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昭和六十年五月二十二日提出
質問第三四号

 東大農学部コンピューターの民間企業による不正使用問題に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和六十年五月二十二日

提出者  矢山有作

          衆議院議長 坂田道太 殿




東大農学部コンピューターの民間企業による不正使用問題に関する質問主意書




 新聞報道によれば、東京大学農学部・生物環境制御システムセンター(以下「CERES」と略す。)が、年間約二千八百万円のレンタル契約によつて、一九八二年四月、日本電気株式会社(以下「NEC」と略す。)から導入した研究用中型コンピューターが、NECの社員等によつて自身の業務のために、納入後長期間にわたつて不正使用されていた疑いが指摘されている。報道によれば、同コンピューターを不正使用したNEC関係者は延べ千七十三人、不正使用した期間は二年九ヵ月に及んだと言われている。
 これに対して東大農学部では、さきに電子計算機利用実態調査委員会を設置、本年五月四日付で調査報告書を公表した。だが、関係者の証言によれば、この調査では、数々の疑惑を解明する証拠資料が多数保存されているにもかかわらず、それらに対する実地調査をほとんど行わないまま報告書が作成されたと言われている。事実、この事件に関連して、会計検査院の検査をごまかすための書類操作が行われていた疑いがあるにもかかわらず、同調査はその点に一切触れていないなど、疑惑は深まるばかりとなつている。
 東大農学部では、一九七六年にも農業工学科教授の論文盗作事件が問題になつたことがあり、その他、文部省のエネルギー特別研究や農水省のグリーン・エナジー計画にからむずさんな研究が明るみに出るなど、かねてから異常な体質が指摘されてきている。
 特に今回の場合、国費の不正使用というにとどまらない重要な問題を含んでいると思われ、その実態解明は緊急を要すると考える。
 従つて、次の事項について質問する。

一 当方の調査によれば、問題となつている東大農学部の研究用コンピューター「ACOS350」の前機種として、一九七八年一月、同じくNECから導入した「ACOS400」については、農学部計算機委員会が機種選定を行つた経緯があり、今回のコンピューター導入についても同委員会が一九八〇年より機種選定作業をすすめていた。それにもかかわらず、同年十一月に至り、この選定作業は突如として中止を命ぜられ、機種選定作業はCERESの運営委員会の場に移されるという奇妙な経緯が、今回のコンピューターについては、そもそも初めから起こつている。
  これについて、その正確ないきさつ及び機種選定の権限が農学部計算機委員会からCERESの運営委員会に移された理由を明らかにされたい。
二 東大農学部コンピューターの後継機種として、問題のNECの「ACOS350」が決定されたのは、一九八一年十月十三日のCERES運営委員会の場においてであつた。この時の同機種のシステム構成と選定の理由はどのようなものであつたか。
三 当方の調査によれば、一九八二年四月に東大農学部に実際に納入された「ACOS350」システムは、当初運営委員会で決定されたシステムと比べると、メモリー容量、ディスク容量などが大幅に削減されたものであつた。この事実を理由として、NECは社員等による長期間の使用を、コンピューターの性能を点検するための「負荷テスト」であつた旨主張するが、この主張が仮に事実としても、延べ十三ヵ月にもわたつて負荷テストを行わねばならないような欠陥システムが納入されたのは何故か。
四 一九八二年四月にレンタルが開始されて以後も、「ACOS350」本体は稼動しない部分がかなりあり、ミニコンピューター「MS50」と「MS30」の利用者への公開は半年間も行われなかつた。しかも、「MS30」に至つては約二年間も正常に稼動しなかつた。農学部の「電子計算機利用実態調査委員会報告書」(以下「報告書」と略す。)は、「MS50」、「MS30」がNECからのサービスとしての無償貸与である旨記しているが、「ACOS350」は「MS50」、「MS30」と一体となつたシステムとして導入したものであることから考えて、これは事実に反すると思うが、どうか。
  更に、この稼動していない期間も大学がレンタル料を支払い続けたことは、国費の不法支出と言わざるを得ない。明確な回答を求める。
五 報告書によれば、NEC関係者が東洋大学入試用のソフトを使用して東大農学部コンピューターを稼動させていたことについて、NEC側は、「(東洋)大学のソフトを利用したACOS350システムの負荷テスト」であつたと説明している。しかし、業界の常識から言つて、こうしたテストは納入前に行うべきものであつて、いやしくも納入後に納入先で行うべきものではない。しかも今回の場合、四ヵ月間にもわたる長期、大量の使用が行われたにもかかわらず、その使用に関するNEC側と東京大学側との事前打ち合わせ及び計画書又は事後報告書の提出は行われていない。
  更に、このとき使用された東洋大学入試用のソフトは、同時期NECが東洋大学から開発を受注していたものであり、その上、報告書も認定しているとおり、東洋大入試用ソフトを使つて東大農学部コンピューターを使用していた人物がNECの同ソフト開発チームのメンバーであること、NECが同ソフトを東洋大学に納入した時期と農学部における使用が終了した時期が一致していることなどから考えて、この時期のNECによる農学部コンピューターの使用は、NECの主張するような「負荷テスト」などではなく、まさにNECが自社業務として受注した東洋大学入試用ソフトを東大農学部コンピューターを使つて開発していたものと考えざるを得ない。事実はどうか。
六 大阪酸素工業K・Kのソフトを使つたNECによる農学部コンピューターの使用についても、報告書によれば、NEC側は、「(大阪酸素の)ソフトを利用したACOS350システムの限界テストであり、しかもそれは空時間を利用して行つたもの」だと説明している。だが、これについても打ち合わせ、報告書の提出が行われていないこと、ソフトの内容、開発担当者、納入の時期が一致していることなど、事情は右の五の場合と同様である。しかもこの場合、他の使用者によるコンピューター使用を禁止した上でなければできないはずの「限界テスト」が、一研究生による計算の実施と同時並行して、NECが割り込む形で行われており、この点からしても、この時期のNECによる使用は「限界テスト」ではなく、NECが自社業務として受注した大阪酸素用ソフトの開発を、東大農学部コンピューターを使つて行つていたものと考えざるを得ない。事実はどうか。
七 一九八四年十月〜十二月の農学部のコンピューターの使用について、報告書によれば、NEC側は、「農学部研究室のオフィス・オートメーション化のために、N1システム(現在大学間で行われている情報網システム)を改良する業務」であつたと説明している。だが、「N1ネット・ワーク」システムは、まさに当時、NECが自社業務として開発中であつたソフトであり、いまだ開発されていないものを「改良」するということは論理上あり得ず、ここでもNECは自社のソフトを東大農学部コンピューターを利用して開発していたものと思われる。このことは、保存されているプリンター出力リスト、コンソールリスト、ディスクパック等を調査すればわかることなので、事実を明らかにされたい。
八 報告書の言う「昭和五八年十月から五九年五月にかけての、一研究課題による約一、八七五時間……の集中利用」とは、当時東大農学部に勉学のため内地留学していた一高校教諭の研究を指しているものと思われる。同教諭がコンピューターをこのような長時間利用していたのは、どのような研究上の必要に基づくものであつたのか。また、それによる研究成果はどのようなものか。
九 報告書によれば、一九八四年十一月にNECはCERESの通常業務に十九名を派遣したことになつているが、当方の調査によれば、この月は「MS30」を除いて農学部関係者によるコンピューターの利用は行われず、NECから支援を受けた研究者はいなかつた。この十九名はCERESでどのような業務を行つていたのか。
十 NECによる関係者への説明によれば、問題のNECの農学部コンピューターの使用は、元技官・四宮大典氏からの要請に基づくものだとされている。だが、このような要請などの権限はセンター長又は運営委員会に属するものであつて、もし四宮氏が独断でこのような要請を行つたとすれば、それは同氏の職務上の権限の逸脱と言わざるを得ない。この要請についてセンター長は了解していたのか。

 右質問する。





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