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昭和五十三年五月十一日提出質問第三五号
生糸の一元化輸入制度により絹織物業者に与えている損害の賠償に関する質問主意書
右の質問主意書を提出する。
昭和五十三年五月十一日
提出者 加地 和
衆議院議長 保利 茂 殿
生糸の一元化輸入制度により絹織物業者に与えている損害の賠償に関する質問主意書
生糸の一元化輸入制度によつて、日本の絹織物業者は、国際相場の安い生糸を自由に買うことができず、高い価格で日本蚕糸事業団から買わざるを得ない。(例、昭和五十三年二月に中国糸リヨン相場が一キログラム当たり六千五百円の時に、日本の絹織物業者は、日本蚕糸事業団から一キログラム当たり一万四千二百円で買わねばならなかつた。昭和五十三年五月十日には日本で一キログラム当たり一万五千十八円にもなつている。)
そのため、日本の絹織物業者が製造する絹織物製品価格は、高い価格で買わされた生糸を使うため、EC諸国の絹織物業者が安い価格で買つた生糸を使つて作つた絹織物製品価格よりも高くならざるを得ず、日本の絹織物製品は、国際市場においても日本国内においてもEC諸国の絹織物
製品との販売競争に負けていかざるを得ない。(例えば、日本とEC諸国との絹ネクタイ一本当たりの生地生産費を比較してみると、生糸を一キログラム当たり一万四千五百円で日本蚕糸事業団から買わされて日本の絹織物業者が作ると千百二十二円、一キログラム当たり六千五百円のリヨン相場の生糸でEC諸国が作ると七百四円であり、日本へ輸出するときの関税諸掛を合計しても八百十円である。日本国内でも一本千百二十二円の日本製ネクタイよりも、一本八百十円のEC諸国製ネクタイの方が良く売れる。)
そこで、次の事項について政府の見解を求める。
二 日本蚕糸事業団が、日本の絹織物業者に売り付けている価格と国際相場との差額分は、政府の生糸一元化輸入制度という不法行為によつて日本の絹織物業者に損害を与えたものと言うべく、政府は差額分について損害賠償義務があると思うがいかがか。
三 前項において、不法行為としての要件である違法性については、日本の絹織物業者を不当に差別をしている憲法第十四条違反、又は繭糸価格安定法第十二条ノ十三ノ九の「蚕糸業及び絹業の健全な発展を図る」という条文に反し、自民党の農村議員の数の圧力によつて蚕糸業の発展にのみ偏した運用を行つている点に求めることができると思うがいかがか。
四 政府は、生糸の一元化輸入制度を直ちに撤廃する考えはないか。
五 政府は、蚕糸生産者を救済するためには、一般財源から財政援助をするという方法を基本的に考えるべきであり、日本の絹織物業者を犠牲にして日本の蚕糸生産者を保護する大義名分なり、合憲性なり、合法性はどこにあるのか。
右質問する。