衆議院

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平成三年八月二十六日提出
質問第二号

千歳川放水路に関する質問主意書

提出者  児玉健次




千歳川放水路に関する質問主意書


 石狩川・千歳川流域の水害対策は緊急な課題であり、総合的、抜本的な対策が必要であることは言うまでもない。北海道開発庁が着工を急いでいる千歳川放水路計画について、多くの関係者から出されている疑問や危惧に対し、開発庁は、この計画の調査・検討内容を部分的にしか公表せず、科学的にも納得できる根拠を示していない。放水路計画は各種資料を公開して、科学的検討を尽くすと同時に、地域住民、関係者の合意によって支えられたものでなければならない。
 以下、具体的に質問する。

一 石狩川・千歳川の緊急治水対策について千歳川流域の低地帯の水害を防ぐために、中小河川の改修促進や排水機場の整備、石狩川本流のしゅんせつなど現河川の改修、整備こそ急がなければならない。
 1 千歳川流域の低地帯は千歳川の計画高水位よりも地盤が低いため、洪水時には強制的に内水排除を行うことが必要である。長沼町では、八五年九月の一〇九ミリ(一日)、八七年八月の一五六ミリ(二日間)、八九年九月の一一二ミリ(二日間)、九〇年四月の一七二ミリ(二日間)程度の雨量でも転作田が大きな水害を受けている。こうした水害を防ぐためには、旧夕張川などの中小河川、排水路等の改修促進と既設排水機場の整備拡充、新たな排水機場の増設こそ急ぐべきである。政府の見解を問う。
 あわせて、旧夕張川など中小河川、排水路等の改修、排水機場の増設拡充について、当面の具体的な計画があれば明らかにされたい。
 2 八八年の河川審議会の答申は超過洪水対策について従来の治水工法に一定の見直しを提起している。政府は、石狩川・千歳川流域の中で、遊水池の増設に積極的な対策を講ずる考えはないか。
 北海道開発局の「石狩川水系工事実施基本計画」には、遊水池群の整備が示されている。石狩川・千歳川流域における遊水池群の整備はどのように進められているのか。また、河川断面を確保するために石狩川下流部、河口部のしゅんせつを強化するとともに、しゅんせつの障害となっているJR学園都市線の篠路拓北鉄橋の架替えを促進させなければならないが、その見通しを示されたい。
 3 千歳川流域の大規模なゴルフ場開発によって、森林が失われ流域の保水能力が著しく低下し、水害発生の一因ともなっている。治水対策の強化を言いながら災害の危険を増大させるゴルフ場開発を容認することは明らかな矛盾である。治水対策上こうした開発に厳しい規制を行うことが必要であると思うが、どうか。
二 放水路の水門操作及び地盤沈下等について
 水門や堰の位置は洪水対策上重要なものであり、洪水時、それがどのように操作されるかによって治水効果、環境に大きく影響する。
 1 開発局が一九八四年八月に出したパンフレット「二一世紀の流れをつくる千歳川」では、洪水時に石狩川の洪水が千歳川に逆流し、低平地に氾濫浸水すると指摘し、八一年八月の洪水では千歳川への逆流は三十二キロメートルに達したと説明している。放水路計画では、洪水時に締切水門を閉鎖することにしているが、石狩川本流の江別から下流域では、千歳川に逆流していた流量の分が加わることになり、災害の危険が増大するのではないか。
 2 千歳川放水路計画の締切水門、呑口水門、潮止堰は洪水時においてどのような基準で操作が行われるのか。
 3 放水路は、平常時、水位を水深二メートルに保つことにしているが、その取水源及び取水量についてどのように考えているのか。さらに祝梅川等の水を流すことも考えているのか。
 4 放水路への地下水の流出により、その周辺二キロから五キロメートルの範囲にわたって地下水位が低下すると予測されている。地下水位の低下によって、泥炭や粘土層が分布するところでは地盤沈下が発生する。予測される地盤沈下の範囲を示すとともに、その対策について明らかにされたい。
三 放水路による農業、漁業への影響について
 1 千歳川放水路計画は幅四百メートル前後にも及ぶものであり、海霧が現在より奥深く侵入してくると予測される。しかし開発庁は「放水路による地形変更は極小であり、海霧の侵入を助長することにならない」と断言している。長沼町、早来町などは、冷害の多い地域であり、年平均気温のわずかな変化で農作物収量に大きな影響を受けている。開発庁は何を根拠としてこのように断言できるのか。
 2 掘削による農地のつぶれ地に対する対策はどのように考えているのか。また、農地が分断されるところも出てくるが、農地の交換、代替地として苫小牧の植苗地区にある酪農学園大学用地の一部をあてることも考えているのか。
 3 掘削土は一億二千万立方メートルにもなるが、膨大な掘削土の処分地別の処分量を明らかにすべきではないか。掘削土の大部分は泥炭、火山灰とみられるが、盛土したあと農地として使用できるのか。また、千歳市の駒里地域の農地五百ヘクタールにわたって掘削土を五メートルから十メートル積み上げる計画を持っているのか。
 4 安平川にベニザケが回帰し、漁業者の期待が高まっているが、潮止堰をつくることによって安平川など貴重なベニザケの遡上河川が失われるのではないか。また、シシャモなどは再生産の場を喪失することになるのではないか。
四 美々川・ウトナイ湖への影響と対策について
 美々川流域を含むウトナイ湖周辺の湿原は貴重なものである。自然環境の保全は北海道民の願いであり、納得できる環境保全対策がなければ関係者の理解を得られない。
 1 美々川流域は、北海道の優れた自然地域に指定され、環境庁の自然環境調査でも準特定植物群落(ミズナラ、コナラ自然林)の指定を受けている優れた湿原植生域である。昆虫類も豊富で標本昆虫のオオムラサキ、特定昆虫のエゾルリイトトンボ、セスジアカガネオサムシ、フタモンアシナガバチなどが生息している。下流のウトナイ湖は日本でも有数の水鳥の中継地である。既に、七三年十二月に環境庁自然保護局長と北海道知事との間で、美々川流域を含むウトナイ湖とその周辺の湿地帯について「将来にわたって自然環境が保全されるよう鳥獣保護区の特別保護区等を設定する方針」であり、美々川水系に「悪影響を及ぼすような用水取得は行わない方針」であるとの了解事項が交わされている。この了解事項に沿った環境保全を図るべきではないか。
 2 開発庁は、放水路による地下水の流失があるため、美々川源流部で影響する分は〇・三トン(毎秒)から〇・五トン(毎秒)として、この分を上流部で補給するとしているが、この水量 は何を根拠にして算定されたのか。またどのような方法で補給するのか。その取水源も明らかにされたい。
 3 美々川は支流の少ない川であり、その水の多くは全流域で馬追山系の地下水によって涵養されている。美々川に流入する地下水量のすべてを補給しなければ美々川は保全されないのではないか。
五 地域住民、関係者との合意について
放水路計画のルート選定には、多くの疑問が残されている。また、放水路計画に関する資料も部分的にしか公開されていない。このような状況では、地域住民をはじめ、関係者の合意と理解を得ることはできない。
 1 開発庁は八四年五月に地元自治体や地域住民に対し、放水路の候補として三ルートを調査することを明らかにした。ところが、わずか二ヵ月後には当時の稻村佐近四郎開発庁長官が「年内にルートを決める」と発言し、十二月には河本嘉久蔵開発庁長官が「これまでの検討結果を総合的に判断して、開発局としては今後東ルートを中心に詳細な調査を実施したい」と発表した。このとき河本長官が述べた「これまでの検討結果」及び「総合的に判断」した内容とはいかなるものか。
 2 放水路計画に対して、農業経営が脅かされる農家が強く反対していることをはじめ、北海道漁業団体公害対策本部がサケ漁業や苫小牧沖海域での漁業への影響から反対の申入れを行い、ウトナイ湖の環境保全を求める自然保護諸団体も反対の意志表示をしている。このように放水路計画について、地域住民、関係者の合意が得られているとは到底いえない。中海・宍道湖淡水化事業は、地域住民の長年にわたる反対運動により、工事途中にして中止せざるを得なかった。現に着工されている長良川河口堰建設をめぐっても全国的な反対運動が起きている。政府は、こうした経験から教訓をくみとり、地域住民をはじめ、漁業者や自然保護団体など関係者の合意なしには、千歳川放水路計画の環境アセスメント、工事着工に入ってはならないと考えるが、どうか。

 右質問する。



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