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昭和四十九年五月七日提出
質問第二七号

 むつ小川原開発における農地転用事前審査制度に係る脱法及び違法行為に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和四十九年五月七日

提出者  米内山義一郎

          衆議院議長 前尾繁三郎 殿




むつ小川原開発における農地転用事前審査制度に係る脱法及び違法行為に関する質問主意書


一 昭和四十六年四月に制定された農地転用関係事務処理要領は、その第一許可関係の三において、事前審査の制度を設けた。この主旨は次のように理解されている。
  この事前審査の制度は、農地転用許可基準と相まつて、転用候補地の選定を農地転用許可基準に示す条件に適合する位置に仕向けていく手段である。従来ともすれば転用候補地の選定は、事業計画者の意のままに行い、単に地価が安いということで位置を定めたり、あるいは市長村長等の工場誘致の熱意によりある程度の広さの場所を定めたりして、農業上の配慮を怠りがちなきらいがあつた。そして転用の許可申請がなされたときは既に農地法上の許可を停止条件とする売買契約が締結されていたり、手付金が支払われているような事例があつた。そのために申請者をはじめとする関係者が是が非でも許可を得なければならないはめに陥り、処分庁に対し激しい陳情を繰り返したりした。他方、農民は受領した代金を既に使い果たし、抜き差しならない立場に追い込まれる場合も見受けられたのである。こうした混乱を未然に防止する必要からこの事前審査制度を設けたものである。
 (1) この理解と解釈は、国がこの制度を設けた主旨と相違するものであるのか、政府の見解を明らかにされたい。
 (2) この理解に過不足があるとするならば、その点を明確に指摘されたい。
二 仙台農政局長は、昭和四十七年十一月むつ小川原開発株式会社からの申出に対して事前審査の内示をした。そのとき、これを受けた申出人は、この内示をもつて転用許可の内示であるとして、土地所有者との間に実質的な売買契約の締結を開始した。
 (1) 内示に当たり、これは転用許可の内示であると指導したものであるかを伺いたい。
 (2) 私の質問に対する農林水産委員会における政府答弁によれば、内示の段階は買収の同意を求めるべく交渉開始の段階であるとしているが、いずれが正当か答弁されたい。
三 むつ小川原開発株式会社は、青森県が設立した財団法人むつ小川原開発公社をして用地の買収交渉並びに売買契約等を代行させている。その売買契約のやり方は、契約と同時に土地代金の三十パーセントを支払い、停止条件を付し、所有権移転の仮登記をすれば五十パーセントを支払い、許可を得た後所有権の移転を完了すれば残余の二十パーセントを支払うこととしている。
 (1) これをもつて交渉開始の段階とみなすことは妥当であるのか。その見解を伺いたい。
 (2) この行為を農地法第五条に定める権利の移転、設定の法律行為とみなすことは、何ゆえに困難であるのか、その理由を明示されたい。
 (3) 農地法第五条第一項違反を処罰する法意は、いかなるものであるのか、その見解を明らかにされたい。
四 事前審査制度の要領書によれば、申出方法として、事業計画者には、農地の権利者と用地取得の交渉に入る前に直接地方農政局長に対し、様式第六号による農地転用事前審査申出書を提出させるとあり、さらに申出に基づく処理として、都道府県知事は、申出書写の送付を受けたときは申出書の記載事項について、検討のうえ様式第七号による意見書を作成し、速やかに地方農政局長に提出するものとすると示されている。
 (1) 右に係る審査申出書(様式第六号)と青森県知事より提出された意見書(様式第七号)の内容を明らかにされたい。
 (2) 事業計画者の立場を考慮して、秘密扱いとする事項があるならば、申請人から申出の有無を明らかにされたい。
五 むつ小川原開発の第一次基本計画と住民対策大綱が昭和四十七年九月に閣議において口頭了解された。それによれば、計画の内容は工業規模において、石油精製一日につき二百万バーレル、石油化学(エチレン換算年)四百万トン、電力一千万キロワットである。これは超世界最大規模である。それを立地させるために、およそ五千ヘクタールの用地取得が必要であるとされている。
 (1) 政府は閣議で口頭了解するに当たり、この内容を点検審議のうえ、それを適正なりとし、また、それの実現可能性について関係省庁の合意があつたものであるかを明らかにされたい。
 (2) その閣議口頭了解の意義を明確にされたい。
 (3) この閣議口頭了解をもつて、転用許可基準第二章第一節第一の2に規定されている関係省の調整を了承したものとして取り扱うものであるか否かを明らかにされたい。
六 むつ小川原開発に関連して、政府関係機関と三井不動産社長江戸英雄君との開発用地の取得に係る事前打ち合わせについて
  大手不動産会社である三井不動産株式会社が、全額自社出資の内外不動産株式会社と称する覆面会社を創立し、開発予想地区である六ヶ所村において、昭和四十四年八月一日から翌四十五年九月三十日までの一年二か月の間に三百七十四万七千七百十五平方メートル(公簿による)の土地買占めを行つた。これには、農地法違反行為があつたため摘発された事実もある。この買占め事件について、昭和四十八年四月十九日、参議院物価対策特別委員会において、参考人として出席を求められた日本不動産協会理事長であり、かつ、三井不動産社長である江戸英雄君に対して、同委員の大橋和孝君、渡辺武君の両君が質問している。これに対して江戸英雄君は、答弁の中で「私は五年ほど前に、これはちやんと関係当局と打ち合わせをいたしまして適正な使用目的と適正な開発目的、それで、これは全面的に将来組織ができた場合には供出すると、こういう約束でやつたものでありまして、……」と述べている。
  この五年ほど前にということは、昭和四十三年に当たり、三井不動産が、土地買占めに現地に乗り込んだ時期でもある。また政府が、新全国総合開発計画を策定中で、それを公表する以前である。また、青森県がこの開発構想を発表するはるか以前でもあつた。そうした時点において、関係当局が三井不動産と打ち合わせをし、その上いかなる内容であるにせよ、約束を取り交わすなどは、希有の由々しい問題を内包しているものと疑わざるを得ない。
  政府関係当局、特に農林省、経済企画庁、通商産業省において、江戸英雄君が証言したような事実の有無を調査の上答弁されたい。
七 農地法上の脱法行為について
  むつ小川原開発地域においては、一見して知能的に研究しつくされたと思われる極めて巧妙かつ悪質な脱法行為が行われている。むつ小川原開発株式会社には、就職直前まで農地法上の許可権限を有していた高級官僚が、常務取締役として天下りしている。本来ならば、政府機関と地方公共団体等の出資によつて成立しているこのような法人に法律違反行為など発生すべき理由はあろうはずはないのである。しかるに、驚嘆に価する農地法上も例をみないような悪質な脱法行為が続出している。その一例を述べるならば、この開発区域に、開拓パイロット事業として、六億円余の公共投資をし、開田基盤整備をした発茶沢地区というのがある。むつ小川原開発会社は、その地区の道路、用排水を買収しようとしている。しかもこの地区は、いまだ成功検査も完了していない新規地区でもある。
  いつたい整備された農耕地数百ヘクタールの中の道路、水路だけを開発目的のために取得するというようなやり方は、どこにこんな先例をみることができようか。これに関し、受益者の間で賛否両論が対立して紛争が深刻になつている。こうした事態に対して、青森県の農林当局は、営農に差し支えさえなければ、売買は差し支えないというような指導をしている。
  農業政策は、国家の政策の中で最も重要なものの一つであることは論をまたない。その中において、土地改良法は主要な柱の一つであり、農地法またしかりである。法律の目的とすると
  ころは明白である。これはすべて国法として制定され、政府によつて指導され、あるいは企画、助成されているものである。
 (1) このような青森県の指導は、国の指導方針と一貫しており、社会通念の上から妥当なものとされてしかるべきか見解を求める。
 (2) 耕作地の道路、水路などだけを買占めることは、衣服を着ている人の帯だけを奪い取ることに等しく、やがてはその人をまる裸にする手段としか考えられない。こうしたことは、法律の精神に照らし合わせて信義と誠実に基づいた権利の行使ということが許されるであらうか、また、公序良俗に反逆するものでもないと断定することができるものであろうか、これに対する指導的見解を明らかにされたい。
 (3) この場合、道路、水路は法律上農地ではない。従つて、法は売買に制限を加えていない。ゆえに合法だと開発公社は指導している。これは馬車の通行を禁ずという制札に対し、牛車ならば通行差し支えなしとする論理と同じで、形と体裁の上では合法を装い、実質的には法を犯すものと考えられる。
     政府の指導方針は、これを脱法行為としないものであるとするならば、その理由を明らかにされたい。
八 農地法上の詐欺、不正行為について
  農地法第八十三条の二第四号は詐欺その他の不正手段により許可を受けたものの、その許可を取り消し得ることを確認的に明らかにしたものである。
 (1) 第五条の許可申請するに当たり、客観的にも明白な虚偽、虚構を計画の目的とし、許可権者を欺まんして得た許可は、法第八十三条の二第四号の詐欺行為に該当しないか。
 (2) その虚構を知りつつなされた許可処分は重大かつ明白な瑕疵を有するものというべきではないか。この二点について明快な回答を求める。

 右質問する。





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