衆議院

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昭和五十八年七月二十三日提出
質問第一四号

 琵琶湖の水位低下に伴う地盤沈下に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十八年七月二十三日

提出者  瀬崎博義

          衆議院議長 福田 一 殿




琵琶湖の水位低下に伴う地盤沈下に関する質問主意書


 現在進行中の琵琶湖総合開発計画は、現行プラス・マイナス三十センチメートルの利水幅をプラス一・四メートル・マイナス一・五メートルに拡大することによつて、下流に対し新たに毎秒四十トンの水を供給することを目的としている。
 この一・五メートルもの水位低下は、琵琶湖の水質悪化を招き、水産資源の減少や湖辺の自然環境破壊を一層進行させるだけでなく、周辺の地下水位低下とも相まつて、家庭の井戸水、農業用水、防火用水などの不足を引き起こすであろうことは、既に国や滋賀県の調査でも予測され、一部補償事業も実施されているところである。
 一方、地下水位低下に伴い当然予測されるところの地盤沈下については、これまで私どもの質問や要望に対して、国や県は、“予測できない”とか、“予測できても程度がわからない”などと、言を左右にし、具体的な調査や対策を避けてきた。
 ところが、このほど私どもが入手した通産省工業技術院「地質調査所月報」の昭和四十三年一月号、「滋賀県琵琶湖岸野洲川デルタの地盤に関する産業地質学的研究」によると、「湖水面の低下に伴う地盤沈下の影響」についての研究が金井孝夫氏の担当で、実際のボーリング調査を基にして進められ、「中性子水分計・γ線密度計による浅層地盤と圧密沈下の予測についての研究」と題する論文にまとめられている。この金井氏の調査研究及び論文によると、琵琶湖近くの調査地点では一・五メートルの水位低下によつて同程度の地下水低下が起こり地盤は約三十五センチメートルも沈下することが予測されている。
 私は、この調査、研究が、琵琶湖総合開発事業がスタートする以前において、しかも政府の研究機関で行われていたことから、極めて重大な問題を提起していると考える。事態の重要性にかんがみ、次の諸点について質問し、政府の具体的な答弁を求めるものである。

一 この地質調査所の調査研究と昭和四十七年三月の「申し合せ」及び琵琶湖総合開発事業との関係について
 1 この地質調査の調査研究が発表されて四年後の昭和四十七年三月二十七日、建設大臣、大蔵大臣、自治大臣、経企庁長官、滋賀県知事、大阪府知事、兵庫県知事、自民党政調会長の間で、「利用水位はマイナス一・五メートルとする」という「申し合せ」が交わされたが、
  (1) この地質調査所の調査研究を承知のうえで、あるいは検討のうえで「申し合せ」を行つたのかどうか。
  (2) もし検討したうえでというのであれば、その日時、機関、記録を明示されたい。
 2 昭和四十七年十二月の琵琶湖総合開発計画の決定にあたつて
  (1) この地質調査所の調査研究を検討したのかどうか。
  (2) もし検討したというのであれば、その日時、機関、記録を明示されたい。
二 琵琶湖総合開発事業による水位低下で発生を予測される地盤沈下が、地域の住民生活に与える具体的影響について
 1 金井氏の論文のデータによると、草津市近郊の新浜ボーリング地点では「現地下水面から一メートル低下の場合地盤沈下量一七・八センチメートル、二メートル低下では二八・二センチメートル、三メートル低下では三五・五センチメートル」となつており、北山田及び山田地点では「現地下水面から一メートル低下の場合一四・三センチメートル+α、二メートル低下では二四・八センチメートル+α、三メートル低下では三二・九センチメートル+α」となつている(αは、論文の中では推量十七センチメートルぐらいが考えられている)。
   この調査研究の目的と意義については、同氏の論文で「滋賀県琵琶湖総合開発計画(旧計画を指す)によると、……まれにではあるが、とくに湖南地域において最大マイナス三メートル低下する場合が予測されている。そのため湖水面変動が湖岸の軟弱地盤地帯にどの程度の変動を与えるかが問題となるのであるが、一つの試みとして……その実体をさぐつてみた」と述べているのである。
  (1) 従つて、利用水位マイナス一・五メートル、補償対策マイナス二メートルの現行琵琶湖総合開発において、現実にマイナス一・五メートルの水位低下が起こりうる、さらにマイナス二メートルの水位低下も可能となる状況のもとでは、この地質調査所の調査研究は当然適用される研究ではないのか。
  (2) この地質調査所の調査研究が予測している地盤沈下は、当該地域の公共施設や建造物、住民生活そのものにも重大な影響を及ぼすのではないか。考えられる影響について説明されたい。
 2 同論文では、「琵琶湖岸地帯のように『スクモ』層がレンズ状に堆積する地層変化の激しいところでは、地下水位低下にともなつて局部的な不同沈下をもたらすであろう」とまで指摘しているが、ここに指摘されている「スクモ」層は琵琶湖岸全域ではどのように分布しているのか。この調査研究が指摘する「スクモ」層で予測される「局部的な不同沈下」は、当該地域の公共施設や建造物、住民生活そのものに重大な影響を及ぼすのではないか。考えられる影響について説明されたい。
 3 同論文末尾においては「湖岸に面した北山田および山田付近は、沖積層が厚いので地盤沈下量が増大するため、湖面低下に関する工事には、これらを充分考慮する必要がある」と警告している。琵琶湖総合開発計画のなかでこの警告に該当する工事を具体的に示されたい。
 4 同論文では「湖岸周辺の軟弱地盤の分布は、かなり広範囲にわたつていることが明らかになつた。しかし、調査の時間的関係もあり、今回は草津市の草津川左岸のみで密度、含水量の計測を行つた」と述べている。従つて琵琶湖の水位低下の影響で地盤沈下を引き起こす範囲はこの調査研究の対象となつた地域にとどまらず、極めて広範囲に及ぶと考えられるのではないか。
   考えられる範囲には、新幹線、高速道路を始め、主要道路や橋梁、堤防などの治水施設、かんがい排水施設、上下水道施設など重要な公共施設が存在し、人口も集中していることから、これらの施設や住民生活のこうむる影響は具体的に検討されてしかるべきではないか。
   これは、本来琵琶湖総合開発計画策定に先立つて検討されるべき課題ではあるが、琵琶湖総合開発事業が水位低下に直接かかわる核心段階を迎えていることから、水位低下に起因する地盤沈下の影響については、影響が懸念される全範囲にわたつて、詳細かつ具体的に明らかにされるべきであり、十分な説明を、求めるものである。
三 この地質調査所の調査研究の意義について
 1 この調査研究以外に政府機関、国公立試験研究機関が行つた琵琶湖の水位低下に伴う周辺地盤の沈下に関する調査研究があるのかどうか。類似の調査研究及び論文がないとすれば、この地質調査所の調査研究は本テーマに関する極めて貴重な研究といわなければならないのではないか。
 2 この論文全体のまえがきに「この研究結果も、個々の研究としてはきわめて独創的あるいは、意欲的に進められているのであるが、全体として個々の研究結果を総合し、一〇〇%有用な結論が導きだされたというわけではない。それはなおいくつかの類似の事例を経験することを通じて達せられることと思われるが……」と述べられている。「なおいくつかの類似の事例を経験する」作業はどうなつているのか。
   こうした作業がなされていないとすれば、それは政府の無責任さのあらわれであり、他にかわりうる調査研究がない以上、現時点では「一〇〇%有用な結論が導きだされたというわけでない」にしても、個々の研究結果を最大限活用して有用な結論を導きだすべきではないのか。

 右質問する。



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