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答弁本文情報

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昭和二十七年七月十一日受領
答弁第五〇号
(質問の 五〇)

  内閣衆質第四九号
     昭和二十七年七月十一日
内閣総理大臣 吉田 茂

         衆議院議長 林 讓治 殿

衆議院議員並木芳雄君提出繭の水引制度に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員並木芳雄君提出繭の水引制度に関する質問に対する答弁書




1 従来繭の取引に際し「水引」と称して口挽(試験的に繰糸すること)によつて得られた生糸量より製糸過程中の歩留率を差し引いたものを基礎として取引する商習慣があつたが、昭和十一年当時産繭処理統制法に基いて繭検定制度が実施され、繭検定成績によつて取引する場合にこの率が問題になつたので、昭和十一年以降三箇年間にわたつて全国府県繭検定所において試験調査し、その結果を生繭検定について別紙(取引糸量に関する通ちようの写)のように取りまとめ、差し引くべき率の標準を決定し、これを公表したのであつて、以後この率(二・九%)だけ検定糸量より差し引いたものを取引糸量とすることとするいわゆる「水引」が昨年まで行われて来たのである。

2 最近特にこの問題が論議せられるようになつた経過は、「水引」の可否については従来より多少議論の存したところであるが、特に最近養蚕者側は全国養蚕販売農業協同組合連合会を中心としてこの問題を大きく取り上げるに至つたのである。
すなわち、養蚕者側としては、繭の受渡後における損耗すなわち製糸過程中の歩留を一率に繭の生糸量歩合から差し引いて養蚕者の負担とすることは不合理であるから、今後は従来の「水引」を撤廃し、他の農産物についてと同様繭の掛目(価格)を協定する際に考慮すべきであると主張し、又歩留の率についても蚕品種、飼育方法、繭品質、繰糸方法等について昭和十一年乃至十五年の調査当時と相当に條件が相違している現状であるから係数二・九%について至急再検討を要する旨要望している。

3 一方製糸業者側の主張としては、これは従来より次に掲げる理由に基いて取引上の商習慣として永く実施されて来たものであるから、現在の繭検定制度の検定成績によつて繭を取引する以上これを撤廃することはできないとしている。
すなわち、繭検定成績に示す生糸量歩合は、生繭購入直後のものであつて、製糸工場が実際に使用する繭は相当期間貯蔵し、又各種の荷口を大量に合併して繰糸しなければならないから必然的に繭質が低下するか又は生糸量が減耗するのであつて、この低下率又は減耗率がいわゆる「水引」の係数であるから、検定制度による明確な取引方法をとるためには、物量的に標準として示された減耗率を見ることによつて初めて検定による取引ということが可能である。
この意味においてあくまで減耗率として検定糸量を歩引きすべきであるというのである。 ただ二・九%の係数そのものが変化しているかどうかについては養蚕者側の主張と同調し、農林省が二・九%の数量について改めて試験調査することは賛成するというのである。

4 政府としてはこの問題は取引の問題であるから、まず売買両当事者の話合によつて決定せられることを期待すること及び二・九%という率については至急に再検討調査をする意向であるということを双方の団体に通告した。

5 右の政府の意見に基いて養蚕製糸両団体は数次の共同会合をもつて研究論議し、且つ、当局もこれがあつ旋に努力したが、結論を得ず、最終の会合においては中央における話合は打ち切ることとし、各地方ごとに両者の協定によつて話合うこととなつた。その後の全国各地方の情勢を通観すると話合は遅遅として進まない現状にある。


政府としては養蚕製糸両業者の依頼に応じ、さしあたり今年度における本問題の円満な妥決をみるために研究会を開いて両者の話合のあつ旋の努力を今後も続けてゆきたい考えであり、且つ、本問題の根本的解決のため研究をつづけている。
なお、両業者側から要望せられている減耗率の調査試験については、至急着手するつもりである。

 右答弁する。



一五蚕局第九〇七号

  昭和十五年五月十五日
農林省蚕糸局長


 写

    県 知 事  殿

   取引糸量に関する件

 標記の件に関しては昭和十一年度以降各府県繭検定所の協力の下に研究調査中の処、今般別紙の通り研究成績取纒候処右は生糸加工販売費の一部を物量的に表するものに有之候に付、右御承知の上繭価協定に際して之に準拠し、妥当なる繭価を形成相成候様御取計相成度此段及通牒候也

   取引糸量に関する調査

 (別紙)
   各蚕期(春蚕白繭、春蚕黄繭、初秋蚕白繭、晩秋蚕白繭)総合成績

 本調査は繭検定を施行せる荷口繭を三月乃至五月間貯蔵したる後第二繰糸検定法に準じ大量繰糸を為し、得たる生糸の内取引に供し得る数量(取引糸量と称す)を調査し、検定成績の表す生糸量と取引糸量との比較を示す。

生糸量と取引糸量との比較


 (備考)
  一 本成績は検定成績の表す生糸量に対する百分比例を以て示せり
  二 各年度綜合は生糸五〇〇斤荷口を一生糸一、〇〇〇斤荷口を二とし加重平均せられたるものなり
  三 昭和十一年度は(四三荷口)昭和十二年度は二四府県(四〇荷口)昭和十三年度は六府県(一二荷口)の平均を示せり




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