衆議院

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昭和五十七年八月二十一日提出
質問第二九号

 労働基準行政の基本姿勢に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十七年八月二十一日

提出者  小沢和秋

          衆議院議長 福田 一 殿




労働基準行政の基本姿勢に関する質問主意書


 長期化する不況の下で大企業は、危機を乗り切り安定した高利潤確保の態勢作りのため、徹底した人減らし「合理化」をはじめ、労働者と下請け中小企業に過酷なしわ寄せを強化している。その結果、多くの大企業の職場で労働基準法に定める最低の労働条件にさえ違反する事態が続出するに至つている。
 労働基準行政を取り巻くこのような情勢は、労働者を保護し労働条件の向上を使命とする労働行政の本来的な役割りの発揮を改めて要請している。
 このような時に、本年二月、労働省が発表・示達した「昭和五十七年度労働基準行政の運営について」(以下「行政運営方針」という。)で、労働者からの「申告」事案の処理に関して従来の方針と異なつた著しい後退的変更を行つたことは、極めて重大である。
 よつて、以下次のとおり質問する。

一 前記の行政運営方針は、労働者からの申告事案の処理に関して「労働条件の問題について労使共に自主的に協議・改善し得る能力を有している大企業等については、可能な限り労使間の自主的な解決を促すこととし……」と述べ、監督機関の活動は中小零細企業に重点を置くとしている。
  言うまでもなく労基法は「労働者が人たるに値する最低の労働条件」を法定し、その履行確保を図るため強力な行政監督権限だけでなく、司法警察権限までを労働基準監督官に附与し、全国に労働基準局と監督署を国の機関として設けているのである。
  しかも「本法の適用事業が極めて広範囲にわたり、法の遵守を労働基準監督官の摘発にのみ委ねていては到底その実効を期し難いので、申告によつて監督機関の権限の発動を促進することとしているわけである」(労基法コンメンタール)と述べているように、労働者からの申告は、労基法の履行確保にとつて極めて重要な機能を持つものである。
  しかるに、この申告の処理に当たり、大企業と中小零細企業を区別し、大企業の場合は「労使の自主的な解決」に委ねるというのであれば、大企業労働者の申告権は事実上否定されることになると考えるが、そうではないのか。今後も、大企業労働者が申告を行つた場合、無条件にこれを受理して申告事案の処理を行うべきだと思うがどうか。
二 ILO第八一号条約及び第二〇号勧告に基づき、昭和二十五年三月に制定された「監督官執務規範」では、「労働者の申告のあつた場合には、往々にして重大又は悪質な違反があることが多いから」、「迅速に監督を行わねばならない」としている。以後、監督行政は一貫して労働者の申告を重視し、その優先的で迅速な処理を基本方針としてきたわけだが、突如として先に述べたように大企業についてだけ変更したのは何故か。
  国民は財界の圧力への屈服としか見ないであろう。そうではない積極的で合理的な理由があるのか。
三 この数年間、全国各地の独占大企業の労働者から相次いで申告が行われている。このような事態は戦後、労基法施行後三十五年間になかつたことである。
  これらの申告を受理し、処理に当たつた監督機関の多くが「申告内容の多くが事実であつた」ことを認め、是正勧告書や指導票を交付している。言い換えれば、独占大企業の職場に労基法等の法違反が現実に存在していること、労働組合が存在していてもチェックできず、むしろ労使協調路線をとる労働組合の合意と暗黙の了解の下に、これらの法違反がまかり通つていたことを裏書きするものである。
  この行政自身の体験と結論からみるならば、行政運営方針の「大企業では労使が自主的に協議・改善し得る能力を有し」ていたと言えないのではないか。
  それとも申告に基づく監督の結果、労働条件は極めて満足すべき状況にあつたとあくまで強弁するのか、明らかにされたい。
四 このような行政運営方針の後退的変更の下で、山口県、広島県、三重県などでは、大企業の労働者が「口頭申告」しても受理しないという不当な対応が行われている。また、福岡県を含めて申告案件の処理が極めて遅延している。
  「口頭申告」を受理しない理由、処理の遅延の原因、これら各県における処理の現状などを明らかにされたい。
五 以上述べたように、今年度の行政運営方針や行政の対応は極めて重大な問題点を持つている。
  労働基準行政の在り方に対して労働者・国民が厳しく注視している中で、その基本姿勢を正すことをためらうならば、自ら「労働省不要論」を醸成することになるであろう。
  労働行政、とりわけ基準行政の民主的再生を願う国民的立場から、今後の基本姿勢と著しく不足している監督官・技官など職員不足の解消についてどう努力するのか、その見解を明らかにされたい。

 右質問する。



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