衆議院

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昭和五十八年十一月七日提出
質問第一五号

 私学助成の充実等に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十八年十一月七日

提出者  山原健二郎  栗田 (注)

          衆議院議長 福田 一 殿




私学助成の充実等に関する質問主意書


 大学・短大等で学ぶ学生数の約八〇%を占めるなど、我が国の教育における私立学校の果たす役割は極めて大きい。しかも、この割合は、高校、大学等で今後さらに増加すると言われている。
 ところが、私立学校の教育・研究条件は、高学費にもかかわらず、依然として劣悪なところが多い。
 我が国のこうした教育の現状を直視した場合、何よりも、私立学校の教育・研究条件の改善と教育水準の向上こそ、我が国の公教育の発展の“決め手”とも言えるのである。
 それ故、教育行政にとつて必要なことは、私立学校の「自主性を重んじ、公共性を高める」との私立学校法第一条に基づくところの施策であり、「私立学校の教育条件の維持及び向上並びに私立学校に在学する児童、生徒、学生又は幼児に係る修学上の経済的負担の軽減を図るとともに私立学校の経営の健全性を高め、もつて私立学校の健全な発達に資することを目的」(私立学校振興助成法第一条)とした、経常費補助等の私学助成費の増額である。だからこそ、昭和五十年には、私立大学への補助を「……できるだけ速やかに二分の一とする」旨の国会決議(参議院文教委員会附帯決議)もなされたのである。
 こうした方向は、我が国の教育の発展を願うすべての教育関係者、父母のコンセンサスでもある。
 しかるに、政府は、こうした国民の願いにまつたく背を向け、私学助成費の抑制、削減を強行してきている。
 このような事態を踏まえ、私学教育の健全な発展を真に願う立場から、私学助成にかかわるいくつかの問題点について、以下質問する。

一 来年度概算要求編成過程をめぐる問題について
 1 来年度概算要求での私学助成一〇%削減は、私学団体が自民党の意向に従わないことへの“制裁措置”を追認した結果であり、「文部当局としては党の御意見をも参照しながらやつたもの」(十月七日、衆院行政改革問題特別委員会)と後藤田官房長官も答えている。
   当初、五%削減を省内決定したにもかかわらず、急拠、一〇%削減に変更したのはなぜか、その経過と理由を示されたい。
 2 政権与党といえども、教育への不当な介入、支配は許されない。政党が自らの意向を教育関係団体に押し付け、それに従わなかつたからといつて、予算の削減等をすることは、教育基本法第十条で厳に戒めている「不当な支配」に当たり、いかなる場合といえども許されないと考えるがどうか。
 3 とくに、自民党側が示した四項目要請の第一項目には、私大連盟、私大協会、私学懇話会の三団体統合問題があるが、これは極めて重大である。なぜなら、団体統合は、それぞれの団体の自主性にかかわる問題だからである。そうした重大問題が、予算計上の“踏み絵”にされるとしたら、憲法に保障された結社の自由も存在しないことになるではないか。
   一体、文部省は、自民党がかかる三団体統合問題を概算要求の条件にしていたことを承知のうえで、一〇%削減を行つたのかどうか、答えられたい。また、私大連盟、私大協会、私学懇話会の三団体統合についての政府の見解を示されたい。
 4 自民党政調副会長西岡武夫氏名による「私学政策に関する基本姿勢について ― 五十九年度私学予算概算要求にあたつて、自民党はなぜ厳しく対応したか―」(以下西岡文書という。)という文書が存在するが、政府はそのことを承知しているか。
 5 この西岡文書によると、私学振興財団設立当初から、私学による「私学振興財団の自主運営」の方向があつたとされている。この「自主運営」とは、「私学に対する国の助成費の交付基準の決定と交付事務を私学自身にゆだねる」もので、その「大前提として、全私学の真の統合による統一団体」があるとしている。同文書は、「この問題について、自民党と文部省の方針が一致しないことは絶対にない」と断言しているのである。
   この内容は事実かどうか、私学振興財団設立当初の論議も踏まえて詳細に答えられたい。また、事実ならば、なぜ私学経営者団体の統合が「自主運営」の大前提なのか、その理由を示されたい。
 6 自民党は、さきに示した四項目について、私学団体側が誠意ある回答を示した場合は、私学助成費一〇%削減を取りやめ、文部省が当初要求した五%削減に戻す意向だと言われる。
   政府は、このような自民党の意向に従つて、私学助成費の予算編成を行うつもりかどうか。
二 教育の機会均等の保障について
  私学助成費の削減は、学費の高騰をもたらし、著しく教育の機会均等を形骸化させる。既に、私立大学の学費(初年度納付金)は、本年度平均で約八十五万円に達し、勉学を継続するに必要な生活費の高騰と相まつて、その父母の苦労は大変である。私学助成の一〇%削減はこうした傾向に拍車をかけることは明らかである。
 1 政府は、こうした私大の高学費化が好ましいものと思つているのかどうか。また、授業料、学費の性格をどう考え、どうあるべきと考えるか。
 2 文部省はこれまで再三再四、「私学助成は拡充する」と答弁しているが、それが偽りでないのなら、私学助成の削減はやめ、昭和五十年の国会決議に沿つて、経常費の二分の一補助を目指した私学助成計画を策定し、実施すべきであるがどうか。また、当面の措置として、学費値上げをストップさせるための緊急補助を行う意思はないか。
 3 私学の学費値上げが私学助成の増額と無関係に行われる背景には、授業料等の値上げに伴う学則変更が、文部省への届出だけで簡単にできるという事情がある。
   従つて、国立学校の授業料、入学料、検定料については法定化し、私立大学の学費については、私立大学審議会の議を経て、文部大臣が認可するという方向をとるべきだと思うがどうか。検討する意思もないのかどうか、答えられたい。
三 私大等の「正常化」について
  九州産業大学の「補助金不正受給」事件や国士館大学での殺人事件にみられるような不正常で異常な事態は、設置者たる理事長などが教学面に介入、支配し、事実上、専断体制を敷くなど、およそ公教育機関とは言い難い非民主的な管理運営を行つているところにその原因がある。我が党も、国会で繰り返しその是正を求めてきたところであり、文部省も、教学権の確立の重要性については認めてきたはずである。ところが、文部省の改善措置は、私学助成の停止処分などにとどめるなど、不正常な大学等を真に公教育機関として再建させるようなものとはなつていないのである。
 1 理事長などの専断体制を排するため、学校教育法に基づいて、私立大学には各学部ごとに教授会をきちんと置き、その教授会に入退学者の決定権やカリキュラム決定権など法律に定められた教学に不可欠な権限を与えるようにするとともに、教育公務員特例法を準用し、教員人事権を与えるようにするなど、大学にふさわしい管理運営体制を整備することが必要であると考える。
   そのために、通達を出すなり、法に基づいて不正常な大学に改善命令を出すなど適切な行政指導を行うべきだと思うがどうか。
 2 「不正事件」が後をたたない要因は、経理が国民に公開されず、従つて、国民的意味での「監査」や大学の教職員や学生による「学内監査」を受けていないところにあると考える。この経理公開は、今や国民的世論となつており、その必要性については、行政管理庁の私学に関する行政監察報告書でも指摘しているところである。
   従つて、最低でも、今日、文部省に提出されている財政報告文書を関係者が誰でも見られるよう、各大学に閲覧させるとともに、文部省でも閲覧できるようにするなど、経理公開に踏み切るべきだと思うがどうか。その意向なしとするなら、その理由を明確に示されたい。
 3 九州産業大や国士館大でも、問題のある大学に共通していることは、自民党などへの政治献金を行つていることであり、文部省や私学振興財団などの役員等に対する「もてなし」がいつも噂されていることである。現に、九州産業大事件では、私学振興財団の一課長が退職している。
   政府は、私立学校(学校法人等)からの「政治献金」や「もてなし」は妥当だと考えているのかどうか。もし、「妥当でない」のなら、それを禁止するためどのような措置を講じてきたのか。また、講じようとしているのか、明らかにされたい。
 4 学校法人や学校当局自身が、特定政党員の獲得を指示したり、同窓会等に働きかけるなどの事例が多々あるが、このような特定政党への支持、投票を呼びかけたりすることは、教育基本法第八条第二項違反であると考えるが、見解を示されたい。また、かかる違反行為をなくすためにどのような措置を講じているのか答えられたい。
 5 私学助成の配分方式を、臨調答申のいう「教育研究プロジェクト重視」の方式に変更するべく検討中と言われるが、この配分方式は、配分側が「適正」と考えるものに助成を厚くするものとなり、結局は、大学の教育研究への不当な介入につながるのではないのか。政府は、そのような方向をとろうとしているのかどうか、明確にされたい。
   今日、私学助成の配分にとつて必要なことは、臨調答申に沿つてではなく、授業料など学費の抑制、教育・研究条件の改善(格差の是正)などに努力している大学にこそ厚くすべきだと考えるがどうか。

 右質問する。



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