答弁本文情報
昭和二十五年十二月二日受領答弁第一一号
内閣衆質第一一号
昭和二十五年十二月二日
衆議院議長 ※(注)原喜重※(注) 殿
衆議院議員※(注)田甚太※(注)君提出地方行政調査委員会議の運営に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員※(注)田甚太※(注)君提出地方行政調査委員会議の運営に関する質問に対する答弁書
第一 組織
一 当会議は、地方行政調査委員会議設置法(昭和二十四年十二月二十四日法律第二八一号)に基いて設置せられ、地方自治を基底とする市町村、都道府県及び国相互間の事務の配分の調整等に関する計画につき調査立案し、その結果を内閣及び内閣を経由して国会に勧告することを任務としている。
二 委員及び専門調査員氏名
1 設置法第五條の規定による委員として、左の五氏が昨年十二月二十四日両議院の同意を経て任命された。
高橋誠一※(注) | |
杉村章三※(注) | |
全国の都道府県知事の連合組織の代表者の推せんした者 | |
渡※(注)銕蔵 | |
全国の市長の連合組織の代表者の推せんした者 | |
神※(注)正雄 | |
全国の町村長の連合組織の代表者の推せんした者 | |
鵜沢総明 |
右のうち、渡※(注)委員は五月二日参議院議員立候補のため辞職し七月二十四日後任として湯河元威が任命された。
2 設置法第九條の規定による專門調査員は現在まで二十人の任命をみている。專門調査員の職氏名は別紙第一のとおり。
3 事務局
設置法第十條第一項の規定による事務局職員については、一月十九日大野※(注)治が事務局長に発令を見たが、その他の職員については定員が当初僅かに五人しか認められず、二十五年度から事務局長以下二十五人に増加された。しかし、それでもなお手不足であるので、関係各省から兼官の派遣を求めている。
現在、事務局長のもとに連絡室、調査第一課及び調査第二課の一室二課が置かれている。
4 連絡職員
設置法第十一條の規定による連絡職員については、関係行政機関の職員から二十五名、地方公共団体の職員から十一名、これまで指名がなされている。
5 予算(会議の運営に必要とする経費)
昭和二十四年度 | 一、〇〇〇、〇〇〇円 | (三月分) | |
内 | 人件費 | 八九三、五〇〇円 | |
物件費 | 一〇六、五〇〇円 | ||
昭和二十五年度 | 七、九〇二、〇〇〇円 | ||
内 | 人件費 | 五、九三六、四〇〇円 | |
物件費 | 一、九六五、六〇〇円 |
一 本年一月七日から五月末日まで
1 本年一月七日第一回の委員会が開かれ、神※(注)正雄が議長に互選された。
一月には全委員神奈川県庁及び藤沢市におもむき実地に地方自治の問題点を視察したが、二月及び三月中は、主として関係行政機関の局部長から、行政事務の再配分に当つて特に問題となるべき事項についての説明を聽取した。三月十六日神※(注)、鵜沢、杉村三委員に事務関係者を加えた一行八名がアメリカ地方行政の実情視察に出発し五月二十七日帰国した。
2 委員会の調査研究と併行して專門調査委員には、專門の事項について調査を依頼し、また関係行政機関の連絡職員にはそれぞれ所管事項について関係法令、事務配分、補助金等に関する資料の提出を求めた。事務局においては、特に府県、市町村における行政の実情は握を目的として、千葉県、兵庫県及び神奈川県厚木町についてそれぞれ実態調査を実施した。
1 渡米した委員の帰国後、委員会は、定例会を週二回として、いよいよ本格的な調査研究にとりかかつた。
2 先ず、会議は行政事務再配分の基本方針についての検討を行い、七月十七日その第一次試案(別紙第二)を決定した。
その後この試案を参考として河川、道路、社会福祉等各個々の行政事務について再配分等の研究をすすめるとともに、大阪市、布施市の大都市及び衛星諸都市の行政の実態も視察し、又千葉県及び群馬県におもむき県内の土木、警察等の実情を聽取した。
十月以降委員会の定例会を過三回として鋭意検討を続けた結果成案を得たので近く勧告の運びになる予定である。
四 この間專門調査員に專門的事項について調査検討を依頼し、関係行政機関の責任者よりそれぞれ意見を聽取する外、各府県及び市町村等より意見の提出を求めて会議の参考とした。
事務局においては、北海道、足利市及び川田谷村の実態調査を行い、漁港間題について靜岡県、運輸問題について愛知県の実態調査を行い地方行政の実態のは握に努めるとともに各種資料の整備にあたつた。
右答弁する。
別紙第一
地方行政調査委員会議專門調査員名簿
明大教授、全国町村会顧問 | 小島 憲 |
明大教授 | 弓家七※(注) |
成蹊大学教授 | 佐※(注) 功 |
市政調査会理事 | 小倉庫次 |
元大蔵省給與局長 | 今井一男 |
元神奈川県知事 | 渡※(注) 広 |
元文部次官 | 有光次※(注) |
慶応義塾大学教授 | 奧井復太※(注) |
中央大学教授 | ※(注)間驥一 |
東京大学助教授 | 雄川一※(注) |
東京教育大学助教授 | 綿貫芳源 |
全国町村会相談役 | 松村茂夫 |
全国自治協議会連合会事務局長 | 大※(注)元繁 |
武蔵大学経済学部長 | 鈴木武雄 |
京都府議会議長 | 岩本義※(注) |
岐阜市議会議長 | 松原喜八 |
山梨県町村長会事務局長 | 中島正行 |
全国市長会事務局長 | ※(注)林正吉 |
全国町村長会政務部長 | 上浦種一 |
立教大学教授 | ※(注)田武夫 |
別紙第二
行政事務再配分の基本方針について(第一次試案)
地方行政調査委員会議
一 地方団体に配分するのが適当である行政事務は、原則として、その行政の運営に地方団体の住民を参加せしめ、これによつてそれが真に住民自身の行政であることを認識せしめることが必要であるものであると考えられるが、それは更に次のような種類の行政事務であるというべきである。
一、地方団体の住民の日常生活に直接の利便を供するもの、いわゆるサービス行政の事務といわれるものはこれに当る。
二、主として地方的單位において行われるもの、すなわち全国的規模において画一的に行われることが必ずしも必要でないもの。
地方自治法第二條第三項には地方団体の事務として二十一項目が列挙されているのであるが、この二十一項目を列挙した場合においては、実は右に掲げた基準がその基準とされたものであろうと考えられる。問題は同項但書によつて「但し法令に特別の定があるときは、この限りでない」とされているその「法令の特別の定」の整理をこの標準によつて勇敢に行うことに存するのである。
二 もつとも、これらの種類に属する行政事務を地方団体の事務として配分するということは、必ずしもそれに対して国が何ら関與し得ないことを意味するのではない。例えば、国が都道府県の区域をこえる事務を調整し、都道府県間の著しき不均衡を調節する等の必要のために最少限度の関與をすることは認められてよいであろう。ただ、国が関與する必要があるということを理由にしてそのような行政事務はあくまで国の事務であるとし、その執行を地方団体又はその機関に行わしめるという考え方をとる必要はないのである。国が関與する必要があるものであつても前途の基準に合致するものは、これを地方の事務として地方に配分し、それに対して個々の限られた行為によつて国が関與することができる余地を個々的に法律によつて具体的に定めて置けばその目的は達し得るのである。
そして右の国の関與は、従来のような権力的関與は極力これを避けて、基準の設定、情報の公開、勧告、技術的援助等の方法によることを原則とすることが必要である。
三 国に留保すべき事務は、現在国の事務とせられているものを極力整理して概ね次に掲げるような事務に止める。
一、外務
二、弊制及び国税事務
三、司法に関する事務
四、公職審査に関する事務
五、国家地方警察及び海上保安に関する事務
六、郵便及び電信電話に関する事務
七、專売に関する事務
八、国有鉄道に関する事務
九、全国的な統計
十、直轄河川及び直轄国道並びに北海道のような未開発地域の開発に関する事務
十一、麻薬取締に関する事務
十二、国立の大学、博物館、図書館、研究施設及び医療施設に関する事務
これらの事務は原則としては、できる限り地方団体の事務として行わしめることが望ましいのであるが、種々の事情によりみて一定の部分については国に留保することも差支えないであろう。
十三、医師、薬剤師等の国家試験に関する事務
十四、特許権に関する事務
十五、国の航行、気象及び水路施設に関する事務
四 地方団体に配分すべき事務は、国に留保せられる事務以外のすべての事務とする。地方団体に配分された事務は、地方団体が自主的に処理すべきものであるが前に述べたように、国の関與を認める必要のある場合もある。しかしその場合においてもその権力的関與をなしうるものは極力整理し、例えば左に掲げるような事務に止めるべきである。
一、労働基準、職業安定及び労働関係の調整に関する事務
二、全国的な伝染病予防に関する事務
三、物資及び物価の統制に関する事務
四、食糧の供出に関する事務
五 府県と市町村の事務の配分
一、市町村は、住民に直結する基礎的地方団体であるから、地方団体の事務とされるものは原則として市町村に配分するという方針をとるべきである。
二、府県は、市町村に対し上級の地方団体たる地位にあるものではないが、その地域的範囲において前者が後者を包括する関係にあるという意味において市町村の区域をこえて処理しなければならない事務、市町村間の著しい不均衡を調整する事務等が府県に與えられるべきである。