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昭和六十年六月二十五日提出
質問第四五号

 自動車販売業界の悪徳商法に対する関係当局の指導等に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和六十年六月二十五日

提出者  柴田睦夫 中川利三郎 野間友一 経(注)幸夫 藤木洋子

          衆議院議長 坂田道太 殿




自動車販売業界の悪徳商法に対する関係当局の指導等に関する質問主意書


 自動車販売業界(以下「自販業界」という。)では、自動車関係諸税の詐取をはじめ、諸費用の不法不当徴収などさまざまな悪徳商法が横行し、各地でユーザーからの不当利得返還請求や損害賠償請求が相次ぎ、なかには刑事告訴・告発事件にまで発展している例も出ている。悪徳業者は、アウトサイダーから、トヨタ・日産などメーカー系列のディーラーにまで及び、これによる被害者は、日本自動車ユーザーユニオンなどの推計によると、年間数百万人、被害総額は年間五千億円余の巨額にのぼると見込まれ、また、一部の善良な業者にも多大の迷惑を及ぼしている。
 われわれは、かかる悪徳商法からユーザーの利益と善良な業者の営業を守るため、本院予算委員会をはじめ、決算、法務、地方行政、商工の各委員会で連続的に取り上げ、通産省など関係当局による厳重な指導・監督の実施等をくり返し要求してきた。だが、この問題に対する関係当局の指導・監督等は無いに等しく、この業界の悪徳商法は、事実上野放しにされている。
 そこで以下、この問題に対して政府がどう対処していくのか、具体的に質問する。

一 自動車重量税の詐取(ユーザーの被害は年間五百億円余)について
  自動車重量税は、自動車の重さに応じて課税される国税で、車検時に一括納付することとされ、車検有効期間中に廃車したり、名儀変更を行つても還付されず、従つて、中古車購入者は車検残期間に相応する自動車重量税を新たに課税されない、いわば“払い切り”の税金とされている。
  ところが自販業界では、中古車購入者から車検残期間を案分した自動車重量税に相応する金員を「法定費用」とか「自動車重量税」などの名下で徴収し、これを詐取するなどという悪徳商法が横行している。
 (1) 本件詐取問題についてわれわれは、通産省などに対し、千都日産モーター(千葉県)がK(千葉県在住)というユーザーから一万四千百七十五円の金員を「自動車重量税」名下で詐取していた例や、マツダファミリア城西(東京都)がF(埼玉県在住)というユーザーから一万四千七百円の金員を、ケーユー商事(東京都)がS(神奈川県在住)というユーザーから一万千五百五十円の金員を、それぞれ「自動車重量税」名下で詐取していた例などを示し、かかる悪徳商法の実態を調査するよう要請しておいた。だが、これに対して通産省は、「現在当省においてディーラーに照会中でございまして、回答が得られました段階で別途御報告申し上げたい」(本年三月七日の本院予算委員会第六分科会での木下機械情報産業局長の答弁)とこたえたが、その後催促してもなんの報告もない。
     この際政府は、通産省など関係当局をして自販業界におけるかかる悪徳商法の実態を調査せしめ、その結果を明らかにすべきであると考えるがどうか。
 (2) われわれは、本件詐取によるユーザーの被害は、年間五百億円余にのぼると推計しているが、政府はどうみているか。通産省など関係当局でユーザーの被害を推計したものがあれば、その推定被害額と推計根拠を明らかにされたい。
 (3) 本件詐取が刑法上の詐欺、民法上の不法行為に該当することはもとより、自動車業における表示に関する公正競争規約(公正取引委員会告示、以下「自動車業公正競争規約」という。)に違反することは明白であると考えるがどうか。
 (4) 本件詐取について通産、運輸両省は、関係業界に対する「車検残のある中古自動車販売における『自動車重量税』の取り扱いについて」(本年一月十一日付)の担当課長連名通達で一定の是正指導を行つた。だが、少なくない業者(例えば、トヨタオート茨城など)が、「この通達は表示の方法を改めよというもので、車検残期間を案分した自動車重量税相応の金員を徴収するなとか、すでに徴収ずみの『自動車重量税』名下の金員をユーザーに返却せよとは言つていない」などとうそぶき、「自動車重量税」名下の金員詐取を継続し、ユーザーの返還請求を拒み続けている。政府は、こうした事態を野放しにしておいていいというのか。
     この際政府は、通産省など関係当局をして、業者が「自動車重量税」名下で詐取した金員を直ちにユーザーに返却するよう関係業界を厳重に指導すべきであると考えるがどうか。
二 自動車取得税の詐取(ユーザーの被害は年間五百億円余)について
  自動車取得税は、自動車の取得者に課税される地方税で、@申告納付の方法により徴収する、A課税標準は自動車の取得価額とする(取得価額が三十万円以下のものは非課税)、B税率は自家用五%、営業用三%、C納税申告書には取得価額を証する契約書等を添付する、―― こととされている。
  ところが、徴税現場では、自治省税務局長通達等によつて、実際の取得価額を大幅に下まわる「課税標準基準額」(無償でなされた取得などのさいの最低のみなし価額)を課税標準にして徴収するとか、納税申告書に契約書等を添付させない(地方税法違反)、業者による税務書類の作成・届出の代行(税理士法違反)を公認する、領収証を納税義務者本人ではなく業者に交付するなどという法違反の実務が常態化している。
  自販業界では、こうした法令と実務とのギャップにつけこんで、自動車取得税の納税義務のないユーザーから「自動車取得税」名下の金員を詐取したり、過大な「自動車取得税」名下の金員を徴収して納税額との差額を着服(詐取)するなどという悪徳商法が横行している。
 (1) 本件詐取問題についてもわれわれは、通産省などに対し、トヨタオート多摩(東京都)がY(東京都在住)というユーザーから三万千九百円の金員を「自動車取得税」名下で詐取していた例や、日産プリンス千葉販売(千葉県)がW(千葉県在住)というユーザーから一万九千二百五十円の金員を、マツダオート東京(東京都)がT(東京都在住)というユーザーから一万七千九百円の金員を、それぞれ「自動車取得税」名下で詐取している例などを示して、かかる悪徳商法の実態を調査するよう要請しておいた。これに対して通産省の木下機械情報産業局長は、「できるだけ早く調査いたして、どういうことになつているか調べてみたい」(本年四月十二日の本院商工委員会での答弁)とこたえたが、その後催促してもいまだに調査結果の報告がない。
     この際政府は、通産省など関係当局をして、自販業界におけるかかる悪徳商法の実態を調査せしめ、その結果を明らかにすべきであると考えるが、どうか。
 (2) われわれは、本件詐取によるユーザー全体の被害は年間五百億円余にのぼると推計しているが、政府はどうみているか。通産省など関係当局でユーザーの被害を推計したものがあれば、その推定被害額と推計根拠を明らかにされたい。
 (3) 本件詐取が刑法上の詐欺、民法上の不法行為に該当することはもとより、自動車業公正競争規約に違反することは明白であると考えるが、政府の判断はどうか。
 (4) 本件詐取について自治省の前川府県税課長は、これは「現在の課税の仕組みを悪用した不正行為といわざるを得ない」とし、関係業界に対し「自動車取得税に関する税務の取り扱いについて、厳正適正を期するよう厳重に改善方を申し入れた」(本年四月十二日の本院商工委員会での答弁)とこたえたが、当該申し入れに対して関係業界はどのような改善措置を講じたか。その内容を明らかにされたい。
 (5) 本件詐取の最大の温床の一つとなつている法令と徴税実務とのギャップについて自治省の矢野税務局長は、「納税義務者にどれだけの税金を納めたかということが明確になるような手続を、課税事務の簡素化というようなことも十分考えながら検討してみたい」とか、現行の徴税実務が「果たして法令にこれが準拠して行われているのかどうか、かなり便宜的な扱いではないのか、むしろその辺を法令においてはつきりさせるべきだという点につきましてはよく検討したい」(本年四月十六日の本院地方行政委員会での答弁)とこたえたが、自治省がこれまでに行つた検討の概要と、政府として今後この問題にどう対処していくのかその対処方針を明らかにされたい。
 (6) 本件詐取について通産省は、「そういつた事実が現実として行われておるとすれば、非常にこれは重大な事態でございますから、適切に業界と連絡をとりながら対応しなければならない」(本年四月十二日の本院商工委員会での村田通産相の答弁)とか、関係業界に対し「所要の指導等適切な対応をやつていきたい」(同委員会での木下機械情報産業局長の答弁)とこたえたが、その後、関係業界に対してどのような指導を行つたか、それに対し業界はどのような是正措置を講じたかを明らかにされたい。あわせて、政府としてこの問題にどう対処していくのか、その対処方針を明らかにされたい。
 (7) この際政府は、通産省など関係当局をして、「自動車取得税」名下で詐取した金員を直ちにユーザーに返却するよう関係業界を厳重に指導すべきだと考えるが、どうか。
三 自動車税の詐取とその還付金の着服(ユーザーの被害は年間七百八十億円余)について
  自動車税は、自動車の用途や排気量等によつて課税される地方税で、@徴収は普通徴収(徴税吏員が納税通知書を当該納税者に交付することによつて地方税を徴収すること)の方法による、A賦課期日は毎年四月一日で、納期は五月中、B賦課期日後に納税義務が発生した者にはその翌月から課税する(納税義務発生当月は課税しない)、C賦課期日後に同一都道府県内で所有者の変更が行われた場合、当該変更はその年度末に行われたものとみなす(当該年度は新所有者には課税しない)、D所有者の変更が一の都道府県から他の都道府県にまたがつて行われた場合、前所有者には当該変更の翌月から年度末までの自動車税を月割りで還付する、―― という仕組みになつている。
  自販業界では、こうした複雑な税の仕組みを悪用し、新車購入者から購入当月分の「自動車税」を徴収(詐取)するとか、納税義務のない中古車購入者から「自動車税」名下の金員を徴収(詐取)する、下取車を出したユーザーに還付すべき還付金(下取車が他の都道府県のユーザーに販売されたとき)を着服するなどという悪徳商法が横行している。
 (1) 本件詐取についてもわれわれは、通産省等に対し、トヨタオート茨城(茨城県)がS(茨城県在住)というユーザーから「自動車税」名下で三万千六百二十五円の金員を詐取している例や、日産プリンス埼玉(埼玉県)がH(埼玉県在住)というユーザーから一万三千百六十円の金員を、東京マツダ販売(東京都)がO(東京都在住)というユーザーから三万四千五百円の金員を、それぞれ「自動車税」名下で詐取している例などを示して、かかる悪徳商法の実態を調査するよう要請しておいた。だが、今日に至るも、通産省等から何の報告もない。
     この際政府は、通産省など関係当局をして、自販業界におけるかかる悪徳商法の実態を調査せしめ、その結果を明らかにすべきだと考えるがどうか。
 (2) 還付金の着服についても、例えば日産プリンス東京(東京都)がK(東京都在住)というユーザーから中古車を下取りした際、譲渡証明書等の作成にまぎれて自動車税の還付請求の委任状を無断で作成して還付金を着服するなどという例が横行している。
     この際政府は、通産省や自治省など関係当局をして、かかる還付金着服の実態を調査せしめ、その結果を明らかにすべきだと考えるがどうか。
 (3) われわれは、本件不正によるユーザー全体の被害は、年間、自動車税の詐取関係で四百三十億円余、還付金の着服関係で三百五十億円余、合計七百八十億円余にのぼると推計しているが、政府はどうみているか。通産省など関係当局でユーザーの被害を推計したものがあれば、その推定被害額と推計根拠を明らかにされたい。
 (4) 本件不正が刑法上の詐欺・横領、民法上の不法行為に該当することはもとより、自動車業公正競争規約に違反することは明白だと考えるが、政府の判断はどうか。
 (5) 各都道府県の自動車税事務所等において、少なくとも、@納税通知書を法令どおり納税義務者に確実に交付する、A還付の事実とその金額を納税者本人に知らせる、―― という当然の措置が講ぜられるならば、業者が「自動車税」名下で金員を詐取したり、還付金を着服するなどという不正が大幅に減少することはまちがいない。
     この際自治省は、こうした方向で各都道府県を指導すべきだと考えるがどうか。
 (6) 政府は、本件不正についても、通産省など関係当局をして、これを直ちに中止し、ユーザーから詐取、横領した金員を直ちに返却するよう関係業界を厳重に指導すべきであると考えるがどうか。
四 自賠責保険料の詐取等(ユーザーの被害は、年間六百五十億円余)について
  自販業界では、自賠責保険をめぐつても、ユーザーの多くが自賠責保険料は掛け捨てと思いこんでいるのにつけ込んで、下取車を出したユーザーに保険未経過期間に対応する返戻保険料を返却しないで着服するとか、保険契約の名儀人を前所有者のままにしておいて(前所有者から権利譲渡を受けているから、次の所有者は改めて保険料を支払う必要がない)、当該中古車購入者から保険未経過期間を案分した金員を「自賠責保険料」名下で詐取するなどという悪徳商法も横行している。
 (1) 本件不正についてもわれわれは、千都日産モーター(千葉県)がK(千葉県在住)というユーザーから三万千七百六十円の金員を「自賠責保険料」名下で詐取していた例や、大曽根モータース商会(愛知県)がK(愛知県在住)というユーザーから二万四千四百九十円の金員を、オートラマ(京都府)がK(京都府在住)というユーザーから三万三千七百五十円の金員を、それぞれ「自賠責保険料」の名下で詐取している例などを示し、かかる悪徳商法を根絶するよう要請しておいた。
     これに対して運輸省の服部地域交通局長は、“現在なおこうした事例があることは遺憾だ”とし、今後“流通過程の円滑化、消費者保護の見地から通産省と相談してせいいつぱい取り組みたい”(本年六月十二日の本院決算委員会での答弁要旨)とこたえたが、その後どのような取り組みをし、今後、どのような取り組みをしていくのかを明らかにされたい。
 (2) われわれは、本件不正によるユーザーの被害は、年間六百五十億円余にのぼると推計しているが、政府はどうみているか。運輸省など関係当局でユーザーの被害を推計したものがあれば、その推定被害額と推定根拠を明らかにされたい。
 (3) 本件詐取が刑法上の詐欺、民法上の不法行為に該当することはもとより、自動車業公正競争規約に反し、返戻保険料の着服が刑法上の横領、民法上の不法行為に該当することは明白であると考えるが、政府の判断はどうか。
 (4) 政府は、本件不正についても、運輸省など関係当局をして、これを直ちに中止し、ユーザーから詐取、横領した金員を直ちに返却するよう関係業界を厳重に指導すべきだと考えるがどうか。
五 その他の悪徳商法(ユーザーの被害は年間二千七百億円余)等について
  自販業界では、税や保険以外の分野でも、例えば、@ユーザーの依頼や明白な同意もなしに下取車の査定料等を一方的に不法不当に徴収する、A公正証書を作成していないのに「公正証書作成費用」名下の金員を詐取する、Bユーザーが店頭に自分で車を引き取りに行つているのに「納車費用」名下の金員を徴収する、C行政書士の報酬を大幅に上回る費用を徴収して登録関係書類や車庫証明関係書類の作成・届出を代行する、Dオートローンの実質年率を表示しない、Eローンの利息とは別にクレジット手数料やクレジット文書作成費用を徴収する、などという悪徳商法も横行している。
 (1) われわれは、かかる悪徳商法によるユーザーの被害は、年間、前記@からCだけで合計二千七百億円にのぼると推計しているが、政府はどうみているか。通産省など関係当局でユーザーの被害を推計したものがあれば、その推定被害額と推計根拠を明らかにされたい。
 (2) かかる悪徳商法が、刑法や民法、割賦販売法、自動車業公正競争規約などの法規にふれることは明白であると考えるが政府の判断はどうか。
 (3) 自販業界で横行している各種の悪徳商法について村田通産相は、“関係業界に諸費用の徴収について総合的な検討をおこなうよう要請しており、この結果をふまえて適正に対処していきたい”(本年六月十二日の本院決算委員会での答弁要旨)とこたえたが、今後の対処方針とスケジュールを明らかにされたい。
 (4) 自販業界では、ユーザーから詐取、横領した金員をウラ利益として処理し、大規模な脱税が行われているという。
     政府はこのさい、国税庁をして、この業界に対し、本格的な税務調査を実施せしめるべきだと考えるがどうか。
 (5) 刑事告訴・告発事件にまで発展した悪徳商法事案に対する検察当局の対応には問題がある。例えば、前記ケーユー商事の事案の場合、事京地方検察庁八王子支部は、町田警察署から約六ヵ月前に送検を受けながら、今日に至るも、本人及び関係者から事情聴取さえ行つていない。検察当局のこの姿勢は、ユーザーの被害の実態認識がなく、これを軽視するものと言わざるを得ない。政府は、こうした由々しい事態が放置されていても良いと思うか、政府の所見を明らかにされたい。
 (6) この業界で長期にわたつて反復、継続されてきたかかる悪徳商法については、わが党や日本自動車ユーザーユニオンなどが具体的事実を示して抜本的な対策を講ずるようくり返し要求してきたが、通産省など関係当局はその場しのぎの対症療法的な対策しか講ぜず、ユーザーの被害を拡大せしめてきた。政府は、何らの責任も感じないか。
     この際政府は、自販業界で横行している各種の悪徳商法を根絶し、その再発を防止するため総力をあげた取り組みを行うべきではないか。

 右質問する。





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