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昭和五十七年十二月二十四日提出
質問第五号

 日本ケミファ事件と新薬認可行政に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十七年十二月二十四日

提出者  菅 直人

          衆議院議長 福田 一 殿




日本ケミファ事件と新薬認可行政に関する質問主意書


 新薬認可行政に対する国民の信頼を根底から失墜させる事件が頻発している。最近一ヵ年の間に明るみに出ただけでも、大鵬薬品工業の抗炎症剤「ダニロン」における発ガン性データの隠蔽、ミドリ十字の酸素輸液「フルオゾールDA20%」におけるデータの改ざん、そして、日本ケミファの消炎鎮痛剤「ノルベダン」及び降圧剤「トスカーナ」におけるデータ偽造と消炎鎮痛剤「シンナミン」における副作用データ隠しが挙げられる。
 人命にかかわる薬務行政の見地として、これら一連の事件はあるまじきことであるが、営利優先、過当競争の業界体質、新薬認可システムの不備を鑑みれば、これらの事件をむしろ「氷山の一角」と憂慮する声が高いことも大きく頷けるのである。
 日本ケミファに対しては、既に既認可医薬品の製造承認が取り消され、八十日間の業務停止という行政処分がなされている。不正を働いた者の厳正な処罰はもちろん必要であり、行政責任に止まらず、民事上、刑事上の責任が明らかにされるべきである。
 しかし、処罰はあくまで対症療法に過ぎない。内部告発によらなければ不正を発見できなかつた従来のデータチェック体制、中央薬事審議会の審査体制の欠陥をこの機会に行政府が真摯に反省し、かかる事件の再発防止対策を早期に確立することが、国民の信頼を回復していく唯一の方策と考える。
 そこで、日本ケミファ事件に対する今後の対応と新薬審査体制の改善方針に関し、次の事項について質問する。

一 日本ケミファ事件は、架空のデータをねつ造し、無断借用した医師の名前で雑誌に論文を掲載してそれを製造承認申請に用いた悪質なもので、曽根原孝研究開発本部開発部長も、厚生省の事情聴取の中で不正の事実を全面的に認めている。これは、明らかに刑法第百五十九条に定める私文書偽造・同行使罪に該当するが、政府は日本ケミファを告発し、その刑事責任を追及する考えがあるか、明らかにされたい。
二 現行薬事法には、認可申請資料の偽造又は申請者に不利な資料の隠匿に対する処罰の明文規定がない。今回の事件は、このような法制の盲点を衝いた形で起きた。今後かかる事件の再発を防止するため、認可申請の中で意図的に不利なデータを隠したり、有利なデータを偽造する行為に対する処罰規定を、薬事法等関係法規の中に設ける立法措置が必要と考えるが、内閣の見解を明らかにされたい。
三 日本ケミファのデータ偽造は、申請者のデータを信頼し、学会発表、雑誌掲載によつてデータの公正性が担保されるとしてきた行政府の前提を根底から覆すものである。これまで厚生省は、企業秘密を理由に申請データの公開を拒否してきているが、国民の健康と安全を確保するためには企業秘密の範囲は最小限に止められるべきであり、データ隠しやデータ偽造が正当な企業秘密でないことは明らかである。データの公正性を担保し、国民の薬務行政に対する信頼を回復する最良の方法は、申請データを公開し、企業秘密という形の不正隠しを許さない態度を示すことである。そのためには、認可後の全申請データの公開と、厚生省に対し、認可差し止めの異議申立てが行える期間とその行政手続を保障する制度を設けることが必要と考えるが、内閣の見解を明らかにされたい。
  なお、取りあえず早急に採り得る措置として、既に認可された医薬品については、申請データの中の既に学会誌等に発表されたもの等明らかに企業秘密とみなされないデータのリストを公示することについても、内閣の所信を明らかにされたい。
四 申請データの信頼性を確保し、データ隠し、データ偽造を防ぐためには、新薬と副作用に関する全治験計画が把握され、適切な時期に何重にもチェックが行われることが必要である。そのために、左の方法が有効と考えるが、政府はこれらの施策を実行する考えがあるか、それぞれについて明らかにされたい。
 (一) 毒性、催奇形性、発ガン性等副作用に関する基礎実験及び臨床試験は、全て治験計画の提出を義務付ける。
 (二) (一)で義務付けられた試験の記録は、企業の都合にかかわらず認可後一定期間保持するよう義務付ける。
 (三) (一)及び(二)で定める義務違反に関する罰則規定を設ける。
 (四) 認可審査の時点で、申請データの実験責任者、個人カルテ等生データの点検確認を行う。不審な件は、事情聴取、立入検査によつて明らかにする。

 右質問する。





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