答弁本文情報
昭和二十五年十二月八日受領答弁第一五〇号
(質問の 一五〇)
内閣衆質第一五〇号
昭和二十五年十二月八日
内閣総理大臣 吉田 茂
衆議院議長 ※(注)原喜重※(注) 殿
衆議院議員風早八十二君提出浅草税務署の不当徴收並びに浅草警察署の不法逮捕に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員風早八十二君提出浅草税務署の不当徴收並びに浅草警察署の不法逮捕に関する質問に対する答弁書
一 所得税の課税標準と取引高税の課税標準とは、税の性質及び課税の方法が異るため必らずしも一致するものではないが、所得額と取引額の間には相当程度の関連があるので、御質問のような事実があれば再調査の上訂正することとしたい。なお、納税義務者が取引金額又は税額について更正決定を受けた場合に、その更正決定金額に異議があるときは、一箇月以内に不服の事由を具して審査請求ができることになつているのであるが、その手続きがとられていないので、本件は納税義務者において異議がないものとして確定したことになつていたものである。
二 国税徴收法第三十一條ノ二には審査請求中であつても徴收又は滯納処分の執行を妨げない旨の規定があり差押は不当ではない。「警察力を借りて…………職権濫用うんぬん」とあるが、十一月二十一日に差押のため臨場のとき本人及び数名の第三者からいいがかりをつけられ差押調書を取上げられた事実にかんがみ、二十二日臨場に際しても再びこのような脅威の発生を予期されたので、警察官の同行を求めた次第であつて、現に二十二日においても予想通り遂に多勢に差押を拒まれ自余の財産搜索も不能となり、あまつさえ差押調書を破棄されるに至つたような状況であつて、その間何ら職権濫用の事実はない。
三 国家地方警察本部が、警視庁から求めた報告によると、浅草警察署では、收税官吏からの応援要請に基ずき、捜査係員二名制服員一名計三名を收税官吏に同伴せしめて室川方に派遣、差押執行に立会わしめたところ、收税官吏の差押執行に当り、室川吉雄はこれに組付いて屋外に押し出し、又、浅草商工会事務員野島茂登一は收税官吏の所持する差押調書を破る等の暴行を加え、公務の執行を妨害したので、刑法第九十五條の公務執行妨害罪容疑として右の二名を現行犯逮捕したものであつて不法に逮捕したり、職権を濫用したものではない。
なお、右の二名は十一月二十三日東京地方検察庁に送庁、室川吉雄は同日身柄釈放、野島茂登一は十日間の検事拘留ののち、十二月二日身柄釈放となつており、両名とも処分留保中である。
右答弁する。