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昭和五十一年五月十四日提出
質問第一七号

 高速五号線(II期)の建設に伴う環境対策に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十一年五月十四日

提出者  中島武敏

          衆議院議長 前尾繁三郎 殿




高速五号線(II期)の建設に伴う環境対策に関する質問主意書


 昭和五十二年春開通予定の高速五号線(II期)沿線は、すでに日照被害があり、開通後はさらに、大気汚染、騒音、振動などの被害が心配されており、万全の公害対策、被害補償が強く求められている。
 道路行政については、産業中心とかあるいは自動車優先の考え方ではなく、国土の均衡ある発展と地域住民の利便、環境を第一義的に考えた住民本位の立場で行われなければならない。このことは、今日、自明のこととなつている。
 ところが、高速五号線(II期)においては、環境対策の大前提である総合的、科学的環境影響評価がいまだに実施されておらず、日照被害に対する補償も被害者の要求にほど遠いなど、環境を第一義的に考えた道路作りが進められているとは言い難い。
 よつて、高速五号線(II期)沿線の環境を守る立場から、以下の諸点について政府の責任ある明確な回答を求めるものである。

一 公共事業に関する環境影響評価の必要性はすでに国が認めているところであり、道路もその例外ではない。昭和四十七年六月六日の閣議了解「各種公共事業に係る環境保全対策について」では、「公共事業について、当該公共事業実施主体に対し、あらかじめ、必要に応じ、その環境に及ぼす影響の内容及び程度、環境破壊の防止策、代替案の比較検討等を含む調査研究を行わしめ、その結果を徴し、所要の措置をとらしめる等の指導を行うものとする」として、国の行政機関の責務を明確にしている。
 高速五号線(II期)の都市計画の告示が閣議了解以前の昭和四十三年九月であるために、事前の本格的な環境影響評価が十分に行われなかつたと言つているが、環境破壊の恐れが現実化している今日、工事着工後であつても環境影響評価は実施すべきである。
 建設省は、高速五号線(II期)事業の「実施主体」である首都高速道路公団に対し、環境影響評価の実施を指導する責任があるが、具体的にどのような指導を行つてきたのか伺いたい。
二 首都高速道路公団の高速五号線(II期)に関する「将来交通量推定資料」によると、推定交通量は「すべての都市計画道路が完成したものとして推定している」となつており、「すべての都市計画道路」の完成を前提にしている。しかし、高速五号線(II期)が完成し、供用を予定している昭和五十二年春までに「すべての都市計画道路」が完成しないことは明白である。従つて、公団の交通量推定は前提が間違つている。
 この推定交通量を前提にした「将来交通騒音推定資料」も同じことが言える。
 大気汚染については、公団は現況調査、予測ともに行つていない。公団は「排気ガスは道路の責任でなく、車の責任である」として、排気ガスの予測については「都、区と相談のうえで検討していく」との態度をとつている。(昭和五十一年四月二十七日鈴木理事長の回答)
 振動については、公団は「供用開始して問題になれば調査する」(同前、鈴木理事長の回答)としている。
 以上にみられるように、高速五号線(II期)の環境影響評価は全く実施されていないに等しい状況である。
 高速五号線(II期)のほとんどは板橋区内になるが、板橋区は、環七、川越街道、中仙道という幹線道路が走り、「公害健康被害補償法」の指定地域に指定されるほど大気汚染のひどい地域である。騒音は、いまでも環境基準を超える地域が多い。特に高速五号線(II期)沿線は住宅密集地域であり、その被害が心配されている。振動についても、高速五号線(II期)が出井川の埋め立て地を利用していることから、問題になる前に十分な調査が必要とされている。従つて、
 (1) 公団は総合的、科学的環境影響評価を直ちに実施すべきであり、政府はそのために徹底した指導をすべきであると思うが、どうか。
 (2) また、いつまでに、どんな項目について、どのような方法で調査を実施するのか政府の見解を伺いたい。
 (3) 調査方針、調査結果については、沿線住民に公表し、納得のいく説明をすべきであると思うが、どうか。
三 高速五号線(II期)は、新大宮バイパスに接続する計画であるが、新大宮バイパスについては、道路構造、環境対策等について住民との話し合いの結果、現在、本格的工事が中止されている。
 住民の要求に沿つた新大宮バイパスの完成以前に、中台ランプを供用することは、ランプ周辺の住民に、排気ガス、騒音等の多大の交通公害をもたらすことは明らかである。また、公団はランプ付近の交通量の予測すら行つていない。
 中台ランプについては、その周辺が住宅街であることからも、特に環境影響評価の徹底を図り、万全の対策が確立したのちに供用すべきであると思うが、どうか。
四 高速五号線(II期)沿線には十校を超える小、中、高校があり、大気汚染、騒音、振動による児童、生徒への影響が心配されている。子供の健康を守るための特別の対策を講ずるべきであると思うが、どうか。また、どのような対策を考えているか、政府の見解を伺いたい。
五 環境影響評価の結果、また供用開始の結果、大気汚染、騒音が環境基準を超える場合、どのような対策を講ずるのか、政府の見解を伺いたい。
六 高速五号線(II期)による日照被害補償について、公団は、昭和五十一年二月二十三日の建設事務次官通達「公共施設の設置に起因する日陰により生ずる損害等に係る費用負担について」の基準を準用している。しかし、この基準は多くの問題点をもつており、被害者の要求にほど遠いものである。主なものだけでも次のような問題点がある。
 第一に、「対象地域」から、商業地域等を除外している。どこに住んでいようと受ける被害は同じである。台東区の場合、上野公園以外はほとんど商業地域であるが、そこは全くの対象外とされ、被害補償は受けられない。
 第二に、住宅以外の病院、保育園、商店、事業所などは補償の対象に指定していない。
 第三に、貸間、貸家収入で生計を営む人の場合、日陰のために借間、借家人が転居したあと、いままでより安い家賃で貸さなければならないことになつても補償されない。
 第四に、日陰による地価の減価分が補償されない。
 第五に、補償額が極めて低い。昭和四十九年冬に工事請負業者が現物支給した補償は、事実上公団の指示で実施されたと言われているが、これは金額にすると四人家族で七万円となる。建設省の基準はそれの四分の一以下である。
 このような基準では、受認の限度を超えたものに対する補償として全く不十分である。
 (1) 日照被害に対する沿線住民の要求は、土地の買い上げ、代替地の提供、反射鏡の設置、日照を阻害しない防音壁の設置など多種多様であり、今回の金銭による補償もその一つである。従つて、被害補償は、被害者の多種多様な要求に対応して行うべきであると思うが、どうか。
 (2) 金銭で補償する場合は、一括一度払いでなく、毎年査定して補償するようにすべきであると思うが、どうか。補償についての住民との結着がつくまでは、昭和四十九年冬の現物支給の補償を適用すべきであると思うが、どうか。
 (3) 用途地域の種類のいかんにかかわらず、住宅はすべて対象にすべきであると思うが、どうか。
 (4) 住宅以外の病院、保育園、商店、事業所などについても実害をこうむる場合は補償すべきであると思うが、どうか。
 (5) 日照被害による家賃の値下げ分については家主に補償すべきであると思うが、どうか。
 (6) 日照被害によつて地価が減価することは、昭和五十年十月十五日の自治省税務局固定資産税課長通達「都市計画施設の予定地に定められた宅地等の評価上の取扱いについて」でも認めているが、土地の売却の際には地価の減価分を補償すべきであると思うが、どうか。

 右質問する。





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