衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成十一年三月五日提出
質問第一五号

魚類養殖のホルマリン大量使用・垂れ流しによる環境破壊・海洋汚染に関する質問主意書

提出者  辻元清美




魚類養殖のホルマリン大量使用・垂れ流しによる環境破壊・海洋汚染に関する質問主意書


 ヒラメ・トラフグなどの魚類養殖において、大量のホルマリンが通達に違反して不法に使用され、かつそのまま海洋に垂れ流されている事態について即時禁止する措置を講ずることを求めて質問する。次の事項に明確かつ詳細に答えられたい。

一 水産庁は一九八一年以降、魚類養殖においてホルマリン等を使用しないよう数回にわたり通達を出している。一九九七年一二月に出された通達では成魚に対する全面使用禁止の文言を盛り込んだにもかかわらず、依然として魚類養殖現場での使用が盛んに続いている。
  これまでどおりの法的拘束力のない指導・通達では実効が挙がらないのは明白であり、罰則をともなうより強い規制が必要と思われるが、今後魚類養殖におけるホルマリン等の不法使用に対して政府はどのような措置を講ずる所存か、具体的に答えられたい。
二 同通達の中で成魚に対してはホルマリン等を全面的に使用禁止としているが、稚魚と成魚の境界をどこに引くのか。また、魚卵や稚魚に対する使用は認めるのか。同じく、同通達の中で、やむを得ず水産用医薬品以外の物を使用する場合には、環境の汚染が生じないように、薬剤として使用した物を吸着し、または中和するための措置を講ずること、とあるが、ホルマリンの場合どのような手順で行うべきか具体的方法を示されたい。
三 一九九八年三月二四日付で熊本県議会から橋本(注)太郎内閣総理大臣宛の「魚類養殖に用いるホルマリンの使用禁止に関する意見書」が提出された。その中で養殖魚に使用されるホルマリンの全面禁止に向けた法的制度の整備の必要性とそのための調査研究の早急な取り組みが要望されているが、それに対して国は具体的にどのような対応を行ってきたか、正確かつ詳細に答えられたい。
四 私が一九九六年一二月一六日に提出した「ホルマリンによる食品と海洋の汚染に関する質問」に対して、一九九七年一月二四日付答弁書の中で国は、「とらふぐの寄生虫駆除のために散布するホルマリンを含有する海水は有用物」としているが、駆除作業後のホルマリン含有海水は廃棄物とみなすか否か。
五 同答弁書において、トラフグの寄生虫駆除の実態として、(ア)船内水槽にて行い、使用後の海水を船内水槽の洗浄廃水とあわせて陸揚げする方法と、(イ)ホルマリン含有海水を船舶から筏に散布し、その後、ホルムアルデヒドを気化させるため、使用後の海水を一定期間筏に留め置いた後に海洋に流出させる方法の二通りがあるとしている。この場合、一定期間とは具体的にどの程度の長さを示すか、また、ホルムアルデヒド気化の確認・濃度の測定はどのようにして行われているか。
六 前項の答弁とはうらはらに魚類養殖現場では、ホルマリン薬浴後そのまますぐに薬浴液を無処理で放流する方法が日常的に行われている。このような行為は廃棄物の処理及び清掃に関する法律、ならびに海洋汚染防止法等に違反しているが、どのように措置すべきと考えるか、具体的に答えられたい。
七 一九九六年夏頃から発生しているアコヤガイの大量へい死原因について、水産庁は病原体を特定しないまま、感染症との見解を示し、魚類養殖で大量に使用されるホルマリンの直接的な関与としては否定的である、との発表を行った。アコヤガイ大量へい死に対するホルマリンの間接的な関与、例えば免疫毒性・易感染作用ならびに被害を拡大させた要因などについての調査・研究はしているか。また、関与の可能性についての見解を問う。
八 水産庁は「平成九年度アコヤガイ大量へい死原因究明に関する水産庁研究所研究成果報告書」(一九九八年三月)の中で海域における海水中ホルマリン濃度のモニタリング調査の中間報告を行っている。その中で示されているA県、B県、C県とは具体的にどの都道府県を指すか。また、それぞれの県においてSt1、St2、St3、StA、StB、StC、StD、StEで示されている採水ポイントは具体的にどこを指すか明らかにされたい。また、その後の調査結果を、県名、採水ポイントとともに明らかにされたい。
九 水産庁は同報告書にて、環境水中でのホルマリンの慰留・拡散に関する検討を行っているが、繰り返し大量放出された場合、他の有害化学物質への転化などの挙動についての調査・研究は行っているか。行っている場合はその結果を問う。調査・研究が行われていないならば、ある種の化学物質が環境中に放出され、化学的に変性する可能性を考慮し、そのような調査・研究をすべきであると思われるが、いかがか。
十 同じく、同報告書の中でアコヤガイ軟体部中におけるホルマリンの含有量について、ホルムアルデヒドに暴露しないアコヤガイにはホルムアルデヒドを含有しないか、あっても極めて微量である、としているが、ここ数年中に行われた化学分析で何度も検出された養殖アコヤガイ(アコヤガイはへい死個体ではなく、生存個体を急速冷凍して検査依頼したもの)のホルムアルデヒドの由来について答えられたい。
十一 一九九八年二月四日付、環境庁水質保全局長名による「ホルマリンによる環境汚染の防止対策について」と題する各都道府県知事宛の通達にて指示されたホルマリンによる公共用水域の汚染の状況等についての調査報告結果を明らかにされたい。
十二 かつて、水産庁がトラフグ養殖マニュアル作成のために試験養殖を委託した鹿児島県水産試験場の元職員が魚病図鑑にトラフグの魚病に対するホルマリン薬浴の有効性について記載し、水産庁の外郭団体である日本水産資源保護協会発行の魚類防疫技術書シリーズにもヒラメの魚病対策としてホルマリン薬浴の有効性の記述が見られる。また、魚類養殖業者は県職員を通じてヒラメやトラフグのホルマリン薬浴を習得したという。水産庁は各県を通じて養殖魚の寄生虫駆除など歩留を上げるためにホルマリン薬浴の教唆・指導を行ったことがあるか。指導があったとすれば、いつ頃、どのような内容か、明らかにされたい。
十三 一九九八年五月一七日付朝日新聞によると、社団法人・全国かん水養魚協会は、養殖トラフグの出荷に際し、ホルマリンを使用していないことを示す証明書を各漁協単位で発行し、添付することを決定した、とあるが、政府はこのような動きをどう評価しているか。また、現時点での各県・各漁協ごとの実施状況を把握しているか。把握していれば、その実施状況を明らかにされたい。
十四 一九九八年九月二四日付熊本日日新聞によると、熊本県でのトラフグ養殖に使用されたホルマリンの年間使用量は三〇〇〇トンにも上った、とされているが、同県水産振興課、薬務課ではこれらはすべて裏流通である、と説明している。毒物劇物による事件が相次ぐ中で、このような大量の劇物指定の化学物質が裏流通していることについて、厚生省は毒物劇物取締法の観点からどのような措置を講ずる所存か。
十五 また、同記事において、ホルマリンの販売をしたとされる代理店(仲介業者)が毒劇法に基づく販売登録がないことが判明したが、政府はこれに対しどのように対処したか。
十六 前述の一九九七年一月二四日付政府答弁書には、すべての都道府県内の養殖場において、ホルマリンは現在使用されてない旨報告を受けている、とあるが、前出一九九八年九月二四日付熊本日日新聞報道をはじめとして複数の地区にて使用が確認されている。このため、政府は改めて養殖場におけるホルマリンの使用実態を調査し、使用量を把握すべきである。政府の見解を問う。
十七 環境庁は、人の健康や生態系に有害な影響を与えるおそれのある水質汚染物質として、「要調査項目」リストを作成し、その中にはホルマリンの主成分であるホルムアルデヒドも含まれている。一方、水産庁は実験室レベルで植物プランクトンとアコヤガイに対するホルマリンの急性毒性を調べて報告しているが、実際に大量のホルマリンが流されたと思われる海域における生物の影響調査を行ったか。行っている場合はその結果を問う。行われていないならば、要調査項目化学物質としてリストアップされたホルマリンが周辺の海産生物など生態系に及ぼす影響調査をすべきである。政府の見解を問う。
十八 私が一九九七年五月二日に再提出した「ホルマリンによる食品と海洋の汚染に関する質問主意書」に対し、一九九七年五月三〇日付の答弁書の中で国は、水産資源保護法の適用について、ホルマリンが水産動植物に対して明白に有害であると立証されることが必要として、この点について、ホルマリンが植物プランクトンの増殖等に及ぼす影響・ホルマリンのアコヤガイに対する直接的影響等の基礎的な事項について調査中、としている。そして、「平成九年度アコヤガイ大量へい死原因究明に関する水産庁研究所研究成果報告書」(一九九八年三月)の中では、ホルマリンが植物プランクトンの増殖等に及ぼす影響・アコヤガイに対する直接的影響等について明白な有害性が調査・報告されている。この結果などから農林水産大臣は魚類養殖におけるホルマリン等の不法使用に対して、水産資源保護法を適用し、厳しく、かつ効果的な措置を講ずるべきであると考えるが、いかがか。
十九 魚類養殖においてホルマリン等を使用しない旨の十数年間、数回にわたる通達・指導にもかかわらず、依然としてそれに違反し現場での使用が続く魚類養殖の実態、十数年前に社会的に大きな問題となった有機スズ魚網防汚剤が現在でもなお使用されていること(一九九九年一月一二〜一四日読売新聞愛媛県版報道)、さらに抗生物質の乱用の問題(一九九七年一〇月二四日毎日新聞報道)など、魚類養殖業では本質的に有害化学物質への依存傾向が強い。水質汚濁防止法、海洋汚染防止法、あるいは現在、環境庁と通産省が法制化を策定している環境汚染物質排出・移動登録制度(PRTR)などによって使用・排出の規制を受ける特定施設に魚類養殖業を指定し、排水基準に関する有害化学物質等の設定の見直し、などが必要と考えるが、環境庁・厚生省・通産省にその見解を求める。

 右質問する。





経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.