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平成十二年五月十一日提出
質問第二七号

入間基地の自衛隊機墜落事故に関する質問主意書

提出者  矢島恒夫




入間基地の自衛隊機墜落事故に関する質問主意書


 一九九九年一一月二二日に起きた航空自衛隊入間基地所属のジェット練習機墜落事故は、乗員二名の死亡、送電線切断による約八〇万世帯の停電災害を引き起こしただけでなく、墜落現場が小・中学校を含む住宅密集地域に近接していたことから一歩間違えば大惨事という重大事故であった。政府・防衛庁が、徹底した事故調査を行って、原因を究明し、再発防止策を講じることは、周辺住民の安全確保のうえで、不可欠の重要な責務であった。ところが、防衛庁が、四月二六日に公表した事故調査結果の概要は、本文わずか一ページという極めて簡略なものである。これでは、事故原因についての詳細はもとより、再発防止策など、ほとんど何も分からない事故報告である。一九七七年に横浜で起きた米軍機墜落事故の場合には、日米合同委員会による事故分科委員会が三〇ページにおよぶ報告書を公表している。今回の防衛庁の調査結果報告は、あまりにもお粗末としか言いようがない。
 事故の重大性にかんがみ、政府・防衛庁に対して、いま緊急に求められるのは、以下の諸点である。
 第一に、防衛庁は、概要ではなく、事故調査報告書の全文を公表すること。
 第二に、入間基地に隣接し、長年にわたって基地被害にさらされてきた周辺住民及び地方自治体との関係で、事故報告や被害補償、安全確保等に関する意見交換など、誠意ある対応を行うこと。
 第三に、航空機事故が大惨事に直結している危険性に留意し、万全の再発防止策を講じること。
 したがって、次の事項について質問する。

第一 防衛庁公表の事故調査報告について
一 事故調査結果「概要」について
  四月二六日、防衛庁は「T33A墜落事故の航空事故調査結果の概要について」(以下、「概要」と記す)と題する文書を公表した。
 1 「概要」は、本文一ページ及び添付の「事故の経過」(以下、[経過」と記す)と題した別紙一ページと、「事故機墜落の状況」(以下、「状況」と記す)と題した一ページ、全三ページという極めて簡略な文書である。今回の事故は、周辺住民はじめ広範な市民に墜落による生命の危険を実感させ、多額の損害を与えたものである。「概要」はそうした市民感情を納得させるものとは言い難い。防衛庁は速やかに「事故調査報告書」全文を公表すべきである。そのことが、地元自治体や住民が求める情報公開に応える道である。
 2 「経過」には、事故機と基地タワーとの交信記録が欠落している。事故の経過を正確に再現するために、交信記録が必要不可欠である。交信時刻(時分秒)付の生の全交信記録を明らかにすべきだと思うが、いかがか。
 3 「経過」には事故機の高度、機首方位等飛行に関する基本データが欠落している。これらを明示した「経過」を明らかにされたい。
 4 「状況」は何のデータによるものか明示されたい。また、「状況」記載の図面には方位の記入がないので、これを補足されたい。
 5 事故の全体を解明するには異常発生時からの飛行経路を明らかにすることが不可欠である。また、それは飛行経路下に生活する住民にとって当然知る権利のある事柄である。全飛行経路を明らかにされたい。
 6 「概要」に記述された「事故原因」は燃料供給機構で起きた故障により燃料が漏れ、火災が発生したことによる推力低下としている。
  @燃料供給機構の故障と「推定」した根拠は何か。
  A何故、当該個所に故障が発生したのか。その原因についての調査結果を明らかにされたい。
  B当該故障個所の整備の基準を明らかにされたい。
  C事故機の飛行整備の記録及び当該個所の整備の履歴を明らかにされたい。
  D当該個所の整備の基準と今回の故障の因果関係及び事前の整備で発見されなかった理由または原因、さらに発見されなかったことに対する再発防止策を明らかにされたい。
 7 「概要」では、事故機操縦者が、「推力の低下が住宅密集地上空で発生した」ため、「墜落による被害局限を図るため」継続して飛行したと記述している。
   しかし、事故機にトラブルが発生したのは、「経過」によれば飛行場から約一五マイル(約二七・七五km)の地点、一三時三八分三九秒(墜落の約三分五七秒前)である。また新聞報道によれば、異常発生直後の一三時三九分に「大丈夫だろう。降りられる。イニシャルではなく、ストレートインしたい」と基地タワーに伝えている(「朝雲」一九九九年一二月二日付)。しかも、「経過」によれば、管制塔との間で「脚下げを確認」が記載されており、滑走路への着陸を前提に脚を出したことが明らかになっている。事故機操縦者は基地に何とか帰れると判断して基地への最短コースをとって基地に向かっている途中に、予想外の推力低下が発生して高圧電線に接触し墜落に至ったのではないか。つまり、事故機は「被害局限」のためではなく、基地に帰投するために最短経路を飛行しようとして住宅地上空に入り、そこで推力低下が発生し墜落したのではないか。
 8 「概要」がいう「被害局限」の根拠を明らかにされたい。
二 事故調査委員会について
 1 航空機事故が起きた場合の事故調査に関する防衛庁の規定は、どのようになっているのか。調査委員会の任命、調査委員会の権限、責任者の所属・階級・専門分野、調査方法・内容、調査結果報告書の位置付け等、明らかにされたい。
 2 今回の事故調査委員会に関して、次の点について明らかにされたい。
  @責任者の所属と階級、専門分野。
  A調査委員会のメンバーの各人につき、所属と階級、専門分野、専従、非専従の区別を明らかにされたい。
  B防衛庁の組織のなかにおける事故調査委員会の位置付けはどのようになっているのか。
 3 民間航空機の事故調査は第三者機関が実施することになっているが、自衛隊機の場合は当事者である防衛庁が行うことになっていることについて、市民のなかからは「不適当ではないか」と疑問の声があがっている。こうした一般市民の疑問に応えるためにも、第三者機関の設置など機構改革を行う考えはないか。
三 「概要」に記載された「再発防止策」について
  「概要」の「再発防止策」は、@燃料供給系統等の信頼性向上、A火災警報システムの信頼性向上、B緊急射出時の安全性向上、の三項目を挙げている。
 1 入間基地は事故後一週間で点検が終了したとして、他機種の飛行を再開したが、T33A機の事故調査結果をふまえての安全性調査を行ったのか。もし行ったならばその結果を明らかにされたい。
 2 T33A以外の機種についても、これらの再発防止策を適用する必要性があるのではないか。その検討結果と計画を明らかにされたい。

第二 周辺住民及び地方自治体との関係
一 事故被害の実態把握と対処方針について
 1 防衛庁が把握している事故被害の内容
   墜落事故にかかる被害が、一般家庭にどのような被害・損害を与えたか。また、自営業者や企業にはどのような被害・損害を与えたか。それぞれについて、具体的に把握している内容を明らかにされたい。
 2 被害補償についての防衛庁の対処方針
   防衛庁として、@墜落事故にかかる被害補償の法的根拠は何か、A被害補償の対象に限定があるのかどうか、B被害補償額の算定基準、C被害補償を受付ける窓口、その手続き、受付期限等について、明らかにされたい。
   市民のなかには、被害を受けたがどこにどのように申し出たらよいか分からないとの声がある。防衛庁は、被害補償について、一般市民に知らせる広報活動を行ったことが、これまでにあったのか。今度の事故についてはどうか。行ったことがあるとすれば、その方法と内容を具体的に明らかにされたい。また、今後の対処方針について、具体的な方策を明らかにされたい。
 3 被害補償請求の処理、進捗について
   これまでに請求のあった被害事案について、その件数及び金額と、そのうち解決済みの件数及び金額、また、補償交渉が決着に至っていない件数とその主な理由を、それぞれ明らかにされたい。
二 地方自治体及び住民による抗議・要請・要望等の取り扱いについて
 1 今回の墜落事故に関して、地方自治体及び地方議会が、防衛庁または入間基地など関連機関あてに提出した抗議、要請、要望あるいは意見書について、受理した件数及び主な内容について、明らかにされたい。
 2 前記の地方自治体及び議会による抗議や要請等に対して、防衛庁はどのように対応したのかを明らかにされたい。
 3 地域住民あるいは住民団体による抗議や要請等の件数、主な内容、それに対する防衛庁の対応について、具体的に明らかにされたい。
 4 地方自治体、住民団体を問わず、事故に関して、抗議や要請等を提出した団体に対して、事故を引き起こした当事者である防衛庁が回答することは当然の責務である。調査結果を公表した現在、これら団体に対する対応をどうするのか、見解を求める。

第三 再発防止策について
一 入間基地の周辺地域に対する安全確保の考え方について
 1 今回の墜落事故現場を含む入間基地北側の地域は旧米軍ジョンソン基地の時期から事故が集中して発生している地域である。戦後、一九八四年九月までの期間に埼玉県内で五〇件の墜落事故、この地域では一五件もの事故が発生している。加えて、入間基地は異常発生の航空機が緊急避難する場所がない。地元住民が基地「不適地」と指摘するゆえんである。「概要」には、基地周辺地域やその住民に対する記述が全くない。事故調査の過程で基地の立地と事故の関係についてどのような調査と検討を行ったか、明らかにされたい。
 2 事故当時、航空自衛隊は航空総隊総合演習を実施中であり、入間基地もそれに参加していたにもかかわらず、防衛庁は、事故機はその演習とは別の「操縦上の技量を維持するための年間飛行を実施中」であったと、「概要」に明記している。
   しかし、入間基地司令は、航空総隊総合演習の開始に先立ち、埼玉県はじめ基地周辺自治体に対して文書を発送し、「航空輸送等のため」の航空機の離着陸が計画されており、早朝及び夜間、土曜日、日曜日の飛行も予定されているとして、演習への理解・協力を求めていた。このことからみて、T33A機の飛行が航空総隊総合演習とは別ということは考えられない。
   航空自衛隊入間基地は、日常的に周辺住民に騒音をはじめとする航空機被害を与えていることは周知のことである。「概要」記載のとおり事故機が総合演習と別であるならば、住民生活に与えているそれらの被害を考え、飛行回数や離着陸の回数を減らして、少しでも住民の負担を軽くするよう配慮するのが当然と考える。
   飛行計画実施にあたって、どのような配慮をしたか明らかにされたい。
 3 「概要」に記述されている「再発防止策」はすべて「機体」に関する事項であると読み取れる。しかし、基地周辺は住宅地であり、歴史的に事故が集中的に発生している。このことを考え、飛行コースや飛行計画、訓練飛行の種類の制限、緊急時の飛行コースなど基地運用に関する問題をどのように検討したのか、その内容を明らかにされたい。
二 入間基地における事故根絶のための方策について
  すでに指摘したように入間基地では数多くの事故が発生している。周辺に暮らす住民の立場からすれば、いかなる理由があろうとも事故は自らの生命、財産の安全を脅かすものであり、受忍できるものではない。住民が事故の根絶をつよく求めるのは、当然のことである。
 1 基地の運用の抜本的見直し
   これまで入間基地で起きた事故は、小規模事故まで含めるなら、事故はT33A機に限ったことではない。したがって、T33Aの飛行を停止してもそれだけで事故が無くなると考えることはできない。今回の事故を契機として、地元自治体や地方議会からは、訓練飛行の停止や市街地上空での訓練停止など、あらためて基地の運用の抜本的見直しを求める声が出されている。
   今回の事故に関して、事故の再発防止策として基地の運用について検討した内容を明らかにされたい。
 2 重大事故に至らなかった事故の公表
   入間基地ではいままでも、C1輸送機が滑走路を逸脱して大破したり、T4機がオーバーランしたり、重大事故に至らないものの、基地内での事故も発生している。とくにT4機のオーバーラン事故は、今回のT33A機墜落事故の前に二件も立て続けに起こったものであり、軽視できない。
   墜落、機体大破など重大事故だけでなく、比較的軽度の事故を重視してその徹底根絶を図ることが重大事故の防止につながる、ということが広く知られており、実際、民間航空機業界ではすでに実行されている。
  @ 航空自衛隊において、比較的軽度な事故について、原因調査や再発防止策等をどのように行っているのか。事故調査委員会を発足させるのかどうか、結果報告を公表しているのかどうかを、明らかにされたい。
  A 昨年九月と一〇月に起きたT4機のオーバーラン事故は、着陸時における異常事態発生である。当時、狭山市及び入間市は安全飛行確保を求める要望を入間基地に提出していた。これらの着陸時の異常事態について、航空自衛隊及び防衛庁が実施した原因調査と再発防止策を明らかにされたい。

 右質問する。





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