質問本文情報
昭和五十四年六月十一日提出質問第三六号
自閉症対策と療育に関する質問主意書
右の質問主意書を提出する。
昭和五十四年六月十一日
提出者 斎藤 実
衆議院議長 ※(注)尾弘吉 殿
自閉症対策と療育に関する質問主意書
心身障害児・者の福祉を図る中で、人間としての尊厳にふさわしい処遇を受け、適切な治療と教育と保護が与えられなければならないことは当然である。特に、自閉症障害の児童・成人は、全国で五千人から二万人とも言われ、その解決には幾多の克服すべき困難な問題がある。
また、自閉症児を持つた家庭における精神的、経済的負担ははかり知れないものがある。
しかし、政府の現状の自閉症対策は、はなはだ不十分と言わざるを得ない。
今後、政府の施策の一層の充実を図るためには、自閉症児対策の基本的課題とされている発生予防、障害の早期発見と自閉症児、年長者の療育施設などの福祉対策の強化並びに指導体制の整備等を早急に改善を図る必要があると考える。
従つて、次の事項について質問する。
また、自閉症の原因究明のための医療研究機関は極めて不備である。政府は積極的に原因及び発生防止の研究調査体制の強化を図るべきであると考えるがどうか。
二 自閉症の概念や基準があいまいであるため、相談に応ずる医師も、診断判定が適正に行われていない現状である。
このことが現場の混乱を招き、自閉症対策を著しく困難にしているのではないか。
政府は早急に自閉症の診断基準を設けるべきであると考えるがどうか。
三 自閉症は早期に発見し、乳幼児期から適切な治療訓練を行うことにより、障害をかなりの程度まで軽減することが可能とされている。
現行の母子保健法に基づく三歳児健診では、障害発見の体制は不十分である。
従つて、同法第十三条による任意的な健診を、三歳児健診に至る前にきめ細かく五、六回の健康診査を行うように義務づけるなど、母子保健法の抜本改正を検討すべきであると考えるがどうか。
四 自閉症などの心身障害は、乳幼児の発達過程に応じて発見し得るものである。しかし、現在実施している健康診査は、乳幼児の発育状況、栄養の良否、歯科検査、予防接種の実施の有無など、乳幼児の健康の保持及び増進を図ることに重点が置かれている。
従つて、今後は定期健診の中の一回は、特に視聴覚障害、精神・運動発達障害等の発見を重点的な内容とした健康診査にするなど、早期発見に努めるべきであると考えるがどうか。
五 厚生事務次官通達に基づく療育施設は現在四カ所のみで、それも学問研究と療育方法の開発を目的としたものに過ぎない。療育を必要とする障害児の増加にかんがみ、施設の整備の増強と運営費の助成措置を講ずる必要があるが、この施設整備の具体的計画及び財政措置についてどのように考えているのか。
六 自閉症児にとつて、幼児期に一般児童に接触させることが療育上有効であると言われ、療育の場として幼稚園、保育所が重要な役割りを担つているが、このような障害児教育、保育を行つている施設に対して、特別な財政援助を行い、療育の充実と施設の振興を図る必要があると考えるがどうか。
七 自閉症児の施設設置に対しては、昭和四十四年八月の厚生事務次官通達によつて一応の要綱は出されているが、年長及び成人についての施設設置の対策は何らなされていない。
従つて、年長及び成人の施設設置について、早急に基準を定めて対策を講ずるべきであると考えるがどうか。
八 年長及び成人期の自閉症者については、障害の治療と生活指導を合わせた特別療育の場の設置が必要であると考えるがどうか。
また、札幌市の市立病院附属静療院のような自治体病院が年長者施設を設置する場合、地方自治体に非常な財政負担とならざるを得ない。
従つて、年長、成人に対する療育施設の設置と運営に対して、政府の助成措置を講ずる必要があると考えるがどうか。
九 自閉症は、社会福祉的見地から適切な医療及び環境のもとで療育に取り組まなければならない。
しかし、現行は療育施設の設置と運営に関する通達のみで、年少児及び年長者の療育と施設に対する総合的な対策がなされていない。従つて、早急に法律の制定を行い、総合的な対策を図る必要があると考えるがどうか。
右質問する。