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平成九年三月四日提出質問第八号
国民に対してなすべき財政状況報告に関する質問主意書
国民に対してなすべき財政状況報告に関する質問主意書
わが国の財政は、国の長期債務残高三四四兆円、地方の借入金残高一四七兆円、国・地方の重複分を除く債務残高が約四七六兆円に達し、その対GDP比は九二%に及ぶ。これにいわゆる「隠し借金」四五兆円を加えれば、GDP総額を超える巨額な借金となる。
こうした財政赤字の累積に加えて、今後の高齢社会の展開にともなう財政需要を考慮に入れれば、財政がいっそう深刻な事態を迎えることは必至である。
本格的な高齢社会の展開を前にして、不要不急の経費を思い切って削減し、財政赤字を合理的な水準へ縮小させ、今後の財政需要に対応していかなければならないと考える。このような財政の抜本的改革を実行するには、国民の歳出削減への理解と合意を欠かせない。政府は国民に財政状況を積極的に知らせ、国民の理解の上で、財政構造改革を進める必要がある。
財政の状況についての国民の理解を得るために、憲法第九一条は「内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少くとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない」と規定している。これを受けて、財政法第四六条は、
@内閣は、予算が成立したときは、直ちに予算、前前年度の歳入歳出決算並びに公債、借入金及び国有財産の現在高その他財政に関する一般の事項について、印刷物、講演その他適当な方法で国民に報告しなければならない。
A前項に規定するものの外、内閣は、少くとも毎四半期ごとに、予算使用の状況、国庫の状況その他財政の状況について、国会及び国民に報告しなければならない。
としている。
これらの条文は内閣に対し国民に直接報告する義務を課しており、最近注目されているアカウンタビリティ(説明責任)を戦後初期の段階で明確にしている点で、高く評価できるものである。しかし、これらの条文をこれまでの内閣がきちんと実行してきたのかについては、大いに疑問がある。
従って、次の事項について質問する。
二 講演は、いつ、どこで行ったのか、どのような方法で告知し聴衆は何人参加したのかなどを具体的に明らかにされたい。
三 「その他適当な方法」とあるが、これはどのような方法を意味するのか。いつ、どこで、どのように行ったのか、過去五年間の実績及びその自己評価を具体的にお示しいただきたい。
四 財政法第四六条第一項に「その他財政に関する一般の事項について」とある。この一般の事項には、財政投融資の運用状況及び公庫公団などの経営状況も含めるべきであると考えるが、内閣の見解を伺う。
五 大蔵省主計局法規課の財政法の解説(『時の法令』一三九一号)は、「国民に対しては官報に掲載することによって報告をしている」としている。しかし、これについては、次のような有力な批判がある。
「現在は官報にきわめて簡単にこれを掲載している程度であり、政府の熱意においてやや欠けるところがあるといえよう。(中略)国民に対しては第二項の活用が特に好ましいわけである。もっとも現在も官報によって財政状況の報告は或る程度なされているが、決して十分とはいえない状態である。」(杉村章三郎他著『財政・会計・国有財産法』)
財政構造改革は、国民の理解と合意、広い意味での参加なしには進まない。内閣は、憲法第九一条、財政法第四六条の趣旨を積極的にとらえ、改めて広く国民に分かりやすい方法で報告し、説明責任を果たすべきであると考える。内閣の見解と今後の具体的な取り組みについて、明らかにされたい。
右質問する。