衆議院

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昭和五十八年一月十二日提出
質問第二号

 沖縄県農業と農産物輸入自由化等に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十八年一月十二日

提出者  (注)長亀次郎

          衆議院議長 福田 一 殿




沖縄県農業と農産物輸入自由化等に関する質問主意書


 中曽根首相は今回の訪米に際し、昨年暮れの決定に引き続き牛肉、オレンジ類の輸入自由化、枠拡大、関税引下げなど、新たな農産物市場開放措置を打ち出すようである。
 これは日本の農業に重大な影響をもたらすものである。沖縄県においては牛肉、かんきつ類など外国農産物との競合が避けられない農業と生産者農家の受ける打撃は一層深刻なものである。
 現に政府がとつてきた一九六三年の砂糖輸入自由化、一九七一年冷凍パインアップル輸入自由化、昨年五月のパイン缶詰の輸入枠拡大が沖縄県の糖業やパイン産業に重大な打撃を与え、沖縄県農業の基幹作物であるさとうきび、パインアップルの生産は、それ以後、減少若しくは低迷を続けていることを見ても明らかである。
 牛肉やオレンジなどの輸入自由化、枠拡大が県内農家の不安と危惧を呼んでいる。
 従つて、農産物輸入自由化、枠拡大について沖縄県の農業、生産者農家の生活と経営を守る立場から次の事項について質問する。

一 農林水産大臣は昭和五十五年十二月六日、果樹農業振興特別措置法第二条第一項及び同法施行令第一条の規定に基づき昭和六十五年度を目標年次とする果樹農業振興基本方針を定めた。
  沖縄県は、この基本方針を受けて、同法第二条の三第一項に基づいて、昭和五十六年三月二十八日、沖縄県果樹農業振興計画を決定した。
  この計画は、沖縄県の基幹作物であるパインアップルについて、昭和五十五年度の実績に対し、目標年次の昭和六十五年度は栽培面積を一・四倍、果実生産目標を一・八倍、十万トンと掲げている。
  しかし、沖縄県パイン栽培農業の現状は、復帰直前の一九七一年の栽培面積五、一一五ヘクタールをピークに、冷凍パインアップルの輸入自由化の中で、栽培面積、生産量ともに停滞を続けている。昭和五十六年度は市況悪化による缶詰工場の閉鎖もあつて、農家が新植を手控えざるを得なくなるなど、栽培面積も四三〇ヘクタール(二・九パーセント)減少した。
 1 このような危機的状況にある沖縄県パイン産業に対して、昨年五月に決めたパイン缶詰の輸入枠拡大は、さらに追い打ちをかける措置であり断じて許せない。
   県内パイン産業の振興のためにも輸入枠を削減すべきであると考えるが、どうか。
   このことが政府自らが法律に基づいて定めた果樹農業振興の基本方針にかなうのではないのか。
 2 冷凍パインの輸入自由化、パイン缶詰の輸入枠を拡大した中でパインなどの果樹農業振興をどのように図つていくのか。
   この基本方針、計画を実現するためにどのような施策を講じたのか、具体的に示されたい。
 3 パインアップルは、他作物の栽培に適しない酸性土壌の山間傾斜地に栽培され転作のできない地域農業の主要作目になつている。
   ついに昭和五十六 ― 五十七年期は一キログラム当たり四十円、前期に比べ十四円もの値下げとなり、県と市町村が五円の価格助成を行つて生産を維持している。
   政府においても沖縄振興開発特別措置法第五条(国の負担又は補助の割合の特例等)に基づく同法施行令第二条、別表三に「パインアップル生産価格安定事業」を加えるなど、含みつ糖価格安定事業と同様に助成措置を講ずるべきだと考えるが、どうか。
二 みかん、たんかんについても、沖縄県果樹農業振興計画は、それぞれ目標年次には生産量を五・六倍、七・四倍に引き上げる計画を立て、その他のかんきつ類、パインアップルなど含め果樹の栽培面積を五、三二六ヘクタール、果実生産一一万九、一八〇トン、一・九倍に増やす計画となつている。
  沖縄県におけるかんきつ類の栽培は、青切りみかんの出荷など急速に生産が拡大し、昭和五十五年度は五、九九〇トン、昭和五十年度の三・二倍となつた。
  本土出荷の最大の障害であつたミカンコミバエが、沖縄本島で完全に根絶されたこともあつて、農家の生産意欲が高まりつつある今日、もしオレンジなどの輸入自由化が強行されるとすれば致命的な打撃を与える。それでも止むを得ないという考えなのか。
  沖縄県の農業、生産者農家の生活と経営を守る立場に立つて、オレンジ類の輸入自由化はもちろん輸入枠拡大も断固として拒否すべきと考えるが、どうか。
三 牛肉については、政府は昨年八月に策定した第二次沖縄振興開発計画第三章「部門別の推進方針」の3「産業振興開発」の項で、温暖な沖縄県の自然的条件を生かした農業の振興をうたい「肉用牛の供給基地の形成」を強調し、肉用牛の生産振興を基本とした畜産生産基盤の整備を図るとしている。
  沖縄県は第二次沖縄振興開発計画の目標年次、昭和六十六年度には飼育頭数を八万頭とする計画を立てている。
  年中通しての草の生産が可能であり、冬期にはさとうきびの梢頭部の利用など、その自然的条件を生かした肉用牛の生産は大いに期待されている。
  ところが昭和五十二年以降の価格低迷なども影響し、飼育頭数は伸び悩み、昭和五十六年で三万一、七〇〇頭に過ぎない。
  これを打開するための対策が強く求められている。このような時に牛肉の輸入自由化、枠拡大が行われるならば沖縄県が目指す目標の達成はおろか、政府が策定した第二次沖縄振興開発計画で目標とする「肉用牛の供給基地の形成」も、実現が不可能となるのは必至である。
 1 現在、県産肉用牛のほとんどは本土に出荷されているが、牛肉の輸入自由化、枠拡大は、県産肉用牛の市場を奪い、取り返しのつかない打撃を与える。
   政府が策定し、その実施に責任を負う第二次沖縄振興開発計画を円滑に実施するためにも、牛肉の輸入自由化、枠拡大はすべきでないと考えるが、どうか。
 2 牛肉の輸入自由化、枠拡大をやめて、第二次沖縄振興開発計画が目指す肉用牛の生産振興を図ることこそが、緊急に求められている課題だと考えるが、どうか。
   政府は第二次沖縄振興開発計画に基づき畜産基地の建設、優良銘柄牛の育成、枝肉出荷体制の確立など肉用牛の生産振興を図るためにどのような具体的施策を講ずるのか、それを示されたい。
四 政府は十年間の計画期間を終了した第一次沖縄振興開発計画に引き続き昨年八月第二次沖縄振興開発計画を策定した。
  沖縄の振興開発について政府はこれまで「基地依存経済から脱却して自立経済の確立を」「農林水産業の積極的な振興をすすめるとともに製造業の振興を図ることが極めて重要である」などと強調してきた。
 1 この計画は、社会資本の整備はもとより、沖縄県の経済が二十七年間の米軍占領支配の下で第三次産業が極端に肥大化し、取り分け農業を始め第二次産業が著しく立ち遅れ、いびつな形にとどめられている現状を打開することを主眼としたものと理解しているが、どうか。
 2 沖縄県農業については、政府は特別の対策が必要であるとして沖縄振興開発計画のなかで、その振興を積極的に図ることを目標としてきたはずである。
   にもかかわらずその一方で、農産物輸入自由化、枠拡大によつて基幹作物であるパインやさとうきびに壊滅的な打撃を与えてきたのは、一体どういうことなのか。
   この責任は重大であり、政府が策定した計画に逆行するのではないか、明確な答弁を求める。
 3 しかも、今後期待されている沖縄県のかんきつ類や肉用牛までも輸入自由化、枠拡大の犠牲にしようとするに至つては絶対に許すことはできない。
   スタートしたばかりの第二次沖縄振興開発計画の目標達成について、政府は本当に責任をもつて推進する姿勢があるのかどうか、疑わざるを得ない。
   農産物輸入自由化、枠拡大のために第二次沖縄振興開発計画は犠牲にしてもよいということなのか、そうでないというならその見解を明らかにされたい。
五 沖縄県は復帰十年を経過した今日、なお農業や産業活動に必要な欠くことのできない土地や財産が米軍基地に奪われている。
  米軍基地が沖縄振興開発の大きな障害となつている。加えて政府は復帰後県民本位の産業、経済の施策を十分講じてこなかつたために農業を始め製造業など第二次産業の振興が非常に遅れ、県民生活は深刻な事態にあると指摘せざるを得ない。
  沖縄県経済、そして農業と生産者農家の生活と経営を守るために農産物輸入自由化はもちろん、輸入枠拡大、関税引下げをやめて、政府が策定した第二次沖縄振興開発計画に基づき県民本位の本格的な振興を図るべきと考えるが、これに対する責任ある見解を求めるものである。

 右質問する。



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