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昭和五十三年六月十六日提出
質問第六四号

 欠陥車野放し行政と今後の自動車保安行政のあり方等に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十三年六月十六日

提出者  柴田睦夫

          衆議院議長 保利 茂 殿




欠陥車野放し行政と今後の自動車保安行政のあり方等に関する質問主意書


 周知のとおり、世界の自動車先進諸国では、省資源、省エネルギー、消費者保護の立場から、長寿命車開発に、国を挙げメーカーを挙げて取り組んでいる。保安面では、例えば米国などでは、交通安全車両法で、欠陥容疑車リストの公開、欠陥車通知・回収の義務付けと違反企業に対する刑事罰、交通安全局の欠陥情報の提出強制権、市民による違反メーカーの告発権などを制度化し、厳しい規制を行つている。
 ところが我が国の自動車保安行政は、欠陥車の回収や欠陥事故が続発し、ひんぱんなモデル・チェンジが繰り返されていることでも明らかなように、世界の自動車先進諸国と比べ、著しい立遅れを来しており、政府の行政怠慢と国会軽視、業界べつたりの行政姿勢は、今日なお改善の兆しさえない。
 そこで以下、自動車保安行政の現状と今後のあり方に関して、政府の具体的な見解を伺うものである。

一 欠陥車問題が続発している背景と原因
  我が党は、これまで一貫して欠陥車問題を取り上げ、政府の自動車保安行政の怠慢を追及してきた。消費者団体や多くの国民も、政府の業界べつたりの自動車行政を指弾し、「欠陥車の一掃」を繰り返し要求してきた。どうして今日なお、欠陥車問題が続発しているのか、その背景、原因等についての政府の見解を伺いたい。
二 長寿命車開発構想とモデル・チェンジ
 1 私は、本年一月五日の質問主意書等で、長寿命車開発のための計画と方針を明らかにするよう要望したが、政府部内で長寿命車構想策定のための具体的な研究・検討に着手したかどうか疑わしい。そこで伺いたい。
  @ 諸外国の長寿命車構想とその開発にむけての取組みについて、どのような体制で、どのような研究を行つているか。主管省庁はどこか。いつごろまでに研究結果が出せるのか。
  A 我が国における長寿命車に関する方針について、どのような体制で、どのような研究を行つているか。主管省庁はどこか。いつごろまでに具体的な方針を出すのか。
 2 モデル・チェンジに要する経費は、一車種二百億円以上といわれている。我が国では、市場拡大のため、各メーカーともひんぱんにモデル・チェンジを繰り返している。そのため、安全対策に十分手が回らず欠陥車が多発している。
  @ モデル・チェンジについて政府は、「安全性の向上、公害対策技術上の向上、燃費の改善を伴わないものについては自粛するよう指導する」といつているが、欠陥モデル・チェンジ車が続発している。一体、どのような指導をしているのか、その内容を明らかにされたい。
  A 政府はモデル・チェンジ自粛指導の対象を、「安全性の向上、公害対策技術上の向上、燃費の改善の伴わないもの」に限定しているが、省資源、省エネルギー、消費者保護の観点からも規制する必要があると考えるがどうか。
  B 各メーカーのモデル・チェンジ計画は、消費者保護の立場から政府が事前に公表すべきであるが、政府は、「各企業のモデル・チェンジ計画を政府が公表することは適当でない」などといつて、ひんぱんなモデル・チェンジを野放しにしている。何故「適当でない」のか、その理由を明らかにされたい。
  C 「政府が公表することは適当でない」というのならば、行政指導で各企業が自主的に公表するようにさせるべきであると考えるがどうか。
  D 「モデル・チェンジ自粛について」の通産省機械情報局長通達は、消費者保護という点では死文化している。各企業の自主的な事前公表制度の確立を含む新しい規制通達を出すべきであると考えるがどうか。
  E 政府は、モデル・チェンジ車の宣伝について「過剰にわたることを避けるよう指導する」といつているが、実際には、各企業とも自粛するどころか、ますますエスカレートしている。
   イ 政府として、どのような指導をしているのか、その内容を明らかにされたい。
   ロ 最近三年間におけるモデル・チェンジ車の宣伝費用を各車名ごとに調査し、公表すべきであると考えるがどうか。
  F モデル・チェンジ車の生産について政府は、「型式承認を得て生産を開始することになつている」といつているが、実際には、モデル・チェンジ車のほとんどすべてが型式承認前に生産が開始され、運輸省の型式指定審査は全く形骸化している。
   イ 政府として、型式承認前のモデル・チェンジ車の生産を厳重に禁止するよう指導すべきであると考えるがどうか。
   ロ 本年六月生産開始予定であつたトヨタ30B型大衆車の生産開始が一ヵ月(業界関係者からの情報)から三ヵ月(新聞報道)延期される、とのことであるが、トヨタから、30B型車のモデル・チェンジの事前連絡及び型式承認申請が出たのはいつか。生産開始を七月に延期した理由は何か。型式承認に際し、どのような設計変更等を指示したかを明らかにされたい。
  G 本年七月以降、トヨタのマークII(MC・生産開始予定=本年七月)、コロナ(FMC・同=本年八月)、センチュリー(MC・同=本年十二月)、日産のローレル(MC・同=本年九月)、シルビア(FMC・同=本年十一月)、チェリー・ハッチバック(新型車・同=本年九月)、ブルーバード(MC・同=本年七月、FMC・同=来年十一月)、グロリア、セドリック(FMC・同=来年一月)などのモデル・チェンジが予定されているが、これらの各車種について、万全の安全・公害対策が講じられているかどうかを調査し、消費者保護のため結果を公表すべきだと思うがどうか。
三 各メーカーの各車種の構造・品質上の欠陥
 1 窓枠の錆つき、穴あき欠陥
   昭和四十六年以降生産車で、二年ないし一万粁走行程度の接着ウインド方式採用車のウインドまわりに、一種の電食作用による錆つき、穴あき欠陥が多発し、保安基準上問題のあるものも続発している。各メーカーでは、早くから構造・品質上の欠陥であることに気づき一連の暫定対策(合成樹脂のクリップやファスナー・モールスペーサーの採用、鉄板の増厚、塗装技術の改良、一体型樹脂クリップの採用)を実施している。「六一〇錆対策」(日産)のような集中的なクレーム処理も行つている。政府も、これらの対策が実施されていることを知つている。
  @ 本件欠陥が、構造・品質上の欠陥であることは、今や明らかである。あるメーカー首脳も「うちでも以前多発したが、欧米なみの対策をしたあと急減した。この欠陥は構造上・品質上の欠陥である」と明言している。政府としては、直ちに立入調査権を行使し、クレーム処理対策会議等で配布、検討された部内資料やトヨタについてはクレーム・レポート、品質変動情報、累積故障率表、技術連絡書、クレーム処理基準等の対策指示文書などの提出を求め(又は押収し)、欠陥の実態と原因を速やかに究明すべきであると考えるがどうか。
  A 世界の自動車先進諸国では、この種の欠陥の再発防止のため、防錆対策に巨費を投じて研究、開発に力を入れている。トロント(カナダ)の集団訴訟で百二十五億円の錆補償を行つたフォード社は、二年間に一億ドルの巨費をかけて新式の電着塗装システムを開発し、本年一月から生産を開始している。GMも欧州のポルシェやボルボなどでもすでに商品化している。我が国でも、こうした方向でメーカーを指導すべきであると考えるがどうか。
  B メーカーが講じている現在の暫定対策では、問題解決にならない。
   イ 現在の暫定対策では、金属クリップ採用車に樹脂クリップが使えないため対策後すぐ再発する。再発防止のため手入れをよくするとかえつて錆つきが早くなる。樹脂クリップ採用の対策車でも一年から二年でほとんどが再発する、などのクレームが続発し、メーカー関係者までが「もうお手上げだ」といつている。政府は何故、すぐ再発するような対策を認めているのか。何故、抜本的な対策を講じさせないのか、その理由を明らかにされたい。
   ロ 一体型の樹脂クリップの採用を実施しているメーカーもあるが、欧米なみの抜本的な防錆対策にまだ本格的に着手しようとはしていない。各メーカーが講じている対策及び今後講じようとしている対策の最新のものを各車名ごとに調査し、公表すべきであると考えるがどうか。
  C 私のところに来た本件欠陥に係る苦情の約半分は無償修理となつているが、それ以外は、メーカーやディーラーから「本社から無償修理せよとは指示されていない」(トヨタ関係)、「無償修理をしていたら、会社は三日ともたない」(日産関係)などといわれ、修理代を要求されている。
   イ 本件欠陥をリコールした場合どれ位の欠陥補償(各メーカーとも試算している)になるのか、対象台数と補償金額を調査し、明らかにされたい。
   ロ 運輸省が本件欠陥をリコールさせないため、多くのユーザーが、ディーラー等から不法不当な負担を要求されている。こうした事態を一掃するため、本件欠陥は、直ちにリコールさせるべきであると考えるがどうか。
 2 接着ウインド方式採用車のウインド剥離欠陥    接着ウインド方式には接着剤が塗膜と一緒に剥離してガラスがはずれる、というクレームが、昭和四十六年から五十年にかけて生産されたブルーバード610(約七十七万台)のフロントガラス、トヨタのRS60その他の車種のリヤウインドに多発している。本件欠陥は、追突時に車外に放り出されて死亡事故にもつながりかねない、保安基準上極めて問題のある欠陥である。メーカーは、早くから欠陥に気づき、接着剤を替えるなどの対策を実施している。
  @ 本件欠陥につき、各メーカーが講じている対策及び過去の補償内容と補償実績等を各車名ごとに調査し、明らかにされたい。
  A 政府として、本件欠陥につき、立入検査を実施し、欠陥の実態と原因を明らかにし、リコールその他の必要な措置を講ずべきであると考えるがどうか。
 3 冷却系統の錆つき、穴あき欠陥
   ラジエターの発錆による穴あきは主として冬期における凍結防止剤等による影響であるが、トヨタのコロナマークII、カローラ、日産のブルーバード、チェリーなどの保証期間経過直後から二年程度のものに多発している。原因は、メーカーがコストを下げるために肉厚を薄くしたことにある。これと同じクレームは、数年前北米輸出のトヨタ車(全乗用車)に発生し、大騒ぎになつたものであるが、我が国では今日なお随所で問題になつている。本件欠陥が構造・品質上の欠陥であることが明白になつているにもかかわらず、運輸省がリコールさせないため、修理代(約一万六千円)は、ほとんどすべてがユーザー負担となつている。
  @ 本件欠陥について政府は、「発錆の実態と原因を調査検討する」といつているが、これまでに行つた調査、検討の結果と今後の調査、検討に関する計画と方針を具体的に明らかにされたい。
  A 本件欠陥に関して政府が講じた措置の概要と今後講ずる措置(再発防止、ユーザーへの補償、リコール等)についての計画と方針を明らかにされたい。
 4 排ガス規制対策車の品質欠陥
  @ トヨタのスプリンター、マークII、カローラ、日産のスカイライン、ブルーバード、プレジデント、五十一年対策車セドリック、同サニー、同フェアーレディZ、同シルビアなどの排ガス規制対策車に構造・品質上の欠陥が多発している(エンスト、エンジン回転のムラ、アフター・バーニング、ノッキング、加速がきかない、力がないなど)。
   イ 政府は、これらの欠陥について「調査検討を行い、その結果必要がある場合は速やかに所要の措置を講ずる」といつているが、これらの各車種についてどのような調査検討を行い、その結果どのような措置を講じたのか、について具体的に各車名ごとに明らかにされたい。
   ロ 本件欠陥について、直ちにメーカー等への立入検査を実施し、クレーム処理対策会議等で配布された部内資料やトヨタについてはクレーム・レポート、故障ファイル、品質変動情報、累積故障率表、技術連絡書等の提出を求め(又は押収し)、欠陥の実態と原因を明らかにし、速やかにリコール等の措置を講ずるようメーカーを指導すべきであると考えるがどうか。
  A トヨタのマークII、コロナ、セリカ、カリーナの18RIUと16RIU(約六十万台)に、補助加速ポンプ装置のダイヤフラムの亀裂及びプラグのくすぶりにより、排ガス規制違反、触媒装置の過熱熔断、床下からの発煙などのトラブルが多発している。メーカーは、早くから欠陥に気づき、すでに二度にわたつて対策を実施している。政府がリコールさせないため欠陥部品を装着したままになつているものが相当数にのぼり、危険極まりない状態である。
   イ 本件欠陥については、直ちに立入調査権を行使し、クレーム・レポート、技術連絡書、累積故障率表等の提出を求め(又は押収し)、欠陥の実態と原因を明らかにし、速やかにリコールするよう指導すべきであると考えるがどうか。
   ロ 本件欠陥は重大事故にもつながりかねない重大な欠陥であるので、国の交通安全公害研究所等で初期ダイヤフラム亀裂発生部品装着車等の触媒マフラーの過熱及び熔損による火災発生の再現テストを行い、その結果を公表すべきであると考えるがどうか。
   ハ 本件欠陥により熔損したマフラーは爆発の危険がある。現に、焼却炉で爆発した事例が多数発生している。運輸省はこうした事情を察知し、熔損したマフラーをメーカーの責任で回収するよう指示しているが、事実関係を明らかにされたい。指示した事実がない、というのならば、熔損又は交換した旧触媒マフラーの危険性をPRするようメーカーを指導すべきであると考えるがどうか。
  B トヨタのタウンエース系排気規制対策車(約五万台)の欠陥
    12Tエンジンのパーコレーション現象発生によるエンスト、始動不能車が続発し追突事故を誘発しやすい。これは、メーカーの開発時の実験不足による初歩的な設計ミスが原因であることはメーカー関係者からの情報等で明らかである。
   イ 本件欠陥につき、直ちに立入検査を実施し、必要な関係資料の提出を求め(又は押収し)、欠陥の実態と原因を明らかにし、リコール等必要な措置を講ずるよう指導すべきであると考えるがどうか。
   ロ 本件欠陥は、運輸省の型式承認時のテストが現状に即せず、形式的になつていることにも大きな原因がある。政府として、ひんぱんなモデル・チェンジを厳しく規制し、審査件数を大幅に減らして実質的な審査が行えるようにするとともに、審査技術水準の向上を図るべきであると考えるがどうか。
  C 日産EGI仕様車の電子制御系統の欠陥
    日産のブルーバード、スカイライン、ローレルなど、主としてL20KエンジンのEGI仕様車(約三十万台)の電子制御系統の欠陥(レジスターのショート)によるエンスト、始動不能等のトラブルや人身事故も発生している。メーカーによる原因究明と対策が遅れているため、ディーラー等では、バッテリー、ダイナモ、コントロールユニット等の交換を行うなどの試行錯誤を何回も繰り返しており、ユーザーに過重な負担を強いている。メーカーやディーラーは、欠陥の発覚をおそれ、ユーザーが要求をしても修理内容を説明せず再発補償もしていない。本件欠陥について、速やかに立入検査を行い、必要な関係資料の提出を求め(又は押収し)、欠陥の実態と原因を明らかにして、リコール等の必要な措置を講じさせるべきであると考えるがどうか。
  D 日産セドリック230型の電磁ポンプの欠陥
    日産セドリック230型(約十万台)に電磁ポンプのフィルターの目づまり及び配線部のアース不良等のためエンストが続発している。パワーステアリング装着車は、このためカーブ走行時に急にハンドルが重くなり転落の危険にあつたユーザーが多い。本件欠陥については、メーカーは昭和四十九年頃に対策を完了しているが、政府がリコールさせないため未対策部品を装着したまま走行しているものや有料で対策部品と交換させられているユーザーが少なくない。
   イ 本件欠陥が、保安基準違反の構造・品質上の欠陥が明らかになつているにもかかわらず何故リコールさせないのか、その理由を明らかにされたい。
   ロ 本件欠陥については、交通安全対策上も、消費者保護の立場からも直ちにリコールさせるべきであると考えるがどうか。
  E 日産サニー(ツイン・キャブ)五十一年排気対策車の欠陥
    日産サニー(ツイン・キャブ)五十一年排気対策車(約三万台)に、燃料系のパーコレーション現象発生によるエンストが多発している。メーカー内部では、初歩的な設計欠陥であることを認めている。メーカーの対策が不備なため、ディーラーは、燃料パイプに石綿を巻き付けるというような拙劣な対策しかやつていない。そのため対策後もクレームが続発している。政府として、直ちに立入検査を実施し、必要な関係資料の提出を求め(又は押収し)、欠陥の実態と原因を明らかにして、リコール等の必要な措置を講じさせるべきであると考えるがどうか。
 5 自動変速機の品質欠陥
  @ トヨタ車等の自動変速機仕様車に欠陥が多発している。入手したメーカーの部内資料(技術連絡書、設計変更文書等)によれば、前進不能、後進不能等の欠陥と諸対策が明瞭であり、保安基準違反も明らかになつている。
   イ 本件欠陥について政府は、「調査検討する」といつていたが、これまでにどのような調査検討をしたのかを明らかにされたい。
   ロ 本件欠陥は、保安基準違反の構造・品質・設計上の欠陥であることは明白であるので、直ちにリコールさせるべきである。直ちにリコールさせることができない、というのであれば、直ちに立入検査を行い、部内のクレーム処理対策会議で配布、検討された関係書類、クレーム・レポート、累積故障率表、技術連絡書、対策のための設計変更書等の関係書類の提出を求め(又は押収し)、欠陥の実態と原因を明らかにし、その結果を公表すべきであると考えるがどうか。
  A 自動変速機装着のトヨタのコロナマークII(約三十万台)に、シフト・レバーに取り付けられたスイッチの絶縁不良のため火災発生のおそれがある。米国交通安全局の情報によると、本件欠陥は、米国で昨年六月にリコールされている。運輸省は、この事実及びメーカーが国内販売車について秘かに対策を講じていることを知つていながらリコールもさせないでそのまま野放しにしている。本件欠陥については、直ちにリコールさせるべきであると考えるがどうか。
 6 トヨタ関係車種のその他の欠陥
  @ カリーナの昭和四十七年頃生産車に、ブレーキタンデムマスターシリンダー内部の腐食により、リザーバータンクのオイルがフロントリザーバータンクに押し出され、ブレーキが動かないというクレームが多発している。日産スカイラインPC10四十七年式にも同じ現象が多発している。
   イ 運輸省として何故リコールさせなかつたのか、その理由を明らかにされたい。
   ロ 本件欠陥についても立入検査を行い、必要な関係資料を提出させ、欠陥の実態と原因を明らかにし、リコール等の措置を講じさせるべきであると考えるがどうか。
  A 三点式シートベルトの欠陥
    センチュリー、クラウンを除き、昭和五十一年までの間に生産されたトヨタ車の二点式、三点式シートベルトに、使用中ベルトがゆるんだり、肩ベルトの取付金具が破損し、使用不能になるなどのクレームが多発している。米国交通安全局の情報によると、トヨタはカローラの三点式ベルトについて本件欠陥が構造・品質上の欠陥であることを認め、原価低減策が原因である、と報告している。他のメーカーの車種でも、同じ部品を使つているものは多発のおそれがある。トヨタは、苦情を申し出たユーザーだけ無償交換しているが、政府がリコールさせないため、欠陥であることを知らないユーザーは有償交換となつている。本件欠陥について運輸省は、「試験したうえで必要な措置を講ずる」といつている。
   イ 運輸省として、いつまでに試験を行い、いつまでに必要な措置を講ずるのか、その時期を明示されたい。
   ロ 本件欠陥については、速やかにリコールさせるべきであると考えるがどうか。
   ハ 去る五月に、米国の交通安全局長らが来日し、政府及び各メーカー等に対し、エアバック又はオートマティック・シートベルトの採用を要請したが、政府は、「米国と日本では車の使用条件がちがう」とか「事故率が低い」などといつて消極的な姿勢に終始したとのことである。人命にはかえられない問題であるので、速やかに採用する方向で検討すべきであると考えるがどうか。
 7 日産関係車種のその他の欠陥
  @ 日産ディーゼルCW40HD等のプロペラシャフトの欠陥
    入手した部内資料によると、日産ディーゼルCW40HD型等のトラックで推進軸が脱落するというクレームが多発している。メーカーはディーラーに対し、対策部品と交換するよう指示している。本件欠陥は重大事故にもつながりかねない危険なもので、事故寸前になつたユーザーが相当数にのぼる。メーカーは、構造・品質上の欠陥であるにもかかわらず、政府がリコールさせないため、有償で対策している。
   イ 入手した情報によると、運輸省は、プロペラシャフトが脱落しても落下しないようU字型プロテクターの取付けを非公式に指示している。事実関係を明らかにされたい。
   ロ 本件欠陥につき、メーカーから構造変更届やプロペラシャフトの強度計算報告書が提出された事実があるかどうか。
   ハ 本件欠陥について、政府は、リコール指導はもとより立入検査さえ行つていないようであるが、その理由を明らかにされたい。
   ニ 本件欠陥については、直ちに必要な関係資料の提出を求め(又は押収し)、欠陥の実態と原因を究明し、速やかにリコールさせるべきであると考えるがどうか。
  A 三菱自工が先にリコールしたファンカップリング欠陥と同種の欠陥が、日産ディーゼルの大型トラックでも多発している。
   イ 本件欠陥につき、メーカーから構造変更届があつたかどうか。
   ロ 本件欠陥についても、速やかにリコール等の措置を講じさせるべきであると考えるがどうか。
 8 三菱関係車種の欠陥
  @ バングラディシュ援助車の欠陥問題
    バングラディシュ援助として無償援助された三菱自工の中型バス(後部搭載の直列六気筒エンジン6DS7型)二百四十九台のうち、半数以上の百三十六台がエンジン欠陥で修理不能となつて各地の車庫に放置されている。入手している部内資料によると、6DS7型エンジンと同系統の直列六気筒エンジンに、昭和四十五年頃国内でも多発している。その当時の運輸省自動車局の整備課と車両課の担当官がメーカー関係者らと談合のうえ、リコールさせないでウヤムヤにしている(対策は講じさせている)。今回のバングラディシュ援助車のエンジン欠陥がこれと同系統の欠陥(直列六気筒エンジンで長いクランクシャフトを使用しているため、小メタルが焼けつき、コンロットが折損し、シリンダーブロックを破損させたり、親メタルが焼けついたりする)であることは、今日までの調査でほぼ明らかになつている。政府が、メーカー等へ定期的に立入検査を実施し、クレーム・レポートや累積故障率表、メーカーが講じた対策内容、三菱通報等の対策指示文書を提出させて調査解析しておれば当然発見できたはずである。
   イ 本件欠陥が、構造・品質上の欠陥であることはすでに昭和四十五、六年頃から明らかになつていたにもかかわらず何故リコールさせなかつたのか、その理由を明らかにされたい。
   ロ バングラディシュにおける今回の事件は、政府の自動車保安行政の怠慢によるものであり、怠慢行政による国家財政のムダ使いであるといわざるをえない。この事件は、我が国の名誉にもかかわる重大問題であるので、直ちに、政府関係者と専門家、技術者による調査団を編成して現地へ派遣し、原因を徹底究明してメーカーに必要な措置を講じさせるべきであると考えるがどうか。
   ハ バングラディシュ援助車と同種の直列六気筒の長いクランクシャフト仕様の日産UD、日野、いすず車などにも同種のクレームが多発したが、メーカーは、「使用条件が悪い」とか「オイル管理が悪い」などといつて有償交換していた事実がある。入手した情報・資料等によれば、運輸省は、こうした事実を早くから知つていたことが明らかになつている。これらの欠陥については、速やかにリコール等の措置を講じさせるべきであると考えるがどうか。
  A T951K型や新型大型トラックのトランスミッションのリア・オイル・シールの不良のため、オイルがハンドブレーキドラムに流入し、ハンドブレーキ不能によるトラブルが多発している。三菱通報等の部内資料によれば、メーカーは欠陥であることに気づき、すでに対策を指示している。入手した情報によれば、運輸省は、陸運事務所における定期監査でこの事実をすでに知つていることが明らかになつている。
   イ 何故、メーカーにリコールするよう指導しないのか、理由を明らかにされたい。
   ロ 本件欠陥については、直ちに立入検査を行い、関係資料の提出を求め(又は押収し)、欠陥の実態と原因を明らかにして速やかにリコールさせるべきであると考えるがどうか。
  B 三菱自工は、昨年三月九日、極寒冷時の始動の際、パワーステアリングポンプ吐出側ホースに瞬間的に高油圧が加わり、亀裂が生じて油もれが発生するおそれがあるとして、大型トラック(T951型、T952U型、FU113S型)のパワーステアリングホースのリコールを届け出たが、リコール対象を北海道地区と三国峠を通る指定業者だけに限定している。
   イ 欠陥品を装着している車両でリコールの対象外とされたものは何台あるのかを明らかにされたい。
   ロ リコール対象を一部地区と一部の指定業者にだけ限定したことはどう考えても不合理である。極寒冷地は北海道だけではない。北海道を走行する車がすべて北海道に登録されているわけではない。リコール対象を特定の地区と業者だけに限定すべきではないと考えるがどうか。
   ハ 瞬間的に高油圧が加わることを理由にしておきながら吐出側ホースだけをリコールの対象としたのは何故か。ブースター側の高圧ホースでも油もれが発生しているのに何故、ブースター側ホースをリコールの対象としなかつたのか、その理由を明らかにされたい。
  C 三菱自工関係各車種には、右以外にも構造・品質上の欠陥があるにもかかわらず、リコール届や構造変更届をしていないものが相当数ある。この点について私は、去る三月七日と四月十八日に「その実態を調査し、結果を資料として提出するよう」要請したが、政府は、「調査中である」と繰り返すだけで、何ひとつ資料を提出しようとしていない。
   イ 調査結果を資料として提出する意志があるのかどうか、提出するというのであれば、いつまでに出すかを明確にされたい。
   ロ 私が資料要求したあと、リコール等の措置を講じさせたものがあれば、その概要を明らかにされたい。
  D 三菱自工が、本年四月二十七日と五月十八日に届け出た「リコール対策一覧表」の「対策内容」の項をみると、「全車両、良品と交換する」と記載しているだけで、対策の具体的な内容が何ひとつ明らかにされていない。
   イ 「良品と交換する」という対策内容だけでリコール届を受理した理由を明らかにされたい。
   ロ 「良品と交換する」ということであるが、具体的に、どのような対策を講じたのか、その内容を具体的に明らかにされたい。
 9 いすず関係車種の欠陥
   入手した部内資料によると、いすず関係各車種にリコールすべきものが相当数ある。いすずの品質管理体系の中の車種別の「市場品質概況」という資料によれば、保安基準違反の事実やクレーム金額、クレーム発生率、不具合項目の推移(グラフ)などが刻明に記載されている。にもかかわらずメーカーは、リコール届や構造変更届をしていない。そのため、事故も発生している。
  @ いすず関係各車種に構造・品質上の欠陥がありながら、リコール届や構造変更届を出さないで、こつそりと対策しているものが相当数あるのでその実態を調査し、欠陥の実態と原因及びメーカーが講じている対策等を明らかにすべきであると考えるがどうか。
  A 本件については、速やかに立入調査権を行使し、クレーム・レポート、累積故障率表、対策指示文書、車種別市場品質概況等の文書を提出させ(又は押収し)たうえ、リコールその他の必要な措置を講ずるよう指導すべきであると考えるがどうか。
 10 日野関係車種の欠陥
    入手した部内資料によると、日野RL100型バスにプロペラシャフトの欠陥、KF型トラックにブレーキの欠陥の疑いがある。欠陥対策書簡(部内資料)等によるとRL100型バスについては、すでに昭和五十年七月にプロペラシャフトの交換を指示している。KF型トラックについては、昭和四十六年九月にブレーキ・マキシチャンバーの干渉対策を指示している。
  @ 本件欠陥につき、メーカーから構造変更届又はリコール届がなされた事実はあるか。
  A 本件欠陥につき、直ちに立入調査を実施し、クレーム・レポート、累積故障率表、欠陥対策書簡等の文書を提出させ(又は押収し)、欠陥の実態と原因を明らかにしてリコール等の措置を講ずるよう指導すべきであると考えるがどうか。
 11 ホンダ関係車種の欠陥
  @ 本田技研工業(以下「ホンダ」という。)のシビックCVCC、一、五〇〇ccのレシプロエンジン及びライフ(計約四十六万台)に、タイミングベルトの強度不足によるエンスト、エンジン破損などのクレームが多発している。タイミングベルトの強度不足でベルトが切れたり、のびたりしてタイミングが狂い白煙をはいてエンストするものや排気規制違反車が続発し、なかには、バルブのつきあげのためピストンバルブ折損やピストンが破損する、というものも出ている。メーカーは欠陥に気づき、すでに各ディーラーに対し秘密に回収を指示している。運輸省もすでに本件欠陥を知つていながらリコールさせようとはしていない。
   イ 本年一月にある地方の陸運事務所が、某ホンダSFを立入検査した際、担当官は、本件欠陥の実態と原因及びメーカーが秘密裡に回収している事実を発見し、本省へ報告している。ところが、どういうわけかウヤムヤにされている。どうしてこのような重要な情報を握りつぶしたのか、その理由と事実関係を明らかにされたい。
   ロ 地方の陸運事務所にだけ立入検査を実施させておきながら、何故本省として立入検査しないのか、その理由を明らかにされたい。
   ハ 本件欠陥が、保安基準違反の構造・品質上の欠陥であることが明らかであるので、直ちに立入検査を実施し、関係書類を提出させ(又は押収し)、欠陥の実態と原因を明らかにしてリコールさせるべきであると考えるがどうか。
  A ホンダのロードパル(約四十万台)に、スロットルケーブルのワイヤ欠損のため加速不能になり、坂道などでバックし転倒しそうになつたというクレームが多発している。メーカーは早くから欠陥に気づき、対策部品を二度にわたつて設定しているが、政府がリコールさせないため対策部品の交換はすべてユーザー負担となつている。原因は、耐久試験不足と無理な原価低減策のためである。ロードパルは女性でも手軽に乗れる車であるので安全のため回収が必要である。本件欠陥について、直ちに立入検査を行い、速やかにリコールさせるべきであると考えるがどうか。
  B 米国の交通安全局から得た情報によると、ホンダ二輪車に、降雨時にディスクブレーキが制動不能になるというクレームが多発し、米国ではすでにリコールしている。我が国でも、同種設計のCB400Fその他の二輪車に同種のクレームが多発している。ところが政府は、メーカーの説明(「排気量がちがう」とか「対米輸出二輪車は国内販売していない」などといつている。)をうのみにしてリコールさせようとはしていない。
   イ 米国ですでにリコールしているにもかかわらず、同種設計の国内販売車をリコールさせないのか、その理由を明らかにされたい。
   ロ 米国でリコールされた二輪車の不具合の実態と原因を調査するとともに立入検査を実施して関係書類を提出させ(又は押収し)、国内販売車の欠陥の実態と原因を明らかにして直ちにリコールさせるべきであると考えるがどうか。
  C ホンダCVCC一、二〇〇ccにウォーターポンプのプーリーが破損し、走行不能になるというクレームが多発し有料で整備している。入手した現品と対策部品の強度テストの結果、本件欠陥が構造・品質上の欠陥であることは明らかである。メーカーはすでに欠陥を認め対策部品を設定しているにもかかわらず、政府がリコールさせないためクレームが続発している。本件欠陥についても直ちに立入検査を行い、関係書類を提出させ(又は押収し)、欠陥の実態と原因を明らかにして速やかにリコールさせるべきであると考えるがどうか。
  D ホンダは、アコード及びシビック(約十八万台)にシリンダーヘッドのガスケットが損傷してエンジンの圧力が低下するトラブルがあることを認め、無償修理を行つている(リコールはしていない)が、欠陥はガスケットだけではない。入手した情報によると米国交通安全局及び公正取引委員会等は、シリンダーヘッド自体の設計不良による熱的歪が発生しており、この対策部品の設定が必要であると指摘している。
   イ 運輸省は、ガスケットだけの無償交換だけしかやらせていないが、米国における調査解析結果によれば、シリンダーヘッドの熱勘定等基本的な設計欠陥があると認定している。本件欠陥について、更に適格な原因究明を行うべきであると考えるがどうか。
   ロ シリンダーヘッドのひずみによる排気汚染も考えられるので、シリンダーヘッド自体の交換も無償で行うよう指導すべきであると考えるがどうか。
   ハ 米国では、過去において有料交換したユーザーに対し代金を返却させているので、我が国でも同様の措置を講ずるようメーカーを指導すべきであると考えるがどうか。
 12 その他の欠陥等
  @ 米国におけるリコール車
    米国の交通安全局の情報によると対米輸出車に大量の欠陥が発生している。一九七七年度の対米輸出乗用車だけで七十六万五千台も欠陥が指摘されリコールされている。政府は、安全基準の違いなどを口実にして輸出車のリコールの状況を公表していない。部品の材質や形状、機構、機能が同じであつても、「車種がちがう」などといつて国内販売車については、リコールさせようともしていない。
   イ 米国でリコールしたものと類似の国内販売車でリコールしていないものにつき、その車名ごとに理由を明らかにされたい(最近五年間)。
   ロ 米国でリコールしたものと類似の国内販売車でリコールしていないものについては、リコールその他必要な措置を講ずるようメーカーを指導すべきであると考えるがどうか。
  A ドアロックの強度
    ドアロックの強度について、北米及び欧州輸出車については、保安基準が設定されているが、国内販売車については規制がなく、北米及び欧州輸出車の二分の一程度の強度しかない。
   イ 昭和四十五年以降生産車で、輸出車と国内販売車との間に、ドアロック強度に差があるものについて、その車名ごとに強度を明らかにするとともに、こうした差をつけている合理的な理由を明らかにされたい。
   ロ コロナマークIIで数年前、北米や欧州基準の二分の一程度の強度しかなかつたため、時速八十粁で転ぷく横転し、乗員が車外に放り出されて即死するという事故が起きた。
     その後、トヨタ車のドアロック強度が欧米なみに強化されたとのことであるが、何年式のどのタイプから欧米なみになつたかを明らかにされたい。
   ハ 交通安全対策基本法(第六条、第三十二条等)や昭和四十六年三月三十日決定の交通安全基本計画(第二章の4)によれば、交通安全関係規格については「国際水準以上の規格とすることに努める」ことを明記しているのであるから、高速道路が欧米なみに普及している実情にかんがみ、欧米なみ又はそれ以上の強度基準を速やかに設定すべきであると考えるがどうか。
   ニ ドアロックの強度が欧米基準以下のものについては、警察などの関係機関と連絡をとつて、ドライバーにシートベルトの着用を義務付けるなど、キメ細かな指導を行うべきであると考えるがどうか。
  B 補助ブレーキの保安基準
    大型トラックなどで補助ブレーキの欠陥により、主ブレーキの使用ひん度が多くなり、それによるブレーキ効き不良、ライニングの異常摩耗などのトラブルがひん発している。
   イ 補助ブレーキの性能、耐久性の向上等について、これまでどのような指導をしてきたかを具体的に明らかにされたい。
   ロ 大型トラック、バスのブレーキトラブルは重大事故にもつながりかねないので、補助ブレーキの普及の実情にかんがみ、速やかに補助ブレーキに係る保安基準を定めるべきであると考えるがどうか。
四 今後の自動車保安行政
 1 欠陥車処理体制
   欠陥車が多発しているにもかかわらず、欠陥車業務専従職員は、最近になつてようやく本省に一名、東京と名古屋の陸運局に各一名配置されているに過ぎず、国の欠陥車処理体制には重大な欠陥がある。この点について政府は、「欠陥車処理体制の一層の整備強化に努める」といつているが、実際には、そうした方向にむけて積極的に取り組んでいるとはいいがたい。
  @ 最近十年間に講じた欠陥車処理体制の整備及び欠陥車業務専従職員の数を本省と地方支分部局別に、年次別に明らかにされたい。
  A 今後の欠陥車処理体制の整備強化に関する基本構想はあるか、あればその内容を明らかにされたい。
  B 政府は、昭和二十六年の運輸省令第百四号に基づいて車両故障事故報告書を徴収しておきながら、報告書に基づいて原因(欠陥)を究明することはもとより、メーカーに対する調査、指導をほとんど行つていない。怠慢もはなはだしいといわなければならないと考えるがどうか。怠慢ではない、というのならば、昭和四十八年以降五年間に報告書に基づいて運輸省が講じた措置(欠陥原因の調査解析、リコール等の指導等)とそれに対してメーカーが講じた措置を各件ごとに明らかにすべきであると考えるがどうか。
 2 報告徴収及び立入検査
  運輸省が道路運送車両法第百条の規定に基づいて行つている「報告徴収及び立入検査」なるものは、メーカーなどの一方的な説明をうのみにするだけで二重帳簿を見せられてもわからない、欠陥の実態や原因が一目瞭然となるような肝心な資料を押さえないなど、極めてズサンなものである。
  @ 自動車保安行政を厳正に行い、「報告及び立入検査」を適確に行うためには、各メーカーの品質管理体系又はクレーム処理システム(クレーム情報の集積、分析、検討、対策会議、対策の実施……の体系)全体を具体的に把握する必要がある。政府としては、こうした体系を具体的に把握していると思うがどうか。把握しているならば、その概要を各メーカーごとに明らかにされたい。
  A 「報告及び立入検査」に当たつては、品質管理体系の中で集積されたクレーム・レポート、品質変動情報、累積故障率表などの文書や技術連絡書、欠陥対策指示文書などを提出させるか又は押収すべきであると考えるがどうか。
  B 運輸省は、昨年九月、自動車局長名の文書でクレーム発生件数、外国輸出車のリコール状況、対策内容のディーラーへの周知状況などの報告(市場不具合状況報告)を求め、これをもつて「報告徴収及び立入検査」としている。こんなことでは欠陥の実態や原因をつかむことはできないし、メーカーが虚偽の報告をしても真実かどうかわからないと思うがどうか。
  C 運輸省の「報告徴収及び立入検査」に対して報告をしなかつたり、虚偽の報告をした者は罰金に処せられることになつている(道路運送車両法第百十条)が、これまでに、この条項を使つて罰金をとつた事例はほとんどないと聞いているが、本条項を活用しない理由を明らかにされたい。
 3 自動車検査制度
  @ 国の車検制度
    陸運事務所検査場の各検査コースでは、二コース一チーム、三〜五人が配置され流れ作業的に機器検査及び外観検査を行つているが、その実態は検査というにはほど遠い。車検台数は昭和四十年以降三百万台から六百五十七万台(二・一倍)になり、保安基準が二十二回・百二項目にわたつて改正され、安全・排ガス規制が強化されているにもかかわらず、検査要員は八百二十四名から九百七十七名(一・二倍)にしかなつていない。そのため検査の所要時間は、一台につき機器検査に三〜四分、外観検査に一〜二分となつており「手ぬき」をやらざるを得ないという危険な実態にある。
   イ 自動車保安行政強化のため、車検部門に十分な定員を、速やかに確保すべきであると考えるがどうか。
   ロ 国の検査には、検査項目ごとの具体的な車検の作業要領がなく、個々の検査官まかせになつている、という問題がある。この点について全運輸省労働組合は「検査すべき項目・チェックポイントを特定し、その標準的な作業要領とそのための標準時間を明らかにするため『標準車検要領』の作成を急ぐべきである」との要求を再三にわたつて当局に出しているとのことであるが、この要求は、自動車保安行政強化のための当面の重要課題の一つであり、速やかに検討作業に着手すべきであると考えるが、どうか。
   ハ 国の検査には、検査結果の詳細な記録がない、という問題もある。今後の自動車保安行政に役立てるため、検査結果の詳細な記録の集中管理体制を確立すべきであると考えるがどうか。
  A 民間車検制度
    政府の無理な民間車検拡大策によつて指定基準が大幅に緩和され、工員数十人以下の零細企業が民間車検工場の半数を占めるようになり、「ノー整備・ヤミ車検」などの不正事件が続発している。民間車検工場が一万四千工場を超え、半分以上の車検を受け持つようになつているにもかかわらず、民間車検に目を光らせる監査官は、わずか百六十名前後しか配置されていない。
   イ 民間車検制度発足以降発覚した「ノー整備・ヤミ車検」などの不正事件の件数と内容はどういう傾向にあるか。
   ロ 民間車検における不正事件一掃のためにも、自動車保安行政強化のためにも監査官を大幅に増員すべきであると考えるがどうか。
  B 定期点検項目の削減
    世界の自動車先進諸国では、設計の初期の段階から信頼性と耐久性を確保することを前提に、低整備費化を図る方向で定期点検整備項目の削減に力を入れている。
   イ 政府も、自動車点検基準については「総体として削減する方向で可能なかぎり早い時期に改正を行う」といつているが、いつまでに、どの程度の削減を行う予定か。
   ロ 点検基準の削減は、保安基準の規制強化と並行して行わないと欠陥車野放し行政を助長することにもなりかねないので、点検基準削減のための検討作業は、保安基準の規制強化の検討作業と一体的に進めるべきであると考えるがどうか。
  C 車検段階での欠陥車のチェック
   イ 欠陥車一掃のため、陸運事務所が行う整備工場等への定期業務監査を厳正に行い、保安基準違反車種の一覧表をつくり、車検時に重点的にチェックする体制を確立すべきであると考えるが、その意志はあるか。
   ロ 検査担当官が検査段階で欠陥又は欠陥の疑いがあるものを検査結果の記録に附記するような制度を導入し、これを本省段階で集中管理し、欠陥車の早期発見に活用することを検討すべきであると考えるがどうか。
 4 今後の自動車保安法制
   世界の自動車先進国の自動車保安法制は、省資源、省エネルギー、安全・公害対策の強化、消費者保護等の立場から総合的に規制を強化するという方向に向かつている。
  @ 我が国でも、世界の自動車先進国に学び、現行の道路運送車両法を抜本的に改正強化して、国民の交通安全権確立のための自動車保安法規の制定にむけて本格的な検討に着手すべきであると考えるがどうか。
  A 今後の自動車保安法規には、少なくとも米国が交通安全車両法に基づいて講じている「欠陥車容疑リストの公開」、「欠陥車通知・回収の義務付けと義務違反企業への刑事罰」、「関係当局の欠陥情報提出強制権」、「国民の違反企業告発権」などを盛り込むとともに、モデル・チェンジ計画の事前公表の義務付けなどを行うべきであると考えるがどうか。

 右質問する。





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