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昭和六十三年十二月十三日提出
質問第二八号

 「国際文化講演都市」構想についての国の施策に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和六十三年十二月十三日

提出者  村上 弘

          衆議院議長 原 健三郎 殿




「国際文化講演都市」構想についての国の施策に関する質問主意書


 去る六月八日、大阪府、茨木市、箕面市、住宅・都市整備公団及び民間事業者六者でつくる「国際文化公園都市協議会(会長・中川和雄副知事)」は茨木、箕面丘陵地区の開発整備について「国際文化公園都市開発整備計画調査概要」を発表した。
 本計画は、すでに第四次全国総合開発計画(昭和六十二年六月)や新しい近畿の創生計画(スバルプラン=昭和六十二年三月)に、中軸計画として位置づけられているところであるが、先の「調査概要」でいつそう明らかになつてきたように、この計画については基本的な点で次のような問題がある。
 それは、地域住民に対しては「緑豊かな定住性の高い魅力ある“丘陵都市”づくり」と称して財産区財産を含め、広大な土地を低廉な価格で取得することを一部大企業に許しながら、実際は大企業本位の「産業・研究開発の複合プロジェクトの一大拠点」づくりが、行政の援助によつて進められていることである。
 しかも、大企業取得地を中心にした開発プランづくりであり、造成される住宅地は、庶民には手の届かない大変な高値になることが予想されている。このまま本計画が実施されると、地元に重大な影響を及ぼすことは必至である。
 本来この種の大プロジェクトの推進に当たつては、計画段階からあらゆる調査結果を公表し、住民参加のもとに民主的に進めることが基本であるにもかかわらず、構想の具体的内容は何一つ明らかにされず、既成事実だけが積み重ねられ強引に推進されているのが実情であり、本計画については、私は根本的な見直しが必要であると考えている。
 また本計画を進めるに当たつては、後で詳しく述べるように、国土開発上の問題、環境・自然保護の問題、地価問題、バイオ分野の公害問題など、すべて国の政策と深く関係することばかりである。政府はこれらの問題について明確な見解を示し、必要な対策を講ずべきである。
 以下具体的に質問する。

一 「国際文化公園都市株式会社」による開発について
 1 総事業費はいくらで、そのうち住宅・都市整備公団による基幹施設整備費(道路・下水道など)はいくらか。
   総事業費が一兆円で、基幹施設整備費は約三千億円という報道があるが、概略で事実に近い数字と考えてよいか。
 2 同社による開発は採算中心になると考えられる。
   都市開発がこのような形で行われるのは何故か。利潤が生まれれば住民への還元はあるのか。赤字の場合は補填を公共が行うのか。
 3 地元自治体(茨木市、箕面市、大阪府)の負担は、総事業費一兆円とすると、それぞれどれぐらいになるか。
   茨木市では直接的事業費だけで約五百億円、これに単価アップ分と利息等を含めると約千億円にもなると予測しているが、この数字についてどう思うか。
   市の年間予算の二年分にも当たる多額な投入が予想されることについて、自治体の適切な財政運営とはいえないと思うが、政府の考えはどうか。
 4@ このような大規模な開発は、地元の既存市街地の道路や下水道、公園などの根幹的都市施設の整備に影響を与えるばかりか、交通事情の悪化や、関連中小河川の改修の遅れに伴う浸水、災害の増大を誘発する可能性があると思うがどうか。
  A 開発地域から大阪市内への大・中量輸送機関としてモノレールの導入が計画されているが、肝心のそのルートが既存市街地の中心部を通過しないために、地元が期待する市の中心部の活性化に結びつかないおそれが心配されている。地元茨木市長も「地下鉄で市中心部との結合」といつている。既成市街地の活性化につながらないこのような開発計画について政府はどのように考えるか。
 5 工期のスケジュールについて伺う。
   地元市では、「都市計画決定は昭和六十四年頃」、「事業着工は昭和六十四〜六十五年度」といわれている。政府はこれを認知しているのか。
   住宅・都市整備公団の現地事務所も六月に開設されているが、政府出資の住・都公団が調査段階からこのような形で関与することは、公団本来の目的や業務内容から逸脱するものではないか。
 6 低家賃の公営住宅の建設について伺う。
   仮に本計画について住民の合意が得られたとした場合、政府は低家賃の公営住宅の建設についてどのように考えているか。
   最近の府営住宅への応募率は急増しており、特に茨木市や箕面市は、近隣の都市と比較しても公営住宅の戸数が一段と少なく、低家賃公営住宅の必要性が強く求められている。
   住宅・都市整備公団法の主旨や目的からも、低家賃公営住宅建設の一定の義務づけを行うべきだと思うがどうか。
 7 今回の「調査概要」には、これまで常に強調されていた「公共主導による」北部丘陵開発の文言が消えて、「公共と民間が協力する」になつている。これは街づくりの基本方針である開発整備計画の概念にかかわる重大な問題である。
   これまでの公共主導による北部丘陵開発の考え方に変化があるのか、政府の明確な答弁を求める。
二 環境、自然保護の問題について
  茨木市、箕面市に広がる北部丘陵地域は、大阪に残された数少ない緑豊かな自然の山林地帯である。
  周辺には箕面国定公園が広がり、摂津耶馬渓、箕面の滝、隠れキリシタン跡など名勝史跡に恵まれ、また野鳥の宝庫としても広く府民に親しまれているところである。
  しかし、このような貴重な自然も、一度環境が破壊されれば取返しのつかない事態になることは、これまでの経験からも明らかである。
  このような貴重な自然を無秩序な乱開発から守ることは、何よりも優先されるべき重要課題である。
 1 先に述べたように当該地域の周辺には箕面国定公園が広がり、また環境庁が「保護すべき貴重な自然(山林)」(特定植物群落調査報告書)として指摘する(注)勝尾寺のウラジロガシ林(五ヘクタール)、(注)箕面滝安寺のシイ林(二ヘクタール)、(注)箕面のイロハモミジ ― ケヤキ林(四十ヘクタール)が近接して存在する。
   もしもこれらの群落の近辺に大規模な開発が及べば、貴重な群落に大きな影響があると思うがどうか。
   また、せつかく五年に一度の調査で「特定植物群落」に指定したのだから、政府は当然将来にわたる万全の保護対策を講ずるべきである。
   政府は、大阪府、茨木市、箕面市などと十分に相談の上、当該地域の環境保全に実効ある対策をとるべきであると思うがどうか。
 2 昨年茨木市が公表した「茨木市鳥類調査報告書」によると、同市内で見つかつた野鳥は全部で百五種類にのぼつたが、これは大阪府で戦後記録された野鳥の約三分の一に当たる。
   特に北部丘陵地域一帯には、コゲラ、キセキレイ、ウグイス、メジロ、シジュウカラをはじめ、フクロウやオオタカ、オオルリなどの府下では珍らしい野鳥も観察されており、こうした種類の多さや希少な野鳥の存在は、その野鳥を支える豊かな自然があるからだということを改めて教えてくれている。
   鳥類は自然(森林)の生態系と一体となつて存在できるのであり、従つて森林の伐採等は、鳥類の存在を脅かすものである。
   貴重な野鳥の宝庫である北部丘陵地帯の緑と自然の現状程度の維持は、最低限守られなければならないと思うが、環境庁の考えはどうか。
三 阪急電鉄(株)等の土地売買に関する問題について
  国土庁が九月三十日に公表した全国の基準地価では、大阪圏は昨年の七・九パーセントから今年は二七パーセントと、全国で最大の高騰を示している。
  特に吹田市地域の値上がりは激しく、地価上昇率の全国ランキングの上位七位までを独占し、その上昇率もわずか一年で二・六倍もの急騰ぶりである。
  阪急電鉄(株)は、昨年三月吹田市の隣の茨木市、箕面市に所有する土地の一部(約四十四へクタール)をサントリー(株)、大塚製薬、田辺製薬など六社のバイオ企業に、茨木市や地元の地権者の同意を得ずに一方的に売却した。
  当該地域は、昭和四十六年に茨木市と箕面市にまたがる財産区財産(公共用地)を阪急電鉄(株)が取得する際に、両市並びに地権者代表(十一自治会)と、「(本物件については)約三千戸の緑地住宅として阪急自らが開発する(売買契約書第九条)、(約束が不履行の場合は)契約を解除する(同第十条)」約束が結ばれていたところである。
  近年この地域は、「国際文化公園都市構想などで、急激な地価上昇の心配がある」(朝日新聞)とされ、大阪府も今年一月に土地監視区域に指定し、地価の安定を図つている。
  自治体や住民との契約を無視する阪急の態度や、それを放置する茨木市や箕面市の無責任な態度は、絶対に容認できないことである。
  私はそのような立場から、国の厳正な対処を求めるものである。
 1 土地投機のための取引ではないか
   前述のように、阪急がバイオ企業に所有地の一部を売却した時期は、大阪が当該地域を監視区域に指定する直前であり、土地投機のための取引の疑いが濃厚である。
   阪急が昭和四十六年に購入した価格は平方メートル当たり約二千三百円、現在では少なくとも約百倍の価格といわれている。もし土地投機のような取引がやられるならば、当該地域が早晩異常な地価高騰に見舞われるのは必至である。
   本計画を土地投機の対象にするような企業の姿勢については、国土利用計画法に照らして厳しく行政指導すべきであると思うが、政府の考えはどうか。
   事業手法は「土地区画整理事業」といわれているが、住・都公団は大規模土地所有者から全面的に買収する方針だと聞いている。これでは公団が土地投機を促進していることになるが、政府の見解はどうか。
 2 昭和四十六年当時地元地権者(十一自治会代表)は、「住宅開発」の約束で阪急と立会山売買確認書をかわしている。
   ところが今回の阪急の行為は、事実上「阪急による三千戸以上の住宅建設」の約束をホゴにするもので、住宅開発を信じて売却に応じた地権者(住民)や自治体をだましたことになり、宅地建物取引業法上も問題があると思うがどうか。
 3 阪急によるバイオ企業への転売は、これまで述べたように地権者(住民)との「売買確認書」や財産管理者の茨木市、箕面市との「売買契約書」に明らかに違反している。
   法的にも問題があると思うがどうか。
四 ライフサイエンスパークにおける遺伝子組換え実験等に対する政府の対応について
  「国際文化公園都市」構想の“目玉”の一つはライフサイエンス研究等の研究開発拠点の形成を図ることにある。
  この点については、「調査概要」でも「本地区にライフサイエンス、バイオテクノロジー系の研究施設を立地・誘導するとともに、大阪大学等の諸施設との有機的な連携を図ることにより、研究開発拠点としてのライフサイエンスパークの形成を図る」と明記されている。
  すでに民間企業のサントリー、田辺製薬、大塚製薬、ペプチド、林原などの進出が確定し、それらの研究所では遺伝子組換え実験が実施されているといわれている。
  遺伝子組換え実験等の研究が基礎生物学的に重要な意義をもつものであり、この技術が今後医学、薬学、農学、工学などの分野に広く用いられ、がんその他の疾病の原因の解明や治療、新しい医薬品の開発や作物の改良など、人類への多大な貢献が期待されていることについては、我々も十分に認識しているところである。
  問題は、遺伝子組換え実験によつてつくられた未知の病原体が外部にもれて、人間や自然に危険をもたらすおそれが存在することである。
  この点については、政府も安全確保の具体的施策として「組換えDNA実験指針」(昭和五十四年決定)を定め、物理的封じ込め及び生物学的封じ込め等の厳しい対策を講じることを求めている。
  関係住民の不安を解消し、将来もいかなる事故も発生させないためにも、政策の積極的で適切な対応を強く求めるものである。
 1 将来ライフサイエンスパークにP4実験室がつくられる可能性はあるか。
 2 ライフサイエンスパークに進出する各社が行うと予想される遺伝子組換え実験は、物理的封じ込めのどのレベルに相当するか。
 3 遺伝子組換え実験の指針(ガイドライン)が厳格に守られなければならないのは当然だが、逸脱や違反があつた場合にはどういう制裁があるか。
 4@ これまで国内で、P3級実験室での事故によるバイオハザード(生物災害)の例と、その際にとられた対策はどういうものであつたか。
  A 実際にバイオハザードが発生した場合を想定した具体的対策を事前につくるべきだと思うがどうか。
 5 人口密集地域の住民が不安感を抱くP3、P4級の実験施設を、安易につくるべきではないと思うがどうか。
   P3、P4などの研究施設は、研究上の利便を優先させるよりも、万一の事故に備えて住民の安全を優先させ、できるだけ住民への影響が少ないと想定される立地点を選ぶべきだと思うがどうか。
 6 P3、P4施設を含む微生物学研究所の立地には、当然住民参加の厳格な環境アセスメントを実施し、研究内容や予想される事故などについて、広く関係住民に知らせる必要があると思うがどうか。
 7 バイオ企業や研究所の進出に際しては、安全確保のために住民代表が参加し、必要な場合には立入調査なども自由にできる監視機構の設置を義務づけるべきだと思うがどうか。

 右質問する。





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