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平成十一年十二月十五日提出
質問第一八号

国際世論の注視を集める入管行政に関する質問主意書

提出者  保坂展人




国際世論の注視を集める入管行政に関する質問主意書


 わが国が、国際難民条約を批准してから十八年になる。入管行政はたびたびその改善を指摘されているにもかかわらず、閉鎖的な慣行と国内法優先の取り扱いの域を脱しきれていない。現在、国際世論の注視を集めている緊急の事態をふまえて以下質問する。

(一) 十一月十一日に、国内外の大学教員を中心とする研究者が「超過滞在外国人に『在留特別許可』を求める研究者の共同声明」を法務大臣に提出した。外国人問題の専門家が集まって共同声明を作成するのは、おそらく初めてのことと思われるが、国内の主要な学者が署名している今回の共同声明の内容について、法務省内では検討したのか。また、検討したのであれば声明に付記された外国人・移民問題の世界的権威であるトーマス・ハンマー名誉教授(ストックホルム大学)、ウェイン・コーネリアス教授(カリフォルニア大学サンディエゴ校)、スティーブン・カースルズ教授(ウォロンゴン大学アジア太平洋社会変容研究所所長)の参考意見をどう受けとめたのか。
(二) 日本の学校で長く教育を受け、外国籍の親の出身国の言葉を習得していない子どもが非正規滞在者の中にみられるが、そうした子どもたちが退去強制となる場合は、言葉や習慣の問題など特別に大きな困難と不利益が予想される。こうした場合に、行政当局は児童の権利条約第三条にある「児童の最善の利益」を考慮することが必要と思われるが、どのように考えるか。フランスでは児童の権利条約第三条を第一に適用して退去強制を違法とする判例もある。この種の退去強制は児童の権利条約違反となり、国際的に大きな批判を受けるのではないか。
(三) 戦後、韓国からの非正規入国者の多くが在留特別許可を得ている。これらの韓国人は「昭和三十年代までは、戦前我が国に居住していた者が家族ぐるみで再渡航するケース、親子兄弟ら離散家族の呼び寄せ、あるいは親を頼って入国するケース等人道的配慮を要する事案が大半を占めていたが、昭和四十年代に入ってからは、我が国に職場を求めるいわゆる出かせぎケースが主流となってきている」(『出入国管理昭和51年版』120頁)という。これらの出稼ぎ目的の韓国人に対しても、日本社会への定着を理由に在留特別許可が認められてきたようだが、そうしたケースはこれまで、おおよそどのくらいあるのか。具体的にどのような条件で、何名の在留特別許可を認めてきたのか。こうした実績は、九月一日東京入国管理局への二十一名の出頭者に代表される約二七万人の超過滞在者等の非正規滞在者の正規化の問題を考える上で、重要な前例となるのではないか。
(四) 労働災害により治療中である非正規滞在者を退去強制することは、人道上問題があると思われるが、どのように考えるか。ドイツやフランスをはじめ多くの国で、労働災害に基づく在留特別許可のような類似の事例があると聞くが、この点も、人権後進国としての批判を受けないように配慮すべきと考えるがどうか。
(五) 一九九七年十月に中国人の許攀桂(きょ・はんけい)さん一家五名が東京入管に出頭したが、九十九年十月二十二日に長女以外が不許可となり、十七歳と十歳の子どもを含む一家4名が入管内の収容所に収容された。支援グループの幾度にもわたる働きかけにより、十一月三〇日にようやく、二人の子どもと母親に仮放免許可が認められ、自宅に戻ることができたが、子どもたちまでをも収容してしまったのは、重大な人権侵害ではないのか。次女は収容されている間、ストレスからか顔面が赤く腫れ上がり、不眠などの体調不良を訴えたが、入管側は専門医に診察をさせることなく放置し、ぜんそくの持病をもち、たびたび発作を起こす長男も、男女別が原則である収容所では母親と引き離されたまま、母親の看護を受けることもできずに、心身共に不安定な生活を強いられたという。高校生の次女は、自ら超過滞在者となることを選んだわけではないのに、犯罪者のように処遇されたことに納得がいかないと抗議している。
   在留特別許可を認めるべきかどうかという問題とは別に、このような待遇のあり方そのものについて、改善すべきではないか。
(六) 「国際社会において、名誉ある地位を占めたい」という憲法の理念や、「出入国の公正な管理」をうたった入管法の目的に照らし、外国人の人権保障に関する国際基準に合致するよう、出入国に関する処分がなされるべきと考えるが、この点、在留特別許可に関する諸外国の基準と日本のそれとの検討は十分になされているのだろうか。
(七) 第二次出入国管理基本計画に関する意見募集を行い、広く市民の入管政策に関する意見を聞くのは画期的なことと評価しているが、今回の超過滞在者の在留特別許可の問題についても、よりオープンに議論することが重要ではないか。また、「永住」を含む様々な在留資格や「帰化」に関しても、その許可の基準が不明確で、恣意的に決定されているという批判が強いが、その基準を明確化したり、具体的な統計を公表するなど、入管行政全般について、法務省は、より積極的に説明責任を果たすべきではないか。また、今後、入管行政のあり方について、学者や市民団体等と、定期的に意見交換をする機会を設けてはどうか。

 右質問する。





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