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昭和六十三年三月二十五日提出
質問第二〇号

 血友病患者のエイズ感染による薬害補償に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和六十三年三月二十五日

提出者  寺前 巖

          衆議院議長 原 健三郎 殿




血友病患者のエイズ感染による薬害補償に関する質問主意書


 血友病患者のエイズ感染問題については、最近の国会質疑及びマスコミの報道等によつても、昨年九月私が提出した質問主意書で指摘したように、「日本政府は、エイズ混入血液製剤の輸入停止及び医療現場からの回収もしないままアメリカより遅れること二年間、一九八五年まで加熱処理製剤の認可を放置してきた」ことで、「安全な血液対策を怠つてきた政府の責任は明確」になりつつある。
 しかし、政府は「血液凝固因子製剤によつてエイズに感染した」ことは認めるが、薬害として医薬品の製造許可・承認したという責任、また危険を排除するための回収等をしなかつたという責任を認めず、「不可抗力」であつたとして「政治的救済」ですまそうとしている。
 この政府の政治姿勢に対して、血友病でエイズに感染した小学生をもつ母親の方から、「治療に使つた製剤で感染したのにどうして薬害ではないのでしようか。これ以上ひどい話はありません。国はもつと患者のことを真剣に考えて下さい。血友病のエイズ感染を薬害と認め、国は補償してください。それが私達に答える唯一の道です」と、竹下総理の政治救済発言に対する怒り、薬害としての国とメーカーの責任、そして血友病患者の実情が寄せられている。
 日本共産党は、「汚染血液製剤による感染の責任は、輸入血液製剤に依存して安全な血液製剤の国産化に背をむけつづけてきた自民党政府にあります」(六十二年七月、エイズに対する不安をどうとりのぞくか)と政府の責任を厳しく指摘し、「政府が緊急にとりくまなければならないのは、国の責任でこの人たちの健康管理、生活保障をおこなうことです」と主張してきた。
 国は、薬害の予見ができたにもかかわらず、「医薬品の有効性と安全性の確保」をせず、製剤の検査や使用患者の追跡調査・汚染製剤の回収等の薬務行政をおろそかにしてきたことは重大であり、血友病患者の生命と生活を守るための完全な救済は緊急を要すると考える。
 従つて、次の事項について質問する。

一 血液製剤によるエイズ感染の予知問題について
  厚生省は、六十年五月にエイズと認定した血友病患者をすでに五十八年六月当時認知していながら「証拠不十分」として認定しなかつたし、また五十九年六月に米国でエイズの感染判定をしていたにもかかわらず認定を遅らせ、結局六十年五月の加熱製剤認可まで黙認し血友病患者のエイズ感染の拡大をまねいた。厚生省の責任は重大である。そこで次の点を伺いたい。
 1 日本で非加熱血液製剤によるエイズ感染の恐れがあると厚生省が認知したのは、五十八年六月ごろ発表された症例によるといわれるが、それは何処の大学の患者で、どんな症例であつたのか。
 2 厚生省エイズ研究班は、五十八年七月「帝京大の例」を「証拠不十分」としてエイズ認定しなかつたが、それはどんな患者であつたのか。認定しなかつた具体的理由は何か。
 3 厚生省は、六十年五月帝京大の二名の血友病患者をエイズと認定したが、それはどんな患者であつたか。また何を根拠にエイズと認定したのか。
 4 五十九年十一月東京の血友病治療国際シンポジウムで安部英帝京大副学長は、「二名の日本人の血友病のエイズ感染」を明らかにしており、第一の患者は四十八歳の男性で血友病Bをもち五十八年六月死亡している。第二の患者は六十二歳の男性で血友病Aをもち五十九年十一月死亡していると報告している。このことを厚生省は承知していたか。
 5 同シンポジウムで安部副学長は、「血友病患者でのエイズは血液製剤により感染する」「特に血友病におけるエイズの発現は日本の行政当局の関心をひいた」と明確に述べるとともに、五十九年六月に二人の患者のエイズ判定を依頼した「米国国立がん研究所のギャロ博士の価値ある協力に大変感謝している」としているが、厚生省は承知していたか。
二 カッター社のB型肝炎ウイルス混入問題について
  昨年十二月カッター社製の加熱濃縮製剤にB型肝炎ウイルスが混入していたことで、厚生省はカッター社にプールプラズマの検査及び使用患者の追跡調査を指示したうえで、薬事法第五十六条違反で処分し、感染患者への補償を指導した。そこで次の点を伺いたい。
 1 カッター社に対して、何を根拠にプールプラズマの検査及び使用患者の追跡を指示したのか。
 2 カッター社の場合は厚生省がプールプラズマの検査及び使用患者の追跡調査を指示しているが、ならばどうして非加熱濃縮製剤にエイズウイルスの混入を認知したとき、同様の措置及び製造輸入の停止・回収等の措置がとられなかつたのか。
 3 エイズウイルスの抗体検査法は、五十九年五月許可されており、安部副学長も判定を依頼している。かたやB型肝炎ウイルスはカッター社が製品検査をしたがマイナスで国立予防研究所でもマイナスになり、米国マイルス社のサンプルテストでプラスを確認した。それではカッター社はB型肝炎ウイルスの混入で薬事法違反で補償を命ぜられ、かたやエイズウイルスが混入していたにもかかわらず何の責任も問われないのは問題ではないか。
 4 加熱濃縮製剤にウイルスが混入していた事実は、信用しきつていた患者家族の信頼を著しく損ねたが、問題は、原料血液の検査及び加熱処理方法であり、さらに輸入時にもプール血漿の検査がやられていなかつたことにある。従つて、安全な血液製剤の国産化を基本にしながら、原料血液及び輸入時のプール血漿のHBs抗原検査を行い、乾燥加熱方式から信頼性の高い液状加熱方式に早急に切り換えるよう指導すべきではないか。
三 血友病患者の薬害補償による完全救済について
  サリドマイド裁判やスモン訴訟の教訓から五十四年「薬事二法」を成立させ、薬事法の第一条の目的に「医薬品の品質、有効性及び安全性を確保すること」を規定し、医薬品の製造又は輸入の承認基準や厚生大臣の緊急命令、回収、承認の取消等の監督権限を盛り込み、万やむをえず発生した被害に対しては「救済基金」をあてることにした。そこで次の点を伺いたい。
 1 いま問題になつている血液製剤による血友病患者のエイズ感染は、この「医薬品の有効性と安全性の確保」に反して、責任を回避するため予見可能性を認めず、承認の取消や回収等の責任をとらないなど、これまでの薬害訴訟の教訓や法改正の趣旨を生かしていないではないか。
 2 血友病患者の母親の訴えにもあるように、メーカーと国の責任を棚上げして不可抗力だと称して、政治救済などではなく、輸入血液製剤に依存して安全な血液製剤の国産化に背をむけてきた政府の責任をとり、患者に対する健康管理、生活保障をふくむ完全な救済を行うべきではないか。
   また、完全救済を行うために汚染血液製剤の供給及び使用の実態調査を行うべきではないか。
 3 スモンの賠償は、国の三分の一、メーカーの三分の二の責任ということで、賠償一時金、健康管理手当、遺族弔慰金、介護費用などを支払つているが、エイズ感染者に対しても十分な救済内容を検討すべきではないか。全国ヘモフィリア友の会は「血友病患者のエイズ感染は明白な薬害であり、国・製薬会社による責任ある完全救済」を求めており、これに答えるべきではないか。

 右質問する。





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