衆議院

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平成元年四月二十一日提出
質問第一九号

 ゴルフ場及び堤防等の農薬汚染に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  平成元年四月二十一日

提出者  寺前 巖

          衆議院議長 原 健三郎 殿




ゴルフ場及び堤防等の農薬汚染に関する質問主意書


 昨年八月、私の「ゴルフ場開発による農薬汚染等に関する質問主意書」に対する政府答弁ではじめて、ゴルフ場において使用される農薬が農薬取締法の適用対象となった。
 それに伴って、農水省、厚生省、環境庁は通達で各都道府県に農薬の使用実態を調査するよう求めていたが、最近東京都、大阪府と次々にゴルフ場における農薬使用実態調査結果を公表している。各都道府県は、昨年九月から十二月にかけて農薬、肥料等の使用実態、排水方法、農薬の保管管理等を調査している。これらの公表された調査結果は、公表方法等が各都道府県まちまちであり、そこに示されたゴルフ場の農薬使用状況は実態を的確に反映していないものが多く、明確な資料が全て公表されてもいない。
 しかし、そのような不明確な調査報告をみると、@農薬の年間使用量が二分の一程度に低く発表されている事例や単位面積当たりの使用量は農作物の四倍近くに及ぶ例があるA発がん性が疑われているダコニール、キャプタンや魚の背曲症を生ずるダイアジノン、芝、樹木に適用登録のない毒物のEPN乳剤、着色剤としてのマラカイトグリーンやカラーランドが広く使用B無登録農薬や適用外使用が多種多量に使用Cグリーンキーパー等への無指導D簡易水道水源等の周辺環境への影響等が指摘される。
 しかも問題なのは、いまだに公表しない県があるだけでなく、肝心の調査を求めた国がいまだ公表していないことである。各都道府県の「農薬安全使用指導要綱」の策定等にまかせて何ら国の責任ある対策を講じようとしない国の姿勢は重大である。国は、全国調査結果を全て公表し、農薬の適正使用、総量規制の明示、水質・大気・環境汚染の生じない農薬に限定した許可等の抜本的な対策を講ずることがいま強く求められている。
 また、農薬の汚染はゴルフ場に限らず、河川堤防、道路、公園、鉄道線路、住宅敷地の農薬散布等でも起こっている。スーパーマーケット、園芸店などでは、不快害虫防除剤として、内容成分は明らかに農薬と同一で、農薬の大手メーカーが製造している製品が店頭販売されている。屋内使用は厚生省の防疫薬剤、シロアリ駆除はまた別の省庁管轄と国の縦割行政の矛盾を巧妙についた明らかな脱法行為である。さらに、厚生省の管轄する医薬部外品の防疫用薬剤ではあるが、鉄道車両の消毒にも農薬と同一物質が頻度高く使用されている。
 これらの施設では多種多量の薬剤が散布されているにもかかわらず、農薬取締法等の適用もなく、使用マニュアルや働く人々の安全対策も整備されていない。故に現在でも、その使用農薬名、使用量、使用方法、水質への影響等の全容が明らかにされていない。
 ゴルフ場及び河川堤防等の農薬汚染から国民の生命と自然の環境を守るための対策は、さらにいっそう緊急を要すると考える。従って、次の事項について質問する。

一 ゴルフ場での農薬使用について
 1 全国使用実態調査の公表について
   国の指示によって各都道府県が昨年十二月までに実施した「農薬使用実態調査結果」は、厚生省が二月の各都道府県担当課長会議に簡単に報告した以外、全く公表されていない。
   国は、都道府県別の@使用農薬等の種類、年間農薬等使用量、散布方法等、A集落、学校等の環境保全上配慮すべき施設の存否、Bゴルフ場周辺の水利状況、C周辺環境への影響、従業員やプレーヤーへの危被害防止のための事業者の対応、D環境保全協定の締結状況、E保健所による水道水源等の水質検査結果等、全ての調査結果を公表すべきではないか。
   とりわけ、農薬の過剰使用、毒性の高い農薬の使用、無登録及び適用外使用、水道水源の汚濁を生じさせる等のゴルフ場数を都道府県別に明らかにされたい。
 2 農薬の過剰使用に対する指導について
   東京都内の場合、一施設当たりの農薬の年間使用量は、最高六、二八〇キログラムで、一〇アール当たり最高一二キログラムを使用しているなど単位面積当たりの使用量は農作物の四倍近い膨大な使用となっている。
   国は、少なくとも農作物の農薬安全使用基準及び防除基準に従った農薬の使用を指導すべきではないか。
 3 農薬登録の見直しについて
   各都道府県が公表した使用農薬のなかには、米国環境保護庁(EPA)が「発がん性が疑われる農薬」として公表し、国際がん研究機構(IARC)が「人に対する発がんの可能性が高い物質」としてあげているダコニール、キャプタン、マンゼブ、ダイホルタン等がある。
   国際的には農薬の規制措置が強化されているが、とりわけ国は七八年以前に登録された安全性の不明確な農薬などを禁止措置を含め抜本的な見直しを図るべきではないか。当面、少なくとも水源涵養地及び簡易水道使用地等では水質を汚染しない性質をもった薬剤に限って使用し、近接住宅地及び公共施設地等では大気・環境を汚染しない性質をもった薬剤などをスクリーニングして許可すべきではないか。
 4 無登録及び適用外使用に対する指導について
   東京都内で三種、大阪府内で四種、京都府内で六種の無登録農薬が使用され、EPN乳剤、ベンゾエピン乳剤、ダイアジノン粒剤、DDVP乳剤等が芝に適用外使用されている。また、奇形発生因子のあることが明らかになっている劇物マラカイトグリーンがゴルフ場内に排水処理装置もないまま使用されている。
   国は、無登録の農薬を取り締まるのは当然としても、毒物や劇物に指定され魚毒性の高いEPN乳剤、ベンゾエピン乳剤、ダイアジノン粒剤なども即刻使用を中止するよう指導を強化すべきではないか。またマラカイトグリーンにいたっては使用を禁止すべきではないか。
 5 水道水源の汚濁防止について
   厚生省が公表した「ゴルフ場周辺地域における水道の状況調査」によると、水源の水質、水量への影響が及ぶ水道事業及び影響を与えるゴルフ場は、全国で九四五事業、八五〇ゴルフ場となっており、これらのうち濁質の増加等水源水質の悪化や水量減少がごく一部にみられたとしている。
   ゴルフ場は、芝育成のために暗渠排水施設が完備しており、通常の山林に比較して保水力は三分の一〜四分の一である。従って、使用された農薬は直ちに地下浸透し排出される。ゴルフ場内の貯水池に放流されるものの、雨期には河川に流出する。国は、農薬登録の際、環境に対する影響も審査しているといっているが、ゴルフ場での農薬散布後の動態について具体的な検証データがあるのか示されたい。
   国は、農薬残留モニタリングによる検出量の高いゴルフ場での農薬使用を禁止する等の措置をとるほか、水道水源に影響を与えないよう開発計画の変更や事業者負担による水源地確保等の措置をとるべきではないか。
 6 従業員の労働安全衛生及びプレーヤーの安全について
   最近では、健康を保持するためのゴルフ場でめまい、目のかすみ等の症状を訴える従業員やプレーヤーが増えている。労働省の資料によってもゴルフ場における農薬散布の労働災害が、八三年一件、八六年二件認定されている。この労働災害は、殺虫剤ダイアジノン・メソミル及びトリクロルホン、殺菌剤キャプタンを散布中、その薬剤を吸入し、被災したものである。被災者は、薬物中毒性気管支炎等になり休業し、事業者は呼吸保護具の適正使用の指導を受けている。農薬の一部の成分は、労働基準法施行規則で定めた化学物質及び症状又は障害に指定され、労働災害を受けた被災者は災害補償を受けられる。しかし、労働安全衛生法上は有害物等に指定されていないため、安全衛生管理体制、労働者の危険又は健康障害を防止するための措置、健康診断等や健康管理等の対策が何らとられていない。
   国は、労働安全衛生法等の法整備を行い、農薬による従業員等の災害を防止すべきではないか。当面、ゴルフ場の従業員等に対する作業保護具の整備や健康診断を行うとともに、その労働安全衛生上の実態を全国的に調査すべきではないか。
 7 農薬使用者に対して農薬取締法に基づく指導強化について
   農薬取締法では農薬製造業・販売業・防除業者については、国又は都道府県職員が立入り調査を実施して、一定の指導がなされている。しかし、農薬使用者については、農薬販売者や農協職員、農業改良普及員が安全使用講習や購入時の取扱注意の指導にとどまっている。ゴルフ場のように、大規模面積で使用する職員の指導は、ゴルフ協会や一部府県の自主的講習指導は実施されているものの、ほとんど放任状態である。また、使用者に対していかなる場合も農薬取締法での立入り調査権限が認められているのか明確にされていない。
   国は、ゴルフ場等大型農薬使用者に対しては農薬使用実態調査を引き続き実施し、組織的指導体制を指揮するとともに、現行の農薬取締法で使用者の監察指導が可能か否かを明確にすべきではないか。不可能な場合は法改正すべきではないか。
 8 水質汚濁防止法及び水道法に定める環境基準の見直しについて
   水質汚濁防止法では、農薬では有機燐を検出しないこととなっているが、同法施行令ではEPNに限る(他のパラチオン等は製造中止の物質)となっており、現在の農薬流通市場では安全性に対して法は有効性を希薄としている。また、水質の窒素にしても農作物すら生産障害となる基準となっている。水道法にしても、水道水源の検出基準はない。現行法は飲料水の基準として「有機燐を検出してはならない」としつつ、同法検査基準はEPNを基準薬とした比色法による分析を示している。これは物質の同定ができないばかりか、化学分析としても精度が劣り分析化学としては通用しない基準である。
   国は、速やかにこれらの法の改正をすべきではないか。
二 河川堤防、道路、鉄道線路等での農薬使用について
 1 農薬使用状況の全国的な実態調査について
   農薬取締法は農作物を中心とした法とはいえ、河川堤防、道路、公園、運動場、鉄道線路、住宅敷地等ひろく非農耕地における農薬の使用についても同法によって登録認可をしている以上、同法によって安全性を担保しなければならない。これらの非農耕地において、農薬が過剰に使用されれば周辺住民の健康や自然環境に重大な影響を与えることになるが、現在これら非農耕地での農薬の使用状況がほとんど明らかになっていない。
   故に、国は、河川堤防、道路、公園、運動場、鉄道線路、住宅敷地等で使用する農薬の品名、使用量、使用方法、水質及び大気の監視体制等の実態調査を行うべきではないか。
 2 河川堤防での農薬使用について
   全国的には、直轄河川の堤防だけでも除草剤使用面積三、〇四一・二ヘクタール、除草剤使用量五六、四〇〇キログラム、除草剤の商品名ラウンドアップ、MCPソーダ塩、ブラスコン、カーブ等二四種類となっている。例えば京都府内を流れる由良川の堤防では、使用面積が三四・五三ヘクタール、使用量が六九二キログラム、一〇アール当たりの平均使用量が二キログラム、商品名がロンスター、アージラン、ブラスコン、プリマトールSAとなっている。これら河川堤防で使用されている除草剤のうちロンスター、ブラスコン、ラウンドアップ、アージラン等は国際がん研究機構の分類でも人に対する発がんの可能性が高く、かつ魚毒性も高い商品である。にもかかわらず、使用に関する基準もないまま農作物の二〜四倍程度の過剰使用が行われている。
   これまで、建設省の所管ということで農薬取締法の適用対象外となっていたが、今後国は、河川堤防で使用される農薬にも同法を適用し、河川水質の汚染防止及び周辺住民の安全に努めるべきではないか。当面、防除業者の指導を強化し、水質汚濁や大気汚染の高い農薬の使用禁止や水道水源の取水口付近での使用を中止すべきではないか。
 3 高速道路等での農薬使用について
   一般国道一号や二四六号線の中央分離帯で芝の除草剤としてシマジンが使用されている。高速道路では、芝の除草にアージラン(一ヘクタール当たりの使用量四〜一五リットル)、2・4 ― D(同四〜五キログラム)等一三種類、クズの除草にラウンドアップ(同二・五〜一〇リットル)等八種類が使用されている。これら高速道路で使用されている除草剤のうちアージラン、ラウンドアップは発がん性が疑われており、2・4 ― Dは猛毒のダイオキシンを含んでいるといわれているにもかかわらず、使用に関する基準もないまま、農作物の二〜四倍量以上が使用されている。
   これまで、建設省の所管で農薬取締法の適用対象外となっていたが、今後国は、高速道路等で使用される農薬についても同法を適用し、沿線住民の安全と自然環境の保全に努めるべきではないか。当面、防除業者の指導を強化し、高速道路等での除草に関する農薬使用基準を策定する等の対策を講ずるべきではないか。
 4 運動公園等での農薬使用について
   京都府の山城総合運動公園では、除草剤使用面積が四・八ヘクタール、除草剤使用量が三七・六キログラム、一〇アール当たりの使用量〇・七八キログラム、除草剤の商品名がシマジン、ロンパーとなっている。全国的には、国営武蔵丘陵森林公園、国営昭和記念公園等の五ヵ所の国営公園だけでも、使用面積七八・六ヘクタール、使用量九五二・七キログラム、一〇アール当たりの使用量一・〇七〜一・三六キログラム、商品名アージラン、ラウンドアップ等八種類となっている。これら運動公園等に使用されている除草剤のうちアージラン、ラウンドアップは発がん性が疑われているにもかかわらず、使用に関する基準もない。しかも運動公園等では、除草剤のほか芝の維持管理のための殺菌剤や樹木管理の防虫剤等が多種多様に使用されている。
   これまで、建設省の所管で農薬取締法の適用対象外となっていたが、今後国は、運動公園等で使用される農薬にも同法を適用し、利用者の安全と自然環境の保全に努めるべきではないか。当面、防除業者の指導を強化し、運動公園等での農薬の使用基準を策定する等の対策を講ずるべきではないか。
 5 鉄道線路での農薬使用について
   鉄道線路のなかの除草に農薬を使用しており、商品名クサブランカ(一平方メートル当たりの使用量四グラム)、タンデックス(同一グラム)、ハイバーX(同一グラム)が散布されている。これら鉄道線路で使用されている除草剤のうちクサブランカ、タンデックスは猛毒のダイオキシンを含んだ2・4 ― PAを成分としているにもかかわらず、使用に関する基準もない。
   国は、鉄道沿線の住民の安全と自然環境の保全のため、鉄道線路での除草に関する農薬の使用基準を策定する等の対策を講ずるべきではないか。
 6 鉄道車両等での消毒について
   鉄道車両等は、噴霧及び燻蒸の方法で一ヵ月に一回以上の殺虫及び消毒を行っている。消毒液は厚生省の承認を受けた医薬部外品だが、その成分は農薬と変わりない。JR各社は、「所属長は旅客車、旅客自動車及び旅客船の殺虫及び消毒を毎月一回以上実施しなければならない」という社内規定に従って、例えばJR東日本の場合はバルサンPZ、サンパーRD乳剤、JR西日本の場合はDDVP・クレゾール混合乳剤等を使用している。また、その使用量はJR西日本宮原電車区の場合一車両当たり〇・四リットル程度(希釈一〇倍)、一ヵ月当たり八リットル程度(原液)となっている。
   これら鉄道車両で使用されている消毒液のうち有機りん剤DDVPは米国環境保護庁によって発がん性が疑われており、労働基準法施行規則でも中枢神経性急性刺激症状、意識混濁、言語障害等の精神神経障害等が示されている。また、農作物への散布でさえも一、〇〇〇〜二、〇〇〇倍の希釈となっており、人が直接使用するものへの一〇倍希釈は危険ではないか。しかも月一回以上の使用は過剰といわざるをえない。
   故に、国は薬事法や毒物及び劇物取締法を適用し、安全な使用基準等の整備を図って旅客の安全を確保すべきではないか。当面、JR各社の社内規定を見直し、より安全性のある規定を策定するよう指導すべきではないか。

 右質問する。



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