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昭和五十一年五月十四日提出
質問第二〇号

 丹後織物と競合する物品の韓国等からの輸入規制に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十一年五月十四日

提出者  寺前 巖

          衆議院議長 前尾繁三郎 殿




丹後織物と競合する物品の韓国等からの輸入規制に関する質問主意書


 京都の丹後は、国内生糸生産量の二八パーセントを消費する全国最大の絹織物産地である。この丹後で生産される“丹後ちりめん”は、生糸を原料とした織物のうち、科学技術的にも最高のものであり、絹が不滅のものであるとすれば、その価値は、美しいちりめんができる特性であるといつても決して過言ではない。
 ところが、この丹後は、今有史以来の重大な危機にひんしている。
 昭和四十七、四十八年度の二年にわたり、一千万反に達したちりめん生産高は、四十九年、業者の自主的な減反により、七四万反に激減、五十年度も、この傾向は変つていない。
 かてて加えて、国内におけるちりめんのシェアも、不況のあおりを受け、七〇パーセントから五八パーセントに落ち込んでいるのである。さらに韓国、東南アジアからの競合商品の輸入の激増は、丹後の危機をさらに助長しているのである。特に、韓国からの輸入量は、急激に増加している。
 政府は、一昨年八月、蚕糸事業団による生糸一元化措置をとつた。その結果、韓国等の輸出国は、「生糸がだめなら加工品で」と絹糸、絹織物の輸出に切り替えてきた。そのため、これまで急増の一途をたどつていた絹織物の輸入に、更に拍車をかけることとなつた。昨年の輸入量は、生糸が半減した代わりに、ねん糸は前年比約十一倍化、絹織物は二倍にも急増しているのである。
 国内の絹織物業者の生活を根底から揺るがすような、かかる事態が進行しているにもかかわらず、政府は、昨年九月韓国絹糸の事前許可制、同十一月羽二重の事前承認制、本年二月の絹糸、絹織物、絹紡糸の関税引上げと絹糸の輸入承認制をとつたのみで、何ら抜本策を講じようとしていない。
 しかも、本年四月七日から十三日に行われた、いわゆる日韓絹交渉で絹織物については、前年度並み輸入を許す措置をとつたのである。
 これでは、壊滅的打撃を受けている丹後の織物業者に対して、何ら解決策にならないのである。
 そこで私は、以上の国内外の動きをふまえ、次の事項について質問するので、明確な答弁を頂きたい。

一 昨年の十二月十七日の衆議院商工委員会において、通産省当局は、「紋織物(通関統計での丹後ちりめんにみあうといわれるもの)については輸入量の、内需又は生産に占める割合は、比較的低い、四・八パーセントである」と答弁されているが、最近の輸入統計では、それがどうなつているのか。また現在でも「比較的低い」水準であると認識されているのか。
二 韓国では、絹織物生産五ヶ年計画が進行しており、@日本の繊維産業に追いつき追い越せA東南アジアにおける繊維産業の中心になろうという標語を掲げ、繊維の輸出については、一九八一年までに七四年比約三倍、繊維機械の輸入目標は、一九八一年までに現在の四倍にしようとしていると聞くが、韓国における生産が圧倒的に日本に振り向けられることを勘案すると、今後も輸入急増は避けられないと思うがどうか。韓国における和装品の生産及び生産能力の実態を正確に調査し、報告せられたい。
三 韓国への旅行者をとうして和装品の携帯輸入がなされている。これらの輸入を厳格にチェックするため書類申告制にするなどの体制をとり、実態を把握する必要があると思うがどうか。
  また、今回の韓国との二国間数量取決めにより、韓国からいわゆる第三国を通じ輸入される恐れはないか、その場合、どのような措置をとるのか。
四 競合する商品の輸入実態を正確に知るため、通関統計の輸入品目を具体化すべきであると思うがどうか。
  (例えば、絞り、白生地という風に)
五 丹後織物業界が、不況期の自衛手段として行つている振興基金に対しては、課税客体から除外すべきであると思うがどうか。
六 最後に質問するが、いまや、韓国その他からの伝統的工芸品や、中小企業性製品などと同種の商品、直接競合する商品の無制限な輸入を水際で押さえるとともに、これら国内産業に重大な損害を与える商品の生産を目的とする海外投資等を制限するため、法的措置を講ずべきであると思うがどうか。

 右質問する。





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