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平成十一年一月二十五日提出
質問第四号

我が国の政府開発援助(ODA)に関する質問主意書

提出者  東 順治




我が国の政府開発援助(ODA)に関する質問主意書


 日本経済に夜明けが訪れない経済不況の中、七年間連続世界一を誇る我が国の政府開発援助(ODA)にメスが入り、ODAの一九九八年度予算は一〇%カットされた。しかし、一九九九年度政府予算案は前年度の〇・二%アップされ一・〇四八九兆円となった。量から質への政策転換が望まれ、金額面で世界一を誇るだけでなく、援助の内容についても厳しく監視し見直す段階にきており、その対策は緊急を要すると考える。従って、次の事項について質問する。

一 ODA予算の問題
 1 日本の経済が最悪の状況にあるにもかかわらず、ODAの一九九八年度予算を前年度の一〇%カットしただけで、一九九九年度予算案は前年度予算の〇・二%のアップとなっている。日本の海外における経済援助も出来る事なら年々右肩上がりでいくのが、望まれるところであるが、そのようなことを言っていられないのが今の日本経済の現況である。一月十一日、外務省で開かれたアジア・大洋州地域大使会議のあいさつで町村外務政務次官は「果たして今後あれだけの額を出し続けることが可能か、国民の理解が得られるか。いくつかの国には相当な額を出しているが、本当の意味で生きているのか疑問に思う」と報道されている。私も実感するところであり、今後の予算についてもっと大々的に削減することを検討する考えはあるのか。ただその際、アフリカなどの難民への給水、衛生問題、食糧供給など、弱者に対する国際機関への「分担金」「拠出金」等を大幅削減するのではなく、援助額が大きい二国間援助の削減を検討すべきと思うがいかが。
 2 日本の経済状況を踏まえ、経済援助を抜本的に削減していくのであれば、日本の経済が安定するまでの期間を設けて、例えば、無償援助で言えば二国間の新規案件については特別な事情がない限り一切行わないことも検討されてはいかが。但し、継続案件はすぐさま資金をストップさせると現行プロジェクトにも影響を与えるので、内容を検討して継続させるべきものはそのまま継続させることが必要かと思われる。
 3 ODA予算が十九省庁にまたがっており、複雑さ、無駄を省く意味合いからしてもODA予算を一本化する事を検討する必要があるのでないか。重複するような援助を避け、被援助国にとってどのような援助が一番必要なのか全体像を捉え、その上で一つ一つきめ細かい援助を進めていく必要があると考えるがいかが。
二 制度上の問題
 1 一九九七年九月に新設「環境特別円借款」がタイドローンの適用対象として認められた。事業内容も限定され、地球温暖化防止に役立つものとされているが、もっと幅広く道路、鉄道などの社会基盤整備で国民の生活に直接関係のあるものについては、調達資材の一部を日本企業に限定する考えはないのか。日本の国内景気につながる問題であり、期間を定めてもそのような措置をも検討すべきと思うがいかが。(一九九七年度円借款は約一兆円で日本企業の受注率は三〇%弱となっている。)
 2 円借款と同じように、無償援助についても現地、第三国からの調達品が日本製品との比較においてその比率が高くなってきている。これは外務省としても日本製品の独占を押さえ、幅広い国際援助を考えてのことと思うが、最近日本の経済援助に日本の顔が見えないとの批評がある。円借款と同じように時期を定めて、特別の措置を講じることはないのか。
 3 現在まで日本からの経済援助(二国間援助)はどちらかと言えば、被援助国の個々の要請に従って個々のプロジェクトなりを個々に検討し、援助を実施してきた。従って、例えば一つのプロジェクトの援助を決定し、実施しようとした場合、それに関係する基盤整備などが不十分だった為にそのプロジェクトの実施に大きな影響を与え、場合によっては中止する結果をもたらしたこともあった。もっと総合的に考えたプロジェクト要請が被援助国から必要でないか、またそのように日本が助言していく必要があるのでないか。そして、開発途上国が望んでいる貧困対策、環境・衛生問題などを複合的に捉えた経済援助を推し進めていくべきと思うがいかが。
 4 会計検査院の被援助国への調査は法的に検査権限がなく、その国の事情もあるため立ち入って調査することに限界がある。しかし、過去において相手国からプロジェクト調査に対し拒否されたケースはなく、日本にとってもそのプロジェクトが相手国で正しく利用されているのか調査義務がある。そこで内閣として会計検査院は公正の立場から外務省、JICAを通さない独自のプロジェクト調査が可能なのか確認願う。今までに会計検査院から上がってきている不当事項はODAの歴史の中で中国の鰻の養殖の一件だけとのことであるが、その他にプロジェクトの実態からして不当事項に値するものはないのか。
三 地域上の問題
 1 日本は一九九五年八月中国が核実験中止を明らかにしないとのことで中国に対する無償援助を原則的に凍結した(一九九七年三月再開)。一方、一九九八年五月インド、パキスタンが核実験を実施した際には、日本は両国に対し、無償援助だけでなく、円借款をも一時中止する政策を執った。日本の立場として核実験等を行う国に対しては平成四年閣議決定した政府開発援助大綱の四原則の趣旨からしても無償援助、借款援助を問わず、中止すべきと思われるが、相手国に合わせ、経済援助のあり方を変えるのは問題あるのでないか。
 2 ミャンマーの政情が安定していないのにもかかわらず、日本政府は一九九八年三月に「ヤンゴン国際空港拡張計画」の為に約二五億円の円借款を実施した。安全を考えての空港改修かと思われるが、ミャンマー政府として人道的なプロジェクトの要請が数多くある中で、何故この空港改修プロジェクトが実施されることになったのか。一九九八年九月にはアウン・サン・スー・チーが率いる国民民主連盟(NLD)のメンバーが二〇〇名以上逮捕される事件もあり、人権問題が騒がれている中、NLD側にしてみれば、日本政府は経済援助と言う名のもとに軍政を支持したことになるのではないか。今後も同国に対し、無償援助も含めた円借款の経済援助を進めていくのか。
 3 ノンプロジェクトのセクタープログラムローンとしてインドネシアに対し、一九八八年度の七二四億円の円借款を皮切りに、毎年約数百億円の融資が実施されている。昨年七月には膨大な額である一五〇〇億円が決定し、実際に昨年十月に五百億円、十二月に千億円の融資が実施された。セクタープログラムローンは輸入の円滑化及び社会的弱者救済対策の為の支援と言っているが、何故インドネシアの一国だけがこの種ローンの適用を受けられるのか。また、この借款によりインドネシアと日本とでその見返り資金の利用目的が協議され実施されているが、一部銀行の不良債権返済にも利用されているとも言われ、果たして過去に実施されたセクタープログラムローンの見返り資金が両国で協議した目的に沿って利用されているのか確認願う。
四 プロジェクトの問題
 開発途上国において我が国の経済協力援助は飢餓、貧困で苦しんでいる人たちに大きな影響を与え、国際社会にも重要な貢献を果たしているものと思われる。
 人口、食糧問題はさることながら、環境問題も含め、先進諸国と開発途上国とが一体となって取り組んでいかねばならない問題が山積しており、その意味合いからしても日本の経済援助の役割は非常に大きいことがわかる。日本人の税金は本当に困っている国、困っている人のために使われなくてはならない。しかし、実態は果たしてそうであろうか。
 1 平成六年三月中国の広東省で日本の企業と中国の企業との合弁で設立された中国の養鰻業者に対し、日本の公的資金である円借款を実施したが日本の企業が倒産した。事業が中断され、再開の見通しがつかなくなった為、元利金の返済請求を行ったが返済されていない。債権保全措置を執らず貸し付けを実行した為、一〇・五億円が回収不可能となった。
   会計検査院からも不当事項に挙げられ、本会議等においても問題視されたものであり、国民の税金が無駄に使われたことに憤りを感じざるをえない。同じようにOECFから私企業に貸し付けた案件として一九九五年度に中国建設銀行に工業用水事業のために五七億円の借款をつけているが、このプロジェクトは順調に進んでいるのか。また貸し付けの返済状況はどうなっているのか。その他、海外に投資している日本の企業に対しても、OECFから融資をしているが、貸付金が焦げ付いたことはないのか。
 2 一九九一年度 ― 一九九八年度に実施されたブータンの通信整備計画の無償援助について、コンサルタント会社がJICAの許可を得ずして勝手に工事内容の変更、調達機材の変更等を行い六・四億円の不正支出を行っていた。不正な四輪駆動車の購入費や使途不明金があるとのことだが機材を輸出するにしても契約ベースで実施しており、その輸出項目については輸出後随時JICAに報告することになっているはずである。どのようにコンサルタント会社は操作し、JICAに不正なる報告をしていたのか。コンサルタント会社に対し、JICAによる九ヶ月間の指名停止処分を実施したとのことだが、そのほかどのような処置が執られたのか。また、今までのことを踏まえ、外務省として根本的にODAのあり方を見直す考えはあるのか。
五 ODA談合疑惑問題
 食糧増産援助の肥料入札で大手五商社のODAの談合が問題になっている。被援助国ごとに営業努力や実績に従って「幹事権」を定め、その「幹事権」をもつ商社が落札できるように話がついていたとのことである。タンザニアで三菱商事が四年連続受注、ケニアで三井物産も四年連続受注、セネガルで住友商事が三年連続受注している。これは日本では一九八九年まで肥料価格安定臨時措置法で国内の価格カルテルが認められていた経緯もあり、また海外では食糧増産援助の肥料は随意契約がほとんどであったこともあり、その流れが引き継がれ談合疑惑へと結びついたことも考えられるがいかが。しかしこの種入札は商社間の談合だけで成り立つのであろうか、肥料メーカーからの協力なくして、入札は出来ない。この関係業者、団体が一体となっての談合疑惑に思えるが、過去の輸出実績、経緯を踏まえ、政府としてどのように見ているのか。また、今後どのように改善していこうとしているのか。
六 円借款の返済状況
 日本国民にとって税金を使っての円借款について、その使われ方がどうなのか知る権利があると思われる。各国で実施されている借款が有効的に使用されている事が重要であり、またその融資が公正に実施されていなければならない。更にはその融資されている金額が順調に返済されていなければならない。そのような観点より各国に融資されている円借款が遅延なくどのように返済されているのか、その返済状況を明らかにされたい。

 右質問する。





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