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昭和六十二年四月六日提出
質問第三〇号

 核持ち込みの日米密約問題に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和六十二年四月六日

提出者  金子満広

          衆議院議長 原 健三郎 殿




核持ち込みの日米密約問題に関する質問主意書


 今日、核戦争阻止、核兵器廃絶問題は、我が国政治にとつても、また国際政治の上でも緊急かつ重大な問題となつている。とりわけ、世界で唯一の被爆国日本が、そのためのイニシアチブを発揮することがなによりも求められている。
 ところが、中曽根内閣は、日米安保条約のもとで、日本をアメリカの対ソ核戦略の基地として強化し、アメリカの核戦略に日本を巻き込む道を突き進んでいる。昨年、国際的にも核積載が明白になつている米戦艦ニュージャージーの寄港や原子力潜水艦の過去最高の年間四十一回にわたる寄港の容認は、多くの国民に、日本への核持ち込みの危険と核戦争に巻き込まれる不安を与えている。
 中曽根内閣と歴代自民党政府は、こうした核持ち込みの国民の疑惑にこたえるどころか、日米安保条約に基づく事前協議があり、しかもアメリカから事前協議の申出がない以上、核兵器の持ち込みはないと繰り返し言い続けてきた。
 しかし今回、日本共産党が入手した米政府の解禁秘密文書から、政府のこうした態度は全くの欺瞞であつたことが明らかとなつた。この文書は、一九七七年、アメリカ政府によつて解禁された米外交文書で、一九六六年二月二十四日、アメリカのラスク国務長官(当時)から在日アメリカ大使館あてに打電された訓令電報である。
 このなかでは、「一九六〇年の安全保障条約にもとづいた核兵器持ち込みにかんする米国との秘密取り決め」などの表現で、日本政府がこれまで否定し続けてきた日本への核持ち込みの秘密取り決めがあることが明確にされている。更に、同訓令電報は、アメリカの核積載艦船、核積載航空機の寄港や通過(トランジット)を「曖昧」に、すなわち灰色の形式で受け入れることが、日米間の既定の関係となつていること、同時に、有事の際の核兵器の持ち込み(イントロダクション)に関しても、密約があることを示している。
 以下質問する。

一 今回のアメリカの公式文書は、核持ち込みについて日米間に秘密取り決めが存在することを二ヵ所にわたつて明確に述べている。
  歴代自民党政府はいままで、核兵器持ち込みに関する取り決めは、日米安保条約に基づく岸・ハーター交換公文(「事前協議」についての取り決め)と、核持ち込みの事前協議の実施に関する解釈を示した藤山・マッカーサー口頭了解以外に、秘密協定は「口頭にしろ、文書にしろ一切ございません」(木村外務大臣、七四年十月十四日)と繰り返し答弁してきた。
  しかし、今回のアメリカ政府の公式文書は、一九六六年のもので、一九六〇年の現行日米安保条約調印とともに公表された岸・ハーター交換公文及び一九六四年の段階で全容が明らかとなつていた藤山・マッカーサー口頭了解以外に秘密取り決めがあることを示している。
  この秘密取り決めをいままで隠し続けてきた政府の責任は重大である。
  政府は、この秘密取り決めを直ちに公表すべきであるがどうか。
二 今回の文書が言及している秘密取り決めの内容も重大である。
  今回の文書は、藤山・マッカーサー口頭了解の対象となつているイントロダクション(陸揚げ・陸上への配備)とトランジット(一時通過・一時持ち込み)を明確に区別している。
  中曽根内閣と歴代自民党政府は、核積載艦船などのトランジット(一時通過・一時持ち込み)は、一九六〇年の日米安保条約当時から、核兵器持ち込み(イントロダクション)に含まれており、事前協議の対象であると繰り返し答弁してきた。こうした政府の見解の破綻は明白である。
 1 今回の文書は、文脈上から、トランジット(一時通過・一時持ち込み)をイントロダクション(陸揚げ・陸上への配備)から区別するだけでなく、「日本の港湾の中の米国の艦船と通過(トランジット)中の米国の航空機に積載された核兵器の存在にかんして、日本政府が受け入れてきた曖昧さは、もはや受け入れられなくなる可能性がある」と明記し、「曖昧さ」、すなわち核積載艦船や核積載航空機のトランジット(一時通過・一時持ち込み)を灰色の形で受け入れることが、日米間の既定の関係になつており、これが実行されていることを示している。
   日米間に、核積載艦船、核兵器積載航空機のトランジット(一時通過・一時持ち込み)についてどのような取り決めがあるのか、明確にされたい。
 2 今回の文書はまた、「秘密の一九六〇年合意が日本への核兵器の持ち込み(イントロダクション)について日本政府の合意を求めるアメリカの権利を認めている」とし、「日本政府が有事のさいに核兵器持ち込み(イントロダクション)に同意する可能性は、もつと小さいものとなろう」と述べ、有事における日本への核兵器の持ち込み(イントロダクション)についても、密約があることを明記している。
   これが、事前協議とは別に、有事核持ち込みに当たつての日本政府の同意の「義務」を密約したものであることは、疑問の余地がない。
   既に公開された事前協議の取り決め以外、いかなる秘密の取り決めがあるのか、明らかにされたい。

 右質問する。





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