衆議院

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昭和五十八年一月二十五日提出
質問第四号

 新しい交通事態に対応する交通安全対策に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十八年一月二十五日

提出者  草川昭三

          衆議院議長 福田 一 殿




新しい交通事態に対応する交通安全対策に関する質問主意書


 昭和四十五年に死者一六、七六五人、負傷者九八一、〇九六人を生じてピークに達した交通事故は、交通安全対策基本法の制定を始めとする官民挙げての努力により、九年連続の減少を記録し、昭和五十四年には、事故死者をピーク時のほとんど半減と言える八、四六六人にまで抑止することができた。これは国際的にも高い評価を得たほどの大きな成果である。
 しかしながら、死者数が翌五十五年から再び増勢に転じ、八、七六〇人と前年比二九四人増、五十六年は八、七一九人でわずかに減じたものの、五十七年には九、〇七三人(前年比三五四人増)を数え、昭和五十一年以来の九千人台に達した。負傷者についても、昭和五十二年の五九三、二一一人を底として、五十三年五九四、一一六人、五十四年五九六、二八二人、五十五年五九八、七一九人、五十六年六〇七、三四六人、五十七年六二四、九七四人と毎年増加を続けており、ことに、ここ一、二年の上昇傾向が顕著である。
 このような交通事故の増勢を「第二次交通戦争」と呼ぶ向きもあり、交通安全は改めて真剣に取り組むべき国民的な課題になつている。ここにおいて着目すべきは、現在の道路交通状況は、かつてと異なる新しい事態を迎えているという点である。即ち、昭和四十五年をピークとする交通事故は、自動車の急激な普及による「第一次モータリゼーション」を背景とするものであつた。しかるに現今は、石油ショックを契機に急増した自転車、原付自転車、二輪車を加えて、「第二次モータリゼーション」が進行しているのであり、事故の増勢はこの現象に対する不適応、混乱にあるととらえることができよう。
 この新しい交通事態に対応して、効率性をも重視した「新しい交通の秩序づくり」が求められているのであり、更に、事故防止にあつては、長・中期的な観点から、これまでの交通安全諸対策を総合的に見直し、官民共に新たな対応策を生み出していくべきときと考える。
 それにはまず、現出している新しい混合交通事態を直視することである。国民の交通需要が自転車、二輪車、小型車両等ヘシフトし、多様性を増してきたことは、石油危機後の省エネルギーという社会的要請にもかない、低成長経済下では自然な選択であると認識したい。道路交通に参加する形態は、歩行者としてから大型トラックに至るまで大、小さまざまであるが、いずれも平等の市民権を持つものとして認められなければならない。
 道路交通を見る目は、従来とかく自動車と歩行者を中心にしがちであつたが、このような前提に立つて、新しい交通事態を見つめ、道路整備や安全施設といつたハード面から、法規や規制の在り方、交通安全教育といつたソフト面に至るまで、新しい視点から見直してみる必要がある。
 道路については、先進各国では、混合交通に対応する新しい形の道路整備が既に早くから実現しているし、交通参加者がその特性に応じて安全に利用できる仕組みづくりが先行している。
 例えば、オランダのデルフト方式、西ドイッの歩車共存道路、自転車とモペッド併用の特別信号燈の設置(ベルギー、デンマーク、フランス、オランダ、スウェーデン)、自転車とモペッド併用の専用道路の建設(デンマーク、フランス、スイス、イタリア、オランダ、スウェーデン)等。我が国においても、このような方向に沿い、第三次特定交通安全施設整備事業五ヵ年計画でコミュニティー道路を建設し、居住環境整備事業では、新しい生活道路の整備を進めているが、更に新たな試みが種々在り得るものと考える。
 交通安全教育については、第三次交通安全基本計画において、その重視を打ち出し、学校においても幼・小・中・高一貫した交通安全教育の充実を促しているが、その実際はまだ緒についたばかりという声を聞く。四輪運転者教育、二輪運転者教育としても、混合交通の場で安全な運転者たらしめるために一段の見直しが必要である。
 国民皆免許時代と言われるようになつた今日、従来、とかく規制と取締り、と言われてきた交通マネジメントの方向も転換期を迎えており、運転者を含めた全国民の安全に対する自覚と責任感とをいかに高めていくかという課題に、行政当局は真正面から取組むべきであると考える。
 このような背景の下に、これからの交通政策は「国民の共感と納得を得る」施策を打ち出していく必要がある。私は、本問題を関係委員会で繰り返し指摘してきたが、いまだに納得できる答弁を得ていないので、改めて交通安全対策の健全な確立を目指す立場から、次の事項について質問する。

一 右に述べたような状況、即ち、新しい混合交通時代の中で自転車、原付自転車、二輪車、原付四輪車(50ccミニカー)等をどのように位置付けるか、また、それらに対する道路や設備についてどのような方策を考えているのか、明らかにされたい。
二 現代社会においては、国民生活のすべての部分で交通とかかわらぬところは無く、全国民が交通社会の一員として、できるだけ高度な知識と教養を同じレベルで習得することが必要である。
  歩行者事故では、運転免許を持たぬ人が被害者となる率が極めて高いことから考えても、免許を保有するということが、即ち交通の場においてルールとマナーを守り、かつ、自分自身を守ることに結び付いていると思われる。
  ところで、我が国における免許制度は現在もなお国民の資格をチェックし、総量を規制するという一面を持つている。これからの考え方としては、交通社会への参加を望む国民にできるだけ門戸を広く開いて、自他の安全を確保できる運転者への「人づくり」を制度の基本とすべきであると考える。
  ことに、二輪車の免許取得に当たつては、大型二輪免許取得を厳しく抑制している上に、最近は段階的取得への行政指導が各県で行われ始めている。この施策により少年(十六、十七才)の免許取得希望者は大幅に減少するものと予測する向きもあり、二輪車経験を経ずに四輪車に移行することの交通安全教育上の損失が危惧されている。段階別指導を今後とも続けていく考えかどうか、見解を求める。
三 交通事故の主要因は、運転者自身の問題がほとんどである。運転者教育機関としての自動車教習所の役割は極めて重要であるが、新しい混合交通時代に参加する運転者の責任感と自覚を高めるための教育が、果たしてどの程度行われているのか。また、その教育方法や内容について見直すべき時期にきているのではないだろうか。
  例えば、気象・地域等による違いに対応するための生きた実践教育がなされているのか。講習の中身が画一的な内容や方法にこだわり過ぎるきらいがないか。ほんとうに民間の教習所の活力を生かすための行政指導として、教育現場の創意工夫などの意欲を生かしていく方法を採つているのか。
  ついでながら、日本の教習設備等は先進国の中でも優れていると言われているが、一方運転免許取得のための時間・費用等負担が大変高いと言われている。この頃目立つ短期合宿による運転免許取得のための教育などその矛盾の現われと憂慮するものであるが、政府の見解を併せて伺いたい。
四 学校等における交通安全教育に関して
  今や交通安全教育は国民の義務教育の重要な要素として効果的なカリキュラムが組まれ、実践されなければならないが、その行き着くところの理想像は、たとえ運転はしなくとも、免許取得可能年齢に達したすべての人々が、学校教育や専門教育機関を通して運転免許を取得できる程度の教育機会を持つことである。
 1 第三次交通安全基本計画に示されているように、今後は幼時期からの一貫した交通安全教育の充実が必要とされているが、その後関係諸機関の推進状況はどのようになつているのか。
 2 交通安全教育の在り方は、先進諸国に見られるように、幼児期からの発達段階に応じ、また、交通社会への参加形態も歩行者から自転車、二輪車、自動車へと発展する段階を踏んだ実践的な教育を行うことが望ましい。
   日本では、中・長期計画として具体的にどのような方法を考えているのか。特に幼児から小・中学校における対応についてはどうなのか。
 3 文部省の「指導要領」、「安全指導の手引き」等制度的な枠組みは、かなりの程度整つてきているが、学校内の交通安全指導の実態は、形式に流れ、指導者の意欲も近年減退してきているのではないか。
 4 西ドイツに見るように、文部大臣の指示による学校内教育体系の整備と実施方法を早急に実現させる時期と思われる。交通安全教育は生きた教育であり、相互に自他の安全を守るといつた基本的な人間教育を入れて行うことが、現在社会問題化している青少年非行への対応にもなると考えるがどうか。
 5 「三ない運動」に見る教育機会の排除と管理強化の方策は、青少年に不信、不満を与えるのみか、隠れ乗りや、締め付けの抜け道探し等の悪質な行為を助長させることになり、非建設的な方策であると思われるが、これについて政府の見解を伺いたい。
五 交通事故防止の観点から細街路対策をどう考えるのか。
  現行の道路交通法は、基本的に歩車分離を原則としている。しかし、現実の道路空間を見てみると、細街路のように分離できない所が多く、新しい秩序づくりが求められている。既に日本でも民間の地域開発において採用されているが、住宅地域の歩車共存道路の促進は今後も進めていくべきだと考えているのか。また、その推進に対する問題点を検討しているのか。
  新しい混合交通の在り方として前述した
   (1) 自転車と原付自転車の併用信号燈の設置
   (2) 自転車と原付自転車の併用道路の新設
  また、被視認性向上による二輪車事故対策としての
   (3) 安全衣類(蛍光性と反射性)の普及促進
   (4) 昼間点燈の実施
 等をどのように考えているのか、政府の具体的見解を伺いたい。
六 交通規制に関して
 1 物理的な理由による大型トラック等の乗り入れ規制や通行禁止などは理解できるが、暴走族対策としての二輪車の都心乗り入れ規制や通行禁止には問題がある。二輪車の交通自体を排除することが基本にある対策は、国民の共感と納得を得るものとは言い難い。
   交通手段としての二輪車の位置付けから見て、不平等であり、見直すべきではないか。
 2 交通事故並びに交通渋滞対策の観点から、路上の駐車規制について見直すべきときである。
   現在の都心内全面駐車禁止規制は、実情に合わないばかりか、運転者に規制への不信をいだかせるような事態を招いているように思われる。取締りや規制だけでは、道路の好ましい利用は望めない。運転者の共感を得、自覚を高めるような駐車の在り方とその指導を考えるべきときである。
 更に、最近の宅配・集配等に見られる物流の増大を考えるとき、路上における合理的な駐車政策を抜本的に見直すべきであると考えるがどうか。政府の見解を示されたい。

 右質問する。



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