質問本文情報
昭和五十二年十一月二十五日提出質問第二一号
金大中氏事件に関する質問主意書
右の質問主意書を提出する。
昭和五十二年十一月二十五日
提出者 正森成二
衆議院議長 保利 茂 殿
金大中氏事件に関する質問主意書
金大中氏事件は、在日「韓国」大使館の金東雲一等書記官の指紋が拉致現場から検出されるなど、「韓国の公権力」によるわが国主権の侵害事件であることが明白になりつつあつたにもかかわらず、その後二回にわたる「政治決着」等を経て、四年以上も経過した今日に至るも、金大中氏の原状回復はおろか、捜査も遅々として進展せず、いまだに真相は解明されていない。
私は、さきの予算委員会等で本事件について政府の見解をただしたが、政府の答弁は、真相解明に消極的で質問に正面から答えないなど、きわめて不十分なものがあつた。
この際、いくつかの点にわたつて、改めて政府の見解を求めるものである。
言うまでもなく、刑事訴訟法によれば、被告人の任意の供述内容を内容とする第三者の供述は証拠能力を有するのであり、従つて金在権の供述を内容とする金炯旭氏の供述も当然証拠能力を有する性格のものである。この点については、法務省の伊藤刑事局長が、私の質問に答えて既に認めているところである。
さらに、金炯旭氏の証言には、「韓国」中央情報部と日本の警察との問の相互情報交換秘密協定に金炯旭氏自身がサインしたことなど、同氏の直接体験に基づく事実が含まれている。
@ 捜査の進展と事件の解明のため、金炯旭氏の同意を得て、わが国内あるいはその他適当な場所において、同氏から事情を聴取し、供述書を作成することは可能であると考えるがどうか。
A また、そのために、外交ルートを通じて、あるいは捜査官を米国に派遣して金炯旭氏に接触し、その意向を確認する必要があると考えるがどうか。
二 政府はこれまで、金炯旭氏の証言の信憑性、証拠能力にことさらに疑義をさしはさみ、同氏からの事情聴取を回避するとともに、金在権元駐日公使から任意に事情聴取するため接触中である旨の答弁を繰り返してきた。
@ アメリカ国務省を通じて、金在権に接触したところ、アメリカ以外でなら事情聴取に応じてもよいとの回答を得たが、どこでいつごろ応じるかについてはなお回答がなく、接触中であるとのことであるが、その後、金在権からの回答はあつたのか。
A ※(注)戸山法務大臣及び法務省伊藤刑事局長は、私の質問に答えて、任意の事情聴取については、相互主義のかねあいをどうするか外務省とよく相談して決めるなどの手順を踏まなければならぬ旨答弁しているが、現在この「手順」はどの段階まできているか。
B 政府は、六月の金炯旭証言直後から、「金炯旭証言の情報源である金在権から事情を聞く」との態度を表明しているが、その実現の見通しは今に至るもついていないと見受けられる。
この際、任意の聴取ではなく、嘱託尋問による証言を求める時期に来ていると考えるがどうか。
C 法務省の伊藤刑事局長は、私の質問に答えて、米国法典第二十八編第千七百八十二条a項の規定によれば、一定の手続をとる場合には米国の裁判所に喚問して宣誓のうえ証言させることができると認めたうえで、金在権に対してその手続をとるには、わが国の裁判所が証人尋問の必要性を認めるに足る疎明資料がどれほどあるかについて、警察当局とよく相談して検討しなければならぬと答弁している。
政府はその点について検討したか。結論とその理由、若しくは検討の進行状況を明らかにされたい。
D 金在権の供述を内容とする金炯旭氏の証言は前記伊藤知事局長答弁にいう疎明資料の一つになりうると思うがどうか。
右質問する。