質問本文情報
昭和五十一年十月一日提出質問第二号
石油パイプラインの安全性に関する質問主意書
右の質問主意書を提出する。
昭和五十一年十月一日
提出者 木原 実
衆議院議長 前尾繁三郎 殿
石油パイプラインの安全性に関する質問主意書
昭和五十一年九月九日付読売新聞は、新東京国際空港公団(以下空港公団という)の航空機給油施設、通称成田暫定パイプラインの保安施設に障害が発生し、空港公団が成田市に知らせずに掘削、修理、埋めもどしを行つたことを報じている。かねてより、我が国の石油パイプラインの安全性については、議論が沸騰しており、千葉市内では一万一九二名による訴訟が行われていることは周知のことである。
我が国の石油パイプライン技術は、社会的経験が浅く、劣悪な自然、社会条件のもとで、安全を第一に確保して行かねばならぬ立場にあることは言うまでもない。このためには、一空港公団の体面にとらわれることなく、いかなる障害発生に対してもその実態を公開し、経験を今後の教訓として生かさねばならないであろう。
従つて以下の質問をする次第である。
1 障害が発生した保安装置(以下当該装置という)の名称、設置目的、設置方法、施工者、機器の製造者を明らかにされたい。
2 当該装置は、危険物の規制に関する規則(以下単に規則という)のいずれに根拠を持つか。また、当該装置は、規則第二十八条の三十第一号にいう「その他の保安のための設備」に該当するか。
3 当該装置の保安管理の実績(点検事項、点検周期、点検者)を明らかにし、消防法第十四条の三の二に規定する点検記録のうち、当該装置に関する部分についても明らかにされたい。
4 当該装置の障害検出日時、検出経過、障害の内容、障害の原因を明らかにされたい。(当該装置が二以上あれば、それぞれについて明らかにされたい。)
5 当該装置に係る修理について、日時、修理内容、掘削範囲、施工者を明らかにされたい。
6 当該装置の障害は、技術上不可避な現象であるのか。回避可能であつたとすれば、設計、製造、施工、検査、管理のいずれが回避努力を怠つたのかを明らかにされたい。
7 当該装置の障害は、消防法第十一条の設置許可、完成検査、その他の条項のいずれでチェックされる仕組みになつているのか、根拠を添えて明らかにされたい。
8 暫定パイプラインの消防法第十一条に基づく完成検査申請、完成検査済証発行の年月日を明らかにされたい。
二 空港公団の隠密修理について
1 当該装置の修理に際し、空港公団が、消防法第十一条の許可者である成田市長に事前に届け出ていなかつたという報道は事実か。
2 事実とすれば、運輸大臣の所見を承わりたい。
3 完成検査終了後、危険物移送取扱所の掘削、埋めもどしは、許可者に無断でできるのか。できないとするならば、消防法上の根拠を示し、質問に係る空港公団の修理がこれに抵触しないとする根拠を示されたい。
三 空港公団は、昭和四十七年六月から四十八年七月にかけて、千葉市内において、通称本格パイプラインの埋設工事を行つた。その後、本格パイプラインは、昭和四十八年九月二十八日に告示された、石油パイプライン事業の事業用施設の技術上の基準の細目を定める告示(以下技術基準告示という)に抵触した。しかるに、空港公団は、前述のパイプライン工事差止請求事件(昭和五十年(ワ)第四五二号事件)(以下マンモス訴訟という)の答弁書(昭和五十年十月十四日付)において、水道ルート以外の部分については、検討中である旨を述べるのみで、既設部分を使わないとは決して言つていない。
である以上、本格パイプラインの保守管理の実態について、関係地域住民が重大な関心を持つのは当然であろう。
1 昭和四十八年七月十一日以降に行つた、千葉市内の本格パイプライン既設部分についての保守管理の実績を次の項目毎に点検日時、点検項目、結果を明らかにされたい。
(イ) 緊急遮断弁、圧力計、ガス検知器、テレコン、テレメーター
(ロ) 応力測定装置、沈下測定
(ハ) 電気防食ターミナル及び電位測定
(ニ) 内面保護用窒素ガス封入と交換
2 前項の既設部分において、昭和四十八年七月十一日以降に行われた他工事のすべてについて、工事の名称、開始日時、終了日時を明らかにし、空港公団による立合いの実態を明らかにされたい。
3 空港公団は、ルート沿いの必要箇所に標識板を設置する、と昭和四十七年のパイプライン工事中止仮処分命令申請事件(千葉地裁昭和四十七年(ヨ)第一四九号事件)の答弁書において答弁し、千葉県企業庁による行政資産使用許可の許可条件にも標識板の建植が義務付けられていた。
しかるに、この標識板は、その後四年間、ただの一個も建植されていない。言行の不一致、関係行政庁との協議不十分の両面から事情を説明されたい。
四 マンモス訴訟において、原告側の「既設部分について、いかなる保守作業を行つているか。」(昭和五十年十一月二十六日付求釈明の申立二の(六))との求釈明に対し、空港公団は、「ルート未確定の現段階においては、釈明の必要はない」(昭和五十年十一月二十六日付釈明書)との釈明を行つた。石油パイプライン事業法の精神に基づき、住民の理解と協力を得る努力をしなければならない空港公団が、技術的な事実を説明することすら拒むことは、全く理解に苦しむ。なぜなら、空港公団は、石油パイプライン事業法第十五条第四項に基づいて同条第一項の工事計画の認可申請の延期を二度も求めており、その理由として、地区住民の法に基づく行為の存在を、そして、それのみを述べているからである。
地区住民の法に基づく行為の根源は不安である。空港公団は延期理由の解消に努める立場にあり、回答は広い意味で地区住民の不安解消に役立つ。地区住民の質問は、空港公団の過去の技術行為の事実に関するものであるから、空港公団は、確実しかも容易に回答できるのであり、空港公団以外には誰も回答できない。空港公団は、一方において、地区住民が不安解消のために行つた質問に対する回答を留保して不安を継続させ、一方において、地区住民の法律に基づく行為の存在を理由として、工事計画の認可申請の延期を求めているのである。
1 空港公団の釈明留保に関し、空港公団を監督する立場にある運輸大臣の所見を承わりたい。
2 現段階はルート未確定とのことであるが、空港公団がいう、ルートの確定とは次のどの段階をいうのか。
(イ) 空港公団がルート案を関係住民に提示したとき。
(ロ) 石油パイプライン事業法第十五条の工事計画の認可を申請したとき。
(ハ) 前項(ロ)の認可を得たとき。
(ニ) 道路等の占使用許可を含めて、すべての許認可を得たとき。
(ホ) マンモス訴訟において、空港公団が名実ともに勝訴したとき。
右質問する。