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答弁本文情報

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昭和二十五年十二月二日受領
答弁第三号
(質問の 三)

  内閣衆質第三号
     昭和二十五年十二月二日
内閣総理大臣 吉田 茂

         衆議院議長 (注)原喜重(注) 殿

衆議院議員並木芳雄君提出かな文字に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員並木芳雄君提出かな文字に関する質問に対する答弁書



 かな文字に関する質問にお答えいたします。
 お説は、小学校で、カタカナからはいらずに、ひらがなからはいつていることは、相当問題であり、一通りカタカナに習熟してから、ひらがなに移るようにしたらどうであるかというようにうけたまわりました。

 国語教科書における文字提出の歴史をふりかえつてみますと、ふるくは、小学校の一年生は、カタカナ文または、漢字交りカタカナ文を用い、二年生以上では、科学的な教材をのぞいては、全部漢字交りひらがな文が用いられておりました。
 いわゆる「さくら読本」や「あさひ読本」では、一年生の前期用はカタカナ文を用い、後期用から漢字交りひらがな文が原則として用いられておりました。
 しかるに、昭和二十二年の終戰後最初の新読本では、一年生のはじめからひらがな文または、漢字交りひらがな文を用い、二年生から、外国の地名、人名、外来語、擬声、擬音のような発音を示すことばにかぎつてカタカナ文字を用い、その他は、すべて漢字交りひらがな文を用いて、現在にいたつております。

 一年生から、ひらがなをなぜ提出したかと申しますと、だいたい次のような理由によるものであります。

1 新憲法及び法律文が漢字交りひらがな文になりましたので、国家、公用文は、横書きにかぎりカタカナを用いてもよいという例外以外は、すべて、漢字交りひらがな文になりましたので、カタカナを用いる機会は、非常に少なくなつております。また、一般社会生活においても、電文以外はすべてひらがなでありますので、カタカナを用いる必要性は、非常に減少したということができましよう。したがつて、そうした社会的現実のうえからカタカナを教えなければならないという理由が少なくなつたと思います。

2 第二に、もし従来のように、一年生の前半またはその全学年においてカタカナを指導し、それ以後において、ひらがなを指導するとすれば、わずか一箇年の間に、兒童は二種のかな文字と漢字との三種の文字を習得しなければならない結果となり、兒童の文字学習による負担は過重なものとなるおそれがあります。また、その結果は、最初に習得したカタカナと、次に習得したひらがなが混用されがちになつて、文字言語による表現力をおそろしく低下させるきらいがあります。
 したがつて、一年生から、ひらがなを習得させることは、兒童の文字による負担をいちじるしく減少するばかりでなく、兒童の表現力を高める結果となることと信じます。

3 第三に、現在の一般社会生活における印刷物や、子どものための絵本・雑誌・新聞なども、すべてひらがなが用いられていますので、一年生のはじめからひらがなを指導すれば、兒童の読書力を制限するようなことがないばかりでなく、兒童の個人差に応じて、一年生といえども高い程度の読書力を持たせることができます。


 以上のような理由から、昭和二十二年発行の国語教科書から、ひらがなを一年生の最初から提出する方法をとつておりますが、お説のような御意見も少くありませんので、政府といたしましては、愼重に研究致したいと存じます。

 右答弁する。




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