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平成十一年四月二十日提出
質問第二七号

東京高検検事長の行動と品格に関する再質問主意書

提出者  保坂展人




東京高検検事長の行動と品格に関する再質問主意書


 則定衛前東京高検検事長の非行に対し、怒った国民の投書が新聞各紙に相次いで掲載されている。そこには「子どもに社会正義とそれを守るモラルの大切さを教えられない」「国民は一体何を信頼したらいいんでしょう」などと、今回の問題がいかに大きな衝撃を与えたかを物語る言葉が連ねられている。
 にもかかわらず、法務・検察当局は身内をかばうかのようなおざなりの調査と則定前検事長の辞職で、今回の問題をやり過ごそうとしているのではないか。四月九日に提出した「東京高検検事長の行動と品格に関する質問主意書」に対する四月十六日付け答弁書(以下、「答弁書」とする)は、こうした姿勢を示す不十分で、国民がさらに困惑しかねない内容だった。
 そもそも国民の税金で生活する国家公務員の、しかも内閣総理大臣任命の幹部職員は公務外の時間であっても、納税者が首をかしげるような行動を厳に慎むのは当然だし、その行動が自身の辞職につながったのであるから、反省を込めて国民に事実関係を明らかにするのは数十年にわたる税金生活者、公僕の責務である。「プライベートだから」「私事にわたるから」などというのは、思い上がりもはなはだしい。
 役所の名刺を出すことが「個人のプライバシーにかかわる事項」などという、常識がないのではないかと思われる答弁もあった。内閣総理大臣や官房長官、法務大臣は役人の書いた答弁書をしっかりチェックしなかったのではないかと疑いたくなる。以下、新聞の投書などについての新たな設問も加えて再質問する。遅くとも国会法所定の期限内に答弁されたい。総理や官房長官、法務大臣は国民に選ばれた政治家であり、行政を負託された責任者として、役人の思い上がった姿勢を十分チェックしていただきたい。総理らのチェックに時間が必要な場合に限り、答弁期限の延長に応じる。また、たとえ同様の文言が並ぶ場合でも各項目ごとに答弁していただきたい。

一 投書
 (1) 毎日新聞四月十六日付け朝刊に掲載された東京都世田谷区に住む五十七歳の男性の投書には「『東京高検の則定衛検事長の女性問題については、社会正義を守ることを使命とする検事にあるまじき行為である。しかも、同人が指導的立場にあることを思い合わせれば、その行いは本質において、悪質な犯罪と同等の反社会的行為と考える。従って、最高検は同人を懲戒処分とし、今後はかかる事犯を起こさぬよう、綱紀粛正に努めることを国民に誓う』。これは事件を知った直後に私が、『当然こうあるべき』と考えた文章だ。だが、現実は臭いものにふた式のありきたりのもので、『ははあ、これで則定さんは退職金ももらえるし、検察にはこのたぐいの人物がまだ何人かいるな』と確信してしまった」と書かれている。政府は今回の則定前検事長の行動をこの男性が考えたように「社会正義を守ることを使命とする検事にあるまじき行為である。しかも、同人が指導的立場にあることを思い合わせれば、その行いは本質において、悪質な犯罪と同等の反社会的行為」とは考えなかったのか。考えなかったとすれば、その理由は何か。国民の一人からこうした指摘がある以上、具体的にわかりやすく説明されたい。
 (2) 則定前検事長はこの男性が相当と考えた懲戒処分にはならなかった。報道などを見ると、懲戒処分を求めた国民はこの男性に限らず、多くの国民が今回の法務・検察当局の対応を「身内に甘い」と考えているようだが、国民の常識と政府の対応が異なったことについて、どのように考えるか。
 (3) 今回の法務.検察当局の対応は身内に甘く、男性が批判するように「臭いものにふた式」のものではなかったのか。そうではないと主張するのであれば、その理由を具体的にわかりやすく明らかにされたい。
 (4) この男性は今回の対応を見て「『ははあ、これで則定さんは退職金ももらえるし、検察にはこのたぐいの人物がまだ何人かいるな』と確信してしまった」と書いているが、このように確信されたことについて、政府はどのように考えるか。
 (5) この男性の投書は続けて「他人を裁く立場の人間のモラルが、こんなデタラメなものでいいなら、子供たちに『社会正義とそれを守るモラルの大切さ』など、とても恥ずかしくて言えたものではない、と心底情けなくなった。検察当局に猛省を促したい」と書いている。検察官は犯罪の被疑者を起訴するかどうか決定する権限を持ち、公益の代表者として法廷に立つのだから、ある意味では「他人を裁く立場」にもあるとこの男性は考えているようだ。一般家庭で、子どもたちが新聞やテレビで今回の則定前検事長問題を知り、親や教師に説明を求めた場合、政府はどのように答えるのが適当と考えるか。適当な説明を具体的に例示されたい。
 (6) 朝日新聞四月十七日付け朝刊には、茨城県に住む六十七歳の男性の投書が掲載された。前段には「この国にモラルはなくなってしまったのでしょうか。政・官・財界の不祥事が明るみに出るたびに、私たちは何度そんな思いをしてきたことでしょう。しかし、そのたびに希望を持たせてくれたのは検察でした。記憶に新しいものだけでも、ロッキード事件やリクルート事件など、大物政治家や高級官僚の犯罪が暴かれました。厚生省や防衛庁の不正が白日の下にさらされたのも、ついこの前のことです。『まだ、この国は大丈夫だ。この検察がある限り』。そう思い怒りを収めてきました」と検察に対する期待、信頼が述べられた。政府は「まだ、この国は大丈夫だ。この検察がある限り」と考えてきた国民はどの程度いると考えるか。もし世論調査の結果などがあれば、合わせて示されたい。
 (7) この男性が例示したロッキード事件やリクルート事件などは、いずれも東京地検特捜部が独自捜査し、元総理や元官房長官らを起訴した。東京高検検事長は東京地検特捜部を指揮し、捜査などについて決裁する立場にあるのではないか。
 (8) 投書は中段で「それなのに今回の東京高検検事長のスキャンダルです。辞任の弁にいわく『国民の信頼を損ないかねない事態を招いた』。調査をしたという法務省と最高検は『女性問題は不適切だったが職務上の問題はない』。詳しい調査がなされたとは、とても思えません」と指摘している。政府は今回の則定前検事長のスキャンダルを「国民の信頼を損ないかねない事態」ではなく、国民の信頼を損なったとは考えないのか。
 (9) さらに投書の後段は「国民の信頼をこれだけ大きく損ねておいて『損ないかねない』とは。その自覚のなさに、ただあきれるばかりです。身内に甘い体質も示してくれました。これが本質だったら、この種の不祥事は後を絶ちません。国民は一体何を信頼したらいいんでしょう。最後に残った支えを失った気持ちです。怒りの後の情けなさを痛感するばかりです」と結んでいる。則定前検事長の「国民の信頼を損ないかねない事態を招いた」というコメントについて、政府は適切だったと考えるか。則定前検事長は今回の事態の重大さを十分認識していなかったのではないか。
 (10) 則定前検事長は月刊誌「噂の真相」に自身のスキャンダルが掲載されることを知った時、辞職まで発展する事態とは考えていなかったと週刊誌などが報じているが、事実か。また、週刊誌などは朝日新聞が一面トップで、月刊誌のスキャンダル記事を紹介したことが事態を大きくしたと指摘しているが、朝日新聞の記事がなければ、法務省や最高検は調査に乗り出すことはなかったのか。
 (11) 投書の男性は「(法務・検察当局の)身内に甘い体質も示してくれた」と指摘している。小渕恵三内閣総理大臣や野中広務官房長官がかつて所属していた派閥の長だった田中角榮氏や金丸信氏らは検察によって、厳しく刑事責任を追及されたのに対し、今回の法務・検察当局は「身内に甘い」とは考えないか。
 (12) 身内に甘い体質では「この種の不祥事は後を絶ちません」と指摘しているが、政府はどのように考えるか。今回の内部調査は国民の信頼にこたえる十分な内容だったと自負しているか。
 (13) この男性は「国民は一体何を信頼したらいいんでしょう。最後に残った支えを失った気持ちです」と落胆しているが、政府は国民の信頼回復のために何をするのか。
二 事実関係
 (1) 答弁書「一の(1)について」に引用された法務省倫理規程(一九九六年法務省人訓第二千九百八十三号大臣訓令、以下「倫理規程」という)は、その第一条で「国民の疑惑や不信を招くような行為の防止を図り、もって公務に対する国民の信頼を確保する」と趣旨を定めているが、政府は今回の則定前検事長の行為とそれに続く堀口勝正最高検次長検事の暴言、身内に甘いと指摘される法務省と最高検の調査はその趣旨に反する行為と認識しているか。
 (2) 倫理規程第二条では「自らの行動が公務の信用に影響を与えることを認識するとともに、日常の行動について常に公私の別を明らかにし、職務やその地位を私的な利益のために用いてはならない」と定めているが、「公務の信用に影響を与える」行動には公務時間外の日常行動も含まれるか。「公私の別」を明らかにしていれば、何をしてもいいということか。
 (3) この倫理規程は検察庁に準用されているか。検察庁職員の場合、法人税法違反や所得税法違反などの犯罪の嫌疑を掛けられた人、親しい知人や上司、家族が犯罪の嫌疑を持たれている人などは倫理規程第三条の「関係業者等」に当たるか。
 (4) 答弁書「一の(1)について」によると、則定前検事長は倫理規程で定義された「関係業者等」と東京・銀座のクラブ「コスモ」や「ロイヤルサルート」などに行ったことはないというが、東京・銀座のクラブ「江川」はどうか。
 (5) 答弁書「一の(2)について」によると、法務省や検察庁の名刺を出したことは個人のプライバシーにかかわる事項と考えているようだが、驚くべき答弁だ。国家公務員が所属する役所の名刺を出すことは公務上の役職などを相手に伝え、私的な領域にいる個人が公人の顔を見せる瞬間である。プライバシーにかかわると考える理由を明らかにされたい。公務外でも役所の名刺を出した場合、その行動の責任を厳しく問われるので、プライバシーと言って答弁を逃れているのではないのか。
 (6) 国家公務員が名刺を使用する場合、政府はどのような点に注意しなければならないと考えているか。理由も合わせて答弁されたい。
 (7) 答弁書「一の(3)について」によると、則定前検事長はホテルに偽名で宿泊したことがあったようだが、ホテルに偽名で宿泊したことが犯罪に問われ、逮捕されたり、起訴されたりしたケースはあるか。あるのならば、具体的に列記されたい。また、有罪判決が確定したケースはどうか。同様にあるのならば、具体的に列記されたい。
 (8) 答弁書「一の(6)から(8)まで及び(10)について」によると、則定前検事長は飲食店従業員に小切手及び現金で合計八十万円渡したようだが、小切手の振り出しや現金の調達方法について、詳細に調査したか。
三 責任の所在
 (1) 答弁書「二の(3)について」によると、則定前検事長の一連の行動は「私事にわたること」と判断したようだが、その根拠は何か。前述のように国民は投書などで、法務・検察当局の調査に合理的な疑いを持っており、国民の間に疑念を招いている現状を踏まえ、具体的に答弁されたい。
 (2) 答弁書「二の(3)について」によると、則定前検事長の一連の行動について、その監督者の責任をあえて問うまでの事案とは認められないと判断したようだが、その根拠は何か。国民の間に疑念を招いている現状を踏まえ、具体的に答弁されたい。
 (3) 答弁書「二の(4)について」によると、一九九五年の札幌高検検事長のスキャンダルでも「一連の行為は、私事にわたることでもあり、国家公務員法上、懲戒処分に付すべき事案であるとは認められなかったが、結果として、清廉であるべき検察への信頼を損ないかねない事態を招いた」と、今回の則定前検事長と全く同様の措置が取られた。答弁の文言もコピーして張り付けたように同じだ。今回の則定前検事長が指摘されたスキャンダルがこの札幌高検検事長の問題後に発生していることを政府はどのように受け止めているか。札幌高検検事長の時の措置は適切だったと胸を張れるか。
 (4) 今回の則定前検事長のスキャンダルをめぐる調査、対応は今後、同様のスキャンダルが起きないようにするために適切な措置と考えているか。同様の問題が三たび発生した場合、政府は今回の措置にかかわった検事総長、法務事務次官らに対しどのように責任をとらせるつもりか。

 右質問する。





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