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昭和六十一年五月二十二日提出
質問第二五号

 安全保障会議等に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和六十一年五月二十二日

提出者  矢山有作

          衆議院議長 坂田道太 殿




安全保障会議等に関する質問主意書


 安全保障会議設置法案(以下「法案」と言う。)に関連して、次のとおり質問する。

一 五月八日の内閣委員会において私が指摘した、昭和三十五年当時、国防会議事務局内に設置されていた「心理戦研究会」について、次の事項を明らかにされたい。
 (1) 設置の目的及び根拠
 (2) 設置及び解散年月日
 (3) 構成員の氏名及び役職名
 (4) 「心理戦機構に関する研究」以外に報告書を作成していれば、その名称
 (5) 主な活動内容
二 五月八日の質疑で私が指摘したように、昭和三十六年七月十八日の国防会議及び閣議で決定された「第二次防衛力整備計画について」には、次のような秘密の了解事項が付されていたことが明らかになつている。
  「国民の防衛意識の高揚、基地対策、関係諸法令の整備、冷戦対策の推進、防衛産業の育成等に関する施策に努め、必要物資の備蓄、道路の整備、その他運輸、通信、建設、教育、科学技術関係の諸計画に国防上の配慮を加えるとともに全国的規模における民間協力組織について検討を行うものとする」
  これについて
 (1) この了解事項の閣議での扱いは、「閣議決定」「閣議了解」「閣議報告」のうちのどれか。国防会議での扱いはどうか。
 (2) 昭和三十五年から昭和四十九年の間に行われた閣議決定のうち、不公表とされている閣議決定の各年毎の件数はいくつあるか。
三 国防会議事務局によれば、今回の「法案」に関連して、同事務局の三井参事官らが昨年、調査のため米国を訪問したという。このことについて、次のことを明らかにされたい。
 (1) 訪問の目的及び成果
 (2) 訪米団の人数及び構成
 (3) 出発及び帰国年月日
 (4) 米国での訪問先
 (5) 今回の「法案」に関連して、米国以外にも訪問した国があれば、その国名
四 政府のハイジャック等非人道的暴力防止対策本部が行つた次の四つの決定について、それぞれの全文及びその閣議決定等の年月日を明らかにされたい。
 (1) 「ハイジャック等防止対策について」(昭和五十二年十一月八日決定)
 (2) 「ハイジャック等に対する対処方針」(昭和五十三年八月二十五日決定)
 (3) 六月十四日決定)
 (4) 「ハイジャック等非人道的暴力防止対策について」(昭和五十六年九月二十六日決定)
五 ハイジャック等非人道的暴力防止対策本部の本部会議、幹事会、関係省庁会議の、それぞれの構成員を明らかにされたい。
六 内閣官房の説明によれば、ハイジャック対処に関しては既にマニュアルが存在していると言うが、それについて次のことを明らかにされたい。
 (1) マニュアルは何種類作成されているのか。
 (2) それぞれの名称
 (3) それぞれの内容
 (4) ハイジャック対処以外で、緊急事態対処のマニュアルが作成されているものとしては如何なるものがあるか。
七 今回、内閣官房の内閣審議室を内政調整室、外政調整室、安全保障室に再編するのに対応して、総理大臣官房審議室も同じく、内政調整室、外政調整室、安全保障室に分割する計画があると承知しているが、具体的にはどのようなことを考えているのか。
八 塩田政府委員は、「従前の国防会議で取り扱つたことはそのまま安保会議で取り扱うようになります」(四月二十二日、衆議院内閣委員会)と述べているが、このことは、次のものもそのまま安全保障会議に引きつがれることを意味するのか。
 (1)昭和四十七年十月九日閣議決定「文民統制強化のための措置について」の第一項
 (2)昭和五十一年十一月五日閣議決定「防衛力の整備内容のうち主要な事項の取扱いについて」
九 昭和五十一年十一月五日閣議決定「防衛力の整備内容のうち主要な事項の取扱いについて」で指定されたもの以外に、これまで国防会議又は閣議によつて、防衛庁設置法第六十二条第二項第五号の「その他内閣総理大臣が必要と認める国防に関する重要事項」に該当する事項として指定されているものには何があるか。また、それ以外で、慣例的にこの「国防に関する重要事項」として扱われ、あるいは扱われることになつているものには、何があるか。
十 今日までに、防衛庁設置法第六十二条第三項に基づいて、国防会議が内閣総理大臣に対して意見を述べた例はあるか。
十一 後藤田官房長官は、関東大震災級の大災害に際して、「災害対策本部で、それじや自衛隊をひとつ治安出動で出してもらおうかとか、あるいはまた警察の緊急非常宣言を発せさせるかということになると、それができないわけなんですよ。したがつて、そういつた事態の場合には、今度設けようとしておる安全保障会議にかけまして、そしてそこで一応の基本の方針を決める」(五月八日、衆議院内閣委員会)と述べている。ところが塩田政府委員によれば、「治安出動を要するような状態……であれば第一項の私どもが言いますところの国防事態ということになろう」(四月二十四日、衆議院内閣委員会)とされており、この両者から考えると政府は、大災害を、重大緊急事態ではなく、国防事態として扱つていこうとしているように思われる。
  そこで問う。
 (1) 大災害時でも、治安出動が必要とされれば、それはすべて「法案」第二条第一項の「国防事態」という扱いになるのか。
 (2) 重大緊急事態の段階で、自衛隊が治安出動することはあり得ないのか。
十二 重大緊急事態対処の一環として、自衛隊が、自衛隊法第八十二条に基づく海上警備行動を行うことはあり得ないか。あり得るとすれば、それはどのような場合に行われるのか。
十三 一九七〇年の赤軍派による「よど」号ハイジャック事件の際は、自衛隊の戦闘機が「災害派遣」を名目に出動しているが、あのような事態は、重大緊急事態にはあたらないのか。
十四 内閣法第六条は、「内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督する」として、内閣総理大臣が各省庁を指揮監督するにあたつては、「閣議にかけて決定した方針」に基づかねばならないことを明らかにしている。これは、総理大臣が、閣議決定を経ることなく、たとえば安全保障会議の決定のみに基づいて各省庁を指揮監督することを禁止した規定であり、中曽根首相もこのことを正しく理解されて、安全保障会議の性格について、「行政の最高機関は閣議でございまして、この閣議に対しまして諮問に応じてその意見を表明していただく」ものだと述べておられる(三月二十五日、衆議院本会議)。西廣政府委員が「各省に行政事務がいろいろ分配されておるわけでございますが、その分配されておる事務の中で、ある種のものについて総理が重要事項だということで取り上げられて、これを諮問機関、たとえば国防会議なり今度できますとする安全保障会議なりに諮問をされたということになりますと、その所掌事務に関しては内閣に一応吸い上げた形になりますので、会議に諮問され答申されたことを受けて決定される段階では、それをもう一回行政に移す段階では閣議決定が必要であろうというふうに考えております」(四月二十二日、衆議院内閣委員会)と答弁しているのも、このことを確認したものと思われる。
  ところが後藤田官房長官は、安全保障会議で方針を決定した場合でも、「それほどの大方針といつたようなものでない場合には閣議には報告しない場合もあり得る」(五月八日、衆議院内閣委員会での私に対する答弁)と、安全保障会議で決定した方針が閣議を経ることなく各省庁で実施されることもあり得ることを明言しており、また塩田政府委員も、「事態によつては閣議にかけないで、この安全保障会議の答申を受けて総理が直ちに各省に指示するということによつて、各省が動くという案件もあろうかと存じます」(四月二十二日、衆議院内閣委員会)と、中曽根首相や西廣政府委員とは異なつた答弁を行つている。
  そこで、この問題についての、政府としての統一見解を求めたい。
十五 後藤田官房長官は、「従来から国防会議は、これで決定をすれば直ちに閣議に上げて、閣議でそれを確認をして決定をしていくという仕組みになつております。したがつて、その点は国防事案については変わりはございません。」(四月二十二日、衆議院内閣委員会)と述べているが、これは、「法案」第二条第一項第五号の「その他内閣総理大臣が必要と認める国防に関する重要事項」についても、安全保障会議で決定したことはすべて閣議に諮るという意味か。
十六 「日米防衛協力のための指針」に言う、極東有事の際に「日本が米軍に対しておこなう便宜供与」に関して、それが「法案」第二条第一項第五号の「国防に関する重要事項」であると判定されれば、安全保障会議の「答申が出る、答申が出れば、これが政府の方針だ、各省それに従つて進めろ、こういうことになるわけですか」との質問に対して塩田政府委員は「一般論として申せば御指摘のとおりだと思います」(四月二十二日、衆議院内閣委員会)と答弁している。政府はこのような場合は閣議の関与は必要ないと考えているのか。
十七 安全保障会議で超法規的措置を決めることもあり得るのではないか、との質問に対して、後藤田官房長官は、「超法規的なような事態もあり得るのではないかと言われれば、それは先例がございますからそういう場合もあり得る、こう答えざるを得ないと思います」(四月二十二日、衆議院内閣委員会)とした上で、その場合には「国会に報告すべき筋合いのものであろう」(同委員会)と答えているが、安全保障会議で超法規的措置を決めた場合に、閣議には諮らないのか。
十八 塩田政府委員は、安全保障室で作成されるマニュアルが「閣議に報告されるということにはならない」(四月二十二日、衆議院内閣委員会)とした上で、内閣官房長官及び総理大臣には報告される可能性があると述べている(同委員会)が、
 (1) 内閣総理大臣及び内閣官房長官以外の安全保障会議の議員は、マニュアルを閲覧できるか。
 (2) 安全保障会議の議員以外の国務大臣はマニュアルを閲覧できるか。
 (3) 国務大臣以外の国会議員はマニュアルを閲覧できるか。
十九 政府は今回の「法案」審議の中で、自衛隊の治安出動に関して、「間接侵略につきましては、現行の国防会議においても、国防に関する重要事項として……総理大臣が必要と認める場合には審議の対象とされております」(三月二十五日、衆議院本会議)、「治安出動なんというものは……やはりこの安全保障会議にかけて、それらを十分審議をしてやらなければならない、こういうことを考えておる」(二月十四日、参議院予算委員会)として、治安出動に関しては従来から首相が必要と考えた場合には国防会議で審議されることになつており、また安全保障会議でも同様、審議されることになる旨述べている。
  しかし、従来からの国会答弁を見ると、たとえば、「(防衛庁設置法第六十二条第二項第五号の)その他国防に関する重要なる事項というふうに治安出動の場合は考えていない」(昭和四十二年七月四日、衆議院内閣委員会、増田国務大臣答弁)、「(治安出動は)国防会議にはかける必要はない」(昭和四十四年六月二十四日、衆議院内閣委員会、有田国務大臣答弁)と、治安出動は国防会議にはかけないことが明言されてきた経緯がある。
  そこで問う。
 (1) 従来、国防会議には付議しないこととしていた治安出動を、付議することとした、政府としての意志の変更は、いつ、どのような形式で行われたのか。
 (2) これについての国会での答弁の変更は、いつ行われたのか。
二十 政府は、「治安出動の可否」(二月十四日、参議院予算委員会)、「警察法第七十一条に基づく緊急事態の布告」(四月二十二日、衆議院内閣委員会)を総理大臣が決定するにあたつては、安全保障会議に諮るべきであるとしている。それでは、次の事項の決定については、安全保障会議に諮ることはあるか。
 (1) 内閣総理大臣の防衛招集の承認(自衛隊法第七十条)
 (2) 防衛庁長官の防衛招集命令(同)
 (3) 内閣総理大臣が行う自衛隊の撤収の命令(同第七十六条第三項)
 (4) 内閣総理大臣の防衛出動待機命令の承認(同第七十七条)
 (5) 防衛庁長官の防衛出動待機命令(同)
 (6) 内閣総理大臣の自衛隊の撤収の命令(同第七十八条第三項)
 (7) 内閣総理大臣の治安出動待機命令の承認(同第七十九条)
 (8) 防衛庁長官の治安出動待機命令(同)
 (9) 内閣総理大臣の海上保安庁の統制(同第八十条)
 (10) 内閣総理大臣の統制の解除(同第八十条第三項)
 (11) 内閣総理大臣が自衛隊法第八十一条第二項に基づいて行う治安出動の命令
 (12) 内閣総理大臣の撤収の命令(同第八十一条第四項)
 (13) 内閣総理大臣の海上警備行動の承認(同第八十二条)
 (14) 防衛庁長官の海上警備行動の命令(同)
 (15) 内閣総理大臣が自衛隊法第百三条第二項に基づいて行う告示
 (16) 「日米防衛協力のための指針」に言う「日本に対する武力攻撃がなされるおそれのある場合」に行われる「調整機関の開設」

 右質問する。





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