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昭和六十三年十月三日提出
質問第一八号

 刑事施設法案に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和六十三年十月三日

提出者  坂上富男

          衆議院議長 原 健三郎 殿




刑事施設法案に関する質問主意書


 今年七月に開かれた国連人権専門委員会で、我が国の代用監獄制度について、各国の委員から多くの質問が出され、未決者を警察留置場に拘禁する問題について様々な人権侵害の可能性についての懸念などが表明され、この法領域における状況が早急に改善されることについての希望が表明された。

一 この人権専門委員会における審査について政府はどのようにとらえているか。
  現在審査中の刑事施設法案(以下「法案」という。)には、以下のとおり市民的及び政治的権利に関する国際規約(以下「国際人権B規約」という。)に違反するのではないかという重大な疑問があるので次のとおり質問する。
二 法案第九十八条、同第百十四条においては、被勾留者、受刑者の発するすべての信書、及び国又は地方公共団体の機関及び弁護人等以外から受信したすべての信書につき、刑事施設の長又はその指名する職員により内容の検査を受けることになつている。
 1 被勾留者、受刑者の発受する信書についても国際人権B規約第十七条一項が適用されると思うがどうか。(ちなみに、ヨーロッパ人権裁判所はSilver et vs U.K.事件において受刑者の通信についてもヨーロッパ人権条約第八条一項が適用され、検閲が許されたのは、同第八条二項の要件が充足される場合に限られると判断している。)
 2 適用されるとした場合、法案第九十八条、同第百十四条のように、個別具体的に判断せず一般的に検閲が許されるとするのは国際人権B規約第十七条に違反するのではないか。(ちなみに、国連人権専門委員会の一般的注解(General Comments No.16)によると、許容される条件が具体的に法律に規定され、法に規定された者により実施され、かつ個別具体的ケース毎に許容されるかどうか判断されなければならないとされている。また上記ヨーロッパ人権裁判所判決は、少なくとも国会議員や弁護士との間の信書を一般的に検閲することが許容されるとすることはヨーロッパ人権条約第八条に違反するとする。)
三 同じく、法案第百十四条が、弁護人らに対する被勾留者の信書がすべて検閲されるとしていることは、国際人権B規約第十四条三項(b)の保障する「自ら選任する弁護人と連絡する」権利保障規定に違反しているのではないか。(ちなみに、国連人権専門委員会の一般的注解No.13においては、第十四条三項(b)は、被告人が弁護人に対し、完全に秘密を保障された条件下において連絡する権利の保障を要求していると解している。)
四 弁護人ら以外の弁護士と被勾留者、受刑者との面会に関する法案第九十二条第一項第二号、同第百十条第四項は秘密を守られた面会を許容せず、通信についても同じく法案第九十八条、第百十四条で秘密が保障されていないが、これは国際人権B規約第十四条一項に保障された裁判を受ける権利を侵害するものではないか。(ヨーロッパ人権委員会のCampbell vs U.K.事件のレポートによると、弁護士との間の秘密を守られた通信・面会の一般的否定は、裁判を受ける権利を保障したヨーロッパ人権条約第六条一項に違反するとしている。)
五 閉居罰は、その実体(隔離した罰室内で昼夜屏居され面会・通信が禁止される〔法案第百三十七条〕)からいつて、国際人権B規約第九条一項の新たな自由の剥奪に当たり、同第九条四項の保護を受けるのではないか。その場合、法案第百四十三条以下の審査手続は、審査機関の独立性、手続上の権利保障の欠如、代理人選任権の保障の欠如等からいつてB規約第九条四項の保障を欠くのではないか。
六 懲罰のうち法案第百三十五条第一号にいう「逃走、暴行……その他刑罰法令に触れる行為」に対して六十日以内の閉居罰や報奨金支給予定額の削減を行うのは、実質上国際人権B規約第十四条三項にいう「刑事上の罪の決定」に該当するのではないか。該当するとした場合、法案に規定されている懲罰手続はB規約第十四条三項の保護を欠いているのではないか。(ちなみに、ヨーロッパ人権委員会はCampbell vs U.K.において、職員に対する暴行を行つたことを原因とする五百七十日の刑期短縮特典供与喪失のペナルティーを「刑事上の罪」に該当するとして、ヨーロッパ人権条約第六条〔B規約第十四条に該当〕の適用ありとし、英国の制度は同条の保護を欠いていると判断している。)

 右質問する。





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