衆議院

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平成十一年十二月十五日提出
質問第一七号

国会閉会後に繰り返される死刑執行と世論調査などに関する質問主意書

提出者  保坂展人




国会閉会後に繰り返される死刑執行と世論調査などに関する質問主意書


 臨時国会が間もなく閉会する。また、死刑が執行される。死刑確定者にとって、国会の閉会は殺される恐怖におびえる日々の始まりだ。「今度こそ自分か」「もしかすると、自分だ」。独房の外の足音に身を震わせ、生つばをのむ。何度もそうした恐怖を繰り返してきた人も、死刑確定から間もない人も、緊張の瞬間は次の国会が始まるまで、ずっと続く。「被害者も恐怖におびえながら死んでいった。人殺しが殺されるのは当然だ」。国家による殺人を通告する側はそんな心境か。でも、実際に殺人を実行する刑務官は死刑確定者と同様、国会の閉会におびえる。人を殺さなければならない。そんな立場に指名されないことを願う日々の始まりだ。
 国会に「団体規制法」が上程されて間もない十一月八日、いわゆる「平取事件」の太田勝憲死刑確定者が札幌拘置支所で自殺した。次の執行では順番が回ってくる可能性が大きかった。罪を悔い、自ら命を絶ったのか。国にいつ何時殺されるかわからない、その恐怖に押しつぶされたのか。いずれにしても心にわだかまりを残した。
 総理府が九月に実施した「基本的法制度に関する世論調査」の結果が十一月に発表された。死刑を「場合によってはやむを得ない」と考える人の割合は、五年前の前回調査より五・五ポイント増えて七九・三%。東京新聞などによると、一連のオウム真理教事件や毒物カレー事件などの凶悪事件が相次いだことが背景になるという。ただ、死刑を「将来も廃止しない」とする人の割合は全体の約四五%。過半数の人は死刑の存続に疑問を持っていることも示された。
 臨時国会閉会に当たり、死刑と死刑に関する世論調査などについて、以下質問する。死刑執行という極めて重要な国政課題の是非に関する質問なので、実際の死刑執行の準備に先立って答弁されたい。

一 死刑執行
 (一) 日本国憲法施行後、国会会期中に死刑を執行したケースについて、年月日、場所、人数を示されたい。
 (二) 日本国憲法施行後、政府は国会の本会議や法務委員会で、死刑に関してどのような答弁をしてきたか。年月日と本会議、委員会の別、答弁内容、質問議員と質問の要旨を示されたい。
 (三) 死刑執行の前後、死刑に関する国会答弁が集中してきたか。具体的に示されたい。
 (四) 国会での議員の質問で、死刑執行に伴う事故や違法な手続き、措置などが明らかになったことはあるか。
 (五) 国会での質問を契機に死刑執行の手続き、措置などが改められたケースはあるか。
 (六) 最近の死刑執行は国会閉会中ばかりに集中しているのはなぜか。
 (七) 報道関係者によると、法務省刑事局は国会が終わり、法務・検察幹部の人事異動の発令日とされる今月二十二日、大阪で一人、東京で二人、名古屋で一人の計四人の死刑を執行するための準備を進めているというが、本当か。
二 世論調査
 (一) 今回の総理府世論調査の設問はどのようにして決めたのか。
 (二) 被疑者の権利や被害者の権利については「尊重されている」「尊重されていない」などと明確に当否を質問しているのに、なぜ死刑については「どんな場合でも廃止すべきである」「場合によってはやむを得ない」という設問になるのか。まず「死刑に賛成か」「反対か」と問うべきではないか。
 (三) 「場合によっては死刑もやむを得ない」と回答した人の割合が七九・三%となった理由をどのように考えるか。
 (四) 「場合によっては死刑もやむを得ない」と回答した人は、おおむね年齢が高くなるほど多くなっているが、その理由をどのように考えるか。
 (五) 「どんな場合でも死刑は廃止すべきである」と回答した人は、おおむね年齢が若くなるほど多くなっているが、その理由をどのように考えるか。
 (六) 過去六回の同様の調査と比べると、設問は異なるものの、死刑を容認する人の割合は今回が最高だが、その理由をどのように考えるか。
 (七) 一九七五年の調査では「どのような場合でも死刑廃止に賛成」が二〇・七%、「反対」が五六・九%と、死刑を容認する人の割合は過去最低となっていたが、その理由をどのように考えるか。
 (八) 今回の調査で「どんな場合でも死刑を廃止すべきである」と回答した理由のトップは「国家であっても人を殺すことは許されない」だった。どう考えるか。
 (九) 「どんな場合でも死刑を廃止すべきである」と回答した人のうち、四二・一%は「すぐに全面的に廃止する」ことを望んだ。どう考えるか。
 (一〇) 死刑容認の理由のうち「死刑を廃止すれば、被害を受けた人やその家族の気持ちがおさまらない」の割合が前回調査よりも大幅に増えたが、その理由をどう考えるか。
 (十一) 「将来も死刑を廃止しない」と回答した人の割合は、死刑容認の人の五六・五%だが、全体でみると、約四五%にすぎない。過半数の人は死刑制度の維持を望んでいない。どう考えるか。政府は将来に向けて、どのような方針で臨むのか。
 (十二) 死刑の犯罪抑止力について、肯定的に考えている人の割合は五四・四%だった。どう考えるか。
 (十三) 死刑を廃止したイギリス、フランス、イタリアで、廃止する前と後で凶悪犯罪の発生件数にどのような変動があったか。具体的に示されたい。
 (十四) 米国の廃止州と存置州を比較して、凶悪犯罪の発生率に違いはあるか。具体的に示されたい。
 (十五) 政府は死刑に犯罪抑止力はあると考えるか。
 (十六) 被疑者の権利について「尊重されていない」と回答した人の割合は四一・五%で、「尊重されている」と回答した人より多かったが、政府はこの結果をどのように受け止めているか。
 (十七) 多数が「尊重されていない」と指摘した被疑者の権利擁護に向けて、政府は被疑者の国選弁護以外にどのような施策を考えているか。代用監獄の廃止、逮捕状請求時の疎明資料開示、取り調べ時間の制限などを検討しているか。
 (十八) 警察官の覚せい剤使用を組織的にもみ消した神奈川県警の事件で、元本部長らを互いに連絡の取れる状態で捜査したのは、世論調査の結果を踏まえ、被疑者の権利擁護を進めた新たな措置か。
三 犯罪被害者対策
 (一) 政府は治安維持を国民に対する責務と考えているか。
 (二) 各検察庁公安部、警察庁警備局、各都道府県警の公安部または警備部、公安調査庁は国民のために存在しているのか。それとも国家体制維持のために存在しているのか。
 (三) 各検察庁公安部、警察庁警備局、各都道府県警の公安部または警備部、公安調査庁がいわゆる「地下鉄サリン事件」「松本サリン事件」を未然に防げなかったのはなぜか。
 (四) 政府は「地下鉄サリン事件」や「松本サリン事件」を未然に防げなかったことに責任を感じているか。
 (五) 犯罪被害者には国が直接被害を賠償し、国は被告側に賠償分を請求するような方策は考えないのか。
 (六) 今回の世論調査で、犯罪被害者の権利について「尊重されていない」と回答した人の割合は六三・一%で、「尊重されている」とする人の三倍に上ったが、政府はこの結果をどのように受け止めているか。
 (七) 犯罪被害者の権利擁護のためにどのような施策を考えているか。犯罪被害者を法的に権利擁護の対象として位置付ける「犯罪被害者救済法」についてはどうか。
 (八) 「犯罪被害者救済法」のような法律を制定している諸外国の事例を具体的に示されたい。
 (九) 政府は死刑を被害者救済と考えているのか。
四 終身刑
 (一) 今回の世論調査について、元検事で筑波大名誉教授の土本武司氏は「将来も死刑は必要と考える人は全体の半数以下で、容認理由も被害者の遺族感情を挙げる人が増えた。死刑判決を裁判官全員一致でなければ言い渡せないように限定したり、一生出られないようにする終身刑を新設することも必要だ」(東京新聞十一月二十八日朝刊)とコメントしている。死刑判決の裁判官全員一致について、どう考えるか。
 (二) 検察官が上告した死刑事件で、最高裁は十一月から十二月にかけて、上告棄却と原判決破棄の二つの判決を言い渡した。この二つの事件を見ても、六つの裁判所の判決が死刑二、無期懲役四に分かれた。人の命を左右する判断にこんなにも揺れがあることをどう考えるか。
 (三) 死刑と仮釈放のある無期懲役との差がありすぎるという議論が続いているが、政府はどのように考えるか。仮釈放のない終身刑について、検討しているか。
 (四) 終身刑の由来と諸外国での導入例を示されたい。
 (五) 終身刑が日本で導入されたことはあるか。
五 刑死者の遺族について
 (一) 死刑の執行によって、刑死者の遺族が生まれる。家族の生命を失った苦しみと共に、犯罪者の家族、身内であるという容易に推し量れない心理的ストレスを負う。「刑死者」の家族、身内に対して、死刑執行の際、また、執行後、どのように配慮を行っているか。具体的にその取り組みの運用状況を明らかにされたい。
 (二) 死刑囚の家族の子どもという存在については、アメリカでの民間の研究などで、深い心の傷と、ストレスを抱えることが報告されている。わが国における「死刑囚の子ども」の状況を承知しているか。とくに、死刑囚に、年少者の子どもがいた場合、その子どもに対してどのような配慮を行っているか。
 (三) 執行後、死刑囚の家庭が崩壊し、子どもが、児童養護施設などに収容された場合、特別なカウンセリングなどの措置が取られているか。

 右質問する。



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