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平成八年一月三十日提出
質問第一号

血液製剤によるHIV(エイズウイルス)感染に関する質問主意書

提出者  山本孝史




血液製剤によるHIV(エイズウイルス)感染に関する質問主意書


 血液製剤によるHIV(エイズウイルス)感染について、先に質問主意書を提出し、答弁書を受領したところであるが、その後、薬害の根絶のための方策を検討するに当たって、さらに解明を要する点が多数判明した。そこで、前回での答弁での不十分な点を補いつつ、以下のとおり再質問する。

一 トラベノール社の「出荷停止」報告について
 1 厚生省に宛てたトラベノール社からの「出荷を停止した」旨の報告文書(昭和五十八年六月二日付け)は、「エイズに関する新たな知見を提供するものではなかった」としても、血液製剤の危険性を示すには充分な情報であった。この出荷停止の事実を郡司課長は課内で検討し、最終的に公表しないことにしたそうだが、検討に加わったのは課員のみか。上司等と相談はしなかったのか。また、上司に報告はしなかったのか。したとすれば、それは誰か。
 2 トラベノール社からの出荷停止の報告を受けて、当該患者の血液が原料に用いられた他のロットの有無、輸入の有無、そのロット番号等についての情報提供を、厚生省はFDA(連邦食品医薬品局)ないしトラベノール社に求めるべきだったと思うが、これを行ったか。行ったとすれば、どのような回答を得たのか。
二 米国FDAの「自動的リコール」問題について
 1 トラベノール社の出荷停止措置は、製剤の原料血漿の供血者の一人が供血後にエイズを発症したことが確認されたことを理由としている。もし、この供血者が職業的売血者であれば、さらに多くの製剤が汚染されていることになる。FDAは「自動的リコール」(当該供血者の血液を原料としたすべてのロットをリコールすること)を考慮したが、最終的には断念したという。厚生省は、FDAが「自動的リコール」をしなかったことをもって、当時の厚生省の政策に誤りはなかったと主張しているが、なぜFDAが「自動的リコール」を行わず「ケースバイケースの原則」を採用したのか、その理由を厚生省はどのように認識しているか。
 2 FDAが自国の血漿供給への懸念から自動的リコールに踏み切れなかったとしても、独自の血漿供給源を有していた日本においては、別の政策決定があり得たのではないか。
三 加熱製剤の緊急輸入等について
 1 厚生省は、血友病患者のHIV感染を防止するため、加熱血液製剤の緊急輸入を検討したことはあるか。また、国内血で製造された製品、あるいはクリオプレシピテート製剤への転換を検討したことはあるか。あるとすれば、それはどの部局において、誰が、いつ、どのように検討したのか。
 2 検討したが、上記のような対策を実施しなかったとすれば、その決定は、いつ、誰が行ったのか。また、その理由は何か。
 3 クリオ製剤への転換が薬事審議会の血液製剤部会で検討されたことがあるか。あるとすれば、それはいつか。結論はいかなるものであったか。その理由は何か。
 4 エイズ研究班の血液製剤小委員会で、安全なクリオ製剤への転換が検討されたことがあるか。あるとすれば、それはいつか。結論はいかなるものであったか。その理由は何か。
四 非加熱製剤の回収について
 1 非加熱製剤の回収について、生物製剤課内で検討し、最終的に課長の判断により通達を出さなかったそうだが、最終的な結論に達するまでに、検討に参画したのは課員のみか。上司等と相談したり、結果について上司に報告はしなかったのか。したとすれば、それは誰か。
 2 回収の通達を出さなかったことは、非加熱製剤の新たな出荷を容認する趣旨だったのか。その意向を各メーカーに伝えたか。
 3 回収状況についての日本血液製剤協会からの報告は昭和六十二年三月二十五日付けになっている。この時期まで厚生省は非加熱血液製剤の回収状況を把握していなかったということか。あるいは、別途の方法により把握していたのか。していたとすれば、それはいかなる方法によるのか。また、その内容はどのようなものであったのか。
 4 肝臓病の手術を受けた大阪の患者が、出血予防のため投与された第9因子製剤によりHIVに感染し死亡した事例で、当該病院への同製剤の納品は昭和六十一年四月一日と確認されている。ミドリ十字からの第9因子血液製剤の最終出荷は昭和六十一年二月で間違いないか。
 5 医薬品卸会社からも、報告されている時期までに完全に回収されていたのか。
 6 非加熱製剤が社会保険の適用から外されたのはいつか。製品ごとに答えよ。
 7 トラベノール、バイエル、アルファ社などは、血液提供者がエイズ症状を示したため製品の回収を行ったことがあるが、ミドリ十字や日本臓器製薬がそのような事態に陥ったことはないのか。
五 汚染ロットの調査について
 1 厚生省は、回収した製剤を含め、血液製剤の汚染状態を把握するべく、製薬会社が保存を義務づけられている販売ロットのサンプルにつき、HIV抗体検査の実施を指示したか。指示していないとしても、検査を行ったものの報告は求めたか。
 2 ミドリ十字は、訴訟において、保存ロットのサンプルは抗体検査もしないで廃棄したと主張している。これに相違ないか。またロットの汚染状況の確認は、血友病エイズの被害の広がりを知るうえでも特に重要なはずである。厚生省は製薬会社に指示、あるいは協力を求めて調査を行うべきではなかったか。
六 回収された製剤に対するミドリ十字の処理について
 1 回収された第8因子製剤について、各社とも廃棄しているなかで、ミドリ十字のみが再生をしている。大変に手間の掛かる作業だと考えるが、なぜ、再生することを選んだのか。ミドリ十字は作業記録を付けていると思われるが、どのような手順で、いつから、いつまでの期間に再生作業をしたのか。
 2 この再生作業は、小さな瓶から内容物を取り出して行われたと考えるが、不純物が混ざる可能性はなかったのか。厚生省は、この再生の事実を知っていたか。知っていたとすれば、いつ、どのような方法で知ったのか。
七 いわゆる「第4ルート」のエイズ感染について
 1 第9因子製剤の認可時期と、申請に当たっての適応症は何か。製品ごとに答えよ。
 2 認可後、第9因子製剤の適応症の追加など変更はあったか。
 3 国立予防衛生研究所の血液製剤部長も務め、エイズ研究班のメンバーでもあった安田純一氏の著書『血液製剤』(近代出版・昭和五十四年九月刊)には、第9因子製剤は「肝硬変、肝炎、胆道閉塞などの肝疾患、消化管吸収不全症、ビタミンK欠乏症、ダイクマロールなどの抗凝血剤、サルチル酸剤などによる肝機能障害、産婦、新生児あるいは手術前後の患者管理などの後天性の各種凝固因子の低下例にも使用される」と明記されている。この記述に問題はないか。
 4 厚生省薬務局が監修している『生物学的製剤基準(解説編)』(社団法人細菌製剤協会・昭和六十一年刊)には、第9因子製剤は「肝硬変、肝炎、胆道閉塞などの急性および慢性の肝疾患、消化管吸収不全症、ビタミンK欠乏症、ダイクマロールなどの抗凝血薬、サルチル酸剤などによる肝機能障害、産婦、新生児あるいは手術前後の患者管理などの後天性欠乏症例にも使用できる」と前記と若干異なるが同様の記述がある。このことについて、どう考えるか。
 5 平成五年度の「HIV感染者発症予防・治療に関する研究班報告書」で白幡助教授が報告しているビタミンK欠乏症患者(六十年二月出生)のHIV感染判定は、平成五年十月十三日であるという。この期日に間違いはないか。
 6 平成六年度の同報告書では、プロテインC欠損症患者へのHIVの感染が昭和六十年に確認されたと記述されている。この時期に間違いはないか。
 7 以上四点から考察するに、「非血友病患者にも血液製剤が使われていたことを、平成六年夏に初めて知った」という平成七年十一月八日の厚生委員会での松村局長の私に対する答弁は偽りではないか。
 8 また、以上のとおりであるとすれば、この十年間、厚生省は「第4ルート」による感染対策を何らしてこなかったことになるが、どのように考えるか。十年を過ぎてカルテもなく、被害の証明が難しい患者が多数いるが、その点どう考えるか。
 9 第4ルートの感染被害者が初めてエイズ・サーベイランス委員会に報告されたのはいつか。どのような事例であったか。その報告に対して、同委員会ではどのような措置を講じたのか。
 10 エイズ・サーベイランス委員会は、国のエイズ対策の基礎をなすものである。その委員会が真実を伝えなければ、エイズ対策全体が歪んでくると思われるが、厚生省はどのように考えるか。
 11 第9因子製剤の危険性を直接医療機関に通知したか。また、すべきではなかったか。
 12 第4ルートの感染被害者についても、血友病患者と同様に扱い、医療費等を無料にすべきと考えるが、どうか。
 13 患者の治療と二次感染の防止のためには、これまでに厚生省が行った調査では不十分と考えるが、今後どのような実態調査を行うのか。
 14 『血液製剤』や『生物学的製剤基準(解説編)』は、新たに生物製剤課に配属された課員が目を通すべき書物、いわば教科書とか標準書と考えられるが、どうか。
 15 現在の血液事業対策室の課員は『生物学的製剤基準(解説編)』を読んでいないのか。
八 ドイツでの非血友病患者のエイズ感染について
 1 エイズに関するドイツ連邦議会特別調査委員会の最終報告書は、いつ公表されたか。厚生省は、その報告書を入手しているか。
 2 同報告書では、何人の血友病患者が血液製剤により、また輸血によりHIVに感染したとされているか。また、何人の非血友病患者が血液製剤により、また輸血により感染したとされているか。
 3 同報告書によれば、産科においても出産後や帝王切開時の出血の止血用として産婦に第9因子製剤が使用されていたことが判明したというが、それは事実か。
 4 このことが事実であれば、『生物学的製剤基準(解説編)』に「産婦」への適応が記載されていることからみて、日本においても産婦に第9因子製剤が投与されていた可能性がある。厚生省が行った第4ルートの調査は産婦人科の医療施設を対象にしていないようだが、早急に調査すべきでないか。
 5 ドイツの「南ドイツ新聞」の平成五年十一月十一日付け紙面で、ドイツでは血液と血液製剤で二千三百人がHIVに感染し、うち千八百四十三名が血友病患者であり、それ以外の者は四百六十二名と報道されている。厚生省は、当時このような重大な報道を知っていたか。知っていたならば、いかなる方法により知ったか。また、組織的にこのような重大な情報を収集する手だてを講じているのか。
九 血液製剤の供給量と必要量について
 1 一九八〇年から八五年において、血友病A患者及び血友病B患者の治療のために、最低限確保すべき血液製剤の量はどの程度と考えていたのか。
 2 また、製薬会社の供給量はどの程度であったか。製剤の承認から販売停止まで、製品毎に月毎の供給量(販売量)を明示せよ。
 3 厚生省においては、第8因子製剤や第9因子製剤等、血液製剤の供給量を定期的に把握していなかったのか。その数字を注視していれば、血友病患者以外の治療にも広く第9因子製剤が使用されていたことが容易に想像できたのではないか。
十 研究班について
 1 研究班は「学術的な研究成果の報告を行う」ことが目的だそうだが、行政的権限のない研究班に、エイズ対策の決定を委任することは間違いではないか。HIV感染予防、発症予防、治療の責任の所在を曖昧にしてしまうことにならないか。
 2 安部英氏は自らが「エイズの実態把握に関する研究班」の班長になりたくてなったのだという。そのような働きかけが厚生省にあったのか。
 3 血友病専門医の安部氏を班長に選任したのは、安部氏自身または厚生省が血液製剤の危険性について認識していたからではないのか。エイズは血友病患者の問題だという認識だったのではないか。
十一エイズ感染者・発症者の治療等について
 1 厚生省は昭和六十一年六月に、エイズ患者に告知を原則とすべきと決定し、同月十二日のエイズ調査委員会で了承されたというが、事実か。
 2 一九九二年十一月十七日の毎日新聞によると、東北大学で高山康信・医薬品副作用被害対策室長(当時)も同席して、「集団告知」が行われたと聞く。事実か。事実ならば、人権をまったく無視した行為だと考えるが、厚生省はどう考えるか。
 3 医師が患者に無断でHIV抗体検査を行うこと、感染が判明しても告知しないことについて、どのように考えるか。感染や発症を告知しないことが、治療や予防の妨げになるとの認識は、厚生省や治療に当たる医師にはないのか。
 4 厚生省は、このような事態に対して何らかの指導を行っているのか。行っているとすれば、その内容はいかなるものか。
 5 HIV感染者は、大きく分けて、@血液製剤によりHIVに感染した血友病患者、A血液製剤によりHIVに感染した血友病患者以外の患者、Bその他の理由によりHIVに感染した者、の三者に分けられると考える。厚生省は、医療費補助、介護手当の支給等の対策を実施するに当たって、感染理由によって、異なった対応を今後も行っていくつもりか。
 6 エイズ予防法の抜本的改正を含むエイズ対策の見直しが必要と考えるが、厚生省の所見を伺う。
 7 昭和四十九年、サリドマイド事件における和解の確認書で、厚生省は「悲惨な薬害が再び生じないよう最善の努力をする」と誓った。五十四年の薬事法改正では、国に危険な薬の販売停止や回収を命ずる権限が与えられた。しかしながら、今回またエイズ薬害という悲惨な状況が繰り返された。厚生省は、今回のエイズ薬害の原因はどこにあったと総括しているのか。

 右質問する。





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