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平成二年十月三十一日提出
質問第五号

 固定資産税の評価替え等に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  平成二年十月三十一日

提出者  常松裕志

          衆議院議長 櫻内義雄 殿




固定資産税の評価替え等に関する質問主意書


 来る平成三年一月一日は固定資産税の評価替えの賦課期日である。その評価算定基準日は平成元年七月一日とされ、昭和六十一年八月から三年間の地価動向により、宅地(商業、住宅、工業、特殊)評価額が市町村長により決定される。
 この三年間は、金融緩和などによる投機的な地価上昇により、東京圏始め大都市圏では、宅地は、地価公示で二・四倍から三・八倍、相続税路線価で三・七倍から五・二倍にハネ上がっている。これが、そのまま評価替えに反映するとサラリーマン、年金世帯、低所得世帯の生活は、深刻な危機に直面する。
 即ち、この三年間の賃上げは一六・三%であり、公的年金のアップ率は七・五%にすぎないのである。しかるに、本年九月二十八日、自治省は、宅地で平均二八・五%引上げの評価替えを決定しているが、前回の一六%より一二・五%上回っている。しかも大都市(周辺)では、京都市八五・一%、名古屋市七二・八%、横浜市六九・四%など大幅にアップしており、負担調整措置も三年から六年に延長するとも言われている。
 サラリーマン、年金世帯など勤労世帯が保有する生活用小規模居住用地は、営利追求や資産価値の増殖のための手段でなく、生きるための土地利用にすぎない。
 よって、小規模宅地については、農地と同様他の宅地と区分して扱う必要があるのではないかとの視点から、以下の質問をする。

1 負担調整は不可避と考えられるか。毎年一〇%増の六年間でも七七%増となるように、相当な増税となることが予想される。
  年増加率が最高五%以下となるように負担調整を行うため、調整期間の再延長又は課税標準の特例(四分の一又は二分の一)をさらに強化すべきではないのか。
  特に、年金世帯、母子世帯、障害者世帯等についての非課税措置も検討すべきではないのか。
2 居住用宅地についての評価基準については、現行の宅地一律評価(売買実例価格)を改め、「土地利用」の立場に立った収益還元方式とすべきではないのか。
3 現行の宅地の評価基準について、その方法、内容が不明確であり、その根拠を問う。
 @ 地方税法第三四一条第五号では「適正な時価」とされ、同法第三八八条により自治省告示「固定資産評価基準」が定められている。それは、「正常売買価格にもとづいて、適正な時価を設定する方法」とされ、売買実例価格が不正常価格(将来の期待価格、買急ぎ割高分、土地の希少性による割高分、隣接地の買い足しによる割高分など)を除いて「正常売買価格」を求めたものとされている。それは、「土地資産価値」を求めたものであって、「土地の使用収益」を求めたものではない。なぜ資産価値の立場に立つのか。正常売買価格をどのように算出するのか明らかにされたい。
 A 宅地では、商業地区(繁華街、高度商業地区、普通商業地区)、住宅地区(併用住宅地区、高級住宅地区、普通住宅地区)、工業地区(大工場地区、中小工場地区、家内工業地区)、村落地区(集団地区、村落地区)、観光地区の五大区分がされ、さらに十二地区に細分されて指示平均価格等が算出されている。
   これら地区ごとには、路線価方式、水路価方式など多様な評価方法があるが、各地区ごとの評価方法を設けるべきであり、現行の評価方法をまず明らかにされたい。住宅地区については、不動産市場での投機を防止するためにも国民の生存権保障の立場からも賃貸価格に基づく「適正な時価」を求めるべきではないか。今回の評価替えを改めることが検討されるのか。
   他の地区では営利追求の手段とされる用地については、資本価格ないし公示価格等により評価すべきでないか。
   自治省告示の評価基準の法的性格は、市町村を拘束するものでなくガイドラインであることから、今回の評価替えでも賃貸価格による評価が可能であり、政府として助言する方針はないか。
 B 相続税法第二二条では毎年七月一日現在の「取得時価」とされ、国税庁「相続税財産評価に関する基本通達」等により農地、宅地、山林の三区分により評価基準が定められている。宅地では「一画地の宅地ごとに評価する」路線価による。
   「時価」には路線価方式と倍率方式があるが、どのように算出するのか。固定資産税での売買実例方式とどう異なるのか明らかにされたい。固定資産税では中央固定資産評価審議会及び都道府県審議会に基準地価などが諮られ公表されているが、各国税局にある「土地評価審議会」(二十人任期二年)はどのような構成(氏名)で審議をし、路線価を決めているのか明らかにされたい。
   相続税の路線価を公示価格と同様一月一日現在とすべきでないのか。路線価、公示価格、固定資産税での同一ポイントでの実態調査を公表すべきでないのか、各評価の関係を説明していただきたい。
   各国税局の決定した路線価は、国民の財産権に重大な影響を及ぼすものであり、不服申立ての手続きはどうなっているのか明らかにしていただきたい。
 C 所得税法第三三条第一項の譲渡所得では、同法第五九条第一項により「時価で資産の譲渡」とされるが、この土地に関わる時価の評価基準を明らかにされたい。相続税の路線価か、公示価格か、精通者価格か、その他か。
   他方、地方税法第五九三条により特別土地保有税では「取得価格」とされるが、その評価基準、評価時期を明らかにされたい。譲渡取得での評価額と異なる場合の調整はどうしているのか。国税が優先かどうか。
 D 地価公示価格(基準地、標準地)は実勢価格と異なっているが、どのような評価基準によるのか明らかにされたい。
 E 国有財産台帳価格は、国有財産法施行令第二三条により、昭和三十一年三月末より五年ごとに評価替えが行われるが、来年三月末がその期日である。(郵政特会等では四月一日)
   一般会計に関わる「土地の評価」については大蔵省理財局「国有財産台帳の価格改訂に関する評価要領」によって行われる。即ち、「その取得時期に応じその取得価格に時価倍率を乗じて算出した価格を評価額とする」を建前とし、「評価額が近傍類似の時価額等に比して著しく不適当であると認められたときは近傍類似の価格等をしんしゃくして修正した価格とすることができる」としている。
   この近傍類似の時価額とは何を指すのか。公示価格か、路線価か、固定資産税評価額か。
   商業地、住宅地、工業地の三区分により、時価倍率を乗ずるとしているが、この区分の根拠、区分ごとの時価倍率はいかにして算出するのか。
   「著しく不適当」とはどの程度のことを指すのか。
   公務員住宅の宅地評価はどのような方法で行うのか。
   国有地の貸付に当たっての賃貸価格はどのように算出するのか。
   特別会計に関わる「土地の評価」は各省大臣が大蔵大臣と協議して評価するが、例えば、市町村交付金の算出基礎となる公企業用地では「国有資産等所在市町村交付金の算定基礎額の基礎となるべき額の修正措置」により、台帳価格が近傍地価と著しく乖離した時に限定されるか。郵政省などは昭和五十一年度以来改定を行っていない。
   特別会計での土地評価基準を明らかにされたい。
   市町村交付金は、固定資産税の代わりとされているが、都市部では固定資産税と都市計画税は一体であり、国有財産も都市計画事業での受益を受け入れている以上、都市計画税も算出交付すべきでないか。
   基地交付金については、大蔵省、防衛施設庁、建設省など各省庁による土地評価により配分されているが、評価基準は以上と同様か。今回の評価額上昇により、交付金配分が大きく変更した場合の増額措置あるいは減額の緩和措置をとるべきでないか。
 F 公有財産台帳価格での土地評価基準を明らかにされたい。都道府県の市町村交付金の根拠となる土地評価はどのように行われるのか。都市計画税も加えて交付すべきでないのか。
4 固定資産税の軽減緩和措置については、四分の一特例などがあるが、欧米にみられる生活用居住土地について、高齢者世帯、母子世帯、障害者世帯、低所得世帯などに対する非課税措置、扶養家族の状況による基礎控除制度、軽減税率の適用などを検討すべきでないか。都市計画税についても特例措置による軽減を図るべきではないか。
  他方、高額所得者の所有する土地については、所得に応じて税率を累進化すべきでないか。
5 国民健康保険税(料)の算出ではほとんどの市町村は固定資産税に対する一定税率(五〇%前後)により、資産割が求められている。今回の固定資産税の増税に伴い本税の増税は、年金世帯など低所得世帯の生活を深刻化するのは必至であり、一般世帯とは異なった軽減、緩和措置を検討すべきでないか。
6 地方税法第四一五条により「固定資産課税台帳の縦覧」が三月一日より二十日間を原則として実施される。今回の評価替えに伴う縦覧はどのように進めるのか。本法の縦覧は、地方税法施行規則第二四号様式「土地課税台帳」によるべきであるのに、「土地家屋名寄帳」しか縦覧させないため、住民の関心も低くなり課税ミスの背景にもなっているのではないか。かかる縦覧は、地方税法第四一五条に違反するのではないか。
7 固定資産(宅地)の路線価の公開が来年から実施される予定とされるが、6の土地台帳縦覧との関連をどうするのか。地目の範囲はどうするのか。宅地については、商業、住宅、工業、村落などの区分によって公表するのか。公示価格、相続税路線価、精通者価格などの達成率の相違が生じた場合の是正を行うのか。
8 固定資産税に関わる「税金のとりすぎ」など課税ミスが全国的に発生して、行政に対する住民の不信を高めている。早急に克服せねばならない。時効五年の壁により、取りすぎた税金は全て還付されない。課税当局の一方的ミスにより不当違法な財産権侵害については国家賠償法による救済しかないのか。還付のための手続き改正を行う予定か。
  他方、移転価格税制では時効がなく、何十年にもさかのぼって法人税、法人税割の還付が行われているがあまりにも差別的ではないか。
  現行の「五年の時効」は不適当であり税務当局は課税書類を六年目より整理する傾向があり、時効の延長も検討すべきでないか。
  固定資産税の課税ミスの主な原因にはコンピュータ入力、チェックミスなど機械化の行過ぎ、人員不足があるが、登記所でのミスも多いと言われる。登記所は特別会計化され、登記書類整備が進められているが、多くがアルバイトのために生じているとされるが、どのような整備を進めるつもりなのか。
  さらに、固定資産税の課税ミスは賦課主義にあるのではないか。相続税、特別土地保有税など申告納税制度とすべきでないか。

 右質問する。





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