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平成十一年四月十四日提出
質問第二五号

身内に甘い法務・検察の調査に関する質問主意書

提出者  保坂展人




身内に甘い法務・検察の調査に関する質問主意書


 法務・検察当局には、謙抑的で「実るほど頭を垂れる稲穂かな」の姿勢を堅持し、権力犯罪という巨悪を眠らせない捜査を期待してきた。今回の則定衛前東京高検検事長の女性スキャンダルについても、犯罪の公訴提起者、公益の代表者として、当然身内により厳しい態度で臨むものと思っていたが、最高検の内部調査は数日というきわめて短期間で終わり、則定前検事長の辞職で問題は決着したかのような姿勢をうかがわせた。もしかすると、身内にだけは甘いのかと危惧していたら、そのとおりとなり、誠に残念である。
 各新聞の報道も一致してこうした法務・検察当局の姿勢を批判し、世論も法務・検察を非難している。かつて金丸信氏の五億円問題の事件処理で、検察庁の石の表札に怒った国民が黄色いペンキを投げつけた。当時と同様、いまにもピンクのペンキが投げつけられそうな危機的な状況になっている。
 則定前検事長の女性スキャンダルをめぐっては、発覚直後に質問主意書を一度提出しているが、その後の経過を踏まえ、追加して以下質問する。国会法所定の回答期限のできるだけ早期に答弁されたい。

一 出張
 (1) 国家公務員の出張に伴う経費はすべて、国民の税金でまかなわれていることを国家公務員が全員認識し、職務に当たってきたと政府は断言できるか。
 (2) 公務で出張した国家公務員が交通費を精算する際、事実と異なる交通機関の利用日を記載し、虚偽の公文書を作成した場合、処分はどうなるのか。過去の事例を挙げて答弁されたい。
 (3) 民間企業で、月曜日に出張する社員が一日早く休日の日曜日に出発し、交際中の異性と観光したことが発覚した場合、社内ではどのような措置が取られると考えるか。数社に問い合わせた上で、答弁されたい。
二 民間業者との交際
 (1) 国家公務員が民間業者と交際する場合、注意すべき点は何か。
 (2) 国家公務員は国民の税金で生活している。たとえ私用であっても、納税者が首をかしげるような交際は慎むべきと考えるが、どうか。こうした意識は徹底されていると政府は考えるか。
 (3) 国家公務員が民間業者と交際する場合、一人当たり三万円から五万円の飲食代金を伴う高級クラブを利用することは適切か。
三 内部調査
 (1) 国家公務員の行動について、収賄や虚偽公文書作成などの疑いが持たれたり、職務上許されないと指摘されたりした場合、所属官庁はどのような内部調査を尽くすべきと考えるか。
 (2) 東京地検特捜部が一九九七年から九八年にかけて捜査した大蔵省接待汚職をめぐり、大蔵省はどのような内部調査を尽くしたか。期間、方法を明らかにされたい。
 (3) 則定前検事長の女性スキャンダルをめぐる最高検察庁と法務省の内部調査は十分尽くされたと、政府は考えているか。考えているとすれば、その理由を明らかにされたい。
 (4) 報道によると、最高検は「服務上の問題はなかった」と結論づけたようだが、国民の信頼に応える「服務」の具体的な範囲を明らかにされたい。
 (5) 捜査機関である最高検察庁が犯罪を捜査し、公訴を提起する検察官の不祥事を調査する今回のケースと、前述の大蔵省の内部調査との異同を明らかにされたい。
 (6) 検察首脳の不祥事に関する調査は通常の事件捜査と同様、あるいはそれ以上に厳正さが求められると考えるか。
 (7) 則定前検事長の女性スキャンダルの調査で、最高検は報道で指摘された民間業者との交際などについて、関係者の銀行口座や帳簿類などを調べて供述の裏付けを取った上で、結論を導き出したか。
 (8) 調査の結果、則定前検事長は民間業者と東京・銀座の高級クラブに何回行っていたのか。費用はだれがいくら負担したのか。民間業者が全額もしくは大半支払っていた場合、則定前検事長に「接待」を受けているという認識はあったか。
 (9) 則定前検事長は交際していた女性に現金を総額いくら渡したのか。その趣旨は何か。
 (10) 則定前検事長が交際していた女性に対し、民間業者は現金をいくら渡していたのか。その趣旨は何か。
 (11) 則定前検事長と民間業者が遊興した席に同期や後輩の検事は同席していたか。同席していたとすれば、だれが一緒だったのか。その趣旨と飲食費の負担者も明らかにされたい。
 (12) 現在、東京地検の幹部や法務省の局長などになっている検事が則定前検事長や民間業者らと一緒に銀座のクラブで遊興したことはあるか。
四 検事
 (1) 検察庁は今年四月任官した検事に倫理を研修しているか。則定前検事長のスキャンダルの発覚とその後の辞職について、新任検事にどのように説明しているのか。
 (2) 検察庁がこれまで綱紀粛正のために続けてきた施策を具体的に説明されたい。
 (3) 検事、検察官に求められる倫理観、職業意識は何か。具体的に説明されたい。
 (4) 則定前検事長の女性スキャンダルは検察庁内でどのように受け止められているか。とりわけ、女性検事はどのように受け止めているか。士気にかかわる不祥事と考えているか。
 (5) 法務省の主要な役職に検事が任命されている理由は何か。国家公務員の上級試験に合格し、入省した職員と比べ、どこが違うのか。
 (6) 法務・検察には、主に法務省のポストを歴任する「官僚派」と東京地検特捜部などでずっと捜査を担当する「現場派」という二つの派閥があると報道されているが、事実か。両派で人事などをめぐって争うこともあるのか。
 (7) 則定前検事長が六月に予定されている人事で、東京地検の石川達紘検事正の最高検次長転任に強く反対し、仙台高検検事長に異動させようとしたと報道されているが、事実か。
 (8) 国民の税金で支出される則定前検事長の退職金はいくらか。過去十年間、自己都合で辞職した各省庁局長級以上の幹部職員のうち、退職金を辞退したケースを具体的に明らかにされたい。
 (9) 報道によると、則定前検事長は交際相手の女性に小切手を振り出したとされるが、事実か。事実とすれば、小切手はだれの口座のものか。また、検事が普通預金ではなく、当座預金の口座を開設し、金銭の支払いに小切手を振り出すことはよくあることなのか。
五 報道
 (1) 則定前検事長の女性スキャンダル、その後の辞職をめぐり、東京新聞四月十三日朝刊の社説は最高検の調査がわずか三日間だったことから「調査の公正さを疑うわけではないが、『結論はあらかじめ決まっていたのではないか』との批判を招きかねない手際よさである。身内による調査は信用されにくいだけに、もっと慎重を期すべきだったのではないか。検察が国民に調査結果を納得してほしいのなら、内容をできるだけ詳細に公表することである」と指摘している。政府はどのように受け止めるか。
 (2) 同社説は「法務・検察は、法の執行者として訴追対象に厳しく対処する立場にある。ゼネコン汚職をはじめ、大蔵、厚生両省の汚職、防衛庁の不正など、次々と事件を摘発する検察に対する多くの国民の共感は、当然、検察関係者は自らを厳しく戒めているに違いない、という信頼が前提となっている。しかし、容疑者暴行、女性との交際問題、税務署への圧力めいた行動など不祥事が相次いでいる。たとえ一部の人にしろ、追い風に乗ったときの油断や思い上がりがないか、この際、内部にも厳しい目を向けるべきだ」とも指摘している。政府はどのように受け止めるか。法務・検察は思い上がっていないか。
 (3) 朝日新聞四月十三日朝刊に掲載された梅田正行記者の解説は「最高検は、『則定氏が高級クラブの請求書を業者の会社あてに送ったこともある』と女性が話しているにもかかわらず、帳簿類を調べていない十一日の時点で、『職務上の不正はない』と結論づけてしまった。十二日の記者会見は、『服務上問題ない』という言葉が連ねられ、具体的な根拠は明らかにされないまま終わった。法務・検察の公正さを示すためにも、調査結果の全面公開が望まれる」と指摘している。政府はどのように受け止めるか。
 (4) 最高検は関係者の帳簿類を調べていない四月十一日の時点で、「職務上の不正はない」と結論づけたのか。
 (5) 法務・検察当局は十二日に記者会見し、具体的な根拠を明らかにしないまま、「服務上問題ない」と発表したのか。
 (6) 朝日新聞四月十四日朝刊は、最高検の堀口勝正次長検事が則定前検事長の女性スキャンダルが月刊誌に掲載されるとの朝日新聞の報道について「検事長を追い落とそうとする意図的な謀略だ」と発言したと報道しているが、事実か。事実とすれば、法務・検察部内に「謀略」をうかがわせるような派閥の対立や人事抗争などがあるのか。
 (7) 同紙には、堀口次長検事は「『自分だって浮気したことがある』という検事のコメントが載ったが、そうしたことが現場の活力になっている」とも発言したとあるが、事実か。事実とすれば、浮気が法務・検察の現場で、活力になった事例を具体的に説明されたい。
 (8) 則定前検事長の後任には堀口次長検事が有力と報道されているが、こうした発言が事実とすれば、適任か。

 右質問する。





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