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昭和六十三年七月十九日提出
質問第一号

 ガンダーラ仏像真贋に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和六十三年七月十九日

提出者  坂上富男

          衆議院議長 原 健三郎 殿




ガンダーラ仏像真贋に関する質問主意書


 医療法人亀広医学会所有の所謂ガンダーラ仏像についてその真贋をめぐり国会で議論され、文部省は本件ガンダーラ仏像は本物であると答弁しているところである。
 しかしその後、科学的な調査が行われその結果が公表されておるが、これら調査結果によれば文部省の本物であるとの見解は極めて根拠が薄く、贋物と断定しても差し支えない状況であると思料されるので、次の点について更に学問的検討の上、回答されるよう質問する。

一 台座の問題について
  奈良国立博物館は本件ガンダーラ仏像を本物として展示し、問題を指摘されるや真贋について調査し、これを本物と断定し現在もその見解を維持している。昭和六十二年七月三日この真贋をめぐりガンダーラ仏研究協議会が奈良博の主催で開催された。その際奈良博が提出した調書では、台座及び足首が、(一)本体(胴体)とは異なる別の仏像の台座・足首(本物)を接合した、(二)本体と同一の石で作られ、台座・足首を接合したという二種類の解釈を並記して断定を避け、この協議会においても、(二)の解釈のほうが妥当ではないかと述べながら、(一)も捨てがたいという曖昧な態度であつた。
  この協議会に出席した宮治昭委員から、台座は近年の作であるという見解が出され、また秋山、肥塚各委員からも台座は疑問点が多い(本体とは別)という見解が出され、樋口座長は「台座は新しいという有力な意見があつた」とまとめている。これに対して、奈良博の松浦室長は、本体・台座一体説で「本体と台座は石が一緒である」と言明した。しかし、この点に関する論議の結果は、「後補・別物説」が数の上で勝つた。(以上はガンダーラ仏研究協議会議事速記録より引用)
  毎日新聞昭和六十二年七月四日の記事によると、第三者的出席者の見解として「本体と台座について、本体と足首から下は別物。後に補修したもの」と記されている。これは第三者的立場の学者の見解を総括したものである。このような議論の大勢を踏まえて、奈良博の西川館長は協議会後の記者会見で、台座・足首は後補ないし別の本物を接合したものであるから問題はないとし、本体は本物であると言明した。
  西川館長の発言は、記者発表速記録によると、「足首・台座は別なものを補つて、別なもので寸法の合うものをここへくつつけた可能性があるというふうに考えます。これは或いは後補であるかもしれません。いずれにしても以上のような部分の後補があります。それから台座は後補である、或いは他のものを転用したものであるということは、先ほど申し上げました。そうするとそこに出てくる煉瓦めじですからこれは全然問題にできないかと思います」、更に西川館長は奈良新聞同年八月十一日のインタビュー記事において台座後補説を言明している。「両足首に割れの接合がある。彫刻としてみると両足の肉付けが本体に比べ劣つているので、これも恐らく後補であろう。つまり、仏像は早くからこうした接ぎがあつた」、「先程言つたように、足首から下が後補と思われるため、台座のデザイン(煉瓦のめじ)については最初からあまり問題ではない。」。このように奈良博は、研究協議会で台座・足首が新しい(贋作)という意見が多数を占めたのでそれを無視できずに、西川館長の「後補説」がでてきたと考えられる。これは本体と足首・台座がもともと一体の石から作られていたことが判明すれば、本体(頭から下のすべての部分)が必然的に贋作となつてしまうので、それをおそれ、台座・足首は「後補」であるから、本体が本物であるという論理で逃げたものと思われる。
  これに対して、本年六月二十日に東京大学理学部地質学研究室の鳥海光宏助教授(変成岩岩石学専攻)が偏光顕微鏡を用いて、この足首の接合面の岩石を調査した結果が発表された。これによると、本体と足首・台座の石は全く同一で両者は本来一枚岩であつた点が岩石学的に立証された。その根拠は、(一)鉱物の配列方位(線構造)が両者同一である。(二)グラファイト(炭素)の濃集部分が接着剤の部分を挟んで上下連続している。(三)クロイトイド(雲母片岩)の伸長方位がバラバラである。これら三つの要素がすべて一致するから、本体と台座・足首は一枚岩である。この結論は他の岩石学者からも支持されている。これによつてさきの西川館長の足首から下が後補であるとの説は明らかに間違いであることが証明されたのである。
  これに慌てた奈良博は、河田学芸課長が同年六月二十一日の奈良新聞で次のように述べて弁明をした。「台座については、昨年の研究協議会においても彫刻としてやや弱い点から、後補の可能性を指摘した訳で、後補と決めた訳ではない」、「本体と台座が一枚岩でできていれば、本物のガンダーラ仏と同じであるから本物であつて問題ない」。河田課長は、「後補説」を否定し、台座・足首は本物という見解を打ち出し、だから本体も本物であると発言している。
  しかし、昨年の研究協議会では台座が本物という証明は全くなされず、「新しい」つまり贋作(後補)という見解が大勢を占めるほど「疑問視」されていたのである。河田説はこの協議会の結論を全く無視したものである。もし、この岩石学的結論が昨年七月の研究協議会当時判明していれば、即座に贋作であるという結論がでたものと考えられる。
  よつて、文部省としては、本体と台座は同一の岩石か否か、また足首・台座は後補か否かを明確にし、更に「後補」ならばその時代を特定し、仏像の真贋について見解を述べられたい。
二 首・頭部の接合問題について
  仏像の頭部と胴体部が別の石で製作され、エポキシ系接着剤で接合されていると思われる。これは奈良博が第一回協議会直前に撮影していたX線フィルムには接着剤による接合面が明瞭に写つている。しかし、奈良博は昨年以来、本年四月十五日における記者会見(奈良博)においても依然として、この接合を否定している。同日記者団に渡された「ガンダーラ仏に関する田辺氏の見解に対する本館の考え方」の四頁によると、〔頭の接合〕当館撮影のX線フィルムにおいても、亀広氏から提供されたX線フィルム(昨年十二月に非破壊検査株式会社による)の調査においても、この部分に接合があるとは考えられない。もし、接合があるとしても、一石のものが割れてこれを接合したものと考えられる。一〇頁によると、〔頭髪が別造〕X線写真では接合は確認できない。たとえ接合されたとしても、差し支えないとして、奈良博はこの接合を否認している。しかし、奈良博所有のX線フィルムと亀広氏所有のX線フィルムによれば、この接合は十分確認でき、仏像の表面に針を突き刺して首と首輪の間近くにエポキシ系の接着剤が充填されていることが確認されるのである。
  これを否定する奈良博の見解について、改めて見解を問う。
 よつて、以上の二点からしても、本仏像が贋作であることは極めて明白であると思料されるが、政府は文化財保護法の目的と精神に則つて、文化国家日本の文化を守るため学問的良心をかけた明確なご見解を開陳されたい。

 右質問する。





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