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昭和五十八年十月二十九日提出
質問第一一号

 乾燥果実に対する亜硫酸類の使用基準など、安全な食品の確保に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十八年十月二十九日

提出者  林 百郎

          衆議院議長 福田 一 殿




乾燥果実に対する亜硫酸類の使用基準など、安全な食品の確保に関する質問主意書


 昨年十一月、長野県飯田市・下伊那郡下一帯では、特産品の干し柿に大量のカビが発生し、十一億五千八百九十万円、平年の生産量の五八・七%にのぼる被害を受け(長野県農政部調べ)、干し柿生産者を始め、不況のもと、近隣商店の売上げが減少するなど、地域社会に深刻な影響をもたらした。
 このように被害が甚大となつたのは、干し柿の乾燥期に温度十五〜十九度、湿度八四〜九六%という気象条件が続いていたにもかかわらず、硫黄くんじようなど適切な指導が末端の生産農民に徹底されなかつたためであり、行政の責任は重大である。
 同時に、昭和五十七年二月十六日付厚生省令第四号及び厚生省告示第二十号で政府が行つた、乾燥果実に対する亜硫酸類の使用基準の見直しは、従来の使用基準を一挙に七十倍にも引き上げるなど、安全な食品を生産しようという農民の間に強い不信を招いているのである。
 この基準見直しは、昭和四十七年六月十六日の本院社会労働委員会における食品衛生法改正案に対する附帯決議で、「積極的に国民の健康の保護増進を図るよう努めること」、「食品添加物については、常時その安全性を点検し、極力その使用を制限する方向で措置すること」とされていることに真つ向から逆行するばかりでなく、日本国内の生産農民の要望に基づかない、アメリカ政府や輸入業者らの強い要請で行われているのである。自国の農業を発展させ、国民に適した品質の良い、安全で鮮度の高い食品の供給を保障するという政府の責任を打ち捨てるものであり、断じて許されない。
 生産農民は、「日本の農業と国民の健康を無視した外国農産物輸入拡大に道を開く政府の対応は許せない」と非難の声をあげており、一方、「災を転じて福に」ということで、長野県伊那谷を特産干し柿の産地として一層発展させようと、一致団結して積極的な努力を重ねている。
 農民の期待に応えるためにも、行政の対応と責任を明確にすることが必要と考え、以下の事項について質問する。

一 基準見直しの根拠について
 1 昭和五十七年二月二十七日付厚生省環境衛生局食品衛生・食品化学課長連名による各都道府県衛生主管部(局)長宛通知によると、乾燥果実に対する亜硫酸類の使用基準について、「輸入される乾燥果実の多様化に伴い」、「亜硫酸類の使用を認めるべきであるとの要請があり」、「衛生上の問題はないため」、使用量を従来の三〇ppmから二、〇〇〇ppmに緩和することにしたとしている。
   これは、外国からの輸入乾燥果実が多様化したため、その流通を一層促進するため、外国や輸入業者などの要請に応え、基準を緩和したと理解してよいのか。
   また、国内生産農民や消費者の立場から基準見直しの要望はあつたのか。
 2 政府は、本年五月十九日の本院物価問題等に関する特別委員会において、我が党岩佐恵美議員の質問に答え、「その添加物の安全性が従前と同じ考え方で十分に保障され、また必要性あるいは有用性といつたものが明らかに存在する場合」添加物を追加するとしている。
   今回の亜硫酸類の使用基準見直しは、新たな品目の追加ではないが、使用量を一挙に七十倍にも増やしたものであり、その根拠を明らかにすることが必要である。その安全性、必要性、有用性について具体的に明らかにされたい。
 3 国内の干し柿生産農家は、従来三〇ppmでなければならないということで、硫黄の使用については最大限の神経を使い、努力してきた。今回の見直しについては、行政担当者の中からも「なぜ改正されたのか」との疑問が出されているのである。
   なぜ従来の三〇ppmではいけないのか、明確にされたい。
 4 前記附帯決議でも、「食品添加物については、常時その安全性を点検し、極力その使用を
   制限する方向で措置すること」としている。また、「食品衛生法の運用にあたつては、単に危害の防止に止まらず、積極的に国民の健康の保護増進を図るよう努めること」としているのである。
   一方、昨年のカビ発生に対しても、硫黄くんじようを繰り返した所では被害を少なくしており、農民の間では、原則は三〇ppmとすべきであり、万一カビが発生しそうな時でも多くても一〇〇ppmもあれば十分であると言われているのである。実際農民は、二、〇〇〇ppmは必要ないとして従来の三〇ppmを引き続き守つているのである。
   国会決議からいつても、農民や消費者の要望からいつても、添加物は極力少なくすることが行政の基本とされるべきであり、先の使用基準「改正」については見直すべきと考えるがどうか。
 5 添加物の使用基準設定については、日本農業の発展と安全な国民食糧の確保という観点から、対外重視でなく、自主的な立場を明確にすべきと考えるがどうか。
二 今後の対応について
 1 カビ発生が予想される気象条件のもとで、適切な指導が末端農民にまで徹底されず、大きな被害を与えた。その反省の上に立つて、今後、乾燥技術の開発・指導、乾燥施設の整備・改善などについては、農民の要望をよく聞き、国の財政援助の拡充を含めて、キメ細かく行うべきであると考えるがどうか。
 2 干し柿など乾燥果実に対する亜硫酸類の使用基準について、諸外国が二、〇〇〇ppmから無制限という状況の中で、国内産に限つてはこれまで、農民の多大な努力で三〇ppmなど、厳しい安全基準が守られてきた。
   政府が今なすべきことは、農民や消費者の要求を無視して外国並みの基準とすることではなく、逆に安全基準を厳守し、国内農産物の安全性を政府自ら内外にアピールをして、生産
   農民を援助すべきことであると考えるがどうか。

 右質問する。





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