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昭和五十一年五月十四日提出
質問第一六号

 障害者・児の福祉対策に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十一年五月十四日

提出者  中島武敏

          衆議院議長 前尾繁三郎 殿




障害者・児の福祉対策に関する質問主意書


 社会的に不利な条件をもつ障害者・児にとつて、社会生活条件の改善を始め、教育、仕事、リハビリテーションの保障など総合的で充実した対策の確立と実行は、切実な要求となつている。これは、人間らしい生活を営むための当然の権利であり、政府の責任で解決しなければならない問題である。
 しかし、政府、自民党の障害者・児対策は、「社会的不公正の是正」の宣伝にもかかわらず、重症障害者・児対策や雇用対策、施設整備の立ち遅れにみられるように、極めて貧困な状況にある。
 インフレと不況のもとで、障害者・児と家族の生活がさらに深刻さを増している今日、これらの問題の解決が、一層緊急を要することは言うまでもない。こうした立場から以下の諸点について、政府の責任ある回答を求めるものである。

一 養護学校を卒業した障害者・児は、学校生活の中で、必死になつて身につけたものを社会に生かし、役立てようと願つているが、親や担当教師の努力にもかかわらず卒業者の半数近くは進路が決まらないまま、在宅を余儀なくされている。
 東京都の場合、東京都障害児学校教職員組合の調査によると、卒業を間近に控えた五十一年二月末時点で、「進路未決定者」は、肢体不自由児養護学校で五八パーセント、精薄養護学校で二五パーセントにのぼり、卒業後もほぼこれに近い状況にあるということである。
 在宅を余儀なくされた障害者は、社会生活から「隔離」された状態を強いられ、両親などの看護する人たちには、言葉に尽せない苦労をもたらしている。
 こうした現状をなくするためには、卒業予定者の進路決定状況をきちんと把握し、卒業時までには全員の進路が決定するよう具体的な対策がとられなければならない。現地のそれぞれの養護学校、職業安定所、福祉事務所三者の連絡だけで問題が解決できないことは今までの経過がはつきりと示している。
 従つて、中央、地方の各レベルで養護学校卒業者に対する進路計画の策定、その執行状況の点検、アフターケア等について総合的、系統的に追求するための厚生省、労働省、文部省の三者の協議機関を設けて取り組むべきであると思うがどうか。
二 厚生省は昭和四十六年度を初年度とする「社会福祉施設緊急整備五ケ年計画」策定の際、「計画の完全実施が今後の最大の課題」であると位置付け、その重点目標の一つに「重度の心身障害者の収容施設を格段に整備すること」を掲げた。しかし、最終年度の五十年度末の達成状況は身障者更生援護施設、心身障害児(者)施設ともに五〇パーセントに満たない全く低いものである。厚生省は、このことを「施設主義から在宅主義への移行」などの変化によるものであると言つているが、「施設主義」と言われるほど施設が整備されていないことは「施設に入りたくても入れない」障害者の実態を見れば明白である。
 東京都の場合には、昭和五十年九月末時点で、重度身障者授産施設は定員二〇〇人に対し現員一九七人、身障者授産施設は定員三五〇人に対し現員三一六人、福祉工場は定員一五〇人に対し現員一五八人、都独自の福祉作業所は一、〇一五人に対し九五五人となつており、わずかの空きも受け入れ体制がないことによるもので、満員の状況である。
 こうした施設の絶対的な不足は、養護学校卒業予定者の「中途入所」を生みだしている。都立北養護学校の五十一年二月末時点で、進路決定者五名のうち三名が「中途入所」である。「卒業まで待つても入所できる可能性がないから、施設に空きができたり、新しい施設ができたときに、入所してしまう」わけで、入所時点からは学校の授業を受けないまま卒業することになる。このように施設整備の立ち遅れは、教育を受ける権利をも侵している。
 絶対的な施設不足を解消し、重度障害者が希望する施設に入れるように、必要な施設を作るための緊急の整備計画を閣議決定など責任あるものとして直ちに作るべきであると思うがどうか。
 また、その際、遠隔地にのみ施設を作るのではなく、「家族も気軽に通えて、負担にならない」「障害者・児が社会生活から隔離されない」ことなどを考慮し、都市近郊に小規模施設を大量に作るべきであり、そのために、政府として、建設助成、職員の確保、用地取得など財源を含む特別の措置を講ずるべきであると思うがどうか。
三 在宅重度障害者・児対策の一つとして、「在宅重度心身障害児(者)緊急保護事業」いわゆる「緊急一時保護預かり制度」が五十一年十月から実施されることになつたことは喜ばしいことである。この制度の内容については在宅重度障害者・児と家族の要求を十分に取り入れられる必要がある。
 (1) この制度の対象は「在宅の重度心身障害児(者)、重度精神薄弱児(者)、重度身体障害児」となつていて、「重度身体障害者」の場合は、対象外になつている。障害者が成人である場合、通常その保護者である親は老齢であり、病気にかかる率も多く、看護も大変であり、緊急一時保護を必要としている。「重度身体障害者」を持つ親から出されている緊急一時保護の対象にして欲しいとの要求についてどのように考えているか。政府の見解を伺いたい。
 (2) 保護の期間は「原則として七日以内」とされているが、これは期間が短く、実状に合わない。保護要件として「保護者の疾病、出産、事故等の事由」をあげているが、「疾病」の場合、障害者が成人であれば、保護者自身が老齢であり、七日程度で回復しないケースが多い。「出産」「事故」の場合も七日で大丈夫というものばかりでない。国に先駆けて東京都が実施してきた「緊急一時保護預かり制度」では「原則として一ケ月以内」としていることからも「原則として七日以内」が実状に合わないことははつきりしている。保護期間については、保護要件の実状に適した期間にすべきであると思うがどうか。
 (3) 保護施設は「事業の実施主体(都道府県、指定都市)より委託を受けた福祉施設」となつているが、重度障害者(児)の施設は前に述べたように収容能力は限界の状態にある。「緊急一時保護預かり制度」のためのベッドの確保ができず、救急医療の二の舞になる危険がある。
 制度の実施までに政府として、ベッド、職員の確保、運営助成、独立した一時保護所の建設などへの助成など財源を含む責任ある措置を講ずるべきであると思うがどうか。
四 現行の身障者の障害等級の認定基準は、昭和二十九年九月二日付の厚生省社会局長通知「身体障害者障害程度等級表について」で定められているが、これは手足の欠損など体患を中心にしているため、脳性マヒなど多肢障害が適正に認定されていない現状がある。昭和四十九年八月に認定基準を改正するよう要望したのにたいし、厚生省は「昭和四十九年中に脳性マヒなども判定できる基準を決める」と回答したにもかかわらず、いまだに決められていない。脳性マヒなど多肢障害が適正に判定できるようにするため障害程度等級の判定基準を生活にどの程度の支障があるかということを基本とするように改めるべきであると思うがどうか。

 右質問する。





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