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昭和六十三年十二月三日提出
質問第二六号

 建設残土及び廃棄物の処理に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和六十三年十二月三日

提出者  寺前 巖

          衆議院議長 原 健三郎 殿




建設残土及び廃棄物の処理に関する質問主意書


 最近の「民間活力」による都市再開発事業等の大型プロジェクトや公共事業の拡大で建設残土の発生量が増大し、首都圏(一都三県)で五千二百万立方メートル、大阪府で千六百万立方メートルに達している。首都圏の発生土量の処分状況は、内陸処分地三八・二%、海面埋立地三二・八%、工事現場一三・八%となつており、大阪府の場合、埋立処分七一・七%、再利用二七・五%となつている。これら内陸及び埋立の処分地は、昭和六十二年度の東京都及び区市町村の発注工事残土の場合、東京都下四六・九%、他県五三・一%となつており、昭和六十年度の大阪府の場合大阪府下八六・三%、他府県一三・七%となつている。
 建設残土の処分は、建設事業の拡大とともに大都市周辺への依存がますます高まり、優良な農地及び林地つぶしによる自然環境破壊や建設廃材等の産業廃棄物を混入して処分する不法投棄等の社会問題を引き起こしている。また、建設残土の処分問題は、大都市圏から地方都市にも及んでおり、新たな処分地の確保の困難さから残土の減量及び再利用対策等が課題となつている。例えば、京都府の田辺町では産業廃棄物を混入した建設残土の投棄が横行している。大阪府側から同町薪(たきぎ)アチラ谷と天王栗林に大量の建設残土が運び込まれ、えん堤もなく谷を埋め続けている。アチラ谷では、手原川の河川敷まで残土が高く積まれており、栗林では錆川の上流が完全に埋められ、下流の水田に泥を吐き出している。地元では、建設残土に混入した有害な化学物質による水田や飲料水への影響、大雨による土砂崩れ等の被害の可能性があるとしている。
 残土処分が社会問題化しているのは、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に抵触しないばかりか、規制する法律がないため、ただ農地法、森林法等の残土の処分を受け入れる側の規制対象にならないかぎり、自由に処分することができるからである。例えば、京都府では二百十六件の林地開発のうち森林法の規制を受けない一ヘクタール未満の林地開発が百三十三件、四十三・二へクタールに及んでおり、田辺町の残土投棄はこれに該当するものである。また千葉県では、九十二件の林地開発のうち一ヘクタール未満の林地開発は四十件、二十九ヘクタールとなつている。
 そこでその自衛対策として、千葉県内の三十五市町村での「残土等による土地の埋立て、盛土及びたい積行為の規制に関する条例」や三重県の津市など二市一村での「水道水源保護条例」が制定されるなど、大都市近郊の各地方自治体でさまざまな残土対策がとられている。しかし、これでは残土投棄から優良な農地及び林地や水道水源をはじめ自然環境を保全するための十分な規制ができず、新たな法的整備が求められている。
 日本共産党は、「民活」路線による都市計画や建築規制の緩和など大企業本位の都市づくりや公共事業に反対し、住民の合意と参加によるまちづくりを主張するとともに、都市近郊の農地や林地をはじめ自然環境の保護を強く要請してきた。
 大企業本位の都市づくりによる残土及び廃棄物の投棄を野放しにし、地下水汚染や悪臭等地域住民の生活及び自然環境を破壊してきた政府の責任は重大であり、建設残土及び廃棄物の適正処理対策は、緊急を要すると考える。
 したがつて、次の事項について質問する。

一 建設残土等の発生量及び処理の実態調査について
  建設省は、七十五年及び八十五年に首都圏(一都三県)における残土の発生と処分をサンプル調査による推計を行つており、九十五年には七千三百万立方メートルに及ぶとしている。また、東京都は八十二年及び八十六年に調査を行つており、残土発生量約二千百五十三万立方メートルのうち六一・三%が内陸部処分となつている。大阪府の昭和六十年度の拡大推計発生量結果も千六百二十二万立方メートルとなつており、そのうち七一・七%は埋立処分となつている。しかし、これらの調査はサンプル調査を推計したり、建設系廃棄物量に拡大推計したにすぎないし、内陸地処分や埋立処分の実態はほとんど明らかにされていない。また、東京都の発生量の一八・六%を処分する羽田沖等の海面埋立は九十五年度までで終了するし、大阪府の場合も新たな埋立処分場を確保することが非常に困難になつているのが現状である。したがつて、
 1 今後の建設残土対策を設定するためにも、まず全数調査による正確な発生量及び処分状況の把握が必要ではないか。
   とりわけ、内陸地処分及び埋立処分によつて、優良な農地及び林地つぶしや地下水等の水質・環境汚染を引き起こしている実態を調査すべきではないか。
 2 また、京都府田辺町で建設残土に見せかけた産業廃棄物の投棄によつて、河川の形状変更や泥の流出等が生じており、早急に調査し現状回復等の措置が講じられるべきではないか。
二 建設残土の処理規制とガイドラインの策定について
  建設残土は、「民活」による都市再開発事業等の大型プロジェクトや公共事業の拡大で、建設省の推計でも九十五年には首都圏で七千三百万立方メートルに達するとしている。しかし、現状では指定処分されるのは二割程度であり、残りは自由処分となつている。しかも、指定処分のうち羽田沖等の公営処分地に処分できるのは三〜四割程度にすぎない。したがつて、ますます遠距離化し、不適正な処理となり、生活環境悪化や交通問題等を引き起こしている。
  建設工事等による一般残土は、廃棄物処理法の廃棄物に該当しないばかりか、処分の規制措置がなく、処分地が関係法令に抵触しない限り自由に何処にでも処分することができる。しかし、これだけの膨大な建設残土の発生によつて、千葉県や三重県の地方自治体の条例等によつても十分な残土処理の規制ができず、生活・自然環境に悪影響を引き起こしている現在、建設残土の発生及び処分についての法的規制やガイドラインの策定が求められている。したがつて、
 1 建設産業の活動によつて発生する建設残土の処理については、生活及び自然環境の保全上、新たな法的規制及びガイドラインの策定が図られるべきではないか。
 2 ガイドラインの策定に当たつては、企業責任による建設廃棄物の中間処理を明記し、単に建設汚泥を脱水して一般残土に紛れ込ませて処分するようなことはすべきではないと思うがどうか。
 3 また、全工事指定地処分制の実施、工事現場内利用等による発生量の抑制、公園整備等による再利用の促進等の対策を図り、建設残土による生活・自然環境の破壊や災害を少なくすべきではないか。
三 廃棄物処理法の整備充実について
  京都府田辺町の場合のように、建設残土に見せかけ産業廃棄物を投棄しても、地方自治体は保健所及び警察署に通報するのみで、廃棄物の撤去等の適切な行政処置ができない状況にある。
  また、処理業者が汚泥、建設廃材等の産業廃棄物を大半が自由処分にまかされている残土に含ませて処分したり、下請けの運搬業者を使つて生活環境の保全上に不適正な保管積み替え施設や処理場に処分等を行うなど処理業者の許可要件にそぐわない状況がおきている。
  建設残土に見せかけて産業廃棄物を投棄したり、適正に廃棄物の分別処理をしないことから、河川の汚濁、地下水の汚染等の問題を生じさせており、産業廃棄物の最終処分場の基準の見直しや排出事業者の責任が問われている。
  また、処理業者が法の求める要件を備えていれば、優良の農地及び林地や水源涵養地域であろうが立地の規制を受けず、しかも住民が設置に同意しなくても単なる届出で許可されており、現行法の不備が指摘されている。したがつて、
 1 国は産業廃棄物の不法投棄や不適正な処理から生活環境を保全するため、不法投棄に対する行政措置(現状回復命令等)、処理業者の許可要件、排出事業者の責任の明確化、汚染された工場敷地内土壌の適正処分、最終処分場の基準の見直し(止水工事等)等の法的整備を早急に図るべきではないか。
 2 また、優良な農地及び林地や水源涵養地を保護するため、処理施設の立地規制、環境アセスメント、住民の同意義務等の法的整備を図るべきではないか。
四 森林法における残土処理に当たつての林地開発の規制強化について
  森林法では、一ヘクタールを超える林地を開発する場合、都道府県知事の許可を受け、災害の発生、水源涵養、環境の保全上の許可基準に従つて切土、盛土、捨土、えん堤、排水施設等の基準が定められている。しかし、一ヘクタール以下の林地開発については何らの規定もない。そこで京都府の田辺町のような事件を引き起こしている。したがつて、
 1 一ヘクタール未満の転用であつても国土保全上解除を認めず、解除する場合も指定の目的に支障のない代替施設の設置等を規定されている保安林のように、一ヘクタール未満の民有林であつても建設残土の投棄に対する環境の保全及び災害の防止を図るため、特別な規制措置を行うべきではないか。
 2 また、法の目的と都道府県知事の許可権からして、各地方自治体が一ヘクタール未満の林地開発でも国土保全上必要な規制措置が講ぜられるよう森林法の政省令を改正すべきではないか。
五 水道法による水源保護措置について
  産業廃棄物の不法投棄や不適正な処理によつて、水道水源や地下水の汚染など生活環境に悪影響を及ぼしている。水道法では、国及び地方公共団体の責務として、「水源及び水道施設並びにこれらの周辺の清潔保持並びに水の適正かつ合理的な使用に関し必要な施策を講じなければならない」としている。また、水道事業者等は、水源の汚濁防止のため関係行政機関の長等に適当な措置を講じることを要請することができる。しかし、水源地に産業廃棄物処理場等が設置されようとしても、地方公共団体及び水道事業者は水源の清潔保持のための有効な手段を講じることができず、許可されているのが実態である。
  そこで、三重県の津市など二市一村では、地方公共団体の責務として「水道水源保護条例」を制定し、水源保護地域に産業廃棄物処理場等の設置を規制している。しかし、この条例は、規制物質の対象や水質基準が明確でないなど残土処理の十分な規制措置とはいえない。したがつて、
 1 産業廃棄物等による水質汚染や河川の水質汚濁が高まつている現在、国の責務として水源の清潔保持のため、水道法に水源保護地域等の規制措置を図るべきではないか。
 2 また、水道法で明記しているように、地方公共団体が自らの責務として必要な施策を講じられるよう水道法第二条第一項の政省令の整備を図るべきではないか。

 右質問する。





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