合する場合、少なくとも将来的に競合する場合、百里基地を撤去する考えはあるか。
 (12) 百里基地の表向きの存在理由は何か。
四 新東京国際空港管制空域図として公表されている関東エリヤの空域及び飛行コースに関する当初案について、以下質問する。
 (1) かかる当初案を媒介として成田空港(又は富里空港)の空域的な是非が新東京国際空港の位置決定の際論じられたのか。航空工学的な定量的な根拠をそえて、新東京国際空港の位置決定に当たつてなされた空域的な検討の内容を明らかにされたい。
 (2) かかる当初案により運輸省と防衛庁と協議が行われ、かつ、合意に達していたのか。両省庁との合意に達したときの関東エリヤの空域及び飛行コースにつき明らかにされたい。
 (3) かかる当初案の決定に当たつては航空交通管制工学的にどの程度精巧かつ真剣な検討がなされていたのか。例えば超大型コンピュータを用いた大規模なトラフィックのミュレーションによる航空交通システムのアナリシスは行われていたのか。当初案には、航空工学的にどのような合理性があるのか。
 (4) (3)の検討を担当した機関又は部局名を明らかにされたい。そのときの責任者名を併せて明らかにされたい。
 (5) かかる当初案の決定の前提となつた羽田空港及び成田空港の航空需要の質的、量的展開の内容及び百里基地に配備される航空機の機種、機数及び内容を明らかにされたい。
 (6) いかなる理由によりこの当初案が廃棄されたか。
 (7) 御宿VORDMEを羽田空域と変更する理由を明らかにされたい。
 (8) この当初案により関東エリヤの現在の航空保安無線施設が計画され設置されたのか。
 (9) 平・阿見・守谷・関宿・館山・横須賀及び三宅島の各VORDMEの設置目的を明らかにされたい。例えば、どのような飛行コースの設定に使われるのか。
 (10) 銚子VORTACは、成田空域と百里空域との境界を定めるものとして設定されたものか。また、VORDMEが用いられなかつたのは、成田空港と百里基地とで共用するためか。
 (11) 当初案による成田及び羽田両空港の進入着陸機の待機位置はどこに予定されていたのか。それぞれ明らかにされたい。VORDME、VORTAC及びフィックス(ポイント)の名及び位置を明らかにされたい。
五 関東エリヤで安全な航空管制を実施するに当たつての諸問題に関し、以下質問する。
 (1) 四つの主要な飛行場(成田・羽田・横田及び百里)を含む関東エリヤにおいて、航空管制工学的にみて有効な空域の利用を図るため、それぞれの飛行場に関する空域を分離して個別に管制する方式とすべての飛行場に関する空域を統合して一元的に管制する方式があるとされている。政府においては、差し当たつて空域分離による方式を採用することにしたと主張するが、かかる空域分離による管制を将来一元化された航空管制へと転換するモメントはいつどこからくるのか。
 (2) 航空管制工学上、どのような要件が成立したら管制一元化へ移行すべきであると考えるか。客観的な条件を質的、量的な形で明らかにされたい。
 (3) (2)において、一元化するのが遅れて、空中衝突事故が発生した場合の刑事上の責任の追求は、機長又は航空管制官の過失という形でのみなされるのか。
 (4) (3)において運輸省の一元化の主張にもかかわらず、大蔵省が予算措置を講じなかつた場合であれば、大蔵省例えば主計局長なども事故発生に対する刑事責任の追求対象となるのか。運輸省航空局長の刑事上の責任はどうなるのか。
 (5) 飛行コースの決定に当たつては、航空管制上のバッファを考慮する必要がある。航空路上では横のマージンが左右それぞれ九キロメートルとされると聞くが、これは定常水平飛行のときのものか。上昇時又は降下時の横のバッファはどのようになつているか。
 (6) (5)において横のバッファを片側九キロメートルと定めた航空工学上の根拠を明らかにされたい。
 (7) 成田空港の離着陸の飛行コース及び待機経路は航空安全上どのようなバッファを前提とすることにより定められるのか。
 (8) 成田空域と百里空域の分離は、平面的のみならず立体的にも規定されることになると聞く。航空機の高度は、機上では高度計に依拠し、場合によつては地上でモニターされることになろうが、航空機が水平飛行しているのならともかくとして、離陸上昇又は進入降下しているときの高度計の指示遅れ(動特性)及び機体の動作の遅れに対して、どのような考慮が払われているのか。例えば降下時に現われる沈下現象自体は操縦士にはどうにもならないと聞く。
 (9) 空域境界を立体的に定めるということは、操縦士は自己の空域境界に対する位置を平面上の位置と高度計の高度指示から判断して知ることになるのか。とするならば、かかる判断は緊急的には特に操縦士の負担となり、事故発生につながるとは、なぜ考えられないのか。
六 関東エリヤの西側に位置する横田空域(米空軍下にある管制空域)に関して、以下の問いに答えられたい。
 (1) 横田空域の管制権が返還されるとした場合、現在の運輸省航空局にこれを受け入れ、管制業務を直ちに引き継ぐ能力はあるのか。
 (2) (1)で能力がないとき、なにゆえに能力を具備し、用意しておかないのか。これは運輸省の責任か、大蔵省の責任か。
 (3) 横田空域の管制権の返還を、例えば日米合同委員会等を通じて米空軍に要求したことがあるのか。あるとすれば、その日時及び内容を明らかにされたい。
 (4) 横田空域の管制権の返還に対して関東エリヤにおける航空管制上からの必要性を説けば、米空軍の側にも必ずしも不合理な対応をしないと聞くがどうか。
 (5) 米海軍横須賀基地へ入港する航空母艦の艦載機は現在どこの陸上飛行へ移動させているのか。そのときの飛行コース及び高度を明らかにされたい。
七 成田空港のA滑走路の南側の進入燈が正規のものでないことについて、以下の問いに答えられたい。
 (1) かかる進入燈の燈器配置の構造を図示されたい。
 (2) かかる進入燈は、航空法施行規則第百十七条第一項第三号ハで規定される設置基準に違反するのではないのか。
 (3) かかる進入燈の設置に対して、航空法施行規則第百十七条第二項において準用された同規則第七十九条第二項の規定に基づく承認申請は、いつ、いかなる形でなされたか。
 (4) かかる承認申請に対して運輸大臣は、いつ、いかなる形で承認を与えたか。
 (5) 運輸大臣は基準と異なる方式を用いても航空の安全に何ら支障はないと、いかなる航空工学上の理由により判断し、決定されたのか。
 (6) かかる進入燈はICAOの設置基準に適合するものか。ICAOの技術基準との関係はどうなるのか。
 (7) かかる進入燈を用いることによる航空の安全に対して、例えば操縦士の団体であるIFALPAとか航空運送業者の団体であるIATAの了解又は同意が得られたのか。あるいは得ることは可能か。
 (8) かかる進入燈を用いることによる航空の安全に対して我が国の航空工学者等の専門家の了解又は同意が得られたのか。了解又は同意を与えた専門家の名前を明らかにされたい。
 (9) 航空法施行規則第七十九条第二項及び同規則第百十七条第二項は、いつ、いかなる目的のために挿入されたのか。
 (10) かかる進入燈を原因として進入着陸時に墜落事故が発生したとき、刑事責任が追求される対象者はだれか。
八 成田空港の気象状況について、以下の問いに答えられたい。
 (1) ILSのカテゴリーIIがなぜ必要なのか。
 (2) 百里基地の自衛隊パイロットの言によれば、利根川以南は霧のときが多いとのことであるが、成田空港はカテゴリーIIを前提としない限り国際空港として機能し得ないのか。
 (3) 横風用C滑走路の気象上の必要性はどの程度か。
 (4) A滑走路のみで開港したとき、横風滑走路を必要とする気象状況のときは、どのような処置が講じられるのか。
 (5) (4)の処置で安全に対応できるのなら、C滑走路はなくてもよいのではないか。C滑走路を必要とする理由は何か。
 (6) 過日、友納千葉県知事は、どのような理由でC滑走路の建設中止を徳永運輸大臣に申し入れたのか。
九 さきの行政管理庁の勧告によれば、現用の飛行場の中に進入表面、転移表面又は水平表面の上に出る高さの建造物、植物等の障害物件の相当数存在するものがあると指摘されている。
 (1) かかる障害物件のある現用の飛行場はどこか。すべてを列挙されたい。
 (2) (1)の各飛行場ごとにかかる障害物件の位置及び各表面上へ出る高さをそれぞれ明らかにされたい。
 (3) かかる障害物件の現在までの処置はどうなつているか、安全対策及び除去対策のそれぞれを明らかにされたい。

 右質問する。





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