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昭和五十六年十月三十日提出
質問第八号

 北方四島を「外国とみなす」という表現をしている法令の改定に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十六年十月三十日

提出者  小沢貞孝

          衆議院議長 福田 一 殿




北方四島を「外国とみなす」という表現をしている法令の改定に関する質問主意書


 先般、貝殻島周辺で採取されたコンブをめぐつて問題が提起されたが、この採取コンブは関税法上外国貨物であり、これには輸入手続が必要とされている。現地漁民からは、関税は免除されているが日本の固有の領土であるのに外国扱いとすることに、強い不満と抗議が出ている。これは、懸命に北方領土返還運動に精進している者の神経を逆なですることとなる。
 また、日ソコンブ交渉で、外務省が領土権主張の立場から裁判管轄権、許可証受給にあれ程厳しい注文をつけてようやく「日本漁民による昆布採取の北海道水産会とソヴィエト社会主義連邦漁業省との間の協定」が成立した。
 ところが、同じ政府が当該採取地区を「外国とみなす」という法律を適用したのでは、矛盾もはなはだしく、北方領土返還運動に水をさすものである。
 当方で調査したところによれば、別紙の法律・政令がこの関税法同様、「北方領土は日本に含まれない」というものから「法令の施行区域から除く」とか、「外国とみなす」というものや、また、あたかも二島返還論のごとく解釈もできるような「歯舞・色丹を法令の施行地域から除く」というもの等々がある。
 ソ連では、この間の事情について熟知している。例えば、ロゴフスキー著「いまのソ連は何を狙つているか」一四八頁にあるように、日本政府の返還運動に全然熱がみられないというように理解している。
 国会決議が幾度か行われ、総理の現地視察、「北方領土の日」が制定される等国論の盛り上がりの中で、あまりにも無神経な法令の存在ではないか。
 そして、これらの法令の中には、現在では削除しても差支えないもの、他に表現が変えられるもの、必要が生じた都度国会の議決をもつてしても支障のないもの等がある。
 政府は、速やかにこれら法令の改廃を行うべきであると思うが、これらについて見解を示されたい。

 右質問する。



 (別 紙)
一 本邦には歯舞群島、色丹島、国後島及び択捉島は含まれないものとしている法令
 1 引揚者給付金等支給法第二条第二項、同法施行規則第一条
 2 引揚者等に対する特別交付金の支給に関する法律第二条第四項、同法施行規則第一条
二 歯舞群島、色丹島、国後島及び択捉島を当分の間、法令の施行地域から除くものとしている法令
 1 連合国占領軍等の行為等による被害者等に対する給付金の支給に関する法律第二条第一項第一号、同法施行令第一条
 2 国勢調査令第四条、同令施行規則第一条
 3 相続税法附則第二項、同法施行令附則第二項
 4 資産再評価法第百二十三条、同法施行令第十六条
 5 有価証券取引税法附則第二項、同法施行令附則第二項
 6 入場税法附則第二項、同法施行令附則第二項
 7 通行税法附則第二項、同法施行規則附則第二項
 8 外国為替及び外国貿易管理法第六条、同法における附属の島に関する命令
 9 外資に関する法律第三条第一項第二号
 10 国家公務員等の旅費に関する法律第二条第一項第四号、同法支給規程第一条
 11 検疫法第四条、同法施行規則第一条
三 北方地域を当分の間外国とみなしている法令
 1 関税法第百八条、同法施行令第九十四条
 2 関税定率法第二十三条、同法施行令第六十二条
 3 外国郵便規則第二条
四 歯舞群島・色丹島を法令の施行地域から除くものとしている法令
 1 連合国財産の返還等に関する政令第二条、同令施行に関する命令第二条第四号
 2 ドイツ財産管理令第二条、同令施行に関する命令第二条第四号
 3 国外居住外国人等に対する債務の弁済のためにする供託の特例に関する政令第二条第一項第一号、同令施行に関する命令第一条第四号
 4 日本銀行券預入令等を廃止する法律附則第二項、同法施行令第一条第四号
五 その他
 1 弁護士及び弁護士試補の資格の特例に関する法律第四条、昭和二十一年法律第十一号に基き、本州、北海道、四国及び九州の附属島嶼指定一号
 2 連合国財産補償法第二条第三項
 3 閉鎖機関令第二十七条




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