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答弁本文情報

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昭和二十四年十二月一日
答弁第六三号
(質問の 六三)

  内閣衆甲第一二五号
     昭和二十四年十二月一日
内閣総理大臣 吉田 茂

         衆議院議長 (注)原喜重(注) 殿

衆議院議員井上良二君提出農業生産増強に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員井上良二君提出農業生産増強に関する質問に対する答弁書



(一) 国家財政の許す限り極力御趣旨にそうよう努力したいと思う。

(二)(1) 二十五年度開墾及び干拓新規計画は予算措置との関連もあり、すでに着手した地区の完成に主力を注ぐことにしている。開墾については、二十五年度新規入植一〇、〇〇〇戸及び増反者用として未墾地取得計画六八、〇〇〇町歩で、干拓については継続地区を重点的に推進する方針である。

 (2) 農地改革の徹底について
   (イ)
農地改革


   (ロ)1 現行自作農創設特別措置法の規定によつて保有をみとめられるものについては、更にこれを開放させようとする意図はない。但し、現行法によつて買收すべきもので未買收のものは、今後も徹底を期する所存である。そのために、特に法律改正等の措置は必要としないが、随時市町村農地委員会の一齊調査や特別監査を行つて遺憾なきを期したい。
       そのための予算的措置として特に新規に計上したものはないが、農地改革に関する経常的な事務費に含めて考えている。

     2 二十五年度は入植計画が一〇、○○○戸であるから、これに必要な土地の取得を続行する方針である。
 二十五年度未墾地取得計画面積六八、六八〇町
 同     同   売渡同 二五○、○○○町
 右に要する経費       六〇六、八六八、○○〇円

     3 薪炭林については、植林目的と牴触しないように農民に使用権を設定する途が拓いてある(農地調整法第十四條の三)ので、その適正な運営を図つていく方針である。農地の如く買收して売渡すということは全く考えていない。

     4 採草地牧野についても、現行自作農創設特別措置法の規定により開放すべきものは、今後も引きつづき開放をつづけるのであつて、その点農地と全く同様である。
       なお、国有林内の牧野の開放については、二十五年度に約一〇万町歩の開放を完了する方針を定め、すでに現地において開放予定地の調査を進めているが、この開放に当つて国有地の境界画定等のため相当多額の実測費を必要とするので、その経費については考究中である。


   (ハ)1 市町村農地委員会と市町村農業調整委員会とを合体して、市町村農業委員会に改組し、従来の農地委員会の権限の外に、農業調整の事務を併せ行わせることとし、

      2 そのため新しい市町村農業委員会の構成は、従来の農地委員会における選挙による委員十名の定員を十五名に増員し、その中、三名は二反歩(北海道では五反歩)をこえる面積の小作地につき耕作の業務を営む者を選ぶこととし、

      3 新しい構成による市町村農業委員会の総選挙は明年八月に行う。

      4 市町村の段階では、右のように両委員会を統合するが、県及び郡の段階では農地委員会と農業調整委員会の二本建てとする。即ち、都道府県農地委員会、都道府県農業調整委員会、地方農業調整委員会は、現在のまま存続する。
        以上の如き内容で法律業(農地調整法及び食糧確保臨時措置法の改正)を通常国会に上提致したい所存である。


 (3) 従来の試験研究機関のあり方を再検討し、欠点を排除して総合的技術の確立と資金、施設、人員の合理的運営によつて効率的な試験研究組織を確立する。そのために、農事、畜産、園芸、茶業及び開拓の研究機関を整備総合して、夫々の本場を農業技術研究所(仮称)となし、農業の基礎的原理の探求を目的とし、更に各支場及び分場は重点的にこれを再検討して改廃し、全国を北海道、東北、関東東山、北陸、東海近畿、中国四国及び九州の七地域に分割統一して農業試験場を設置することにした。
     なお、各都道府県立の試験研究機関内においてもその主旨に添うよう努力を願つている次第である。
  区    分   昭和二四年度予算額昭和二五年度予算要求額備    考
 試験研究機関総予算額五二五、〇一八、○○〇円六一三、六三九、〇〇〇円農林省直轄場所分


 (4)(イ)肥料の生産と配給計画
     A 昭和二十五年春肥の需給状況
       昭和二十五年春肥の見透しについては現在のところ、窒素質肥料(硫安換算)は前年同期に比較して約二割増の一、二六〇千瓩、燐酸質肥料は約三割増の八七五千瓩、加里質肥料は約七割増の二三八千瓩の見込である。この中春肥の主要作物である稻に対しては、反当り窒素質肥料は(硫安換算)前年に比べ六貫を七貫に、燐酸質肥料は三貫を四貫に増加し、加里質肥料は前年と同じく○、八貫配給できる見込である。

     B 昭和二十四年肥料年度供給見込

昭和二十四年肥料年度供給見込

     この数字より若干増加の見込。

    (ロ)魚粕は現在魚粕等需給調整規則により北海道その他九道県において集荷したものにつき、飼肥料として一元的に統制されており、北海道他十二県の水田地帶に対しては供米農家報償用として現在配給されている。
       現在までの配給割当量は五、四七〇、○○○〆である。(二十四年四月 ― 十二月)なお、御質問の趣旨が、魚粕を公団扱として配給するや否ということであれば、肥料用の魚粕の数量は、極めて少量であるから、公団扱には適しないと考えられる。

    (ハ)A 二十四年度農機具用配当鋼材は総計四八、八〇〇屯が配当されたので、二十四年度農機具生産計画はこの鋼材を基準とした生産計画がたてられ、これを食糧供出に最も関連のある十六機種
         (1)これに次ぐもの(2)及び食糧供出に直接関連はないが営農上必要なもの(3)に分け(1)は約三五、〇〇〇屯(2)は三、八〇〇屯(3)は一〇、○○○屯となる予定であり、これを六二、〇〇〇屯の年間最低需要量と対比すれば(1)は平坪八五%(2)は七〇%(3)は六〇%となり食糧供出に関係する農機具に重点を置いている。
           なお、二十五年度生産計画については農林省で推定した来年度の需要鋼材量八〇、〇〇○屯を基準として、これが資材を確保すべく目下準備を進めている。
       B 農機具の品質を確保し不良農機具を排除するために検査制度の必要を感じ、昨年度より種々研究して参り、必要な予算措置と併せ制度化に努めてきたが、さる六月農林省設置法の施行に伴い農機具審議会を設置し、農機具の依(注)検査を実施せしめ、優良農機具の普及奬励に関し調査審議せしめることとなり、二十四年度の予算総額百五十万円が決定された。
         先月審議会委員の正式発令も終つたので本年度内に一部農機具について依(注)検査を実施する予定である。
         なお、本年度においても引続き検査機種を拡充実施することとし予算総額二百万円を要求している。

    (ニ)部品の規格統一については農機具修理の面よりみてその必要を感じており、通産省において工業標準化法に基く規格統一を行われるが、農林省においてもこれに従い目下考究中である。

    (ホ)必要性は認めるが国家財政の関係上実現は困難である。

農機具推定最低需要及び生産計画 1/3


農機具推定最低需要及び生産計画 2/3


農機具推定最低需要及び生産計画 3/3


 (5)イ 種畜施設としては人工授精施設に必要な経営、二四、七〇〇、〇〇〇円が二十五年度新規計画として計上せられ、優良種牡畜の利用の拡大を図り家畜の改良増殖に資することになつている。
      家畜衞生施設については二十四年度補正予算において、馬の流行性脳炎のまん延防止を図る外、へい殺手当の増額による必要経費として七六、二五七、○○〇円、牛疫血Cの貯蔵に要する経費二一、○○○、○○〇円、豚コレラ予防液の貯蔵に要する経費一一、六四〇、〇〇〇円、薬事法に基く家畜薬検査に必要な経費三、五六三、○〇〇円が夫々追加計上されている。
      なお、二十五年度においては家畜衞生のセンターとなる家畜保健衞生施設を新たに八〇箇所設置するために必要な経費として三五、五二七、〇〇〇円が計上してある。
      飼料確保施設については、昭和二十五年度において、飼料作物種子供給確保に必要な経費として種畜牧場に併設してある原種圃を拡大利用するために必要な経費六、一七四、〇〇〇円が計上されている。

    ロ 融資については農林中金の自己資金の増加を図ることにより、これが確保に努めたい。


 (6)(イ)市町村道路の新設、改修については総司令部の指示に基く五箇年計画中に含まれ、この計画に
      よつて実施することになつている。政府直轄で行う意思はない。

    (ロ) 国家資金による融資は困難であるので組合系統金融機関の資金を活用することとしたい。

    (ハ) 現行料金より更に引下げる考えはない。

    (ニ) 農林中金の自己資金の融資によりできるだけ需要に応じたい。


 (7)イ1 農事電化審議会
       農林省内各局の農業電化問題を統一し、電力局、配電会社と協力して農業電化に関して総合統一運営の機関たらしめ又規格統一、審査及び研究の総合化をもあわせて行つている。
     2 農業用小水力発電所建設
       見返資金より一億円の融資を得て五〇箇所を建設せしめるよう計画中であり、又二十五年度は五億六千万円の融資により一五〇箇所を建設せしめる計画を樹立中である。
     3 模範電化村設置
       効率的合理的総合利用の方式を実施あるいは研究し、他町村の指標たらしめようとしているが、すでに十三箇村を指定し、毎年三筒村ずつ各県に一箇村の割合にて指定することになつている。
     4 農業電化講習会
       電気理論の基礎知識、合理的利用方式、最新の電気応用を農民に普及指導するとともに電気技術者に農業理論を講習している。
     5 農業用電力利用統計調査
       配電会社に依(注)して全国的の農事用電力量、利用状況の調査を二十二年度より毎年行つている。
     6 農業用電力利用原單位調査
       合理的効率利用の基礎たらしめるため各作業別に行つている。
     7 農業電化研究
       農業技術に最新の電気科学の適用を計るためこの研究を行つている。

    ロ 今回の改正案では、工事費を農民が負担すれば常時一般電力料金による常時料金を適用し、使用の期間に応じて電力料金を支拂うこととなつているので、灌漑排水用料金は割引がなくなるが、その他農事用料金は特に他の需要に比して高率となることはない見込である。

    ハ 農村工業用電力については、その需要度から充分確保されるよう努力しているが、電力事情惡化に伴い充分供給できなかつた点もあるので、今後そのようなことのないように農業電化審議会でも充分検討して稼働されるだけ確保されるよう努力したい。


 (8)イ 短期金融
      農業者に対しては農業手形制度により営農資金を確保し、水産業者に対しては漁業手形制度によつて仕込資金を確保し、企業会社の運転資金については融費あつ旋により日銀の支援を得て所要資金を確保する計画である。

    ロ 中長期金融
      本年度対日援助見込資金計画中に農水産関係に認められた枠は二十七億円であるが、これが早急の資金化については関係方面とともに努力中である。日銀の公開市場操作により組合系統金融機関の国債が買上げられることになり、今年度中金から二十五億程度の中長期融資の見透しがついたので、すでにこれが融資を実行している。企業会社に対してはオープン、マーケツト、オペレーシヨンによる融資対象となり得るものに対して融資あつ旋を行う計画である。


三、資金蓄積
      組合統系金融機関の安定資金の確保を図るため、供米期を迎え資金蓄積運動を全国的に展開し、農林中央金庫を主体として推進している。本年十二月末の農業協同組合の貯金機関の目標額を千五百億円に置いている。

 (9)イ いも類の統制の今後の在り方については、生産農民の側でもいろいろな憶測が行われ前途に見透を得ない状勢にあるので、政府といたしましては、差当り昭和二十四年産のいも類について別紙のように決定し、これを公表したわけである。
      昭和二十五年産のいも類についても同様至急措置する方針であるが、雑穀については目下のところ確たる見透しを申上げる段階に至つておらぬ。
      今後三箇年の見透如何については、世界の戰後の極めて低い生産からの脱却、米穀についての国際割当の廃止、近くはわが国の国際小麦協定への参加の議等明るさを増してはいるが、自然的條件の支配を多く受ける農業についての見透は極めて困難である。現在政府として三箇年を見透したものは、経本で作成した五箇年計画の試案があるのは御存知の通りであるが、これはまだ政府の正式なる見透計画としては決定しておらぬ。

    ロ1 生甘しよについては、生産者は生甘しよの事前割当数量(補正があつた場合は補正割当数量)の供出完了後は政府以外の者に販売しても差支えないこととする。
     2 超過供出は、各農家別に生甘しよの事前割当数量の一割の範囲において買入れることとする。
     3 切干甘しよは事前割当数量とその一割の範囲において政府買入をするが、生産者において政府以外の者に販売しても差支えないこととする。
     4 今年産生甘しよの供出状況から見て、特別価格適用の始期の制限は設けないこととする。
     5 1及び3により政府以外の者に販売せられるものの価格については、統制を行わない。
     6 1、3の後段及び5については生馬鈴しよ及び馬鈴しよ切干についても適用する。
     7 以上の措置に伴い次の措置をとる。

     (イ) 甘しよ、馬鈴しよ及びこれらの加工品についての売渡その他の讓渡及び讓受、買受その他の移動、使用についての制限を解除する。

     (ロ) 国内産の甘しよでん粉及び馬鈴薯でん粉については売渡指示制は残置するが、売渡その他の讓渡、その他の讓受移動及び使用についての制限を解除し、小麦粉でん粉については主要食糧から除外する。


 (10)(イ) 研究中である。

    (ロ) 本年度(一月 ― 十二月)の農林畜水産物の輸出計画数量は約八千万弗(内生糸約四千万弗)であり、わが国輸出総額の一二%に当る主要輸出品は生糸を始め、茶、はつか等の農産物、まぐろ、するめ、あわび等の冷凍及び乾製水産物、合板、ベニヤ茶箱等の林産物、兎毛皮、アンゴラ兎毛等の畜産物、並びに農産、水産等の罐詰類である。本年一月 ― 九月までの輸出実績(契約)は約四千万弗(内生糸一千万弗)であり、これを昨年同期の約三・三千万弗に比較すれば約一・二倍となつている。本年に入り、生糸の輸出は極めて不振であり、生糸以外の農林畜水産物だけについて観れば昨年同期の約二・三倍の著増となつている。
       生糸の輸出不振は米国におけるナイロンの発達によるものであるが、蚕糸業のわが国農民経済に占める重要性にかんがみ、生糸、絹の需要増進を図るべく主要蚕糸、絹業諸団体をメンバーとするシルクアソーシエーシヨンを八月に設立させ、日本生糸の国際市場進出の態勢を整えている。
       生糸を除く農林畜水産物については、天産物的性格を有する商品が多いので、海外市場の変動にもかかわらず、割合順調な輸出を示しており、肥料、労務物資等について主食同等扱いをする等の優遇措置を講ずるとともに、はつか等については予算的措置を講じて原種圃における優良種苗の増殖を図つているが、主食関係作物との農地利用の競合問題が難点となつており、これが調整に努力している。


 (11) 目下検討中である。

 右答弁する。




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