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答弁本文情報

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昭和二十五年三月十三日受領
答弁第六五号
(質問の 六五)

  内閣衆質第四八号
     昭和二十五年三月十三日
内閣総理大臣 吉田 茂

         衆議院議長 (注)原喜重(注) 殿

衆議院議員滿尾君亮君提出陸運行政の民主化の徹底に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員滿尾君亮君提出陸運行政の民主化の徹底に関する質問に対する答弁書



一 普通車による一般貸切事業を営むトラツク事業は、戰時中企業合同を行つているが、貸切專門の事業者が一県一事業のものは現在二県(岡山、島根)ある。この二県でも競争事業者がない訳ではないが稍々独占に近い状況とも言える。しかしこの二県においては新規免許の申請はなく別に惡評も聞いていない。従つて終戰前後を通じ、全国的に見てトラツク業界が独占の状況にあるとは考えないのみならず終戰後トラツク事業の新規免許申請は却下されたものよりも免許したものの方が遙かに多い。現在は大都市ではトラツク事業者は公定運賃を割るような競争も敢えてしなければならない場合が多い状態である。

 (備考) 終戰後トラツク事業新規免許状況(一般貸切事業のみ)
  免許件数 二九三  
  却下件数 六五  
(その他トラツク事業  免許   三三六
却下    二二)


二 政府は、事業の独占の状態を希望するというようなことはない。トラツク事業営業不振の理由は種々あつて一概には言えないが、輸送需要に対して既免許者の輸送力が相当過剩のため不振である場合は、新規免許により不当競争を起す虞れがあるため道路運送法第十二條第二項第六号の規定により免許できない場合があると考える。

三 トラツク事業者は、道路運送法第十九條の規定によつて運送引受の義務があるので運送需要に対し責任を完遂できるよう任意に増車や減車は認められないので現在のように経済事情の変り易いときは経営上のリスクを相当負担させられている。現に需要激減のため会社を解散した者、車両の差押を受けた者等も生じている。

四 道路運送法で免許制をとる所以はトラツクの輸送力を都市、山間を通じてなるべく公正に利用できるような事業配置を期待し、有利な運送のみを選択するような事業者の現出を防ぐため一経済ブロツクを必ず事業区域としてその区域内の輸送について責任を負わせる必要を認めたからであると考える。しかし、免許事業といえども経営上の危險を負担していることは前述の通りである。

五 トラツク事業不振の状況については、昨年の調査によれば全国各地方で最も模範的経営を行うトラツク業者三十五業者の收支状況がその中五業者のみが辛じて黒字経営を行つており残余の三十業者は赤字経営(運輸收入が営業費より低額)を行つていることから明白である。なお、相当の遊休車が生じていることも不況を示すものと考える。

 (註) 右三十五業者の一日当実働一車当平均收支は左の通り
    收 入 三、三八一円四二  
    営業費 三、九七九円一〇  
    損 失 五九七円六八  
  全国営業用トラツクの普通車について最近の遊休状況は左の通り。
    実働車 二七、七四六  
    遊休車 二、五二三 (燃料不足、タイヤ欠、修理のためのものを除く。)


六 前項に示した如く全国で最も模範的経営を行う者として運輸大臣が道路運送調査規則第六條(総理庁令、運輸省令)に基き、指定した事業者の大部分の收支状況が赤字である以上、トラツク営業不振の主因が経営能力にあるものと考えられない。なお、新規免許を不当に抑制する意図のないことは第一号で述べた通りである。

七 トラツク事業者の内部事情で経営型態を改めなければならないものは改めさせている。経営の不良な者に対してはその都度改善命令により改善方を指示しており、その件数も数件ある。行政指導により改善方を求めた例は相当多数に上る。経営型態を理由とする不平不満は利用者側からは余り聞かない。

八 法規に適合する免許申請は、公正な競争を期待する意味において免許しておりこの件数も前述の通りであるが、トラツク事業不振の理由の大半が輸送需要の減少にあると考えるので新規免許の結果既免許業者との間に不当の競争を起す虞れのある場合が多いことは免れないのでかような場合は免許しないことになる。

九 政府はトラツク事業の現状が満足なものとは考えない。従つて終戰後相当多数の免許をしており公正な競争の維持される限度において充分国民の職業に対する機会均等ははかられていると考える。トラツク輸送についての国民の福祉を確保するためには、之を自由営業として何人にもトラツク事業を開業できることにすることは絶対に反対である。トラツク事業は第四号で述べたような理由の外に少くとも左のような條件を具えるべきでこれを免許の方法で審理すべきである。

(イ) 資力信用の具備。
(ロ) 事業の実施能力の具備。
(ハ) 需要供給の著しい不均衡を来さないこと。
(ニ) 資材燃料の濫費を避けること。
(ホ) 公正な競争の確保。


十 政府は、トラツク事業の業態については第一号に述べたような見解を持つて居り相当の変ぼうを生じていると考えるが、なお一部に欠陷のある場合も考えられるので今後一層業界の改善に努力して行きたいと考える。国民がトラツク事業に期待することは安全確実な輸送を低廉に行うこと以外にはないので特に事業実施上国民の期待に副うように努力したい。

 右答弁する。




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