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答弁本文情報

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昭和二十五年三月十四日受領
答弁第六八号
(質問の 六八)

  内閣衆質第五七号
     昭和二十五年三月十四日
内閣総理大臣 吉田 茂

         衆議院議長 (注)原喜重(注) 殿

衆議院議員高田弥市君提出公共事業による失業者救済に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員高田弥市君提出公共事業による失業者救済に関する質問に対する答弁書



一 公共事業は経済復興のための基盤の造成、維持と失業者の吸收という二つの目的を以つて実施されているが、現在の如き失業者の増大している時期にあつては、大規模な雇用量を造出する公共事業により、多数の失業者の吸收を図ることは緊急の要事であるというべきである。
 公共事業に対して、失業者を吸收せしめるための一般的措置として、緊急失業対策法に基いて、殆どすべての事業に失業者吸收率が設定され、その使用する労働者のうち、一定率に該当する労働者は、公共職業安定所の紹介する失業者であることを要すると定められているのであるが、昨年十一月、これが大巾なる改正を行つて、その事業種目数を拡大するとともに、吸收率の引上げを行い、当面の失業情勢に対処する方途を講じた次第である。
 しかしながら、公共事業の施行情況を見ると、その事業量の七〇%乃至八〇%は、農村地域で施行されており、失業者が主として都市地域に発生している情況にかんがみる時、失業対策としてはその実施地域において、稍吻合を欠く虞があるので労働省としては、失業者発生の状況並びにその地域を関係機関に示し、可及的にこれが吸收に資せしめるよう、事業の撰定に当つて失業者をより多く吸收し得る事業種目を選び、必要な規模において、必要な地域に実施することに充分留意することを要請しており、又昨年の第六回臨時国会においては、特に失業対策的公共事業を実施することとし、労働省の要請する地域規模において五億円の予算額をもつて各種の事業を実施して、失業対策事業の実施と相並んで、失業情況の緩和に資する措置を講じた訳である。
 殊に明年度の公共事業は九七〇億円に及ぶ本年より倍増された事業費を以つて、実施される予定であり、その雇用量も相当の増加が見込まれるので、その実施については、より一層失業対策としての見地より、実施すべきことを度々要請しており、又公共事業中特に都市地域において行われる都市計画事業、街路事業等については、失業対策事業との緊密なる吻合を考慮することとし、事業の経済効果をよりよく発揮せしめると共に、一層多数の失業者を吸收せしめるごとく関係機関と協力致している。

二 見返資金使用による公共事業は来年度一一〇億円との案があるが、その使途方針、事案内容に関しては未だ最終決定を見るに到つていない。

三 各種の公共事業において、失業者をできるだけ吸收し、その労働力を建設面に振向けることが必要であることについては申す迄もないところであるが、災害その他の主要建設事業の大部分が都会を遠く離れた土地にある関係上、これに大都会に蝟集する失業者を大規模且計画的に振向けるためには收容設備その他の受入体制の整備を必要とするのであるが、これらに必要な財政的金融的措置を執ることは甚だ困難であり、従つて大都会の失業者を山間壁地に吸收することについては相当困難がある状況である。
 しかし、大都市及びその周辺等における軽公共事業に、之等の失業者を使用することは現在においては当然のことと考えられるのでできるだけ多くの失業労務を吸收する様に措置致したいと考えている。
 他方、農村地帶における失業者に対しては、主要建設工事が主として地方に施行される関係上、失業労務の吸收は、比較的順調に行われ得るものと信じている。
 次に建設工事の機械化の問題については、現在政府は災害その他緊急を要する主要建設工事について、機械化施工を採用しているが、わが国の建設工事の機械は先進国のそれと比較致して、未だ格段の相違があり、失業者の吸收と、事実上摩擦を生ずるような段階には達していない。機械化施工と申しても現段階においては相当の人力を使用している関係上、工事に適応するような労務を吸收してゆくことの妨げにならぬよう十分心掛けて参る方針である。統計資料によると定量の工事と普通の機械化作業によつた場合、人力作業に比し直接労務者は一〇%乃至二〇%減少し、その工事量は一四%乃至二九%増加することとなつている。
 この場合、直接労務一〇%減に対しては、機械関係の間接労務者が九・二%、同じく直接労務二〇%減の場合は、間接労務は二二・五%の増となつている。以上の数子が示す如く適度な機械使用は、作業能率を挙げる外、機械製作修理関係方面の失業者を救済し、あるいは失業者の発生を防止することに効果があると考えている。

 右答弁する。




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