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昭和五十二年二月十六日提出
質問第五号

 関西電力(株)美浜原子力発電所第一号炉燃料棒折損事故に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十二年二月十六日

提出者  石野久男

          衆議院議長 保利 茂 殿




関西電力(株)美浜原子力発電所第一号炉燃料棒折損事故に関する質問主意書


 首題の件に係る事故の解明並びに原子炉設置者の取扱いの実情を厳粛正確に解明することは原子力基本法並びに関係法規を遵守し、安全性を確保するために緊急を要すると考える。従つて、次の事項について質問する。

一 関西電力(株)が燃料棒破損という重大事故を隠ぺいして、法に基づく報告をせず、保安規定による記録も行わず、さらには、監督官庁である通産省に虚偽の報告を行い、国会を欺き、国民に対しては安全性を殊更に誇張する宣伝を行つている事実に対し、政府はどのような措置をとるか。
二 三年有半にわたつて、事故を隠ぺいしていたことが、我が国の原子力開発にどのような影響を与えているか政府の見解を示せ。
三 政府は、関西電力(株)が「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」第二十四条第一項第三号に係る十分な技術的能力ありと認めるか。
四 昭和四十八年の美浜一号炉の定期検査について
 (1) どのような作業予定で定期検査を行う予定であつたのか、そのタイム・スケジュールを明らかにして欲しい。
 (2) 予定スケジュールと実際に行つたものとの間に変更はなかつたか、変更があつたとすればどういう点についてか、変更の理由を示して欲しい。
 (3) 通産省は、どのように定検に立ち会う予定であつたか、その予定は変更されなかつたか、変更があつたとしたら、それはどういう理由でか。
五 関西電力が燃料棒破損を発見した経緯について
 (1) 関西電力は正確に何年何月何日何時何分にどのようにして燃料棒の破損を発見したのか、また通産省検査係官はそれに立ち会つたか。
 (2) 破損が発見されたとき、関西電力はどのような措置を講じたのか、そのとき通産省の係官は立ち会わなかつたのか。
 (3) 破損した燃料棒を含む集合体は炉心内のどの位置を占め、その集合体のどの位置の燃料棒にどのような形状、寸法の破損が起つていたのか。
 (4) 破損した集合体から欠落した被覆管の破片は、何片あり、どこに、どのような状態で発見されたのか、また、燃料ペレットについてはどのようであつたのか。
 (5) 被覆管の破片及びペレットの散逸したものは完全回収されたのか、回収、未回収の情況を詳細に説明せよ。とくに未回収のものについて明確にせよ。
 (6) 破損物体の回収作業について、その方法、作業人員及び作業時間等について詳しく説明して欲しい。
 (7) この作業中及びその前後の作業現場の空間線量を明らかにして欲しい。また第一次冷却水の放射能濃度並びに核種について説明されたい。
 (8) 事故発生時と考えられる一月頃から、発見され回収作業が行われた頃の現場作業員の被爆線量を明らかにされたい。
 (9) これらの経緯について、関西電力は定期検査報告書の中ではどのように報告しているか。
六 定検時の燃料棒検査について
 (1) この時の定検では、燃料棒についていかなる方法を用いてどのような検査が行われたのか、この検査に通産省の係官は立ち会つたのか。
 (2) C34集合体についても全く同じ検査が行われたのか、それに通産省係官が立ち会つたのか、また、燃料集合体の検査結果は報告されているのか。
 (3) 燃料棒についての検査結果報告を示し、各集合体ごとに詳しい報告をして欲しい。
七 同定検時における燃料交換作業について
 (1) 同定検時に燃料交換(第一サイクルから第二サイクルへの移行)はあらかじめ予定されていたのか。
 (2) 予定されていたとすれば、その取替えパターンと現実に行われた炉心の燃料装荷パターンとは同じものであつたのか、違つていたら、その理由を明らかにして欲しい。
 (3) とくに、交換された第三領域のC30、C33、C34の三集合体それぞれについて交換した理由を詳しく説明されたい。
 (4) 予定されていた燃料交換の作業計画はどうなつていたのか、実際の作業はどのように行われたか具体的に明らかにして欲しい。
八 通産省が燃料棒破損について知つた経緯について
 (1) 昨年十二月七日の発表によれば、通産省が『燃料棒折損の実態について初めて知つたのは十二月三日の立ち入り検査によつて』とされている。
     それ以前に通産省は美浜原発一号炉の燃料棒について、四十八年定検に関連して、すでに公表されている、第一領域の非加圧燃料棒の変形及び第三領域C33集合体のピンホール以外、何らの異常も知らなかつたのか、また異常の存在を疑わしめる資料はなかつたのか。
 (2) 私が昨年八月二十五日に衆議院科学技術振興特別委員会で最初に質問してから同年十二月三日まで、通産省は関西電力に対してどのような調査を行つたのか、具体的に日時を追つて説明されたい。
 (3) この間、関西電力は燃料棒破損の有無についてどのような説明をして来たのか。
 (4) 立ち入り検査まで三ケ月余を要した理由を示せ。
九 事故原因とその対策について
 (1) 事故の根本の原因は、バッフル板の隙間からの水流にあるとされているが、この欠陥について、四十八年の定検時に関西電力は何らかの報告を通産省に対して行わなかつたのか。
 (2) 四十八年定検後、運転再開に当たつてこの欠陥に対し関西電力はどのような対策を立てたのか、その措置について関西電力から通産省に対しいかなる報告をしているか。
 (3) 同種の原因による燃料棒事故はこれまでに、我が国の他の発電用原子炉において報告されているか。
 (4) 高浜二号炉の燃料棒事故はどうか。
 (5) 美浜一号炉のC33集合体の「ピンホール」の原因は何か、高浜も同じ原因によるものではないのか、詳しく示せ。
 (6) 関西電力は燃料棒事故について、今日までの間、独自の解明、検討を行つてきたのか、その事情と結果を示せ。またW・H社に報告し、検討をさせたのか。
 (7) W・H社の設計したPWR炉で諸外国も含めて同種の事故が報告されているか、いるとすればその事例を具体的に明らかにして欲しい。
     W・H社はこの事故に対しどのような評価をし、対策や指示を行つたか。
 (8) 通産省はW・H社に対しいかなる措置をとつたか。
十 運転時の放射能監視について
 (1) 被覆管に欠陥が生じ、冷却水中に放射能の放出がいつの時点で起つたと考えているのか。
 (2) 放出された放射能の量はどの程度と推定されるか、それは何らかの形で記録に残つているのか、残つているとすれば、その記録を示して欲しい。
 (3) 記録が残つていないとすれば大きな燃料棒破損が生じても、放射能測定等によつては気づかないまま運転が続けられることになる。それで安全が保てるか。
 (4) 炉水内の放射能濃度の記録はどの程度まで行つているのか、測定の時期、方法、核種分析の結果など具体的に示して欲しい。
 (5) とくに、131I以外の沃素の同位体の測定を行つていたか、行つていたとすればそのデーター、同位比(放射能比)を示して欲しい。
十一 定検時の放射能放出について
 (1) 気体及び液体廃棄物の放出についてどのような安全監視の体制がとられているのか。
 (2) 四十八年六月末から七月にかけて美浜原発放水口周辺のホンダワラ中の60Co、56Mnの濃度が高くなつている、理由は美浜原子力発電所からの排液によると考えられるがどうか。
 (3) 美浜原発からの放出によるとするならば、どのような核種をどの程度放出していたのか。
 (4) 中国の核実験直後に放出されたとすればフオール・アウトによる放射能と混同されやすくなると考えられるが、このような放出は安全監視上適当と思わぬがどうか。
十二 通産省の監理、監督について
 (1) 通産省は電気事業者等が事故を隠すことを防ぐためにどのような手段を講じているのか。
 (2) 四十八年定検報告について技術顧問会を開催したのか、開かれたとすれば、それはいつ、何について検討したのか。
 (3) この技術顧問会に提出された検討資料はどのようなものだつたのか、例示されたい。
 (4) 資料として一次冷却水放射能濃度の記録は出ていたか、出ていたとすれば、それに対する検討は行われたか、その結論を示されたい。
 (5) 美浜一号炉の炉内水放射能濃度は全般的に高い、その理由は何か、とくに四十八年時に上昇している、その理由をどう考えるか。
 (6) 四十八年二月の131Iのピークをどう考えるか。
 (7) 今回の事故に対し、政府は関電に対しどのような措置をしたか。
 (8) 通産省の監督業務に関する責任をどうとられたか。
十三 関電美浜一号炉の事故隠ぺいと法の規制力
 (1) 美浜一号炉の燃料捧事故隠しの事実は法の規制力に信頼をおくことが出来ないことを実証した。
     原子力平和利用の安全性を確保する観点から、
   (a) 政府の監理、監督業務について再検討を要すると考えられる。その方策があるか。
   (b) 法の規制が本件事件に行きとどかぬことを実証したとすれば法の規制について全般的に再検討の必要はないか、所見を承りたい。
   (c) 規制法第七十三条適用除外規定が、電気事業法によつて規制法の規制行為を安易なものとして薄めている。第七十三条除外規定を削除して、規制法の規制に戻すべきだと考える。政府の所見を承りたい。
 (2) 美浜原発一号炉の燃料棒破損事故が法の罰則から、三ケ年を経過しているということで時効扱いとなると政府は考えているのか、そして関西電力に対しては一片の勧告で済ます考えでいるのか所見を承りたい。
 (3) 原子力発電はなお未成熟な技術のもとにある。しかるに政府も関係業者もすでに完成した技術水準に達していると虚構の宣伝を行い、安全性を強調する住民を異端児扱いしている。今回の関西電力の事故発生の重大性及び法を無視し、報告をせず、報告をすれば虚偽の報告をし国会を欺く答弁を政府をして行わしめた不遜の態度を軽視看過せんか、原子力の安全性に対する政府並びに施設者に対する国民の信頼は全く地に落ちるであろう。政府の賢明で、厳粛な処置を希望してやまない。

 右質問する。





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