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平成十二年一月二十日提出
質問第一号

特別公的管理下にある日本長期信用銀行をリップルウッド・ホールディングス社を中心とする二ュー・LTCB・パートナーズ・CVに売却する件に関する質問主意書

提出者  安倍基雄




特別公的管理下にある日本長期信用銀行をリップルウッド・ホールディングス社を中心とする二ュー・LTCB・パートナーズ・CVに売却する件に関する質問主意書


 政府は、管理下にある日本長期信用銀行(以下「長銀」とする。)をリップルウッド・ホールディングス社を中心とするニュー・LTCB・パートナーズ・CV(以下「パートナーズ」とする。)に売却を予定していると伝えられている。その契約は、(一)債務超過額三・六兆円プラスアルファー(予想される債権劣化を瑕疵担保責任の論理で国が負担する額)を国費で支弁し、(二)価格ゼロと査定された長銀の株式二十四億株を十億円でパートナーズが購入し、(三)パートナーズは別に千二百億円の資金を長銀に拠出する、等々の内容とされている。
 この契約は、二月下旬に預金保険機構とパートナーズ、長銀との三者契約の形で締結されると伝えられているが、本件は四兆円近くの国費が投入される案件でもあり、重大な関心を持たざるを得ない。
 従って次の事項について質問する。

一 このような巨額な国費の投入を伴う案件は閣議決定を経るべきではないのか。また国会の了承を得るべき問題ではないのか。
二 長銀の債務超過額は、二・八兆円に不良債権を預金保険機構に売却した際に生じたロス約八千億円を加えて、三・六兆円とされているが、この債務超過額の算定は、果たして客観的な根拠を有するものであるか。例えば日本債券信用銀行(以下「日債銀」とする。)が破綻した際、不良債権の額について銀行の自己査定額と金融監督庁(以下「監督庁」とする。)側の査定額との間に約八千億円程度の食違いがあり、監督庁は自己の査定額を正しいとして日債銀に引当金の積増しを要求したと聞く。不良債権の認定には、多分に主観的要素が加わるものであり、また債務者の状況、担保価値(例えば地価)の変動にも左右されるものであって、金融検査の立場から算出した債務超過額は、往々にして債務超過額を過大に算出される可能性がある。債務超過額の算定において金融検査の数値をそのまま使用しているのかどうか。
三 債務超過額の算定において有価証券の含み益は当然控除されるべきであり、契約の前提となった資産評価時から現在まで既に三千億円程度の含み益が生じていると推定されている(基本合意書ではそのうち二千五百億円を自己資本の増強に充当することとなっている)。これは当然債務超過額から控除されるべきと思うがどうか。長銀のように、日本の優良企業の株を保有しているものは、日本経済の上昇と共に、当然含み益を生じるものである。また、景気回復と共に不良債権も優良化する可能性もある。契約時点において債務超過額を再計算する必要があると考えるがどうか。
四 債務超過額の補(注)はさておいて、国は二千四百億円を拠出し、パートナーズは千二百億円プラス十億円を拠出するのであるが、国の既存の優先株持分を含め持分比率は国が最大で三十三%、パートナーズ六十七%となる予定と伝えられている(別に国は三に述べたような有価証券評価益二千五百億円を実質上拠出している。)。どのような論理でこのような結果となるのか(ゼロ評価したパートナーズが取得する二十四億株と一株四百円で政府が引き受ける優先株(七年後には転換予定)を同じ価値として扱っても良いのか。二十四億株の一部を国が引き続き所有しても良いのではないか。)。また、形式的な論理付けはともかく常識的にもこのような措置はおかしいのではないか。
五 売却を急ぐ理由として、売却しないと資産が益々劣化するという主張がなされているが、これと関連し、
 1 公的管理はいわば患者を集中治療室に入れ、緊急治療を行い、また他と隔離することによって、伝染病の蔓延を防ぐように、金融パニックを避けるのが目的と言える。特別公的管理を続けると資産が劣化すると言う主張は、特別公的管理をどのように解するかによる。所有が国であるか民間であるかは経営とは別であり、特別公的管理下であっても有能な経営者がいればそれをスカウトすることも可能であり、巨額の国費を投じて所有を民間に移さなければならないという必然性はない。本来特別公的管理下であっても自助努力により、経営の建て直しを計ることは可能ではないのか。改善の努力にもかかわらず、巨額の国費を投じなければ、引き取り手のない銀行であれば、一般国民に損失負担をさせるのではなく清算に移行し、最終的に債権者が損失を負担するのが正しいのではないか。金融債の保有者は、一般の預金者と異なりある程度のリスクを勘案して債券を購入しているのではないか。この問題は住専問題と同じく誰が損失を負担するかの問題ではないのか。
 2 公的管理下で資産が劣化すると言うのであれば、公的管理の責任者、現在の長銀の経営陣はその責任を負うべきではないのか。
六 長銀は金融債を発行するという特典を持ち長期資金によって優良企業へ長期貸付けを行うという特権的地位を持ち、またそれら企業の株式を保有するという特色を持った銀行である。こうした特色がこの売却契約においてどの程度勘案されているのか。
七 瑕疵担保責任の論理を以って債権の劣化について国が責任を負うこととなっているが、逆の場合、つまり日本経済が活性化し長銀の保有株式の価格が上昇し、また、不良債権が優良化した場合、その利益は誰が享受するのか。パートナーズが資金募集した際の拠出先が、その恩典を受けるのでは、とうてい納税者の納得を得られない。国が支出分に見合う利益をどの程度受けるのか明らかにされたい。
八 日本政策投資銀行が発足し、また財投機関債の発行が取沙汰されている際、金融債を発行する長銀の存在価値に変化が生れるのではないか。長銀を特別公的管理のままで置き、将来、日本政策投資銀行への吸収合併も一つの方法と考えられるがどうか。
九 何故、今回、いわば長銀が「底値」であると考えられる時期に、巨大な国費を投じて、売り急がねばならないのか。その理由を説明されたい。長銀の払い下げは金融パニック防止のためとは言えないのではないか。
十 パートナーズは現在の長銀の貸付先をそのまま三年間継続するという(財界がこの契約に前向きであることの最大の理由であると言われているが、これは特別公的管理下でも当然行われることである)。パートナーズとしては債務超過額を政府に補(注)してもらい三年間に景気の回復を待ってもし回復していれば、その利益を享受し、回復していない場合は債権を整理するという全くリスクのない取引となるのではないか。
十一 長銀をパートナーズに、こうした買い手にとって破格に有利な条件で売却する以上は、日債銀売却も同様の条件となるのか。
十二 長銀のパートナーズへの売却をもう一度白紙に戻して考える心算はないか。

 右質問する。





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