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平成四年十一月三十日提出
質問第七号

プルトニウム輸送に関する質問主意書

提出者  小森(注)邦




プルトニウム輸送に関する質問主意書


一 フランスから日本へのプルトニウム海上輸送について、約三十か国の抗議や通過拒否声明が出されているといわれる。民間の不安や抗議の数はそれをさらに上回る。それは、去る十月四日、ナウル共和国のドウィヨゴ大統領が、東京での「アジア・太平洋プルトニウム輸送フォーラム」席上でおこなった演説に象徴される。とりわけ、大統領は、その中で「我が国は、この危険な物質の輸送について何の相談も情報提供も受けていない。先進国が高い技術から受ける恩恵の代価を小さい国に押しつけるのはやめてもらいたい。プルトニウム輸送の領海通過は拒否する。また、緊急寄港は認めない」と強く表明した。日本の国際的信用を失墜させるような事態になっていることについて、以下質問する。
 @ どれだけの国から問い合わせ、抗議声明、領海内通過の拒否声明が出されていると把握されているか。そのリストを明らかにされたい。
   また、それらの国々に対して、どのような説明がなされているのか。
 A 一回に一トン以上、今後三十トンものプルトニウム輸送を、毎年三〜四回、ヨーロッパから日本へおこなうというのは、歴史上かつてない計画である。
   このような多数の国々を危険に巻き込む恐れのある計画について、疑問や異議が、多数の国から出され、了解が得られないまま強行することは、国際的な信頼関係を失わせるのではないか。
 B 核物質の利用によって、恩恵を受ける国は限られている。それによって何らの利益を受ける可能性のない国々に不安と脅威を与えている。輸送ルートの国に対して、十分な情報公開をし、その了解を得るのは相手国の主権を尊重するという意味で最低限必要なのではないか。
二 プルトニウムは、純度が高ければ四〜五キログラムで核兵器ができる物質であるとともに、発ガン性が非常に強い。考えられる種々の事態の中で、最も懸念されるのは、火災によって、プルトニウム酸化物が空中に広く飛散することである。プルトニウムの破片(ホット・パーティクル)は、数十キロメートルも飛散することが考えられ、人体に吸い込まれると肺ガンを誘発する原因となる。さまざまな事態に対して、無寄港が前提のプルトニウム輸送にも万一の緊急寄港が必要とされている。また「日米原子力協定」によると、輸送に当たっては、緊急寄港地を予め決定し、アメリカ合衆国に対して、計画内容の中に示すことになっている。これらのことを踏まえ、以下緊急寄港について質問する。
 @ 今回の輸送について緊急寄港地が何か所か、予定されているのか。また、それは、どのような場合が想定されるか。
 A そこには、放射能計測器、防護服その他の放射能に対する装備や、設備があるのか。
 B また、そこには、核汚染に対処できる緊急事態の際の病院はあるのか。
 C 衝突事故、火災、故障その他の不測の事態に備えて、放射能災害に対処できる訓練された要員が、そこには何人ぐらいいるのか。
 D 緊急寄港予定地の政府、あるいは自治体には、そのことが知らされているのか。どの程度の情報公開がなされているのか。
 E 過去二年間において、使用済燃料の輸送船が、バミューダとホノルルに三回の緊急寄港をしていると聞いている。うち一隻は、今回の輸送船「あかつき丸」の前身「パシフィック・クレーン号」である。その三回の緊急寄港の理由について詳細を報告していただきたい。
 F もし、何らかの理由で緊急寄港が必要となっても、相手港から拒否された場合はどうするのか。
三 損害賠償について質問する。
 @ 放射性物質による汚染に関して、過去国家間でどのような例があるか。
 A 放射能汚染の賠償に関しては、どのような国際私法があるか。
 B 長谷百合子議員の第百二十四回国会質問第一号に対する答弁書の中で、賠償責任は、動燃が一元的に負うので、国家間の問題は生じないとされているが、動力炉・核燃料開発事業団の事業であっても、プルトニウム輸送は、日本政府が政策として推進しているのであるから、当然、国家としての責任はあるのではないか。
 C 前記答弁書では、「支払われる保険金の上限は六十億円」とされているが、科学技術庁原子力局核燃料課長坂田東一氏は、最近の論文の中で「この賠償措置額を超えた原子力損害が輸送中に発生した場合は、所要の手続きを経て、政府が必要な財政援助をおこなうことになっており、賠償額は事実上、上限がない」と述べている。これは、政府の正式見解と受けとってよいのか。「所定の手続き」とは何か。また「上限六十億円」はどのようにして算定されたものか。
 D 一例として一九五四年の、ビキニ環礁での第五福竜丸の被災に際して、アメリカ政府はどのような賠償をしたか、あるいはしなかったのか。
 E 公海上で放射能漏れのような事故があり、ある国が汚染されたような場合、その影響評価は、誰がどのようにして責任をもっておこなうのか。
   また、いずれかの国の領海または、経済水域内で同様な事態に陥った場合についても同じ質問をする。
四 アメリカ合衆国では、一九六〇年代すでに情報公開法が成立して、一般の市民でも請求すれば、軍事的な記録でさえも知ることができる。世界の流れは情報公開に向かっている。
  しかるに、政府は、四月一八日、科学技術庁の通達・通知によって「核物質の輸送に関する情報の非公開」を、関係自治体、事業者に押しつけてきた。「核物質防護の観点から、テロリズム・核ジャックを防止する」というのがその理由である。
  情報管理の一切を政府と一部関係者のみが掌握するという事態を憂慮し、以下の点について質問する。
 @ 過去において、核物質の強奪の例が国際的、国内的にあったのか。すべてを明らかにされたい。
 A 政府は、今回の輸送について、容器の形態、積み込まれるプルトニウムの量、出航までは、輸送船の名前まで一切秘密にしている。一方、フランスの核燃料会社であるコジュマ(C0GEMA)はこれらについては公開しており、また「あかつき丸」のシェルブール入港についても、プレスセンターを設け、一定程度の情報公開をおこなった。我が国政府及び動燃の秘密主義は、過剰ではないのか。
 B 輸送のルート、日時も、一切公開されないという状況下で、知らずに近づいてくる一般の船舶と、テロ行為の区別を、どうつけるのか。また、環境保護団体などの正当な、民主主義に保障された範囲内での監視や、抗議行動に対しても、どのように区別するのか。そのような、非暴力の「核ジャック」とは無縁の行動に対しても、武器を使用する可能性があるのか。
 C 環境保護団体の追跡船に対して、海上保安庁の護衛船「しきしま」は「威嚇射撃も辞さない」と警告したと報じられているが、海上保安庁はこの団体を「核物質を奪取する恐れのある団体」とみなしているのか。
 D 原子力三原則の「自主・民主・公開」のうち「公開」は「成果の公開」にのみ限定されるのか。この三原則の成立した経緯からすれば、「公開」の原則は、より広く、また、最優先に扱われるべきではないのか。
   「住民の健康と安全を守る」という観点から、住民自身に最大の情報提供をするのが当然ではないか。
   また、原子力三原則は国際的にも適用されるべきだと思うがどうか。
 E 本件プルトニウム輸送について、「目的、経緯、安全対策については広く情報開示をしている」(坂田東一氏)と述べられているが、住民、あるいは、諸外国の国民からの疑問や不安に対して、一方的で簡単な説明はなされていても、誠意のある説明はなされていないというのが、現実に各方面から聞かれる声である。それは「民主的」とはいえないのではないか。どのような立場で、どのような手続きのもとに、国民を納得させるような情報提供と説明がなされたのか明らかにされたい。

 右質問する。





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